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本編
本音 ⭐︎R-15
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森の中に強い風が吹き抜けた。
背後から高波に飲まれたかのような圧を全身で受け止める。
足元がふらふく。一人で立っていれば、間違いなく倒れ込んだだろう。
しかし月亜は今、カマルに両腕を掴まれてアルファのパワーに圧倒されている。
突風よりも、カマルの圧倒的な存在感に、月亜は内臓を握りつぶされたかのような圧を感じた。
カマルの目付きが変わった。こんな表情は初めて見る。
怒っているのとはまた違う。
例えるなら、獲物を狙った獣のような、逃げ出すことさえもできなくなるほどの圧で縛られたような感覚だ。
発情させられると思った瞬間、目を合わせてしまった。そこからは、一瞬も視線を逸らせられない。
カマルのアルファとしてのパワーは凄まじく、そのフェロモンは月亜を簡単に発情させた。
「はぁ……はぁ……」
呼吸が乱れ始めると、体の奥から熱を持ち始めた。とてもアルファには抗えない。
「ルア、私に言いたいことがあるだろう?」
「な……ない……」
「まだ、嘘を言うのか……。本音を言ってくれないのは悲しいよ、ルア?」
自分が勝手に不安に思っているだけのことで、カマルに心配をかけたくない。それでもカマルはアルファのフェロモンをより強くさせる。
「はぁっ……!! ぁあ……はぁ……」
オメガの性がアルファを求めて疼き始めた。正気じゃいられなくなる。カマルは月亜をこの状態にして本音を喋らせた。
「なぜ私と目を合わせない?」
「カマルさんが、綺麗で……緊張する……」
「ルア? 今更なぜ……」
「カマルさんは、王族で……俺は、庶民で……。カマルさんの……闇がなくなるほどに、その違いを思い知らされた……」
息切れしながら本音をぶちまけた。
「何を言い出すんだ、ルア……。そんなこと関係ないじゃないか……」
「関係あります。次期国王が、庶民の俺なんかと……番になるなんて……いいのかなって……思って……」
自分で言いながら惨めになっていた。頬に一筋の涙が流れた。
こんなことを言いながらも、アルファを求めている矛盾さにも呆れてしまう。所詮、自分はオメガなのだと痛感してしまう。
「ルア、何が言いたい? まさか、私と番になるのをやめるなんて言い出さないでくれよ?」
カマルも狼狽えていた。月亜がそんなことを考えているなんて微塵にも思っていなかった。
自分の感情ばかりぶつけていたんじゃないかと、悲しくなった。
「カマルさんは、カッコよくて、王子様で……強くて……俺なんか……俺なんか、釣り合いません」
ポロポロと溢れる本音に、ついに月亜は泣き出した。
「俺なんか……なんて言わないで、ルア。君ほど私の番に相応しい人など他にはいない。君以外の人となんて番になりたくない。あの時、私が言った気持ちが信じられないでいたの?」
忘れるわけがない。初めて森の中の温泉に行った帰り、カマルは月亜を「愛している」と言ってくれた。あの時は、何も疑わず素直に信じられた。
もしかすると、月亜自身があまり実感していなかったのかもしれない。
“カマル・オーディン”というこの国のトップに立つ人間だということを。人里離れた森の奥深くで、二人だけで過ごしているのが心地良すぎて、現実から目を背けていたのではないかと。
カマルが本来の姿を取り戻していくにつれ、月亜はとんでもない人に近づいてしまったのではないか……と不安に打ちひしがれた。
一度、本音を言ってしまえば、気持ちは言葉となって次々に溢れてくる。
カマルは月亜の言葉を聞くほどに顔色を失っていった。
「一人で、そんな不安と戦っていたなんて……君をそんなふうに悲しませるなんて……不甲斐ない」
「カマルさんが悪いのではありません。俺が……俺が初めから相応しい立場の人だったらって……思って……」
「ルア、立場など関係ない。どんな出会い方だったとしても、私はルアに惹かれていたと断言できる。こうしている間にも、ルアへの想いは募るばかりだ。私が信じられないなら、信じてもらえるまでこうするよ」
言うなり月亜の唇を奪う。
「んっ……ふぅ、ん……。カマルさ……」
カマルからのキスは甘く情熱的で、月亜の発情をさらに加速させる。
「君にしかこんなことしない。この先も、ずっとルアと共に生きていきたい。まだ私のことが信じられないか?」
カマルのことを信じてないわけではない。自分の自信のなさに全ての原因があるのだ。
それでもカマルからのキスは止むことなく降り注がれる。
「ルアの不安なんて、気にすることはない。番に身分など関係ないんだ。それを証拠に、私の母も元は平民なんだよ」
ニッコリと微笑んでカマルが言った。
「……ミッチェル王妃が?」
「そう。父のパレードを見に来ていた母を見た瞬間、お互いが『この人が番だ!』って気づいたそうだ。その後すぐに母を城へ迎え入れた。番はお互いを惹きつけ合う。そこに互いの気持ち以外に必要なものはない」
「じゃあ、俺がカマルさんと番になっても?」
「いいに決まっている。いや、ルアが番になってくれないと私が……」
「カマルさんが、どうかしたんですか?」
「……番になってくれるまで、ルアを監禁してしまいそうだ」
「っ!!?」
カマルが月亜を力の限り抱きしめた。
「本当に、一秒も離れたくないくらい、ルアが好きで好きでたまらない。私にだけ見せてくれる表情全て、独り占めしたい。君に触れただけで私はこんなにも昂るんだ」
抱きしめて体が密着している。月亜はカマルの中心が熱を孕んでいると気づき、ドキリとした。
発情しているのは自分だけではない。
「私をこんな状態にさせるのはルアしかいない」
「カマルさん……。俺、ずっとカマルさんを好きでいていいんですか?」
憂いの目でカマルの答えを乞う。
「当たり前だ! そうじゃないと私が困る。私たちは“運命の番”だろう」
一層強く口付けられた。
背後から高波に飲まれたかのような圧を全身で受け止める。
足元がふらふく。一人で立っていれば、間違いなく倒れ込んだだろう。
しかし月亜は今、カマルに両腕を掴まれてアルファのパワーに圧倒されている。
突風よりも、カマルの圧倒的な存在感に、月亜は内臓を握りつぶされたかのような圧を感じた。
カマルの目付きが変わった。こんな表情は初めて見る。
怒っているのとはまた違う。
例えるなら、獲物を狙った獣のような、逃げ出すことさえもできなくなるほどの圧で縛られたような感覚だ。
発情させられると思った瞬間、目を合わせてしまった。そこからは、一瞬も視線を逸らせられない。
カマルのアルファとしてのパワーは凄まじく、そのフェロモンは月亜を簡単に発情させた。
「はぁ……はぁ……」
呼吸が乱れ始めると、体の奥から熱を持ち始めた。とてもアルファには抗えない。
「ルア、私に言いたいことがあるだろう?」
「な……ない……」
「まだ、嘘を言うのか……。本音を言ってくれないのは悲しいよ、ルア?」
自分が勝手に不安に思っているだけのことで、カマルに心配をかけたくない。それでもカマルはアルファのフェロモンをより強くさせる。
「はぁっ……!! ぁあ……はぁ……」
オメガの性がアルファを求めて疼き始めた。正気じゃいられなくなる。カマルは月亜をこの状態にして本音を喋らせた。
「なぜ私と目を合わせない?」
「カマルさんが、綺麗で……緊張する……」
「ルア? 今更なぜ……」
「カマルさんは、王族で……俺は、庶民で……。カマルさんの……闇がなくなるほどに、その違いを思い知らされた……」
息切れしながら本音をぶちまけた。
「何を言い出すんだ、ルア……。そんなこと関係ないじゃないか……」
「関係あります。次期国王が、庶民の俺なんかと……番になるなんて……いいのかなって……思って……」
自分で言いながら惨めになっていた。頬に一筋の涙が流れた。
こんなことを言いながらも、アルファを求めている矛盾さにも呆れてしまう。所詮、自分はオメガなのだと痛感してしまう。
「ルア、何が言いたい? まさか、私と番になるのをやめるなんて言い出さないでくれよ?」
カマルも狼狽えていた。月亜がそんなことを考えているなんて微塵にも思っていなかった。
自分の感情ばかりぶつけていたんじゃないかと、悲しくなった。
「カマルさんは、カッコよくて、王子様で……強くて……俺なんか……俺なんか、釣り合いません」
ポロポロと溢れる本音に、ついに月亜は泣き出した。
「俺なんか……なんて言わないで、ルア。君ほど私の番に相応しい人など他にはいない。君以外の人となんて番になりたくない。あの時、私が言った気持ちが信じられないでいたの?」
忘れるわけがない。初めて森の中の温泉に行った帰り、カマルは月亜を「愛している」と言ってくれた。あの時は、何も疑わず素直に信じられた。
もしかすると、月亜自身があまり実感していなかったのかもしれない。
“カマル・オーディン”というこの国のトップに立つ人間だということを。人里離れた森の奥深くで、二人だけで過ごしているのが心地良すぎて、現実から目を背けていたのではないかと。
カマルが本来の姿を取り戻していくにつれ、月亜はとんでもない人に近づいてしまったのではないか……と不安に打ちひしがれた。
一度、本音を言ってしまえば、気持ちは言葉となって次々に溢れてくる。
カマルは月亜の言葉を聞くほどに顔色を失っていった。
「一人で、そんな不安と戦っていたなんて……君をそんなふうに悲しませるなんて……不甲斐ない」
「カマルさんが悪いのではありません。俺が……俺が初めから相応しい立場の人だったらって……思って……」
「ルア、立場など関係ない。どんな出会い方だったとしても、私はルアに惹かれていたと断言できる。こうしている間にも、ルアへの想いは募るばかりだ。私が信じられないなら、信じてもらえるまでこうするよ」
言うなり月亜の唇を奪う。
「んっ……ふぅ、ん……。カマルさ……」
カマルからのキスは甘く情熱的で、月亜の発情をさらに加速させる。
「君にしかこんなことしない。この先も、ずっとルアと共に生きていきたい。まだ私のことが信じられないか?」
カマルのことを信じてないわけではない。自分の自信のなさに全ての原因があるのだ。
それでもカマルからのキスは止むことなく降り注がれる。
「ルアの不安なんて、気にすることはない。番に身分など関係ないんだ。それを証拠に、私の母も元は平民なんだよ」
ニッコリと微笑んでカマルが言った。
「……ミッチェル王妃が?」
「そう。父のパレードを見に来ていた母を見た瞬間、お互いが『この人が番だ!』って気づいたそうだ。その後すぐに母を城へ迎え入れた。番はお互いを惹きつけ合う。そこに互いの気持ち以外に必要なものはない」
「じゃあ、俺がカマルさんと番になっても?」
「いいに決まっている。いや、ルアが番になってくれないと私が……」
「カマルさんが、どうかしたんですか?」
「……番になってくれるまで、ルアを監禁してしまいそうだ」
「っ!!?」
カマルが月亜を力の限り抱きしめた。
「本当に、一秒も離れたくないくらい、ルアが好きで好きでたまらない。私にだけ見せてくれる表情全て、独り占めしたい。君に触れただけで私はこんなにも昂るんだ」
抱きしめて体が密着している。月亜はカマルの中心が熱を孕んでいると気づき、ドキリとした。
発情しているのは自分だけではない。
「私をこんな状態にさせるのはルアしかいない」
「カマルさん……。俺、ずっとカマルさんを好きでいていいんですか?」
憂いの目でカマルの答えを乞う。
「当たり前だ! そうじゃないと私が困る。私たちは“運命の番”だろう」
一層強く口付けられた。
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