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第一七話 諦めない未来
第一七話 三
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一方、残されたあかりはどうにもいたたまれない心地だった。火照った頬を手で押さえながら、俯き加減の顔を正面に戻す。
(それは……、いつかは私も結婚するんだろうけど……)
四家の本家に生まれたときから、結婚し子孫を残すことは決められているも同然のことだ。今は戦い、平和を取り戻すことが先決だが、ゆくゆくはあかりも誰かと結婚することになる。
(その『誰か』は……)
ちらりと隣を窺うと結月のきれいな横顔が目に入る。
これから先もこの位置が変わらなければいいと思う。結月の隣にいるのは自分でありたいとあかりは密かに願った。
「あかり、どうかした?」
やがて視線に気づいたらしい結月があかりに顔を向ける。
あかりは花綻ぶようにふわりとした笑みを自然と浮かべた。いかにも幸福そうな笑顔に結月の目が奪われる。そうとは知らず、あかりは思いのままを口にする。
「ずっと結月と一緒にいられたらなぁって思ったの」
今までにもあかりは結月と一緒にいたいと何度も思ったことはあるが、それは幼なじみとして秋之介や昴も含めて一緒にいたいという意味だった。けれども今の願いは意味合いが違う。
優しく甘い想いが言霊になり、柔らかな赤の光の粒が舞う。
間違いなく届いた想いに、結月は僅かに目を見開いていたが、次第に白い頬を桜色に染めていった。恥じらうように視線を落として、結月が囁く。
「……うん、おれも」
「本当に? じゃあ私たち、おんなじだ、ね……」
途中まで言ってはたと気づき、最後の方は声が小さくなってしまった。
(私、結構大胆なこと言ったよね⁉)
思い返すにつれ、冷めかけていた頬が再び熱をもつ。結月の顔を見ていられなくなったあかりはさっと顔を俯けた。
あかりと結月はお互いに顔を背け合う格好になる。その様子を向かい側で眺めていた秋之介は目を丸くし、昴はにやにやと笑っていた。
一方、あかりは傍観者がいることも忘れて、ひとりで慌てふためいていた。
(言霊が力を持ってたから、結月にも間違いなく伝わったはずだよね? 幼なじみとしてじゃなくて好きな人として一緒にいてほしいって。結月も同じこと思ってくれてたのは嬉しい。だけど、恥ずかしくなってきた……!)
それでも結月の様子が気になって、つい桃色の頬のまま、潤んだ赤の瞳で上目遣いに彼の方を見る。すると青い瞳とばっちり目が合った。
「……あかりにそんな顔されると、困る。どうしたらいいのか、わからない……」
「私もわかんないよ……」
関係が変わる以前なら、ほとんど無意識に発した自身の言葉に惑わされることなどなかった。けれども今はそうもいかない。あかりは自身の言葉に結月だけでなく、自分自身も翻弄されていることを知った。
二人の間に沈黙が降りる。短いような長いようなそれを破ったのは昴の声だった。
(それは……、いつかは私も結婚するんだろうけど……)
四家の本家に生まれたときから、結婚し子孫を残すことは決められているも同然のことだ。今は戦い、平和を取り戻すことが先決だが、ゆくゆくはあかりも誰かと結婚することになる。
(その『誰か』は……)
ちらりと隣を窺うと結月のきれいな横顔が目に入る。
これから先もこの位置が変わらなければいいと思う。結月の隣にいるのは自分でありたいとあかりは密かに願った。
「あかり、どうかした?」
やがて視線に気づいたらしい結月があかりに顔を向ける。
あかりは花綻ぶようにふわりとした笑みを自然と浮かべた。いかにも幸福そうな笑顔に結月の目が奪われる。そうとは知らず、あかりは思いのままを口にする。
「ずっと結月と一緒にいられたらなぁって思ったの」
今までにもあかりは結月と一緒にいたいと何度も思ったことはあるが、それは幼なじみとして秋之介や昴も含めて一緒にいたいという意味だった。けれども今の願いは意味合いが違う。
優しく甘い想いが言霊になり、柔らかな赤の光の粒が舞う。
間違いなく届いた想いに、結月は僅かに目を見開いていたが、次第に白い頬を桜色に染めていった。恥じらうように視線を落として、結月が囁く。
「……うん、おれも」
「本当に? じゃあ私たち、おんなじだ、ね……」
途中まで言ってはたと気づき、最後の方は声が小さくなってしまった。
(私、結構大胆なこと言ったよね⁉)
思い返すにつれ、冷めかけていた頬が再び熱をもつ。結月の顔を見ていられなくなったあかりはさっと顔を俯けた。
あかりと結月はお互いに顔を背け合う格好になる。その様子を向かい側で眺めていた秋之介は目を丸くし、昴はにやにやと笑っていた。
一方、あかりは傍観者がいることも忘れて、ひとりで慌てふためいていた。
(言霊が力を持ってたから、結月にも間違いなく伝わったはずだよね? 幼なじみとしてじゃなくて好きな人として一緒にいてほしいって。結月も同じこと思ってくれてたのは嬉しい。だけど、恥ずかしくなってきた……!)
それでも結月の様子が気になって、つい桃色の頬のまま、潤んだ赤の瞳で上目遣いに彼の方を見る。すると青い瞳とばっちり目が合った。
「……あかりにそんな顔されると、困る。どうしたらいいのか、わからない……」
「私もわかんないよ……」
関係が変わる以前なら、ほとんど無意識に発した自身の言葉に惑わされることなどなかった。けれども今はそうもいかない。あかりは自身の言葉に結月だけでなく、自分自身も翻弄されていることを知った。
二人の間に沈黙が降りる。短いような長いようなそれを破ったのは昴の声だった。
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