HEAVENS HEARTS

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SPEED 04 平穏の驚駭

SPEED 04-03

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「お前等!ガキの頃ツルんでた」

「あの月華姉ぇと零士さんやろ!」

二人が持つ共通の遠い記憶。忘却の彼方に埋もれていた記憶が、今、覚醒を始めた。

「やっとね。長い前置きだったわ」

駐車場での出逢いは再会の意味合いに変わり、これまでの接触に於いて一番の優しい瞳が二人を包む。

空気感(ソレ)は、過去(かつて)の二人が知る心地と相違なかった。

「ヤッパそうやねやぁぁぁっ!」

エルナが表情を崩し一足飛び、月華と零士の胸の中に顔を埋めた。

「なんで?何でもっと早く教えてくれへんかったん?そしたら……そしたら……」

時空(とき)を越え涙ぐみ、感情に比例した表現が渡る両腕に籠められた。

「それはこっちのセリフよ。私が名乗っても気付いてくれないし」

「だって……だって!二人はお互いをツキカ・ゼロって呼び合ってたのに、あの時……言うてへんねんもん!」

「で、いっそ思い出すまで黙ってようかと、ツキカが言い出したって訳さ」

「……もう……意地悪(イケズ)やねんから……」

月華の胸を叩くも、顔(エルナ)は伏せてしまう。

そんな仕種に衝き動かされてか、月華は自が胸元のエルナを愛し気に撫でやった。

「零士さんも零士さんや……あそこで逢った時に一言でもアタシに話し掛けとってくれたら、すぐにでも思い出しとったのに……」

「お前に話し掛けて……なかったか?」

「もう!コレや……そういう所は昔とちっとも変わってへん」

「お前は見違える程に綺麗になった」

「キザなんも変わってへんねんな。今時流行(はや)らんで」

「おい……感動の御対面中にホント申し訳ないんですけど……俺だけカヤの外かいっ!」

ベッド上に集中する視線束。

「ナニ言うてん、ちょっと感極まっただけで」

「そうよ、別に仲間外れになんか……ねぇ?」

「あ?俺はそのつもりだったが」

「もうええ、もうええ。悲しなってくるから」

カルナは顔を見回し三対一を決め込んだ。

「確かにもっと早く気付くべきやった、名前の偶然と必然さに……まあともかく、積もる話の前にこのウットウシイ鉄の輪っか外せ」

カルナは、自分を拘束した人間が全くの赤の他人ではなく幼馴染だったことに安堵し、今度こそ忌まわしい枷から解放されるものと信じ、気安く頼んでみた。が、

「それは無理だな、面倒だから」然も当然の如く無下にされた。

「何でやねんっ!コレ付けたんお前やろが、自分で蒔いた種は自分で刈れっちゅうねん!」

「自分で蒔いた種か……相変わらず変な引用だな。そんなに外して欲しいのか?」

「当たり前やろ!こんな屈辱初めてやぞ!」

「楽でいいと思うんだがな。寝ながらにして人の話を聞け、尚且つココのベッドって寝心地いいだろ?」

「お前は頭イタイんか?俺は自分の意志でノンビリ寝とんのやなく、無理矢理封じられとんのやんけ。何遍も言わすな、ハヨ外せ!」

「で後、一目散に領事館へと向かう訳か?」

瞬時、軽口を叩いていた零士の目が鋭い変貌を遂げる。

「……ああ、そうや、悪いか!いくら昔ツルんでたいうてもこの件に関してだけは一切口出しさせんぞ!」

カルナは零士の目から受けた多少なりの躊躇を即座に言い返し、退けた。

「ほう、大きくでたな……」

薄笑を踏む零士の右手がカルナの右手首を固定する拘束具に。直後、

「こんなチャチな枷如きに阻まれてる奴がデカイ口(セリフ)を叩くなぁっ!」屈曲な拘束具は脆弱へと握り潰され、ひしゃげ引き千切られた。

「!ッゥアッッッ!ナ、ナニィィィッ!」

自らでは身を削ろうともビクともしなかった拘束具。しかし硬質は粘土細工のような崩壊、カルナは現実に睨まれ捕らえられた。そしてもうひとり、

「ウゥゥゥッソォッ!」傍観者に位置するエルナが感慨に耽る状態から一転、架空の世界が入り混じったような現実に引き戻された。

「いいかよく聞け。口が酸くなるが、あの館には例の男(ジャンキー)など足元にも及ばない存在が待ち構えている。つまり、今現在この状況を脱せないお前があそこへ走ることは、自殺行為以外の何ものでもない。無駄死にってやつだ」
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