醜い皮を被った姫君

ばんご

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王妃からの言葉

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無事に会食が終わり、肩の力が抜けた時
彼の母からお茶に誘われた
私は断る理由もなく、受け入れた

彼の母の印象は、とても優しくて笑顔が素敵な人だった
母とはこういうものなのだろうかと、
母と接したことのない彼女は知ることもなかった

『突然ごめんなさいね、けれど話して見た
 かったの 息子が選んだ女性と』

『いえ、お気になさらずに
 私も王妃様と言葉を交わしたかったです』

微笑みながら話すと、王妃は少し表情を崩し、私に寄り添うように手を取った

『…私はね貴女達の関係を認めているのよ
 他人行儀な言い方はよして
 できれば、母と呼んでいただける?』

『で、ですが…』

王妃の圧は凄くて、断るほどその圧は強くなった 私は折れるしかなかった

『わ、わかりました 御母様…』

呼び名に嬉しく感じたのか、御母様は嬉しそうに微笑んだ

『嬉しいわ、娘ができたみたいで
 息子の目は狂っていないわね
 こんな素敵で可愛らしい女性を連れて
 くるのですもの』

私を歓迎してくれる御母様に緊張しながらも、言葉を交わした

『私とあの人の間には、愛はなかったの
 いわゆる国の為の婚姻
 でも私は、あの人を愛した 今も昔も』

慈しむような瞳で御母様は語る
そして王のことについても

『あの人はきっと私を愛していないわ
 国の為の結婚と、そこに情はない
 容姿と、肩書き それが全て
 
 その為ならあの人は何をするか
 わからないわ
 だから十分に気をつけて』

御母様がここまで警告してくれることに、嬉しく感じつつも複雑な気持ちになった

小さく頷き、御母様は小さな耳飾りを私の前に差し出す

『これは…?』

『私がこの国に嫁いだ時に身につけていた 
 ものよ けれど今の貴女には必要かと
 私からの贈り物よ』

その耳飾りは、真ん中に埋め込まれている小さなルビーが印象的で、揺れるたびに小さく煌めく

『そんな、頂けません!こんな貴重なもの』

『貰って こんなに綺麗なのだから
 少しは着飾らないと、ね?』

御母様は私の耳に、耳飾りをつけてくれた
贈り物はこんなに嬉しくなるものだと、実感した

『私、そんな綺麗では…』

呪いが解けたとはいえ、まだ容姿に自信はなかった

『自信を持ちなさい
 女の子はいつだって、綺麗になれるのよ
 ほんの少しの勇気があれば、いつだって』

やはり親子だ 素敵な言葉を私に紡いでくれる
そんな御母様の気持ち、思いを断る事ができず私は受け取った
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