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第一七話 諦めない未来
第一七話 六
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「それにしても、今回の戦いは特に苦しいね」
昴のため息は深い。あかりと同様に昴は昴で結界を何度も張っていたため、その疲労もあるのだろう。
「呪詛が、厄介。今までこんなに呪詛が飛び交うこと、なかったのに」
「あいつら、妖をなんだと思ってんだよ……!」
疲れたような結月の囁きに、怒りを滲ませる秋之介の呟き。あかりも彼らの意見には同意で、やるせなさを感じていた。
式神に下した妖に呪詛を運ばせることで、呪詛返しがされても主である術使いは被害を最小限に留められる。逆に言えば呪詛返しの影響をほとんどもろに食らうのは利用された妖だということだ。
ここまでいくと魂が穢れきってしまうため、あかりの邪気払いを以てしても魂の浄化だけでは済まなくなってくる。最悪、式神の妖は存在ごと消滅してしまう。
そうならないようにあかりたちも細心の注意を払って応戦しているが、時間とともに体力は削られ、余裕がなくなってきた。この戦いがいつまで続くかもわからず、未だ天翔にも会えていない。何が起こるか分からない以上、休憩中とはいえ油断はできなかった。
ふっと空を見上げれば、繁った枝葉の間に灰色の分厚い雲が覗いていた。太陽は雲に隠れ、卯月だというのに肌寒く感じられる。
(不吉な予感がする……)
疲弊しているせいかこの場の四人は黙りこんでいた。不気味なくらいの静寂が辺りに満ちる。しんとした林の中で、あかりは天翔のことを考えていた。
(もし、今お父様に会ったら……)
本当は生きる方向で救いたい。けれども今回の戦いで陰の国の式神がどういった末路を辿っていったか嫌というほど目の当たりにしてきた。きっと天翔も例外ではないだろう。
(そのとき私にできるのは……お父様が望んで、私が選択したように、死という安らぎを与えることだけ……)
一度決心したからにはその選択を変えようとは思わないが、躊躇いや不安はある。それが顔に出ていたのだろう。あかりの右手に左手が重ねられた。あかりよりも大きく、やや体温の低いその手の主は顔を見ずとも誰だかわかった。同時に耳に蘇る声がある。
『ひとりで、抱え込もうとしないで。あかりは、ひとりじゃ、ない』
『決断の責任を、あかりひとりで背負うこと、ない。あかりの父様にはなれなくても、ひとりには、しない。……おれが、いるから』
『天翔様を救おう、一緒に』
(……ううん。私はひとりじゃない。結月がいるし、秋や昴だっていてくれる)
大切な幼なじみの存在があかりの心を奮い立たせる。先ほどまでの躊躇いや恐怖が勇気に変わる。
降霊術でまつりと再会を果たしたその別れ際、彼女はあかりに「自慢の子」と言ってくれた。母にとって娘のあかりが自慢の子であるように、父にとってもそうでありたいと思う。
(そのために私は特別美しい舞と謡をお父様に届けたい。そしていつか再会できたなら、よくやったねって褒めてほしい)
それであかりの抱えるやるせなさも報われるような気がした。
結月に重ねられた左手の下で、あかりはぎゅっと拳を握った。そして顔を上げ、結月の瞳を正面からとらえると「大丈夫」と伝えるようにはっきりとした頷きを返した。結月の心配そうな表情がほんの僅かに緩んだ。
昴のため息は深い。あかりと同様に昴は昴で結界を何度も張っていたため、その疲労もあるのだろう。
「呪詛が、厄介。今までこんなに呪詛が飛び交うこと、なかったのに」
「あいつら、妖をなんだと思ってんだよ……!」
疲れたような結月の囁きに、怒りを滲ませる秋之介の呟き。あかりも彼らの意見には同意で、やるせなさを感じていた。
式神に下した妖に呪詛を運ばせることで、呪詛返しがされても主である術使いは被害を最小限に留められる。逆に言えば呪詛返しの影響をほとんどもろに食らうのは利用された妖だということだ。
ここまでいくと魂が穢れきってしまうため、あかりの邪気払いを以てしても魂の浄化だけでは済まなくなってくる。最悪、式神の妖は存在ごと消滅してしまう。
そうならないようにあかりたちも細心の注意を払って応戦しているが、時間とともに体力は削られ、余裕がなくなってきた。この戦いがいつまで続くかもわからず、未だ天翔にも会えていない。何が起こるか分からない以上、休憩中とはいえ油断はできなかった。
ふっと空を見上げれば、繁った枝葉の間に灰色の分厚い雲が覗いていた。太陽は雲に隠れ、卯月だというのに肌寒く感じられる。
(不吉な予感がする……)
疲弊しているせいかこの場の四人は黙りこんでいた。不気味なくらいの静寂が辺りに満ちる。しんとした林の中で、あかりは天翔のことを考えていた。
(もし、今お父様に会ったら……)
本当は生きる方向で救いたい。けれども今回の戦いで陰の国の式神がどういった末路を辿っていったか嫌というほど目の当たりにしてきた。きっと天翔も例外ではないだろう。
(そのとき私にできるのは……お父様が望んで、私が選択したように、死という安らぎを与えることだけ……)
一度決心したからにはその選択を変えようとは思わないが、躊躇いや不安はある。それが顔に出ていたのだろう。あかりの右手に左手が重ねられた。あかりよりも大きく、やや体温の低いその手の主は顔を見ずとも誰だかわかった。同時に耳に蘇る声がある。
『ひとりで、抱え込もうとしないで。あかりは、ひとりじゃ、ない』
『決断の責任を、あかりひとりで背負うこと、ない。あかりの父様にはなれなくても、ひとりには、しない。……おれが、いるから』
『天翔様を救おう、一緒に』
(……ううん。私はひとりじゃない。結月がいるし、秋や昴だっていてくれる)
大切な幼なじみの存在があかりの心を奮い立たせる。先ほどまでの躊躇いや恐怖が勇気に変わる。
降霊術でまつりと再会を果たしたその別れ際、彼女はあかりに「自慢の子」と言ってくれた。母にとって娘のあかりが自慢の子であるように、父にとってもそうでありたいと思う。
(そのために私は特別美しい舞と謡をお父様に届けたい。そしていつか再会できたなら、よくやったねって褒めてほしい)
それであかりの抱えるやるせなさも報われるような気がした。
結月に重ねられた左手の下で、あかりはぎゅっと拳を握った。そして顔を上げ、結月の瞳を正面からとらえると「大丈夫」と伝えるようにはっきりとした頷きを返した。結月の心配そうな表情がほんの僅かに緩んだ。
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