うたかた夢曲

雪原るい

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3話「幼い邪悪[前編]~2人のトラブルメーカー~」

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「んなわけないだろう!!魔法で切り刻んだら、ああなったんだって!」

セネトは首を左右にふって答えると、短刀を鞘に納めたヴァリスが顎に手をあてて言う。

「…何者かが死霊術を使って死者を目覚めさせ、同時に、自己再生と回復能力を死者達に与えたのではないかと。実は、この近くに墓地があるので死霊術で呼び覚ましたい放題なのですよ」
「いやいや…それ、もっと早くに言えよ!!っていうか、何をしみじみと…つーか、誰だ!そんな厄介な魔法、誰が使ったんだー!!」

素っ頓狂な声をあげるセネトは、ヴァリスの両肩を掴むと激しく前後に揺さぶった。

「あ…あの、それは私ではありませんので……その、手を放してください」

前後に揺さぶられているヴァリスが目を回しながら抗議してみる、がその手を一向に放そうとしないセネト。
それを見てため息をついたクリストフは、襲いきた"眠れぬ死者"を斬り捨てると刀を鞘に納めて杖に戻した。
…そして、そのまま遠心力を使ってセネトの後頭部を強打して制止する。

「八つ当たりはやめなさい、セネト。それよりも『炎系』の魔法式の準備を…あんなものが増えると面倒ですから」
「ったー…ヘイヘイ、『炎系』な。了解――つーか、自分だって面倒だと言ってんじゃねーか」

強打された後頭部をおさえたセネトは、クリストフの指示に頷きつつ小声で文句を言う。
…だが、セネトの小さな文句を聞き逃さなかったクリストフがゆっくりと笑みを浮かべて睨みつけた。

「何か言いたい事があるのならば、後でゆーっくり聞いてあげますよ…ねぇ、セネト?」
「う゛っ…地獄耳だな、お前…」

なんだか恐ろしい雰囲気の笑みにセネトは口元をひきつらせているのだが、クリストフ本人は気にせずそのままヴァリスの方へと視線を向ける。

「ヴァリス殿、セネトの魔法が他を傷つけないように結界をお願いできますか?」

今いる場所からある程度の範囲に影響がでないよう配慮した方が良いだろうと、クリストフは考えたらしい。
その意図に気づいたヴァリスが"眠れぬ死者"数体を蹴り飛ばした後、しゃがみ込むと地面に結界魔法の術式を描きだした。

「…クリストフ様、いつでもOKです」

ヴァリスの言葉に頷き返したクリストフは、地面に杖で術式を描くとセネトに声をかける。

「セネト…『煉獄の焔』を使いますよ。基礎魔法の応用ですから、大丈夫ですよね?」
「うーん、多分…大丈夫だと思うけど。基礎魔法の本は、しっかり読んできたからな…」

腰に手をあてて自信ありげにセネトが、宙に指で術式を描きはじめた。
本当に大丈夫だろうか…と、心配になりながらもクリストフは近づいてくる合体した"眠れぬ死者"に視線を向ける。

そして、セネトが術式を描き終えるのを待ってから2人はほぼ同時に魔力を込めて詠唱をした。

「――全てを清めし煉獄の焔よ、穢れしもの達を燃やし尽くせ!!」

詠唱している途中でクリストフが視線で合図をヴァリスに送ると、彼は頷いて結界を周囲に張り巡らせる。
それを確認した2人は、詠唱最後の言葉を口にした。

「ヘル・フレイム!!」

2人の描きだした術式から炎の渦が巻き起こり、範囲内にいた合体したそれらを含む"眠れぬ死者"達を飲み込んで焼き尽くしていく……
ただ、合体したものは複数体がひとつになっているせいで完全に焼き尽くす事はできなかったようだ。

「…合体している分、丈夫なようですね」

セネトの魔法が結界の外に影響ないよう維持するヴァリスが、その様子を哀しそうに見つめて呟いた。
身体が燃え崩れかけてはいるものの、術者であるセネトとクリストフを襲おうと"眠れぬ死者"の集合体は歩みを止めない。

瞬時に2人が動けぬと判断したヴァリスは結界を解除して、腰ベルトに差す短刀を抜いた。
そして、襲いきた"眠れぬ死者"の集合体を斬っていく…が、なおも動こうとするそれを返す刀で斬ると蹴り倒す。

燃え崩れかけていた身体を、ヴァリスに斬られた上に蹴り倒された事で"眠れぬ死者"の集合体が持つ自己再生と回復能力よりダメージの方が上回った為そのまま炎の中に倒れ込むと動かなくなった。


***
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