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小話
かんざしは思い出を連れて
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元日の夕食会後のことである。玄舞家に帰ってきたあかりは自室で今日の縁日で結月にとってもらったかんざしを手に持って眺めていた。
赤色と桃色の花のつまみ細工が飾られたかんざしは些か子どもっぽくもあるがそれもまた祭りという感じがする。可愛らしい意匠にあかりの頬が緩んだ。そして同時に幼少期を思い出した。
「あのときも結月にかんざしをとってもらったんだっけ」
あかりの年齢がまだ十にも満たないころ、そのときは幼なじみ四人で元日昼間の屋台を巡っていた。そこでも型抜きに挑戦したことがあった。
「あー、やっぱ上手くいかねえ!」
秋之介が両手をあげる傍らで、あかりも砕けた型抜きの破片を爪楊枝でつついていた。
「悔しいー」
「昴とゆづはさすがだよなぁ」
未だ型抜きに失敗していない結月と昴を、秋之介がちらりと見遣る。結月は無言で作業を続け、昴は視線を手元に集中させたまま笑顔で応じた。
「秋くんは集中力がないよね。あかりちゃんは不器用だし」
「うっせー」
「……できた」
笑いながら軽口をたたきあっている間に結月の型抜きは終わったようで、蝶がきれいに削り出されていた。
「うん、僕も完成っと」
話しながらも手は休めなかった昴も声をあげる。
屋台の店主がにこにこ笑いながら「おめでとう!」と言った。
「好きな景品と交換だな。どれがいい?」
「欲しいもの……」
店主に尋ねられて、結月は困った顔をした。しばらく考えた後、結月はあかりを見る。あかりはというと景品棚の一点を見つめていた。
「……じゃあ、あのかんざしで」
「昴はどれにするんだ?」
秋之介に促されて昴は朗らかに笑った。
「ゆづくんがかんざしなら、僕は金平糖にしようかな」
店主から景品を受け取った二人はあかりにそれを手渡した。つまみ細工の朱色の花が可愛らしいかんざしと、桃色と白色の二色の金平糖を前に、あかりは目をまるくする。
「えっ、いいの?」
「僕たちはこれといって欲しいものもないしね」
「あかりが喜んでくれるなら、もちろん」
あかりは少しの間困惑していたが、すぐに明るい笑顔を咲かせるとそれらをありがたく受け取った。
「ありがとう!」
気になっていたかんざしと好物の金平糖をもらって、あかりはご機嫌だった。金平糖はいったん袂におさめて、早速かんざしをつけることにする。もともと団子に結っていたのでそこに添えるようにかんざしを挿し、その場でくるりと回った。
「どうかな?」
結月が目を細めた。秋之介と昴も似たような反応を示す。
「うん、かわいい」
「赤っていうのがあかりっぽいよな」
「よく似合ってるよ」
「えへへ」
あかりの照れ笑いに、三人も幸せそうな微笑を浮かべた。
「懐かしいなぁ」
そのときのかんざしは今はもうない。南朱湖の溢れる水にのまれて失くしてしまったからだ。それでも当時の光景は今なお鮮明に思い出せる。
今度は失くさないように。今度も失くさないように。
あかりは小物入れに持っていたかんざしを入れると、今日の思い出とともにそっとふたを閉めた。
赤色と桃色の花のつまみ細工が飾られたかんざしは些か子どもっぽくもあるがそれもまた祭りという感じがする。可愛らしい意匠にあかりの頬が緩んだ。そして同時に幼少期を思い出した。
「あのときも結月にかんざしをとってもらったんだっけ」
あかりの年齢がまだ十にも満たないころ、そのときは幼なじみ四人で元日昼間の屋台を巡っていた。そこでも型抜きに挑戦したことがあった。
「あー、やっぱ上手くいかねえ!」
秋之介が両手をあげる傍らで、あかりも砕けた型抜きの破片を爪楊枝でつついていた。
「悔しいー」
「昴とゆづはさすがだよなぁ」
未だ型抜きに失敗していない結月と昴を、秋之介がちらりと見遣る。結月は無言で作業を続け、昴は視線を手元に集中させたまま笑顔で応じた。
「秋くんは集中力がないよね。あかりちゃんは不器用だし」
「うっせー」
「……できた」
笑いながら軽口をたたきあっている間に結月の型抜きは終わったようで、蝶がきれいに削り出されていた。
「うん、僕も完成っと」
話しながらも手は休めなかった昴も声をあげる。
屋台の店主がにこにこ笑いながら「おめでとう!」と言った。
「好きな景品と交換だな。どれがいい?」
「欲しいもの……」
店主に尋ねられて、結月は困った顔をした。しばらく考えた後、結月はあかりを見る。あかりはというと景品棚の一点を見つめていた。
「……じゃあ、あのかんざしで」
「昴はどれにするんだ?」
秋之介に促されて昴は朗らかに笑った。
「ゆづくんがかんざしなら、僕は金平糖にしようかな」
店主から景品を受け取った二人はあかりにそれを手渡した。つまみ細工の朱色の花が可愛らしいかんざしと、桃色と白色の二色の金平糖を前に、あかりは目をまるくする。
「えっ、いいの?」
「僕たちはこれといって欲しいものもないしね」
「あかりが喜んでくれるなら、もちろん」
あかりは少しの間困惑していたが、すぐに明るい笑顔を咲かせるとそれらをありがたく受け取った。
「ありがとう!」
気になっていたかんざしと好物の金平糖をもらって、あかりはご機嫌だった。金平糖はいったん袂におさめて、早速かんざしをつけることにする。もともと団子に結っていたのでそこに添えるようにかんざしを挿し、その場でくるりと回った。
「どうかな?」
結月が目を細めた。秋之介と昴も似たような反応を示す。
「うん、かわいい」
「赤っていうのがあかりっぽいよな」
「よく似合ってるよ」
「えへへ」
あかりの照れ笑いに、三人も幸せそうな微笑を浮かべた。
「懐かしいなぁ」
そのときのかんざしは今はもうない。南朱湖の溢れる水にのまれて失くしてしまったからだ。それでも当時の光景は今なお鮮明に思い出せる。
今度は失くさないように。今度も失くさないように。
あかりは小物入れに持っていたかんざしを入れると、今日の思い出とともにそっとふたを閉めた。
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