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6話「王女と従者と変わり者と…」
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「――というわけで、王女殿下をお連れしたわけだ」
セネトが王女とルカリオを案内してやって来たのは、協会にあるとある一室――ちなみに、先ほどまでセネトのいたクリストフの部屋ではない。
この部屋は、2人が訪れようとしていた目的の部屋だ。
デスクに向かう部屋の主に、セネトは言葉を続けた。
「礼はいいぜ、ダンフォース!」
「……色々と言いたい事はあるが、とりあえずご苦労」
頬をひきつらせた部屋の主である、茶髪を肩の上で切りそろえた青年・ダンフォースがセネトを労う。
そのダンフォースの両隣には、黒髪の青年と紫色の髪をした青年が呆れたようにセネトを見ていた。
何故か、紫色の髪をした青年が右腕を三角巾で吊っているのに気づいたセネトは首をかしげて訊ねる。
「えーっと…テルエルだっけ、お前?何でそんな怪我を、あの時…」
「そうだが、その…これは色々あってな」
紫色の髪をした青年・テルエルは、ダンフォースやセネトから視線を外すとどこか遠くを見るだけだった。
少しだけ気になったセネトはテルエルに詳しく訊ねようとした…が、それよりも先に黒髪の青年が口を開く。
「テルエルの事はいいだろう…それよりも、だ。トラブルメーカー1号」
「だぁー…ヴェンデル!お前といい、お前の親戚といい…何でおれをそう呼ぶんだよ!」
自分の事を『トラブルメーカー1号』と呼んだ黒髪の青年・ヴェンデルを指差して、セネトは叫んだ。
クリストフの部屋にいる際も、散々そう呼んでくれた人物の従甥が目の前にいるのでここぞとばかりに文句をつけたわけである。
しかし、たいして気にした様子もなくヴェンデルは口を開いた。
「親戚――もしかして、キリル叔従父の事か?そのような些細な事、どうでもよかろう…それよりも、だ」
「あぁ?何だよ…」
キリルと同じ事を言いやがって…と、不貞腐れながら訊ねるセネトに彼はセネトの足元を顎で指すと続けた。
「お前は普通に入室する、という事をしないのか?」
こう言われてしまうには、理由がある…というのも、セネトが王女達を連れてダンフォースの部屋を訪れた方法に問題があった。
その方法というのは、ドアを破壊しての入室で…その際、部屋にあった応接用ソファー一式もろとも吹っ飛ばしてしまったわけだ。
「…こうして考えると、クリストフ殿の胃に本当優しくないな」
部屋の状態を観察したテルエルが呟くと、同意するように頷いたダンフォースは口を開く。
「あいつがストレスで倒れるのも、時間の問題だな。良く効く胃薬を贈っておこうか…」
「手配しておきましょう…」
軽く頭を下げて答えたのはヴェンデルだった。
そんな一連のやり取りを見ていたセネトは、ダンフォースのデスクを叩いて本題に入るよう催促する。
「だぁー…んな事より、王女殿下が聞きたい事があるそうだ!」
「えぇ、ぜひお聞きしたい事がありまして…――」
セネトの隣に立った王女は、デスクに手を置くと言葉を続けた。
「どうして、ルフェリスさん達の身に起こった事…そして、生家であるレノクス家の罪も公表されなかったのかをご説明願えるかしら」
「………」
ちらりとルカリオに目を向けたダンフォースがため息をついていると、その視線に気づいたルカリオは両手を顔の前で合わせて何度も頭を下げている。
視線で壊された扉をドア枠にはめるようヴェンデルに指示したダンフォースは、王女の質問に答えた。
「レノクス家のした事を公にしてしまえばどうなってしまうか、おわかりになりますよね?ですから、レノクス家の方々と相談をいたしまして、あのようにいたしました」
「ヴェンデルとテルエルが、あの事件のあらまし全てを公表する事を許したんだろう?大体、レノクスの誰と相談したんだよ?」
ダンフォースの言葉に、セネトがヴェンデルとテルエルを指して言うと隣に立つ王女も同意するように頷く。
「えと…確か、姫さまの兄上であられる王太子殿下とレノクス家の主立った方々とですよね?ダンフォースさん」
その疑問に答えたのはダンフォースや扉を片付けているヴェンデルやテルエル、ではなく何故かセネトと王女の後ろに立つルカリオだ。
「はぁ?」と声をそろえてセネトと王女が振り向くと、苦笑混じりにルカリオは言い訳をはじめた。
「いや…その、あの――言おう言おうと思ってたんですが、ねー。姫さまがダンフォースさんに会うとおっしゃるので…その、はい」
静かにルカリオのそばに近づいた王女は、ルカリオの首を掴んで腹に一撃入れたらしく…彼はくぐもった声を出して座り込んだ。
「――フレネ村やアーヴィル村があるのは…セネト、どこかわかるだろう?」
王女とルカリオの様子を見ていたダンフォースは、話題を戻すようにセネトに声をかけた。
「どこって、そりゃ…アルノタウム公国、って――そうか…」
ダンフォースの言いたい事を理解したセネトが呟くと、王女も理解したようで息をつく。
「確かに、問題になるかと思いますが…それでも、彼らの真実を白日の元にさらすべきだと――私は考えるのです」
「ベアトリーチェ殿下、貴女のお気持ちはわかりますが…これはテセリアハイト王家と、レノクス家の意志でもあります」
ダンフォースの言葉に、王女は唇を噛みしめるとルカリオの頭をはたいてドア枠にはめられていた扉を押し倒すと出ていってしまった。
慌てたルカリオも、ダンフォースに頭を下げて王女の後を追っていく。
…残されたのはセネトとダンフォース、ヴェンデルとテルエルの4人だけだ。
まったく…と、ため息をついたダンフォースが唖然とするセネトに声をかけた。
「さて…では、セネト。早速、ドアの修理とソファー一式の弁償について話し合おうか?」
「い、いや…その、ごめん。その件は、また後日!」
冷や汗をかいたセネトは、ダンフォースの部屋から脱出するように逃げ出した。
その、あまりの早業にダンフォースは呆れたように呟く。
「…逃げ足だけは、本当に早いのだな」
「――どうなさいますか?」
テルエルが訊ねると、ダンフォースは少し考えて答えた。
「そうだな…クリストフは、もう予算ないだろうから。他に持っていくしかあるまい…」
「ならば、そのようにいたしましょう…」
意図を察したヴェンデルの言葉に、ダンフォースは深く頷くのだった。
***
セネトが王女とルカリオを案内してやって来たのは、協会にあるとある一室――ちなみに、先ほどまでセネトのいたクリストフの部屋ではない。
この部屋は、2人が訪れようとしていた目的の部屋だ。
デスクに向かう部屋の主に、セネトは言葉を続けた。
「礼はいいぜ、ダンフォース!」
「……色々と言いたい事はあるが、とりあえずご苦労」
頬をひきつらせた部屋の主である、茶髪を肩の上で切りそろえた青年・ダンフォースがセネトを労う。
そのダンフォースの両隣には、黒髪の青年と紫色の髪をした青年が呆れたようにセネトを見ていた。
何故か、紫色の髪をした青年が右腕を三角巾で吊っているのに気づいたセネトは首をかしげて訊ねる。
「えーっと…テルエルだっけ、お前?何でそんな怪我を、あの時…」
「そうだが、その…これは色々あってな」
紫色の髪をした青年・テルエルは、ダンフォースやセネトから視線を外すとどこか遠くを見るだけだった。
少しだけ気になったセネトはテルエルに詳しく訊ねようとした…が、それよりも先に黒髪の青年が口を開く。
「テルエルの事はいいだろう…それよりも、だ。トラブルメーカー1号」
「だぁー…ヴェンデル!お前といい、お前の親戚といい…何でおれをそう呼ぶんだよ!」
自分の事を『トラブルメーカー1号』と呼んだ黒髪の青年・ヴェンデルを指差して、セネトは叫んだ。
クリストフの部屋にいる際も、散々そう呼んでくれた人物の従甥が目の前にいるのでここぞとばかりに文句をつけたわけである。
しかし、たいして気にした様子もなくヴェンデルは口を開いた。
「親戚――もしかして、キリル叔従父の事か?そのような些細な事、どうでもよかろう…それよりも、だ」
「あぁ?何だよ…」
キリルと同じ事を言いやがって…と、不貞腐れながら訊ねるセネトに彼はセネトの足元を顎で指すと続けた。
「お前は普通に入室する、という事をしないのか?」
こう言われてしまうには、理由がある…というのも、セネトが王女達を連れてダンフォースの部屋を訪れた方法に問題があった。
その方法というのは、ドアを破壊しての入室で…その際、部屋にあった応接用ソファー一式もろとも吹っ飛ばしてしまったわけだ。
「…こうして考えると、クリストフ殿の胃に本当優しくないな」
部屋の状態を観察したテルエルが呟くと、同意するように頷いたダンフォースは口を開く。
「あいつがストレスで倒れるのも、時間の問題だな。良く効く胃薬を贈っておこうか…」
「手配しておきましょう…」
軽く頭を下げて答えたのはヴェンデルだった。
そんな一連のやり取りを見ていたセネトは、ダンフォースのデスクを叩いて本題に入るよう催促する。
「だぁー…んな事より、王女殿下が聞きたい事があるそうだ!」
「えぇ、ぜひお聞きしたい事がありまして…――」
セネトの隣に立った王女は、デスクに手を置くと言葉を続けた。
「どうして、ルフェリスさん達の身に起こった事…そして、生家であるレノクス家の罪も公表されなかったのかをご説明願えるかしら」
「………」
ちらりとルカリオに目を向けたダンフォースがため息をついていると、その視線に気づいたルカリオは両手を顔の前で合わせて何度も頭を下げている。
視線で壊された扉をドア枠にはめるようヴェンデルに指示したダンフォースは、王女の質問に答えた。
「レノクス家のした事を公にしてしまえばどうなってしまうか、おわかりになりますよね?ですから、レノクス家の方々と相談をいたしまして、あのようにいたしました」
「ヴェンデルとテルエルが、あの事件のあらまし全てを公表する事を許したんだろう?大体、レノクスの誰と相談したんだよ?」
ダンフォースの言葉に、セネトがヴェンデルとテルエルを指して言うと隣に立つ王女も同意するように頷く。
「えと…確か、姫さまの兄上であられる王太子殿下とレノクス家の主立った方々とですよね?ダンフォースさん」
その疑問に答えたのはダンフォースや扉を片付けているヴェンデルやテルエル、ではなく何故かセネトと王女の後ろに立つルカリオだ。
「はぁ?」と声をそろえてセネトと王女が振り向くと、苦笑混じりにルカリオは言い訳をはじめた。
「いや…その、あの――言おう言おうと思ってたんですが、ねー。姫さまがダンフォースさんに会うとおっしゃるので…その、はい」
静かにルカリオのそばに近づいた王女は、ルカリオの首を掴んで腹に一撃入れたらしく…彼はくぐもった声を出して座り込んだ。
「――フレネ村やアーヴィル村があるのは…セネト、どこかわかるだろう?」
王女とルカリオの様子を見ていたダンフォースは、話題を戻すようにセネトに声をかけた。
「どこって、そりゃ…アルノタウム公国、って――そうか…」
ダンフォースの言いたい事を理解したセネトが呟くと、王女も理解したようで息をつく。
「確かに、問題になるかと思いますが…それでも、彼らの真実を白日の元にさらすべきだと――私は考えるのです」
「ベアトリーチェ殿下、貴女のお気持ちはわかりますが…これはテセリアハイト王家と、レノクス家の意志でもあります」
ダンフォースの言葉に、王女は唇を噛みしめるとルカリオの頭をはたいてドア枠にはめられていた扉を押し倒すと出ていってしまった。
慌てたルカリオも、ダンフォースに頭を下げて王女の後を追っていく。
…残されたのはセネトとダンフォース、ヴェンデルとテルエルの4人だけだ。
まったく…と、ため息をついたダンフォースが唖然とするセネトに声をかけた。
「さて…では、セネト。早速、ドアの修理とソファー一式の弁償について話し合おうか?」
「い、いや…その、ごめん。その件は、また後日!」
冷や汗をかいたセネトは、ダンフォースの部屋から脱出するように逃げ出した。
その、あまりの早業にダンフォースは呆れたように呟く。
「…逃げ足だけは、本当に早いのだな」
「――どうなさいますか?」
テルエルが訊ねると、ダンフォースは少し考えて答えた。
「そうだな…クリストフは、もう予算ないだろうから。他に持っていくしかあるまい…」
「ならば、そのようにいたしましょう…」
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