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第六話 幸せはいつもそばに
第六話 一
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「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、宇内八方御方長南、たちまち急戦を貫き、南都に達し、朱咲に感ず、奇一奇一たちまち感通、急々如律令!」
あかりが朱咲と交感する咒言を唱えると、胸の奥深くが燃え上がるような感覚がした。次いで掲げる霊剣までもが熱くなり、真っ赤な炎を宿す。心清らかな者からすればため息が出るほど美しい光景も、邪気に染まった者からすればただひたすらに恐怖を覚える凶器でしかない。
(どうか彼の者の邪気を払い清め給え)
あかりは胸の内でそう祈ると、自身を中点にして円を描くように霊剣を振りぬいた。光球と炎が辺り一帯を赤く染め上げる。式神の符が赤の火に飲まれて消えていき、清められた魂が元の場所に還る気配がした。
「お疲れ様。これで片付いたね」
周囲の気配を確認しながら昴が歩み寄ってくる。霊剣を消したあかりは困惑顔で「でも」と呟いた。
「陰の国の情報は何もわからないままだったね」
「そりゃ、向こうも馬鹿じゃないしな」
白虎姿から人間姿に変じた秋之介が肩をすくめた。
今日のように霜月の間も任務は続いたが、あかりの言う通り陰の国につながる手掛かりはみつからないままだった。
「結局のところ、陰の国の目的って何なんだろうね」
目的も規模も、わからないことだらけの陰の国。わからないというのは恐いもので、あかりたちとしては小さなことでもいいから情報が欲しかった。
しかし、意に反してそれは上手くいかない。不幸中の幸いというべきか、任務には失敗はなく、怪我や事故もないことは数少ない救いといえた。
あかりが朱咲と交感する咒言を唱えると、胸の奥深くが燃え上がるような感覚がした。次いで掲げる霊剣までもが熱くなり、真っ赤な炎を宿す。心清らかな者からすればため息が出るほど美しい光景も、邪気に染まった者からすればただひたすらに恐怖を覚える凶器でしかない。
(どうか彼の者の邪気を払い清め給え)
あかりは胸の内でそう祈ると、自身を中点にして円を描くように霊剣を振りぬいた。光球と炎が辺り一帯を赤く染め上げる。式神の符が赤の火に飲まれて消えていき、清められた魂が元の場所に還る気配がした。
「お疲れ様。これで片付いたね」
周囲の気配を確認しながら昴が歩み寄ってくる。霊剣を消したあかりは困惑顔で「でも」と呟いた。
「陰の国の情報は何もわからないままだったね」
「そりゃ、向こうも馬鹿じゃないしな」
白虎姿から人間姿に変じた秋之介が肩をすくめた。
今日のように霜月の間も任務は続いたが、あかりの言う通り陰の国につながる手掛かりはみつからないままだった。
「結局のところ、陰の国の目的って何なんだろうね」
目的も規模も、わからないことだらけの陰の国。わからないというのは恐いもので、あかりたちとしては小さなことでもいいから情報が欲しかった。
しかし、意に反してそれは上手くいかない。不幸中の幸いというべきか、任務には失敗はなく、怪我や事故もないことは数少ない救いといえた。
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