巨人族の1/3の花嫁〜王様を一妃様と二妃様と転生小人族の僕の三妃で幸せにします〜〈完結〉

クリム

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4章

81 巨大な門扉

 早朝に起きて再び走り出し森が切れて、夕方にユミル国の巨大な門扉に着きました。周りは背の高い漆喰壁で覆われて何も見えません。まさか王国ごと囲んでいるとは思えませんが、かなりの技術力です。

 門扉には数人の衛士さんがいて、馬車はそこで止まります。

「タイタン王国、国王ならびにセリアン元国王をお連れしました。こちらが招待状になります」

 アリスさんが招待状を差し出すと、衛士さんが魔法石を軽く当てます。すると透かし魔法陣が出てきました。こんな炙り出しみたいな陣があるなんて、ユミル国の書物庫が見てみたいです。

「こちらの女児は?」

 衛士さんがガリウスの膝の上の僕を見ます。

「タイタン国預かりの成人前の小人だ。儀式に間に合うか?」

 ガリウスが低い声を出しますと、衛士さんが畏ってしまいました。

「すぐに引き馬を変えます。月の頃に始まりますので、大丈夫かと」

 馬を変えられて、僕らは門扉の前に行きました。ガリウスの二倍はある門扉は白亜の石の一枚板のように見えます。ガルド神の扉と同じです。

 後ろでラオウが嘶きます。トキもケンもついていきたそうにしていました。

「開門!」

 重そうな石の扉がゴゴゴ……と地響きを立てて開き真っ暗な道を衛士さんが御者を務めて進みます。チリ……と空気の流れが痛いです。

「これ、転移陣です」

 幾ばくもいかないうちに光りに包まれ、そして光が消えます。すると整然とした街並みに驚きました。

「王都にようこそ。今から神降しの神殿に向かいます」

 僕は信じられない気持ちで一杯です。かつての古代ローマ水道のアーチが目の前にあるのです。石造りの川が浄水として流れ高低差を利用し陶器のパイプが家の煮炊き場に引き入れられています。

 噴水がきらきらと噴き出し、水をふんだんに使った公衆浴場があり、巨人たちは自由に中央広場を歩いています。服装もストールを手にした人が多いのです。

「これがユミル……」

 僕が知り得る古代ローマ帝国の末期の様子そのもので、ユミルの巨人は背が二メートルを少し超えるくらいの痩せ型の人が多く、

「肌の色が……」

 僕は思わず呟きました。タイタン国やギガス国の褐色の肌よりも少し明るめの人が多いのです。

「王都は貴族ばかりだからです。高級貴族と王族は肌が白いですよ。お嬢さんほど白い人は王族くらいですね」

 衛士さんが首を出して外を見ている僕に話しかけてくれました。ああ、衛士さんは褐色ですから、貴族とは違うのですね。

 中世ヨーロッパでは上水下水道機能が廃れてしまい、ペストやらコレラやらが流行りましたが、ユミル国は中世ヨーロッパの堅牢な建物を作り、その上下水道を川の流れと高低差を使って作り出しているようです。下水道は地下になるのでしょう。

 この技術力は……ただ事ではありません。

 王城はタイタンと同じ中世式の石造りで、その横に馬車が停まりました。小丘をくり抜いた場所です。オーディトリアム式の劇場みたいなバルコニーがあり、アリーナステージでは小人族の女の子たちが踊り、低いストールでは神に捧げる楽曲が奏でられています。ロイヤルボッスが最上階にあり、天空に月が輝いています。中世ヨーロッパと古代ローマ帝国が混ざり合う、そんな感じがするのです。

 ワイン樽を贈り物にして、セフェムとガリウスがバルコニーに招かれ、僕はアリーナステージに連れて行かれました。

「大丈夫、踊るだけでいいの」

「はい、笹を持って」

 ステージ下には二十人くらいの小人族の女の子達がいます。泣いている小さい子たちの視線の先には、性奴隷として貴族に弄ばれているギガス国の一つ目の女の子がいる一階桟敷があります。

「小人族には手を出さないわ」

 小人族の女の子達を懸命に慰める声……まさか……

「テハナ、マグリタ」

 僕と同じ茶銀の緩い長い巻き髪頭が同時に僕に向きました。瞳の色が違います。テハナは赤、マグリタは青なのです。ドワフ族の白いチュニックドレスに金糸の刺繍が見事です。

「タークに……姉様。そのお姿は王様のご意向?変態な王様ね」

 テハナ、違いますよ。

「ターク姉様、男伴侶に女装をさせるなんて、なかなか良いご趣味ね、王様は」

 マグリタ、すごく失礼ですよ。

「奴隷さんを助けるための潜入です」

「さすがターク姉様、素敵」

「「それでこそ、私たちのターク姉様です」」

 双子姫のよくわからない僕の英雄視はなんなのでしょう。

 僕は笹を持ってアリーナステージに立ちました。テハナとマグリタと数人の小人族の女の子達も上がります。

 笹振りは小人族の初夏の儀式です。単純に左右に両手で掴んだ一振りの笹の葉を振るだけなんです。七夕みたいな感じなんですが、穢れを知らない成人前の未婚の女の子達の可愛らしい儀式に、成人して久しい既婚の男子が混ざっているのは、なんか禍々しいですが仕方ありません。女の子に見えるからいいのです。

 笹の葉を左右に振りながら、周りを見ます。一階の桟敷では性奴隷と野合まがいの交合する中級貴族がいます。随分酔っていて複数の性奴隷を従える貴族もいるようです。息を飲んだり啜り泣きのような声が聞こえてきました。これでガルド神様へのマナ捧げになるのかと思いましたが、気にはマナが宿ります。精子を出すことはマナを排出することにもつながり、絶頂感を得る体内や子宮はマナを大気に巡らせる役目をします。間違いなく儀式の一環なのですが、小さい女の子にその儀式を見せないで欲しいです。

 二階は高級貴族と招いた王の席になります。ガリウスとセフェムが見下ろしています。タイタン国の桟敷にも性奴隷さんが見えました。お触りは禁止ですよ、ガリウス、セフェム。

 小人族の反対側には貴族の女の子が優雅に座っています。

「あの巨人族の女の子達は、神降しの依代よりしろターク姉様」

 赤目を煌めかせテハナが僕の横で笹を振りながら教えてくれました。

「ガルド神が天空から降りて依代に入ると、神降し。その後は叡智の間にてユミル王に叡智を授けるの」

 青い瞳を流し目にしてマグリタが僕にひそりと話しました。

 笹踊りがピークになり、神官長さんが迫り出した台に乗って出てきます。小人族の歌が始まります。

「召しませ、召しませ、神よ」

 音楽に合わせて幼い女の子が歌います。

「ターク姉様も」

 テハナ、成人男子の僕の声は……。

「全員です!」

 マグリタ、面白がっていますね。

 神官長さんが神降しの儀式を始め、アリーナを囲む四つの銀杯に高級神官さんがマナを注いでいます。

 小人族の女の子全員がアリーナに上がり、笹を振りながら歌います。僕もテハナとマグリタに挟まれて歌います。

「召しませ、召しませ、神よ。召しませ、召しませ、神よ」

 僕らの頭を貫く光に顔を上げると、月から巨大な光球が降ってきて、アリーナを包みました。

 一番上の桟敷から、

「神が降りたぞ」

と声がします。白い顔の巨人が身体を乗り出しています。

「あれ、ユミル国の王様」

 テハナが教えてくれましたが、あの人レーダー伯領で転移陣を使っていた人です!なんてことを!残念すぎるご造作の王様自ら、手を染めていたのですね。ガリウスの方が何万倍も立派です。比べるまでもないのですが。

「ガルド神よ!依代を用意した!依代に憑きて我がユミルに新たな叡智を!」

 巨大な光はガルド神らしいです。僕らはアリーナを降りて、次に依代の貴族の女の子達がアリーナに上がります。アリーナを取り巻く魔法石が一瞬にして消えました。

「召しませ、召しませ、神よ。召しませ、召しませ、神よ」

 このうちの誰かに依代して叡智を授けるのです。光球がアリーナ全体を覆い発光して何も見えません。この光は……マナ!濃厚なマナの光で包まれ、小人族の女の子全員が倒れていきます。アリーナの女の子たちも一人、また一人と倒れていき、僕も徐々に力が抜けて意識を失いました。
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