【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第八話 喪失の哀しみに

第八話 七

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「昴は何か知ってるの?」
 あかりが勢いよく振り向くと、昴は困惑気味にだが頷いた。
「う、うん。少しだけね。でも、理由というより背景というか」
 珍しく歯切れ悪く昴は言うが、秋之介の「なんでもいいから話せよ」という一言に背を押されたようだった。
「なんでも陰の国では帝位の争奪が起きてるらしいんだ」
「ていい?」
 あかりと秋之介がそろって首を傾げると、昴は苦笑気味に「帝の座のことね」と教えてくれた。
「それで情勢が悪くなってて、陽の国に攻め入るようになったんだとか」
「えっと、よく、わからない……」
 結月は困った顔をしていた。
「どうして情勢が悪くなると、陽の国に侵攻することになるの?」
「それがわかったら苦労しないんだよねぇ」
 どうやら昴が渋っていたのはこれが原因らしい。
「もっと情報があればいいんだけど。なかなか難しいね」
 昴は疲れたような笑みを落とした。
 その笑みを目にして、あかりは昴のことが心配になった。
昴は四人の幼なじみのなかでは最年長者だ。その上器用でなんでもそつなくこなすし、しっかり者で面倒見も良い。一見すると彼はよくできた人間に見えるかもしれないが、今の昴は家臣の死に、陰の国の陰謀にと心をすり減らし過ぎているように思えるのだ。
(そんな顔してほしくないよ、昴……)
 幼なじみとして昴を想う。
(今の私にできることって何?)
 昴のようによくできた頭ではないが、あかりはあかりなりに一生懸命考えていた。
 出かけるのは疲れさせてしまうかもしれない。修行なんてもってのほかだ。だとすれば、あかりに考えられることはただ一つ。
「昴! 美味しいもの食べよう!」
 あかりを見た昴は目をぱちくりとさせた。隣で結月が小さく微笑み、秋之介がにやりと笑ったのがあかりの視界の端に映った。
「いいけど……急だね」
「だって、戦ったらお腹空いたんだもん。お昼ご飯もまだだし」
 あかりの笑顔の裏に隠された気持ちに、敏い昴は気づいていたのかもしれない。しかし、気づかないふりをして、彼はおもむろに立ち上がった。
「そうだね、お昼にしようか。ゆづくんと秋くんも一緒に食べるでしょ?」
 振り返る顔にはまだ疲れが滲んでいたけれど、自然な微笑みも浮かんでいた。そのことにあかりたちは安堵しながら頷いた。
「私も一緒に食べたいな!」
「しょうがねえなぁ」
「せっかくだし、いただきます」
 昴に倣って立ち上がった三人は、昴を囲うようにして共に厨へと向かった。
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