85 / 105
4章
81 巨大な門扉
早朝に起きて再び走り出し森が切れて、夕方にユミル国の巨大な門扉に着きました。周りは背の高い漆喰壁で覆われて何も見えません。まさか王国ごと囲んでいるとは思えませんが、かなりの技術力です。
門扉には数人の衛士さんがいて、馬車はそこで止まります。
「タイタン王国、国王ならびにセリアン元国王をお連れしました。こちらが招待状になります」
アリスさんが招待状を差し出すと、衛士さんが魔法石を軽く当てます。すると透かし魔法陣が出てきました。こんな炙り出しみたいな陣があるなんて、ユミル国の書物庫が見てみたいです。
「こちらの女児は?」
衛士さんがガリウスの膝の上の僕を見ます。
「タイタン国預かりの成人前の小人だ。儀式に間に合うか?」
ガリウスが低い声を出しますと、衛士さんが畏ってしまいました。
「すぐに引き馬を変えます。月の頃に始まりますので、大丈夫かと」
馬を変えられて、僕らは門扉の前に行きました。ガリウスの二倍はある門扉は白亜の石の一枚板のように見えます。ガルド神の扉と同じです。
後ろでラオウが嘶きます。トキもケンもついていきたそうにしていました。
「開門!」
重そうな石の扉がゴゴゴ……と地響きを立てて開き真っ暗な道を衛士さんが御者を務めて進みます。チリ……と空気の流れが痛いです。
「これ、転移陣です」
幾ばくもいかないうちに光りに包まれ、そして光が消えます。すると整然とした街並みに驚きました。
「王都にようこそ。今から神降しの神殿に向かいます」
僕は信じられない気持ちで一杯です。かつての古代ローマ水道のアーチが目の前にあるのです。石造りの川が浄水として流れ高低差を利用し陶器のパイプが家の煮炊き場に引き入れられています。
噴水がきらきらと噴き出し、水をふんだんに使った公衆浴場があり、巨人たちは自由に中央広場を歩いています。服装もストールを手にした人が多いのです。
「これがユミル……」
僕が知り得る古代ローマ帝国の末期の様子そのもので、ユミルの巨人は背が二メートルを少し超えるくらいの痩せ型の人が多く、
「肌の色が……」
僕は思わず呟きました。タイタン国やギガス国の褐色の肌よりも少し明るめの人が多いのです。
「王都は貴族ばかりだからです。高級貴族と王族は肌が白いですよ。お嬢さんほど白い人は王族くらいですね」
衛士さんが首を出して外を見ている僕に話しかけてくれました。ああ、衛士さんは褐色ですから、貴族とは違うのですね。
中世ヨーロッパでは上水下水道機能が廃れてしまい、ペストやらコレラやらが流行りましたが、ユミル国は中世ヨーロッパの堅牢な建物を作り、その上下水道を川の流れと高低差を使って作り出しているようです。下水道は地下になるのでしょう。
この技術力は……ただ事ではありません。
王城はタイタンと同じ中世式の石造りで、その横に馬車が停まりました。小丘をくり抜いた場所です。オーディトリアム式の劇場みたいなバルコニーがあり、アリーナステージでは小人族の女の子たちが踊り、低いストールでは神に捧げる楽曲が奏でられています。ロイヤルボッスが最上階にあり、天空に月が輝いています。中世ヨーロッパと古代ローマ帝国が混ざり合う、そんな感じがするのです。
ワイン樽を贈り物にして、セフェムとガリウスがバルコニーに招かれ、僕はアリーナステージに連れて行かれました。
「大丈夫、踊るだけでいいの」
「はい、笹を持って」
ステージ下には二十人くらいの小人族の女の子達がいます。泣いている小さい子たちの視線の先には、性奴隷として貴族に弄ばれているギガス国の一つ目の女の子がいる一階桟敷があります。
「小人族には手を出さないわ」
小人族の女の子達を懸命に慰める声……まさか……
「テハナ、マグリタ」
僕と同じ茶銀の緩い長い巻き髪頭が同時に僕に向きました。瞳の色が違います。テハナは赤、マグリタは青なのです。ドワフ族の白いチュニックドレスに金糸の刺繍が見事です。
「タークに……姉様。そのお姿は王様のご意向?変態な王様ね」
テハナ、違いますよ。
「ターク姉様、男伴侶に女装をさせるなんて、なかなか良いご趣味ね、王様は」
マグリタ、すごく失礼ですよ。
「奴隷さんを助けるための潜入です」
「さすがターク姉様、素敵」
「「それでこそ、私たちのターク姉様です」」
双子姫のよくわからない僕の英雄視はなんなのでしょう。
僕は笹を持ってアリーナステージに立ちました。テハナとマグリタと数人の小人族の女の子達も上がります。
笹振りは小人族の初夏の儀式です。単純に左右に両手で掴んだ一振りの笹の葉を振るだけなんです。七夕みたいな感じなんですが、穢れを知らない成人前の未婚の女の子達の可愛らしい儀式に、成人して久しい既婚の男子が混ざっているのは、なんか禍々しいですが仕方ありません。女の子に見えるからいいのです。
笹の葉を左右に振りながら、周りを見ます。一階の桟敷では性奴隷と野合まがいの交合する中級貴族がいます。随分酔っていて複数の性奴隷を従える貴族もいるようです。息を飲んだり啜り泣きのような声が聞こえてきました。これでガルド神様へのマナ捧げになるのかと思いましたが、気にはマナが宿ります。精子を出すことはマナを排出することにもつながり、絶頂感を得る体内や子宮はマナを大気に巡らせる役目をします。間違いなく儀式の一環なのですが、小さい女の子にその儀式を見せないで欲しいです。
二階は高級貴族と招いた王の席になります。ガリウスとセフェムが見下ろしています。タイタン国の桟敷にも性奴隷さんが見えました。お触りは禁止ですよ、ガリウス、セフェム。
小人族の反対側には貴族の女の子が優雅に座っています。
「あの巨人族の女の子達は、神降しの依代ターク姉様」
赤目を煌めかせテハナが僕の横で笹を振りながら教えてくれました。
「ガルド神が天空から降りて依代に入ると、神降し。その後は叡智の間にてユミル王に叡智を授けるの」
青い瞳を流し目にしてマグリタが僕にひそりと話しました。
笹踊りがピークになり、神官長さんが迫り出した台に乗って出てきます。小人族の歌が始まります。
「召しませ、召しませ、神よ」
音楽に合わせて幼い女の子が歌います。
「ターク姉様も」
テハナ、成人男子の僕の声は……。
「全員です!」
マグリタ、面白がっていますね。
神官長さんが神降しの儀式を始め、アリーナを囲む四つの銀杯に高級神官さんがマナを注いでいます。
小人族の女の子全員がアリーナに上がり、笹を振りながら歌います。僕もテハナとマグリタに挟まれて歌います。
「召しませ、召しませ、神よ。召しませ、召しませ、神よ」
僕らの頭を貫く光に顔を上げると、月から巨大な光球が降ってきて、アリーナを包みました。
一番上の桟敷から、
「神が降りたぞ」
と声がします。白い顔の巨人が身体を乗り出しています。
「あれ、ユミル国の王様」
テハナが教えてくれましたが、あの人レーダー伯領で転移陣を使っていた人です!なんてことを!残念すぎるご造作の王様自ら、手を染めていたのですね。ガリウスの方が何万倍も立派です。比べるまでもないのですが。
「ガルド神よ!依代を用意した!依代に憑きて我がユミルに新たな叡智を!」
巨大な光はガルド神らしいです。僕らはアリーナを降りて、次に依代の貴族の女の子達がアリーナに上がります。アリーナを取り巻く魔法石が一瞬にして消えました。
「召しませ、召しませ、神よ。召しませ、召しませ、神よ」
このうちの誰かに依代して叡智を授けるのです。光球がアリーナ全体を覆い発光して何も見えません。この光は……マナ!濃厚なマナの光で包まれ、小人族の女の子全員が倒れていきます。アリーナの女の子たちも一人、また一人と倒れていき、僕も徐々に力が抜けて意識を失いました。
門扉には数人の衛士さんがいて、馬車はそこで止まります。
「タイタン王国、国王ならびにセリアン元国王をお連れしました。こちらが招待状になります」
アリスさんが招待状を差し出すと、衛士さんが魔法石を軽く当てます。すると透かし魔法陣が出てきました。こんな炙り出しみたいな陣があるなんて、ユミル国の書物庫が見てみたいです。
「こちらの女児は?」
衛士さんがガリウスの膝の上の僕を見ます。
「タイタン国預かりの成人前の小人だ。儀式に間に合うか?」
ガリウスが低い声を出しますと、衛士さんが畏ってしまいました。
「すぐに引き馬を変えます。月の頃に始まりますので、大丈夫かと」
馬を変えられて、僕らは門扉の前に行きました。ガリウスの二倍はある門扉は白亜の石の一枚板のように見えます。ガルド神の扉と同じです。
後ろでラオウが嘶きます。トキもケンもついていきたそうにしていました。
「開門!」
重そうな石の扉がゴゴゴ……と地響きを立てて開き真っ暗な道を衛士さんが御者を務めて進みます。チリ……と空気の流れが痛いです。
「これ、転移陣です」
幾ばくもいかないうちに光りに包まれ、そして光が消えます。すると整然とした街並みに驚きました。
「王都にようこそ。今から神降しの神殿に向かいます」
僕は信じられない気持ちで一杯です。かつての古代ローマ水道のアーチが目の前にあるのです。石造りの川が浄水として流れ高低差を利用し陶器のパイプが家の煮炊き場に引き入れられています。
噴水がきらきらと噴き出し、水をふんだんに使った公衆浴場があり、巨人たちは自由に中央広場を歩いています。服装もストールを手にした人が多いのです。
「これがユミル……」
僕が知り得る古代ローマ帝国の末期の様子そのもので、ユミルの巨人は背が二メートルを少し超えるくらいの痩せ型の人が多く、
「肌の色が……」
僕は思わず呟きました。タイタン国やギガス国の褐色の肌よりも少し明るめの人が多いのです。
「王都は貴族ばかりだからです。高級貴族と王族は肌が白いですよ。お嬢さんほど白い人は王族くらいですね」
衛士さんが首を出して外を見ている僕に話しかけてくれました。ああ、衛士さんは褐色ですから、貴族とは違うのですね。
中世ヨーロッパでは上水下水道機能が廃れてしまい、ペストやらコレラやらが流行りましたが、ユミル国は中世ヨーロッパの堅牢な建物を作り、その上下水道を川の流れと高低差を使って作り出しているようです。下水道は地下になるのでしょう。
この技術力は……ただ事ではありません。
王城はタイタンと同じ中世式の石造りで、その横に馬車が停まりました。小丘をくり抜いた場所です。オーディトリアム式の劇場みたいなバルコニーがあり、アリーナステージでは小人族の女の子たちが踊り、低いストールでは神に捧げる楽曲が奏でられています。ロイヤルボッスが最上階にあり、天空に月が輝いています。中世ヨーロッパと古代ローマ帝国が混ざり合う、そんな感じがするのです。
ワイン樽を贈り物にして、セフェムとガリウスがバルコニーに招かれ、僕はアリーナステージに連れて行かれました。
「大丈夫、踊るだけでいいの」
「はい、笹を持って」
ステージ下には二十人くらいの小人族の女の子達がいます。泣いている小さい子たちの視線の先には、性奴隷として貴族に弄ばれているギガス国の一つ目の女の子がいる一階桟敷があります。
「小人族には手を出さないわ」
小人族の女の子達を懸命に慰める声……まさか……
「テハナ、マグリタ」
僕と同じ茶銀の緩い長い巻き髪頭が同時に僕に向きました。瞳の色が違います。テハナは赤、マグリタは青なのです。ドワフ族の白いチュニックドレスに金糸の刺繍が見事です。
「タークに……姉様。そのお姿は王様のご意向?変態な王様ね」
テハナ、違いますよ。
「ターク姉様、男伴侶に女装をさせるなんて、なかなか良いご趣味ね、王様は」
マグリタ、すごく失礼ですよ。
「奴隷さんを助けるための潜入です」
「さすがターク姉様、素敵」
「「それでこそ、私たちのターク姉様です」」
双子姫のよくわからない僕の英雄視はなんなのでしょう。
僕は笹を持ってアリーナステージに立ちました。テハナとマグリタと数人の小人族の女の子達も上がります。
笹振りは小人族の初夏の儀式です。単純に左右に両手で掴んだ一振りの笹の葉を振るだけなんです。七夕みたいな感じなんですが、穢れを知らない成人前の未婚の女の子達の可愛らしい儀式に、成人して久しい既婚の男子が混ざっているのは、なんか禍々しいですが仕方ありません。女の子に見えるからいいのです。
笹の葉を左右に振りながら、周りを見ます。一階の桟敷では性奴隷と野合まがいの交合する中級貴族がいます。随分酔っていて複数の性奴隷を従える貴族もいるようです。息を飲んだり啜り泣きのような声が聞こえてきました。これでガルド神様へのマナ捧げになるのかと思いましたが、気にはマナが宿ります。精子を出すことはマナを排出することにもつながり、絶頂感を得る体内や子宮はマナを大気に巡らせる役目をします。間違いなく儀式の一環なのですが、小さい女の子にその儀式を見せないで欲しいです。
二階は高級貴族と招いた王の席になります。ガリウスとセフェムが見下ろしています。タイタン国の桟敷にも性奴隷さんが見えました。お触りは禁止ですよ、ガリウス、セフェム。
小人族の反対側には貴族の女の子が優雅に座っています。
「あの巨人族の女の子達は、神降しの依代ターク姉様」
赤目を煌めかせテハナが僕の横で笹を振りながら教えてくれました。
「ガルド神が天空から降りて依代に入ると、神降し。その後は叡智の間にてユミル王に叡智を授けるの」
青い瞳を流し目にしてマグリタが僕にひそりと話しました。
笹踊りがピークになり、神官長さんが迫り出した台に乗って出てきます。小人族の歌が始まります。
「召しませ、召しませ、神よ」
音楽に合わせて幼い女の子が歌います。
「ターク姉様も」
テハナ、成人男子の僕の声は……。
「全員です!」
マグリタ、面白がっていますね。
神官長さんが神降しの儀式を始め、アリーナを囲む四つの銀杯に高級神官さんがマナを注いでいます。
小人族の女の子全員がアリーナに上がり、笹を振りながら歌います。僕もテハナとマグリタに挟まれて歌います。
「召しませ、召しませ、神よ。召しませ、召しませ、神よ」
僕らの頭を貫く光に顔を上げると、月から巨大な光球が降ってきて、アリーナを包みました。
一番上の桟敷から、
「神が降りたぞ」
と声がします。白い顔の巨人が身体を乗り出しています。
「あれ、ユミル国の王様」
テハナが教えてくれましたが、あの人レーダー伯領で転移陣を使っていた人です!なんてことを!残念すぎるご造作の王様自ら、手を染めていたのですね。ガリウスの方が何万倍も立派です。比べるまでもないのですが。
「ガルド神よ!依代を用意した!依代に憑きて我がユミルに新たな叡智を!」
巨大な光はガルド神らしいです。僕らはアリーナを降りて、次に依代の貴族の女の子達がアリーナに上がります。アリーナを取り巻く魔法石が一瞬にして消えました。
「召しませ、召しませ、神よ。召しませ、召しませ、神よ」
このうちの誰かに依代して叡智を授けるのです。光球がアリーナ全体を覆い発光して何も見えません。この光は……マナ!濃厚なマナの光で包まれ、小人族の女の子全員が倒れていきます。アリーナの女の子たちも一人、また一人と倒れていき、僕も徐々に力が抜けて意識を失いました。
あなたにおすすめの小説
植物の声が聞こえる出稼ぎΩ、冷徹α宰相に買われて枯れた領地を蘇らせる〜不器用な旦那様の重すぎる溺愛からは逃げられません〜
水凪しおん
BL
辺境の村で多額の借金を背負わされ、王都へ出稼ぎにきたΩの農夫・ロイ。
彼には、植物に触れるだけで命を芽吹かせる「聖なる指先」という不思議な力があった。
ある日、路地裏で枯れかけた草に花を咲かせたところを、国の実権を握る冷徹なαの若き宰相・アレクに見初められる。
「お前のその指で、私の領地の死んだ土を蘇らせろ」
借金全額肩代わりという破格の条件で、彼に買われることになったロイ。
身分が違いすぎる相手に萎縮するロイだったが、共に植物を育て、領地を救うために奔走するうち、冷酷な仮面の下に隠されたアレクの不器用な優しさと、領民を想う熱い心に惹かれていく。
しかし、自分の存在がアレクの経歴に泥を塗ると恐れたロイは、彼の元から逃げ出してしまい……。
「私が欲しいのは、お前だけだ。誰にも渡さない」
土にまみれたΩと、孤独を抱えた氷の宰相。
枯れ果てた大地に奇跡の花を咲かせる、身分差・異世界オメガバース・溺愛ファンタジー!
※ボーイズラブ作品であり、設定に基づく強い執着や微細な性的ニュアンスを含む表現がございます。15歳未満の方はご遠慮ください。
記憶を失っている間に推しの婚約者になっていました
由香
BL
事故で記憶を失っていたルカは、ある日突然思い出す。
ここが前世で夢中になっていた恋愛ゲーム世界だということを。
しかも自分は、最推しだった第一王子アルベルトの婚約者になっていた。
甘すぎる距離感。
慣れたように落とされるキス。
そして見え隠れする、王子の重すぎる執着。
忘れていた恋を、もう一度始める貴族学園BL。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
捨てられおじさん、魔王の嫁になる。
ごぶーまる
BL
魔王討伐パーティの一員だった傭兵メグイは、故郷の復興を条件に戦っていた。
だが王室はその約束を反故にし、仲間たちもまた、魔王軍の襲撃から逃れるためにメグイを囮にして逃げ出す。
生け捕りにされたメグイが連れていかれた先で出会ったのは、どう見ても魔王らしくない、ポンコツ気味の若き魔王チハタだった。
捕虜の扱い方も、尋問の仕方もわからないチハタは、メグイにお茶を淹れ、夕食を共にし、挙げ句の果てには「僕のお嫁さんになる?」と言い出す。
しかしチハタには、父である先代魔王ブラッドヘルによって刻まれた、ある秘密があった。
捨てられたおじさん傭兵と、魔王として生まれた若者。
孤独な二人が出会い、たった一晩で国の運命を変えてしまう、ファンタジーBL読み切り。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。