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カルテ#25 トロールを飼うのは難しい_元の場所に返してきなさい_
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私のいた場所には私の身長ほどの長さの
黒い木槌が振り下ろされていた。
黒い影がこちらを振り返る。
背丈は4メートルくらいだろうか。
豚のような醜い顔にイノシシのような牙。垂れた腹の肉。
「トロールだ!」
ルキが叫び、私もすぐに銃を懐から取り出し構えた。
しかし、正面から私を見たトロールが動きを止める。
「…う゛うう゛~、、う゛?」
唸り声のような声を上げて、襲い掛かるかと思いきや
不思議そうに首をかしげる。
「う゛っう゛う゛~!」
そして私をじっくり見て、つぶらな黒い瞳をめいいっぱい
開いたかと思うと、そのまま地面に膝をついた。
「…なに?」
まるで王に忠誠を誓うかのようなポーズで私に頭を下げるトロール。
私はどうしたらいいかわからずそのままトロールに向けて銃を構えていたが、
その間にルキが何やら召喚した。
「出でよ!万物の言語を解するものよ」
現れたのは琴のようなものを抱えた妖精。
「あいつの言葉を翻訳してくれ」
「わかりました。『魔王の花嫁様。ご無礼をお許しください。
我ら魔物一同あなたのご到着を首を長くして待っておりました』」
「え?」
「うん、うんそれで?」
「『私もあなたを守るために旅に同行させてください』」
「うっ、いやだぞ。トロールを旅の仲間に?絶対嫌だ」
妖精の言葉を聞いてルキが思いっきり顔を顰めた。
私も同感だ。
「すまないが、ルキ。トロールに帰ってもらうように
言ってくれるかい?」
「わかったよ」
ルキが指示を出すと妖精がトロールの方に近づく。
トロールは妖精の言葉を聞くと、豚顔を歪めて悲しそうな顔をして私を見た。
「うっ、あんな悲しそうな顔している。豚のペットだと思えば。…」
「ほだされないでよ、桜先生!あれはトロール。
もう寝るスペースはケロでいっぱいだから無理だよ。
飼えないよ。元のところに返してきて」
「わかった。わかったよルキ。心を鬼にして…ごめんよ。トロール」
妖精がルキの元に帰ってくる。
「『わかりました。ご無理を言って申し訳ありません。
ですが魔王様との結婚式には呼んでください。
盛大にお祝いさせていただきます』」
トロールは私の方を名残惜し気に振り返ると、すごすごと森へ引っ込んでいった。
「結婚式かぁ。ケーキ食べれるかな?」
ルキがほややんとした調子でつぶやいた。
トロールは去っていった。盛大な爆弾を残して。
※※※
「この歳になって二度目の結婚式なんて冗談じゃない。
しかも花嫁だって?そんな恥をかくくらいなら
魔王と敵対して、魔王を倒す勇者になってやる」
「まぁまぁ桜先生。おいしいもの食べれるかもしれないじゃん」
「私は食べ物でつられたりしないよ。
盛大にお祝い?何をする気なんだ。もう嫌だ。早く帰りたい」
真っ青になってつぶやくわたしを隣でルキがなだめる。
いつもとは逆だ。
「そんなに嫌なの?桜先生」
「もちろんだろう、いやに決まってる」
ルキの言葉に私は秒でうなづいた。
そりゃそうだ。
こんな歳で花嫁衣裳なんて絶対に着たくない。
ルキはちょっと黙ってから言葉を紡いだ。
「そっか。…それなら桜先生。オイラこの依頼が終わったら
桜先生を元の世界に返す召喚をするよ」
笑ってルキが言った。
「えっ…」
「そしたら結婚式からは逃げられるんじゃないかな」
「でも、ルキは、それじゃあ…
ルキも私と一緒にこっちの世界に来てくれないか?
一緒にこっちで家族として暮らそうよ」
ルキは私の言葉に目を見開いた。
そして悲しそうに首を横に振った。
「オイラはこの世界でまだやるべきことがあるみたいだ。
だけど桜先生はあっちに大事な人がいるんだろう。
これ以上桜先生を巻き込むのも悪いし、
桜先生はやっぱりあっちの平和な世界が合ってるよ」
にこっと笑うルキの顔に私の方が苦しくなる。
馬鹿だ。
ルキじゃない。自分に対してだ。
利用しようとか、
簡単に見捨てられるとか思っていたのはどの馬鹿だ。
私だ。
黒い木槌が振り下ろされていた。
黒い影がこちらを振り返る。
背丈は4メートルくらいだろうか。
豚のような醜い顔にイノシシのような牙。垂れた腹の肉。
「トロールだ!」
ルキが叫び、私もすぐに銃を懐から取り出し構えた。
しかし、正面から私を見たトロールが動きを止める。
「…う゛うう゛~、、う゛?」
唸り声のような声を上げて、襲い掛かるかと思いきや
不思議そうに首をかしげる。
「う゛っう゛う゛~!」
そして私をじっくり見て、つぶらな黒い瞳をめいいっぱい
開いたかと思うと、そのまま地面に膝をついた。
「…なに?」
まるで王に忠誠を誓うかのようなポーズで私に頭を下げるトロール。
私はどうしたらいいかわからずそのままトロールに向けて銃を構えていたが、
その間にルキが何やら召喚した。
「出でよ!万物の言語を解するものよ」
現れたのは琴のようなものを抱えた妖精。
「あいつの言葉を翻訳してくれ」
「わかりました。『魔王の花嫁様。ご無礼をお許しください。
我ら魔物一同あなたのご到着を首を長くして待っておりました』」
「え?」
「うん、うんそれで?」
「『私もあなたを守るために旅に同行させてください』」
「うっ、いやだぞ。トロールを旅の仲間に?絶対嫌だ」
妖精の言葉を聞いてルキが思いっきり顔を顰めた。
私も同感だ。
「すまないが、ルキ。トロールに帰ってもらうように
言ってくれるかい?」
「わかったよ」
ルキが指示を出すと妖精がトロールの方に近づく。
トロールは妖精の言葉を聞くと、豚顔を歪めて悲しそうな顔をして私を見た。
「うっ、あんな悲しそうな顔している。豚のペットだと思えば。…」
「ほだされないでよ、桜先生!あれはトロール。
もう寝るスペースはケロでいっぱいだから無理だよ。
飼えないよ。元のところに返してきて」
「わかった。わかったよルキ。心を鬼にして…ごめんよ。トロール」
妖精がルキの元に帰ってくる。
「『わかりました。ご無理を言って申し訳ありません。
ですが魔王様との結婚式には呼んでください。
盛大にお祝いさせていただきます』」
トロールは私の方を名残惜し気に振り返ると、すごすごと森へ引っ込んでいった。
「結婚式かぁ。ケーキ食べれるかな?」
ルキがほややんとした調子でつぶやいた。
トロールは去っていった。盛大な爆弾を残して。
※※※
「この歳になって二度目の結婚式なんて冗談じゃない。
しかも花嫁だって?そんな恥をかくくらいなら
魔王と敵対して、魔王を倒す勇者になってやる」
「まぁまぁ桜先生。おいしいもの食べれるかもしれないじゃん」
「私は食べ物でつられたりしないよ。
盛大にお祝い?何をする気なんだ。もう嫌だ。早く帰りたい」
真っ青になってつぶやくわたしを隣でルキがなだめる。
いつもとは逆だ。
「そんなに嫌なの?桜先生」
「もちろんだろう、いやに決まってる」
ルキの言葉に私は秒でうなづいた。
そりゃそうだ。
こんな歳で花嫁衣裳なんて絶対に着たくない。
ルキはちょっと黙ってから言葉を紡いだ。
「そっか。…それなら桜先生。オイラこの依頼が終わったら
桜先生を元の世界に返す召喚をするよ」
笑ってルキが言った。
「えっ…」
「そしたら結婚式からは逃げられるんじゃないかな」
「でも、ルキは、それじゃあ…
ルキも私と一緒にこっちの世界に来てくれないか?
一緒にこっちで家族として暮らそうよ」
ルキは私の言葉に目を見開いた。
そして悲しそうに首を横に振った。
「オイラはこの世界でまだやるべきことがあるみたいだ。
だけど桜先生はあっちに大事な人がいるんだろう。
これ以上桜先生を巻き込むのも悪いし、
桜先生はやっぱりあっちの平和な世界が合ってるよ」
にこっと笑うルキの顔に私の方が苦しくなる。
馬鹿だ。
ルキじゃない。自分に対してだ。
利用しようとか、
簡単に見捨てられるとか思っていたのはどの馬鹿だ。
私だ。
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