HEAVENS HEARTS

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SPEED 05 覚醒の光条

SPEED 05-01

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「おう、解放してくれへんのやったらそろそろ教えてくれるか?フツウでは考えられへん情報収集能力。月影のオッチャンに対する尋常やない対応。そして何より、事の成り行きの説明が……ただの幼馴染感情からやないいうこと。お前達は何をしようとしてる」

月華と零士の心中を探るよう、カルナが下から覗き込んだ。

「わあ!なあなあ月華姉ぇ、このお茶って昔ようゴチソーしてもらったロイヤルミルクティーちゃう?」

「オォォォイ!何でお前はすぐそうやって話を明後日に持っていく!」

他方エルナは、聴覚を閉ざす代わりに芳醇な香りを部屋中に放つティーカップに嗅覚を誘われ、揺らめくロイヤルミルクティーを口中へ運んだ。瞬間、広がりある芳香が鼻孔をストレスなく抜けてゆく。

「はぁぁぁ……美味しいぃ……落ち着くぅ……懐かしいぃ……」

「完全に無視(シカト)か?チョッ、俺も飲みたいな……違う!話を元に戻せ!」

「誰と喋ってんだ?無人島でも苦はないな」
「ウッサイ!ああ話が前に進まん!ああイライラするぅぅぅっ!」

カルナは赤子の如き癇癪に襲われ、全身を揺り動かした。

「はいはい飲ませてあげるから駄々こねない」

月華がカルナの首を支えロイヤルミルクティーを含ませた。途端、妙な静けさが訪れた。

「カル兄ぃ……ゲンキンにも程があんで」

「カルナ……お前はどうなんだ?」

「緊張の緩和にはなったからいいんじゃない?じゃあ緊張の方をゼロ進めて」

「腑に落ちんことこの上ない……コイツの疑問から潰していくか?」

「それでいいと思うよ」

当初エルナを寝かせていたソファーに深く腰を埋(うず)める零士。

「お前の言うよう多岐に渡る情報は到底個人の力で集められるものではない。統一体……つまり、それなりの組織が形成されてこそ成し得れる」

「組織ィ?またウザイことを……目的は?」

「組織ブチ立て発起人は数年前のオヤジ達、三人衆。構想した運営目的は、企業相手にあることないことをデッチ上げ集ろうとするダニ共に対抗し得る力の探求。国家権力を頼りなさや危うさから見限り、原動力として備えようとしていた」

ティーカップを見詰めていたエルナの視線がゆっくり零士へ。

「何か今回の話に似てんなぁ?」

「そうだな。恐らくオヤジ達は予見していたんだろう、近い将来、自分達に降り懸かるであろう災厄を。だからこそ三人は組織の中心に座る人物の選出から自分達を除外。検討の末、ツキカにお鉢を回した。が、ツキカは首を縦に振らなかった」

「ハン!わかるで月華。群れなんかウットイだけやもんな」

「そうね。でも、私が最も引っ掛かりを覚えたのは、人の利益を掠め取るような人間を相手にすればイタチゴッコが始まり、最後にはどちらかが……ね」

月華の視線が床を掃き、エルナ前の椅子に腰掛けた。

「為に、組織結成は中心人物不在を理由に呆気なく先送りされ(ポシャッ)た」

「やが、今こうして面(ツラ)を合わせとる。ちゅうことは、お前等を中心とした組織の存在を意味しとる」

「ああ、俺達の肉親以外にも火の粉の懸かる今回の一件をツキカが嫌ったからな」

零士、カルナとエルナの視界が月華を中心に捉える。

「じゃあ結局、月華が引き受けたんか?組織の要を……そんな七面倒なことお前がやったらええんちゃうんか零士よ?」

「人にはそれぞれ器量ってのがある。俺は人の上に立つ器を自分に見た覚えがないんでな」

カルナは組織というモノに過剰な抵抗を示し、一方、お茶を飲み御機嫌だったエルナも一変、涙ぐみ始めた。

「ホンマ御免な月華姉ぇ……父チャンのヘマのせいで嫌なクジを引かせてもうて……」

「感受性が豊かだっていうのも困りものね……こんなことで涙してちゃ勿体ないよ。それに納得できないクジを引く程お人好しじゃなかったでしょ私?クジ運もよかったしね」

月華の右手がエルナの頭を撫で諭した。
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