208 / 390
第一五話 希望の声
第一五話 一〇
しおりを挟む
通りに出てあかりが真っ先に目にしたのは、艮の方角から立ちのぼる黒煙だった。
(火事……⁉ 結月たちは無事だよね⁉)
自身が戦えないことなどもはや問題ではない。彼らはあかりがやってくることなど望んでいないだろうが、こんな時に側にいられなくては何が大切な幼なじみだ。自分ひとりだけ離れた場所で安穏としていることなどできるはずもなかった。
何事かと通りに顔を出す町民たちの間をすり抜けながら、あかりは三体通を駆け抜けた。
北玄山の裾野と東青川の源流が交わるあたりに艮の結界はある。周囲には木々が立ち並び、鬱蒼と茂っていた。
(このあたりにいないの……⁉)
声をあげられないことをもどかしく思いながら、あかりは息つく暇もなく木立の間をうろついた。
(戦いの気配はあっちから?)
あかりは危険を顧みず、臆することなく山の中へと分け入る。やがて現れた眼前の光景にあかりは言葉を失った。
(熱い……っ)
あたり一面が火の海だった。火を司る朱咲の加護があっても、肌がちりちりと痛み、喉は焼け付くようで、煙が目にしみて視界が滲んだ。
そして炎の壁の向こうにあかりは結月、秋之介、昴の姿を見つけて瞠目した。彼らは陰の国の術使いの多勢を前にして、苦戦を強いられているようだった。
(このままじゃ……!)
最悪の未来が脳裏に過る。恐怖に支配されたあかりはその場に凍りついた。焦燥感に駆られて思考はまとまらず、身体は無意識に震えていた。
その間にも結月たちは劣勢に追い込まれていく。間合いを詰められた結月を白虎姿の秋之介が後ろに引っ張り出す。そんな秋之介の不意を突くように陰の国の式神が背後から襲い掛かる。昴が辛うじて結界を張ることで難は逃れた。
今はぎりぎり持ちこたえているがそれも時間の問題だ。
(私に戦う力があれば……っ)
三人は全身傷だらけで、呼吸も苦しそうだった。ここぞとばかりに陰の国の式神使いたちは結月たちを攻めたてる。
(失わないためには守らないと……! でも、どうしたら……!)
せめて声を出せればなんとかできるかもしれないのに、たったそれだけのことがままならない。
(火事……⁉ 結月たちは無事だよね⁉)
自身が戦えないことなどもはや問題ではない。彼らはあかりがやってくることなど望んでいないだろうが、こんな時に側にいられなくては何が大切な幼なじみだ。自分ひとりだけ離れた場所で安穏としていることなどできるはずもなかった。
何事かと通りに顔を出す町民たちの間をすり抜けながら、あかりは三体通を駆け抜けた。
北玄山の裾野と東青川の源流が交わるあたりに艮の結界はある。周囲には木々が立ち並び、鬱蒼と茂っていた。
(このあたりにいないの……⁉)
声をあげられないことをもどかしく思いながら、あかりは息つく暇もなく木立の間をうろついた。
(戦いの気配はあっちから?)
あかりは危険を顧みず、臆することなく山の中へと分け入る。やがて現れた眼前の光景にあかりは言葉を失った。
(熱い……っ)
あたり一面が火の海だった。火を司る朱咲の加護があっても、肌がちりちりと痛み、喉は焼け付くようで、煙が目にしみて視界が滲んだ。
そして炎の壁の向こうにあかりは結月、秋之介、昴の姿を見つけて瞠目した。彼らは陰の国の術使いの多勢を前にして、苦戦を強いられているようだった。
(このままじゃ……!)
最悪の未来が脳裏に過る。恐怖に支配されたあかりはその場に凍りついた。焦燥感に駆られて思考はまとまらず、身体は無意識に震えていた。
その間にも結月たちは劣勢に追い込まれていく。間合いを詰められた結月を白虎姿の秋之介が後ろに引っ張り出す。そんな秋之介の不意を突くように陰の国の式神が背後から襲い掛かる。昴が辛うじて結界を張ることで難は逃れた。
今はぎりぎり持ちこたえているがそれも時間の問題だ。
(私に戦う力があれば……っ)
三人は全身傷だらけで、呼吸も苦しそうだった。ここぞとばかりに陰の国の式神使いたちは結月たちを攻めたてる。
(失わないためには守らないと……! でも、どうしたら……!)
せめて声を出せればなんとかできるかもしれないのに、たったそれだけのことがままならない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
《完結》悪役聖女
ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる