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第五話 朱咲の再来
第五話 一
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あかりの懸念をよそに、稽古は順調そのものだった。むしろ調子が出てくるにつれ、以前よりも上手く力を引き出せているのではないかと思える瞬間もある。
高揚感と少しの全能感に時折酔うあかりを結月たちはもちろん心配したが、あかりは強くなる分には問題ないと思っていたので清々しい笑顔で「大丈夫!」と答えるのだった。
神有月の中旬には念願の模擬実戦に参加できるようになった。初戦の相手は秋之介だ。
「よろしくね、秋」
「あんまし飛ばし過ぎんなよ」
そう言って秋之介は白い虎の姿に変じた。
あかりも霊剣を呼び出し、気を集中させたところで、審判役の昴が「はじめ!」と合図を出した。
俊敏さでは秋之介の方が一枚上手だ。ここは切り込まずに飛び込んできた秋之介の爪を剣でいなした。この戦いにおいては祝詞は使えない。唱えるのに時間がかかる上、その間も攻撃を避け続けなければならないので、威力はあったとしてもおよそ現実的ではないからだ。しかし、短い言霊を駆使した剣術なら話は別だ。
「心身護神、急々如律令!」
唱えるのと同時に秋之介に斬りかかる。彼は寸でのところで剣先をかわすと、距離を取るべく後ろに飛び退いた。
「あっぶね!」
「一応切れないようにしてあるから大丈夫!」
「そういう問題か⁉ 殺意が本物だったぞ⁉」
「さ、次行くよ!」
勢いよく振りぬかれる爪をかわしては隙を見て霊剣を打ち込むことを繰り返して三度目。
「朱咲護神、急々如律令!」
「っ!」
赤い軌跡を描きながら振り下ろした霊剣を、秋之介の首筋直前で止めた。
「やめ!」
昴が手を叩いて試合の終了を告げる。
高揚感と少しの全能感に時折酔うあかりを結月たちはもちろん心配したが、あかりは強くなる分には問題ないと思っていたので清々しい笑顔で「大丈夫!」と答えるのだった。
神有月の中旬には念願の模擬実戦に参加できるようになった。初戦の相手は秋之介だ。
「よろしくね、秋」
「あんまし飛ばし過ぎんなよ」
そう言って秋之介は白い虎の姿に変じた。
あかりも霊剣を呼び出し、気を集中させたところで、審判役の昴が「はじめ!」と合図を出した。
俊敏さでは秋之介の方が一枚上手だ。ここは切り込まずに飛び込んできた秋之介の爪を剣でいなした。この戦いにおいては祝詞は使えない。唱えるのに時間がかかる上、その間も攻撃を避け続けなければならないので、威力はあったとしてもおよそ現実的ではないからだ。しかし、短い言霊を駆使した剣術なら話は別だ。
「心身護神、急々如律令!」
唱えるのと同時に秋之介に斬りかかる。彼は寸でのところで剣先をかわすと、距離を取るべく後ろに飛び退いた。
「あっぶね!」
「一応切れないようにしてあるから大丈夫!」
「そういう問題か⁉ 殺意が本物だったぞ⁉」
「さ、次行くよ!」
勢いよく振りぬかれる爪をかわしては隙を見て霊剣を打ち込むことを繰り返して三度目。
「朱咲護神、急々如律令!」
「っ!」
赤い軌跡を描きながら振り下ろした霊剣を、秋之介の首筋直前で止めた。
「やめ!」
昴が手を叩いて試合の終了を告げる。
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