【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第二〇話 青の光

第二〇話 六

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 本来の目的を思い出した途端、あかりの背を悪寒が駆け抜けた。正面の昴とその後ろにいる秋之介も同じように感じたのか顔色が優れない。
 いくら強い霊力を持っていてもこの場に長く滞在することは厳しそうだ。その渦中にいる結月は大丈夫なのか、上空を見上げたあかりは目を見開いた。
「結月っ!」
 殺気が矢のような形をとり、結月に降りかかる。
 あかりは咄嗟に「心上護身、身上護身、朱咲護神、急々如律令!」と唱えた。
 あかりの言霊が届くか届かないかのうちに結月は体積の大きい龍の姿では格好の的になると考えたらしく、ぱっと人間姿になると勢いよく地面に降り立った。
「結月、大丈夫⁉」
「あ、かり……。さっきの、助かった。ありがとう」
 駆け寄るあかりを目にした結月は安堵したような表情を見せたが、かなりの体力と霊力を消耗しているらしくすぐに苦しそうな表情になった。
「ゆづくん、怪我は?」
「大きな怪我は、ない」
「そう。なら良かったよ」
 結月の身を案じていた三人はひとまずはとほっと息を吐いた。しかしすぐに表情を硬くすると先ほどまで結月が戦っていた宙を見た。
「一瞬で空気が変わったよな。何だったんだ、あれ」
「二重の結界だろうね」
  昴はほとんど確信的に、秋之介の問いに答えた。あかりはちらりと結月の顔を見上げたが、彼もまた昴の意見に同意らしくひとつ頷いた。
「五つの符で構成された、破壊の結界と、それが壊されても、残りの符に力が集まるようにできた結界のふたつ」
「なるほどな。道理で妙だと思ったぜ」
  秋之介のいわんとしていることをあかりも察する。
「秋の言う通りだね。符の周辺に無頓着みたいにひと気がなかったのも二重の結界っていう保険があったから、だよね?」
「そういうことだろうね」
「うん。そうだと、思う」
  何が起こったのか現状は把握できたが、根本的な問題は解決していない。
  あかりは件の残りの結界に目を向けた。そこでは今もなお禍々しい気が噴き上がっている。その上余波はあかりたちのいる場所まで及んでいて、悪寒がするにも関わらず、背にはじっとりとした汗が滲む。
  早いところ決着をつけなければ、あかりたちも倒れかねない。
「どうしたら……」
  焦り、惑うあかりを結月はちらりと見下ろす。その青の瞳はあかりとは対照的に静かに凪いでいた。
  何かの覚悟を決めたのか彼の瞳の奥には強い光が宿っているように感じられ、あかりは思わず不安に駆られて呟いた。
「結月?」
「やっぱりおれは、残りの符を無力化してくる。結界が霊符で構成されてるなら、霊符使いのおれが行った方がいいと思う。それに、ここはおれが守るべき東の地、だから」
「ひとりで行くの?」
  あかりの不安を感じ取ったのか、結月は淡く微笑むと緩く首を振った。
「ひとりじゃ、ない。あかりと秋と昴が、支えてくれる。そうでしょう?」
  残りひとつの符を無力化すると言うのは簡単だが、それを実現することは決して容易ではないだろう。結月だってわかっているはずだった。それなのにあかりたちに全幅の信頼を寄せてくれているとなれば、あかりに否やはなかった。
「わかったわ。私たちは何をすればいいの?」
「あかりには反閇を、秋にはあかりの支援を、昴には新しい結界をお願いしたい。おれは上空から符を放ってみる」
  四人は同時に頷き合うと、各々の役割を果たすべく準備を始めた。
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