【BL】異世界転生したら、初めから職業が魔王の花嫁のおじさんの話

ハヤイもち

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カルテ#14 ど派手な脱獄ーやはり彼こそ魔王の花嫁ー

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心臓がバクバクと踊る。
もう口から出そうだ。

「ハァッ、ハァッ、もう、無理、は、走れない…ハァッ、」

ふらつく私をルキが引っ張る。

「ゼェッ、ハァッ、この部屋、この部屋に入って!」






騎士団長は私たちを一人で追いかけるよりも
騎士たちを集めて追い詰める作戦らしかった。

なるほど、確かに衛兵よりも利口だ。

すぐに追い詰められた私たちは
ルキが示した部屋に入った。

ルキが内側から呪文で鍵をかける。
ドンドンと外から扉をぶち破ろうとする音がする。

おそらく扉が破られるのは時間の問題だろう。

「大丈夫だ、桜先生」

先ほどとは打って変わって自信ありげな表情を浮かべる
ルキを私は不思議な気持ちで見つめた。

「ここはオイラの召喚部屋。ここには過去に召喚した魔法陣、
材料がすべてそろっている。なんでも召喚できるよ」

「ほう!そうか。王宮の一流召喚士の本領発揮かな?」

「ああ!任せて。リクエストは何かある?」

「そうだな、ぜひ見たいものがあるんだ。
ど派手に脱出と行こうじゃないか」

「わかったよ、桜先生!」

ルキは布の魔法陣と材料を素早く並べる。
マジックでも見ているような手際の良さに
わくわくしながら見つめた。

ルキが呪文を唱えると、魔法陣が白く光る。

「いでよ!…」











ドカンっという音とともに
木製の扉がけ破られた。

しかし、その音をかき消すように雪崩のような
凄まじい音が辺りに響き渡った。

「急げっ」

部屋に突入した騎士たちが音の方に走る。
天井だったものが崩れ落ちて、黄色い砂煙が上がっていた。
ゴホゴホとせき込みながら上を見上げると
そこには天井がなく、夜空が見えていた。

「ドラゴンだ!」

騎士の一人から声が上がる。


金色の目、巨大な翼、ルビーのような神々しい鱗。
騎士が指さした方には、空に浮かぶドラゴンがいた。


「お前ら、騎士団長によろしくなー!」

「夜遅くに大きな音を立ててすまないね。
夜更かしは健康に悪いからゆっくりお休み、それでは」


ドラゴンの上からひょっこりと顔を出し召喚士が叫ぶ。
それに続いてその後ろにいた魔王の嫁が叫び、挨拶でもするように
手を挙げた。





ドラゴンはすぐに空高く飛び去り、
やがて空に浮かぶ星々と見分けがつかなくなった。

騎士たちは呆然と空を見やるしかなかった。
後に残ったのは無残に崩れた王宮の一室。

やげて、騎士たちは気づくだろう。
囚人たちの脱獄と一人の衛兵の死体に。

彼らはそして思うのだ。


賢く冷徹にして、凶悪な男。
史上最悪の脱獄事件を引き起こした張本人。


やはりあれこそ『魔王の花嫁』だと。




ドラゴンが飛び去った空を見つめながら

一人他とは違う人間がいた。

騎士団長だ。

彼は檻に捕まえたと思ったらすり抜けた
可愛い蝶のことを考えていた。

さて、あれはどこへ逃げただろうか?

捕まえるのが楽しみだ。
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