追憶のステンドグラス

雪原るい

文字の大きさ
16 / 17
一章 ステンドグラスは幻に…

11:ようやく本題です…

しおりを挟む
僕を苛々しかさせない淫魔の口に猿轡をつけ、夜明けと共にやって来た神官騎士達に引き渡すことになりました。
これで、ようやく僕も本来の仕事に戻れる算段がつきますね…

ルークの一件で色々ありましたが、ノリス司祭を呼べたので良しとしましょうか。
――え、あぁ…ルークなら、何故か僕の頭上でぐったりしてますよ。
兄の頭上にいたのに、どうして今僕の頭上に移動したのかとですね…簡単な話です。

「リルハルト…そんなに、エルハルトが羨ましかったのですか?はい、これで機嫌を直してくださいね」

そう言って、ノリス司祭がルークを兄の頭上から僕の頭上に乗せ換えてきました。
ルークはルークで、拒否もせずされるがまま…今は、魂のしっぽ部分を揺らしています。
多分、現実逃避してるのだろうなぁ……

『…髪の毛さらさらで気持ちいいな』

――してましたね…現実逃避を。

ルーク、帰ってこい!!お前は、まだ終わってないんですよ?
というか、ルークはもう思い残す事なくなったのでは…と思うんですが。

ねー、ノリス司祭…これルークの、天からのお迎えは何時いつですかー?


***


…とりあえず、ルークのお迎えが何時いつになるのかわからないと言われてしまったので放って置く事にします。
もう、僕の頭上で大人しくしてもらいましょうか。

――で、何をしようと考えていたんでしょうかね…僕は。

「あまりの濃い出来事で、自分の目的を忘れかけてるぞー?気持ちは、まぁ…わかるけど」

兄の言葉に、僕は我に返りました。
…そうだ、ステンドグラスを直したいだけだったのにこんな状況に巻き込まれ――

「…あ。そういえば、あの廃墟は結局何時いつからああなんですか?」

すっかり訊ねるのを忘れていたけど、ルーク曰くの孤児院モドキはどういう事なのか…気になったので、ノリス司祭に訊いてみました。
そもそも、ルークの身に何があったのかだけをざっくり聞いて雑に作戦を立てましたからねぇ……

僕の疑問に、思い出したように手を打ったノリス司祭が答えてくれました。

「あぁ、あの場所はルークの生きていた時代でも廃墟でしたよ。ただ、あそこに幻術をかけて孤児院に見せかけていただけのようです…というか、生まれたばかりの淫魔を孤児と偽っていたらしいですね」

――そもそも、人間達は何故不思議に思わなかったのか?
ルークは…何か抜けてるところがあるので仕方ないとしても、他の人間って周囲の異変に気づけない生き物なのでしょうか?

「…というか、気にならないよう魅了で洗脳したんじゃねぇーか?序列9位あいつなら、簡単に大人数でもやれるだろーし」

ルークを指でつつきながら、兄さんが言う――夢を繋げて、わずか数日で洗脳していったんだろう…と。
なるほど、なるほど…まだまだ経験値のない淫魔の教育の為にやった結果、苛々しかさせない淫魔とか笑えませんよ。
何を計画していたのか知りませんが、後片付けは最後までしろよ…とは思いますが。

それにしても…へー、ふーん、ほーん、で済む話じゃないですね――誰主導なのか、わかっていますのでゆっくり話し合わねばならないかもしれません。
納得のいく説明がなければ、序列1位の彼を目覚めさせてやるっ!!
別に序列5位と9位が、今回の戦いゲームにいなくても問題ないと僕は思うわけです。
…1位の彼なら、2人分の働きをしてくれると思いますし。
ねぇ、アーノルド様も思いますよね…?

深く掘り下げるように聞いたのは僕で、に対して思うところができただけですが…ノリス司祭にある頼み事をしてみようと思いました。
ひとつくらい、わがまま言っても赦される気がしたもので…つい。

「ノリス司祭、まだ時間は大丈夫ですか?実は、お願いしたい事があるのですが…――」

あの廃教会にあったステンドグラスの修復という名の、神の創造力で造り直してもらいたい旨を伝えてみました。
もう、ノリス司祭だけが頼りなんですよ…でないと、誰とは言いませんが神官騎士2人に中央へスケッチ画を取りに行くという名目で連行されてしまいそうなんです。

まだ戦いゲームもはじまらぬ内に退場はしたくない、というのが本音だけど――
いくら復活できるとはいえ、痛いのは嫌ですから……

「大丈夫、守るよ!」と言っている馬鹿2人アルヴィドとリベリオ…信用云々抜きでお断りします。
行くわけないですから…そもそも、僕と兄は魔族なんです。
何で自ら処刑台に、喜々として向かわなければいけないのか…?

この、僕の気持ちをきっと読んでくれているだろうノリス司祭…貴方はわかってくれますよね?
目で訴えかけてみたら、何やら考え込んでいたノリス司祭が微笑みながら口を開きました。

「いいですよ、今回だけ特別に…ですが。ただし、この件に私が関わっているのは内密にしてくださいね?」
「もちろん、わかっていますよ。僕も、同族の者から恨みを買いたくないので……」

もし神の化身ノリス司祭に協力してもらった事を、序列位を狙う――いわゆる成り上がろうと考えている魔族に知られると面倒ですからね…ただでさえ、無駄に挑んでくる奴がいるのだから。

ところで、彼らは何故成り上がりたいのだろうか…?
この戦いゲームは、はっきり言ってなのに…あぁ、でも持たぬ者が成り上がり序列を得たとしてもから痛みなどわからないか。

――そして、僕達は廃教会まで戻ってきました…が、死霊をうろつくこの状況を初見のノリス司祭とリベリオは目を丸くして観察するように見えています。
死霊達も、物陰からこちらを見ているようです。
…さぁ、ここは本職の聖職者である貴方達の仕事ですよ。
死霊達を天へ導いてあげ――って、ルーク!さっきからしっぽで僕の頭をたたかないでくれますか。

ちなみに、僕がルークに気を取られている間にノリス司祭はアルヴィドとリベリオを伴って礼拝堂へ向かったようで…兄さんが教えてくれなかったら、普通に気づけませんでしたよ。
それより…ノリス司祭、死霊達の浄化を諦めましたね――いえ、見なかった事に絶対したと思うな……

礼拝堂に入ると、扉付近にアルヴィドとリベリオがおり…ノリス司祭だけがステンドグラスのあったであろう枠の前でおそらく記憶のようなものを読んでいる様でした。
やがて小さく息をついたノリス司祭が重く絶大な神の力――おそらく本来の力の一部を解放したらしく、彼を中心に不思議な風が吹いた事で礼拝堂内の空気がにわかに変わっていく……
うろついていた死霊達は神の気配ちからを感じ取ったのか…全員、僕と兄さんの後ろに隠れました。
…いや、これ僕ら兄弟を盾にしているだろう――ルークだけは、変わらず僕の頭上で御機嫌ですが。

あれ、もしかして…ルークはノリス司祭造物主から加護とかもらったのかもしれない。
それはともかく、ノリス司祭が右腕を大きく――手を払うように振ると、ステンドグラスのあっただろう枠を神の力が覆うと眩い光を放った。
その瞬間、僕らは目を閉じて光がおさまるのを待つしかできませんでしたが…これ、廃教会の外に漏れてしまっている事に後日気づきましたよ。
ちょっとした騒ぎになりましたからね……

光がおさまって、安堵した僕らの視線は先ほどまで神の力に包まれていた場所を向いていました。
そこには、魂を導く告死天使が描かれた懐かしいステンドグラスが復活していました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

処理中です...