13 / 13
最終話
しおりを挟む
学校を出た。
「あー、腹減った。牛丼食いたい」
優輝はすっかり元の感じに戻っていた。しかしどこか憑き物が落ちた様なすがすがしい顔をしている。
俺達の関係は、どうなるのだろう。
お互いに恋愛感情が無いことがわかった。なら、交際は終了だろう。
元々友達だった訳ではない。今から友達になれそうかと言われると微妙だ。
優輝との関係を手放したくない、そう思っている自分に驚いた。
あの頃の自分を知っているから、一緒に居て楽。
あの頃に戻れる気がするから、一緒にいて楽しい。
それだけじゃない気がした。
掴みどころがなくて、いつもベタベタしてきて、俺と同じであの頃に置いていかれたままの、でも俺より強く生きようとしている今の優輝と、もっと一緒に居たい。
コイツと居れば俺ももっと強く生きられるんじゃないかなんて、結局利害でしかないのかもしれないが。
「なぁ稔」
「ん?」
「俺さぁ、今から将来の夢探すわ」
昼間の太陽を浴びて、あるいは俺の気持ちの問題で、優輝はキラキラと輝いて見えた。
「いいじゃん」
夢を持つのはいつからでも遅くない。ましてや優輝はまだ二十歳だ。
やはり優輝には、夢を追いかける姿が似合う。
「だからさ……稔も、手伝ってくれる?」
「え?」
不安そうに俺を見つめている。あの頃の優輝はしなかった、今の優輝の表情。
「だ……だめ?」
「いや……いいけど」
優輝の顔がほころぶ。
その顔を、愛しいと思う。
もしかしたら俺はもう、とっくに。
「俺一人じゃ、前に進めるか不安なんだ。でもお前となら、進める気がする」
「なんだそれ。俺も、進めてないのに」
「うん。だから一緒に」
優輝の手が俺の手を軽く握った。
俺も握り返した。今度はちゃんと、過去に連れて行かれないように。
そして二人で一緒に、今に追いつけるように。
「稔」
「なに」
「ちゃんと俺と付き合って」
「......うん」
優輝がはにかんだように笑って俺を見た。
「良かった。振られるかと思った」
思い返せばなんだかんだ一回も言ったことのなかった言葉が、自然と口から零れた。
「俺さ、お前のこと好き」
優輝の目が見開かれる。
「......になるかも」
あるいは、もう好きかも。
「“かも”かよ!」
優輝が噴き出して、俺も笑った。
「優輝は?」
俺の言葉に虚を突かれたような表情になり、少し考える素振りをする。別に好きでも好きでなくても良かった。ただ優輝の口から聞きたかった。
おかしいと思ったのだ。事なかれ主義の俺が、わざわざ自分から関係を悪くするようなことを言うなんて。俺はただ、コイツの口から。それは甘えだけではなくて。
「……好き」
そう言ってからわざわざ強調するように言う。
「“かもしれない”」
大して面白くもないのに二人で大笑いしながら歩いた。
久しぶりにこんなに笑ったかもしれない。
「あー、腹減った。牛丼食いたい」
優輝はすっかり元の感じに戻っていた。しかしどこか憑き物が落ちた様なすがすがしい顔をしている。
俺達の関係は、どうなるのだろう。
お互いに恋愛感情が無いことがわかった。なら、交際は終了だろう。
元々友達だった訳ではない。今から友達になれそうかと言われると微妙だ。
優輝との関係を手放したくない、そう思っている自分に驚いた。
あの頃の自分を知っているから、一緒に居て楽。
あの頃に戻れる気がするから、一緒にいて楽しい。
それだけじゃない気がした。
掴みどころがなくて、いつもベタベタしてきて、俺と同じであの頃に置いていかれたままの、でも俺より強く生きようとしている今の優輝と、もっと一緒に居たい。
コイツと居れば俺ももっと強く生きられるんじゃないかなんて、結局利害でしかないのかもしれないが。
「なぁ稔」
「ん?」
「俺さぁ、今から将来の夢探すわ」
昼間の太陽を浴びて、あるいは俺の気持ちの問題で、優輝はキラキラと輝いて見えた。
「いいじゃん」
夢を持つのはいつからでも遅くない。ましてや優輝はまだ二十歳だ。
やはり優輝には、夢を追いかける姿が似合う。
「だからさ……稔も、手伝ってくれる?」
「え?」
不安そうに俺を見つめている。あの頃の優輝はしなかった、今の優輝の表情。
「だ……だめ?」
「いや……いいけど」
優輝の顔がほころぶ。
その顔を、愛しいと思う。
もしかしたら俺はもう、とっくに。
「俺一人じゃ、前に進めるか不安なんだ。でもお前となら、進める気がする」
「なんだそれ。俺も、進めてないのに」
「うん。だから一緒に」
優輝の手が俺の手を軽く握った。
俺も握り返した。今度はちゃんと、過去に連れて行かれないように。
そして二人で一緒に、今に追いつけるように。
「稔」
「なに」
「ちゃんと俺と付き合って」
「......うん」
優輝がはにかんだように笑って俺を見た。
「良かった。振られるかと思った」
思い返せばなんだかんだ一回も言ったことのなかった言葉が、自然と口から零れた。
「俺さ、お前のこと好き」
優輝の目が見開かれる。
「......になるかも」
あるいは、もう好きかも。
「“かも”かよ!」
優輝が噴き出して、俺も笑った。
「優輝は?」
俺の言葉に虚を突かれたような表情になり、少し考える素振りをする。別に好きでも好きでなくても良かった。ただ優輝の口から聞きたかった。
おかしいと思ったのだ。事なかれ主義の俺が、わざわざ自分から関係を悪くするようなことを言うなんて。俺はただ、コイツの口から。それは甘えだけではなくて。
「……好き」
そう言ってからわざわざ強調するように言う。
「“かもしれない”」
大して面白くもないのに二人で大笑いしながら歩いた。
久しぶりにこんなに笑ったかもしれない。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
藤崎さんに告白したら藤崎くんに告白してた件
三宅スズ
BL
大学3年生の鈴原純(すずはらじゅん)は、同じ学部内ではアイドル的存在でかつ憧れの藤崎葵(ふじさきあおい)に、酒に酔った勢いに任せてLINEで告白をするが、同じ名字の藤崎遥人(ふじさきはると)に告白のメッセージを誤爆してしまう。
誤爆から始まるBL物語。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
痩せようとか思わねぇの?〜デリカシー0の君は、デブにゾッコン〜
四月一日 真実
BL
ふくよか体型で、自分に自信のない主人公 佐分は、嫌いな陽キャ似鳥と同じクラスになってしまう。
「あんなやつ、誰が好きになるんだよ」と心無い一言を言われたり、「痩せるきねえの?」なんてデリカシーの無い言葉をかけられたり。好きになる要素がない!
__と思っていたが、実は似鳥は、佐分のことが好みどストライクで……
※他サイトにも掲載しています。
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
薄紅の檻、月下の契り
雪兎
BL
あらすじ
大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。
没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。
しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。
鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。
一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。
冷ややかな契約婚として始まった同居生活。
だが、伊織は次第に知ることになる。
鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。
発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。
伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。
月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。
大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる