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3話「聖女の破片」
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「……やはり、完全に読まれていたな」
「すみません…僕が眠っている間に、記憶を読まれたのかもしれません…」
十紀の言葉に、困った表情で神代は答えた。
天宮が神代の家に滞在して、今日で二日目になる。
……その前日に、神代は体調を崩して倒れていた。
その時、天宮は神代から読み取ったのだろう――天宮の持つ『力』で。
その事も気づいている十紀は、首を横にふった。
「気にするな…私も、先ほど記憶を読まれただろうしな。彼女の状況を知った上で、好きにしていいと言ったんだ」
「集落の人々から直々に訊ねて、記憶も読んで…その上、我々からも情報を取ったのでしょう」
控えめな声で言った古夜は、天宮が去っていた方を呆れたように見やる。
古夜から見ても、天宮と主である神代の最終目標は同じであるのだから……
ため息をついた神代は、古夜の胸を軽くたたく。
「もうしばらくの間、あの方は動かないでしょう。今は、『アレ』に取り込まれた従兄殿と意志疎通する為に力のほとんどを使っているはずですから」
「まぁ…王家の血筋本流ならば、私や神代よりは強力だろうしな」
苦笑しながら答えた十紀は、顎で自分の仕事部屋の方を指した。
神代と十紀に声をかけられ、我に返った古夜は頷いて答える。
そして、3人は十紀の仕事部屋へと移動したのだった。
誰もいなくなった医院の廊下に、桃色がかった茶色の長い髪をなびかせた少女が立っている。
その少女は半透明で、理哉に似た面差しだが彼女より年上で薄いピンクの服を着ていた。
きょとんとした表情を浮かべた少女は、3人が去っていった方向を見つめ…そして、口元に小さな笑みを浮かべて呟いた。
『――いくら神代様や十紀様でも、もう止められっこないわ…天宮様だって、それはわかってるもの』
ゆっくりと『ある部屋』の前に移動すると、扉の前でまた小さく笑う。
『――どうして、邪魔をするのかしら?その上、巻き込まれても死なないなんて…司祭だから?』
少女は扉に手を触れると、表情に狂気をはらませた。
『――だったら、邪魔せずに…司祭らしくしなさいよ!私だけ…私の生命だけで、済ませようとしてるんじゃないわっ!!私と同じ運命となったあの女だけを助けるなんて――そんなの、絶対に許さないっ!』
そう言うと、少女の姿はかき消えていった……
「…っ!?」
何かに気づいた神代は振り返ると辺りを見回して、ゆっくりと息をついた。
扉を開けた十紀と傍に控える古夜が、神代の様子に気づいて心配そうに声をかける。
「神代様…?」
「どうし……まさか、実哉か?」
言葉を途中で切った十紀は、神代が感じ取った気配に気づいて慌てたように訊ねた。
神代は、首を横にふると答える。
「微かに、気配は残っていますが…もういないので、大丈夫――彼に接触しようとしたようですが」
「まぁ、無理だったんだろうな…私とお前の血を使って、結界を作っておいたからな…」
備えあれば患いなし、と十紀は言った。
神代は頷くと、十紀が開いた扉の向こう――仕事部屋へと入る。
続いて入ろうとした古夜は立ち止まり、十紀に小さく囁いた。
「…おそらく、天宮様の力の影響もあるかと思います。今夜は、お気をつけください…」
「……わかった」
神代に聞こえないよう、小声で答えた十紀に古夜は頷いて室内へ入った。
(…まったく、今夜も眠れそうにないな。私も神代も――)
***
「すみません…僕が眠っている間に、記憶を読まれたのかもしれません…」
十紀の言葉に、困った表情で神代は答えた。
天宮が神代の家に滞在して、今日で二日目になる。
……その前日に、神代は体調を崩して倒れていた。
その時、天宮は神代から読み取ったのだろう――天宮の持つ『力』で。
その事も気づいている十紀は、首を横にふった。
「気にするな…私も、先ほど記憶を読まれただろうしな。彼女の状況を知った上で、好きにしていいと言ったんだ」
「集落の人々から直々に訊ねて、記憶も読んで…その上、我々からも情報を取ったのでしょう」
控えめな声で言った古夜は、天宮が去っていた方を呆れたように見やる。
古夜から見ても、天宮と主である神代の最終目標は同じであるのだから……
ため息をついた神代は、古夜の胸を軽くたたく。
「もうしばらくの間、あの方は動かないでしょう。今は、『アレ』に取り込まれた従兄殿と意志疎通する為に力のほとんどを使っているはずですから」
「まぁ…王家の血筋本流ならば、私や神代よりは強力だろうしな」
苦笑しながら答えた十紀は、顎で自分の仕事部屋の方を指した。
神代と十紀に声をかけられ、我に返った古夜は頷いて答える。
そして、3人は十紀の仕事部屋へと移動したのだった。
誰もいなくなった医院の廊下に、桃色がかった茶色の長い髪をなびかせた少女が立っている。
その少女は半透明で、理哉に似た面差しだが彼女より年上で薄いピンクの服を着ていた。
きょとんとした表情を浮かべた少女は、3人が去っていった方向を見つめ…そして、口元に小さな笑みを浮かべて呟いた。
『――いくら神代様や十紀様でも、もう止められっこないわ…天宮様だって、それはわかってるもの』
ゆっくりと『ある部屋』の前に移動すると、扉の前でまた小さく笑う。
『――どうして、邪魔をするのかしら?その上、巻き込まれても死なないなんて…司祭だから?』
少女は扉に手を触れると、表情に狂気をはらませた。
『――だったら、邪魔せずに…司祭らしくしなさいよ!私だけ…私の生命だけで、済ませようとしてるんじゃないわっ!!私と同じ運命となったあの女だけを助けるなんて――そんなの、絶対に許さないっ!』
そう言うと、少女の姿はかき消えていった……
「…っ!?」
何かに気づいた神代は振り返ると辺りを見回して、ゆっくりと息をついた。
扉を開けた十紀と傍に控える古夜が、神代の様子に気づいて心配そうに声をかける。
「神代様…?」
「どうし……まさか、実哉か?」
言葉を途中で切った十紀は、神代が感じ取った気配に気づいて慌てたように訊ねた。
神代は、首を横にふると答える。
「微かに、気配は残っていますが…もういないので、大丈夫――彼に接触しようとしたようですが」
「まぁ、無理だったんだろうな…私とお前の血を使って、結界を作っておいたからな…」
備えあれば患いなし、と十紀は言った。
神代は頷くと、十紀が開いた扉の向こう――仕事部屋へと入る。
続いて入ろうとした古夜は立ち止まり、十紀に小さく囁いた。
「…おそらく、天宮様の力の影響もあるかと思います。今夜は、お気をつけください…」
「……わかった」
神代に聞こえないよう、小声で答えた十紀に古夜は頷いて室内へ入った。
(…まったく、今夜も眠れそうにないな。私も神代も――)
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