何度でも君と

星川過世

文字の大きさ
8 / 13

8

しおりを挟む
 優輝と会うのは、主に俺の部屋だ。中間地点で会えばいいと何度か言ったが、人目を気にしたくないらしい。
 実際会うと優輝は正直鬱陶しいレベルでベタベタしてくる。まぁ、嫌ではないのだが。
 何故か優輝が半額出してくれたサブスクで映画やドラマを見ながら、だらだら過ごす。一人でいてもどうせ無味乾燥な時間を過ごすだけなので、少し有難い。
 映画にもドラマにも全く詳しくないが、数少ない面白かった作品を元に優輝は適切なおすすめ動画を見つけてくれた。バスケができなくなって以降、映画やドラマを上から見るのが暇つぶしらしい。
 ふたりで新規開拓をするのもまた楽しい。優輝の着眼点は俺とは全然違うから新鮮だ。
 「今度、美術館とかも行こうよ」
 俺がそう言うと、優輝は不思議そうに首を傾げる。
 「別にいいけど......そういうの興味あったんだ」
 「ないけど、優輝と言ったら楽しそう」
 俺には思い付かないようなことを言ってくれそうだ。
 俺の言葉に優輝が照れくさそうに笑った。
 「それにしてもお前の家、物ないよな~」
 「うん。物欲が無いっていうか......。いや、欲しいものがない?」
 家の中には必要最低限の物しかない。置きたくないわけではない。ただ、わざわざ置きたいと思えるほどの物がないのだ。
 「なんかいい置物とかあったら教えて」
 「いいけど......。置物とか以前になんか趣味の物ないの? てか、お前普段何してんの?」
 「......なにもしてない」
 大学やその集まりとバイトを除けば、目的も無くネットサーフィンをしたり、読みたくも無い本を適当に読んだりしている。特に面白くはない。時間をただ潰しているだけ。
 なにをしても人並みに楽しいが、自分から進んでやりたいと思えるようなものがない。もともと何事にも執着と言うか、頓着しない質なのだ。
 ......いや、もともと、ではないか。子どものころはそういうのも多少あった気がする。よく覚えていないけれど。
 「好きな食べ物は?」
 「食えればなんでもいい」
 「仲のいい友達は?」
 「いないってば」
 「大学だとどの授業が好き?」
 「どれも別に、好きじゃない。単位の為に出てる」
 優輝が噴き出した。気が付いたらちっとも面白くないのに俺も笑っていた。コイツが全部、笑い飛ばしてくれればいいのに。
 「あ、美術館でポストカードとか買って飾れば?」
 「優輝が選んでくれる?」
 「いやそこは自分で選べよ」
 再び、どちらからともなく笑った。胸がほんの少し痛んだのは、黙殺した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

藤崎さんに告白したら藤崎くんに告白してた件

三宅スズ
BL
大学3年生の鈴原純(すずはらじゅん)は、同じ学部内ではアイドル的存在でかつ憧れの藤崎葵(ふじさきあおい)に、酒に酔った勢いに任せてLINEで告白をするが、同じ名字の藤崎遥人(ふじさきはると)に告白のメッセージを誤爆してしまう。 誤爆から始まるBL物語。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

可愛いがすぎる

たかさき
BL
会長×会計(平凡)。

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

痩せようとか思わねぇの?〜デリカシー0の君は、デブにゾッコン〜

四月一日 真実
BL
ふくよか体型で、自分に自信のない主人公 佐分は、嫌いな陽キャ似鳥と同じクラスになってしまう。 「あんなやつ、誰が好きになるんだよ」と心無い一言を言われたり、「痩せるきねえの?」なんてデリカシーの無い言葉をかけられたり。好きになる要素がない! __と思っていたが、実は似鳥は、佐分のことが好みどストライクで…… ※他サイトにも掲載しています。

人並みに嫉妬くらいします

米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け 高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。

薄紅の檻、月下の契り

雪兎
BL
あらすじ 大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。 没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。 しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。 鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。 一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。 冷ややかな契約婚として始まった同居生活。 だが、伊織は次第に知ることになる。 鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。 発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。 伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。 月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。 大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。

処理中です...