BLツイノベ短編集

亜沙美多郎

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女装趣味の高校生Ω、クラスのカースト1位の男に迫られています。

「あれ?もしかしてお前って、同じクラスの?」
 街で偶然会ってしまった。
 カースト上位グループのアルファ軍団。
 その中でもトップに君臨する、学年一のチャラ男。

 どうしてバレたのか。こんな人混みで。

 女装をしている自分に。

 膝丈のワンピースにハイヒール。ロングヘアのカツラにバッチリメイク。
 見えてはいないが、下着も女性の物を着用している。

 (いや、きっと適当に言っているだけだ。そもそも学校でも目立たないグループに属している、オメガの自分を認知しているはずはない)

 話しかけられたと気付かないふりをして立ち去ろうとするが、腕を掴まれ引き止められた。

「何で、女の格好なんてしてるんだ?」
「あの……人違いじゃないですか?」
「クラスメイトくらい知ってるよ。化粧って自分でやんの?」
「……離してください」
「質問に答えてくださぁーい」
「ただの、罰ゲームです」
「すぐにバレる嘘なんて意味ねぇよ。どう見ても手慣れてんじゃん」

 待ち合わせの時間が近づいている。
 焦りが出てきた。

 休みの日にはマッチングアプリで、その場限りの恋愛を楽しんでいる。
 女装が趣味だとはプロフィールに書いてある。
 それを望んでくれる人を選んで会っていた。

 自分のような性癖の男のオメガを、本気の恋愛対象として見てくれる人などいない。
 最初から期待していない。

 それでもその場限りだと、途端に有りになる。誰でも女装に興味はあるのだ。

 マッチングアプリで初めて会った人から「似合ってる」と言われ、もっといろんな人に見られたいと欲が出た。

 それからは、ほとんど毎週末こうしてデートを楽しんでいる。

 クラスメイトは興味津々で質問攻めにする。

「いつから女装しているのか」
「街には毎週来てるのか」
「もしかして、ゲイ?」

 笑いながら言うものだから、頬を引っ叩いてやった。

「うるさい! やめてよ街中で。もう向こう行け」
「は? そんな怒ることかよ」

 機嫌を悪くしながらも立ち去るクラスメイト。
 後味は悪いが何とか約束の時間に間に合った。

 初対面の人は大抵が優しい。
 お互い気を使い、女装しているだけでエスコートしてくれる。
 こんな優越感は他では味わえない。あんな奴に邪魔されないで良かったと安堵した。

 予定通り、満足な1日を過ごした。

 しかし……。
 翌日、高校の正門前に立っているのはクラスメイトだった。
 目を合わさないよう通り過ぎようとしたところを呼び止められる。

「なぁ、ちょっと来て」
 無理矢理連れて行かれた体育館裏。
「昨日の奴ってお前だろ?」
「なんの……話ですか?」
「だから、その嘘は通用しないんだって。今ハッキリ分かった。同じ甘い匂いだよ、昨日の奴と。それに、首元のホクロだって、全く同じだ」

 脅かされるのだろうかと身構える。

「なぁ、次は俺と遊んでよ」
「え? 何で僕なんか。女子を敵に回すようなことしたくありません」
「俺が遊びたいっつってるだろ。あのさ、ぶっちゃけ最近、女とヤってもあんま気持ちいいって思えなくてさ」
「は? 僕を抱くって宣言したような物ですよ!?」
「そういう出会い系じゃないの?」
「僕はただ、デートを楽しんでいるだけです」

 大嘘だ。
 本当はほとんどの確率で最後までしている。

 オメガの自分は潤滑油が要らないくらいよく濡れるから、毎回喜んでもらえる。何よりも承認欲求が満たされる時間。

 こんな自分をクラスメイトになんて知られたくない。

「まぁ、いいじゃん。俺の相談に乗ってよ。そしたらお互いの秘密を共有できるだろ?」

 上手く丸め込まれたように思うが、聞く体勢を取る。

「昨日あんたの女装見た時、可愛いって思ったんだよね。一瞬分からなかったけど、教室でいつも匂ってる香りがしたから、間違いないって確信した」
「あなたは、男との行為に抵抗ないんですか?」
「男は初めてだけど、あの女装なら抱ける自信ある」

 一体その自信がどこから来るのか……ノンケの人なんて、男の体を見たら引くに決まっている。いくら細くても、女の体とは違う。

 クラスメイトはオメガの意見も聞かず「今日の放課後デートな」と言って去ってしまった。

 冗談と思っていたが、本当に放課後になると誘拐するように連れ去られる。

「お前ん家行こうぜ」
 移動するや否や女装しろという。

「ところで今日って家に親いる?」
「いえ、共働きなので夜までいません……けど……」
「マジ?ラッキー」

 早速、女装の服からメイクの系統とか、事細かく指示してくる。

「髪はそのままでいいよ。ショートカットが好きだから」
「……はいはい。って!! いきなり抱きつくなよ」
「だってさ、本当に俺の理想通りになってんだもん」
「カツラも被らなきゃ、正真正銘、男にしか見えないだろ」
「俺がいいって言ったらいいんだよ。キスさせて」
「んっ」
 強引にキスされる。

 好き放題貪るのかと思っていたが、想像できないほど官能的で情熱的な口付けだった。
 一瞬で体の力が抜ける。

 これが学年一のチャラ男のキス……流石に上手い。

 オメガの性が疼く。
 最後までしてほしいと、本能が訴える。
 クラスメイトのシャツを掴んで恍惚とした顔を向けた。

「いいよ。全部俺に任せろ」

 スカートの裾から大きな手が滑り込んでくる。
 腰までたどり着いた時、クラスメイトがピタリと止まった。

「え、これって……」
「い、いつもデートする時はこうだから。一応」
「よく見せて!!」

 ベッドに仰向けで倒すと、遠慮なく脚を広げて覗き込む。脚の間には、面積の少ない女性用の下着。

「ほらこんなの気持ち悪いだろ?」
 服を着てる時はノリと勢いで大丈夫かもしれないが、男の象徴をれば正気に戻って帰ると思ってた。それがとんだ誤算だった。

「お前、いつもこんなエロいの穿いてんの?」
「わっ、バカ、やめろよ」
「自分から煽っといてそれはないだろ」
「引くだろ、普通」
「肌の色、白いから良く似合ってる」
「み、見るなぁ……」

 クラスメイトは萎えるどころかさらに欲情している。今までの誰よりも激しくオメガを求めてくる。

「服、脱げよ。せっかく綺麗なのに汚れる」
「現実を見せたくない」
「一番大事なところ見ただろ。でも俺、スゲー興奮してる。お前の中、気持ちいい」

 本当は、自分も気持ちいいと言いたいが、恥ずかしくて唇を噛む。

 クラスメイトの律動は苛烈を極め、オメガをうつ伏せにすると、思い切り頸を噛んだ。

「いたい!!」
「あ、わりぃ。噛んじゃった」
「噛んじゃった……じゃ、ないだろう! 発情期だったら番になってたんだぞ! ノリですることじゃないだろうが!」

 真剣に怒りを露わにするオメガに、クラスメイトは吹き出す。

「笑い事じゃない!!」
「いや、ごめん。なんか嬉しくて」
「怒られて嬉しいなんて、Mなの?」
「いや、俺のことを怒ってくれる人なんていないからさ。俺、やっぱお前のこと好きだわ。昨日から、ずっと頭から離れねぇの」
「そんな印象に残ることしてません」
「したよ。思い切りほっぺ引っ叩かれた」
「ぐっ。その節はすみません」

 良いんだと頭を振って、クラスメイトは自分のことを話し始めた。

「俺、子供の頃からイケメンだったんだよね。スポーツでも何でも直ぐに出来たし、周りからチヤホヤされて育ったんだ」
「嫌味ですか?」
「そうじゃなくってさ。その内、俺がアルファだと分かると、周りは一層俺を崇めたたえて、友達は俺に取り繕うようになった。ベータの両親はより甘やかすようなった。皆、俺の言いなり。俺の言うことが全て。顔色伺ってご機嫌とって、誰も普通になんて接してくれない」

 いつだってクラスメイトの周りには人が集まっていて楽しいそうにしている。
 側から見れば派手な生活を送ってそうだ。でもそれは全て、上部だけの付き合いだとクラスメイトは言う。

「お前は俺の前でも自然体でいてくれる。それに、お前の匂いも、ずっと気になってた」

 教室でいる時もこの匂いが嗅ぎたくてさり気なく近くに居たと言った。
 今思えば、オメガの匂いが精神安定剤のように落ち着いたのだと。そんなふうに言われると、照れくさい。

「僕も。女装を見られたのがあなたで良かったと思ってます」
「それ、もう俺の前だけにしろよ」
「分かりました……」

 いつの間にか、付き合う流れになっているのに驚きながらも、満更じゃない自分がいる。
 クラスメイトに抱きしめられた。

「高校卒業したら、番になろう」
「はい」
 初めて見る笑顔。多分、オメガも同じ顔をしている。

「あのさ、もう一回ヤっていい?」
「……いいよ」



 おしまい。
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