御伽噺GIRLS!! ~赤ずきんちゃんが銃を撃ったり雪女が冷気で斬撃をしたり恩返しの鶴が魔法少女に変身をしたり~

八乃前陣(やのまえ じん)

文字の大きさ
17 / 134

☆第十七話 雪女のお仕事☆

しおりを挟む

 お婆さんたちが乗ってきた時、章太郎は扉とは反対側を向いていて、気付かなかった。
 一番最初に気付いたのは、美鶴。
「あ、お婆ちゃ~ん♪」
「ん?」
 話し声よりは耳に届く声だったのは、三人にもお年寄りの存在をさり気なく教える為だろう。
 章太郎が席を譲ろうと立ち上がるよりも、少し早く。
「お婆さんたち、どうぞ、座って下さい」
 と、ブーケたちが立ち上がった。
「あ…」
 少し慌てた感じになってしまった少年も、席を譲る。
「どうぞ」
 若者に席を譲って貰ったお婆さんたちは、ニッコりと嬉しそうだ。
「あらまぁ、ありがとうねぇ」
「こんなめんこい娘さんたちに 譲って貰っちゃって♪」
「親切にどうもねぇ」
 腰掛けたお婆さんたちにお礼を貰うと、やっぱり嬉しい。
 お婆ちゃんが大好きだったブーケと、お爺さんお婆さんと暮らしていた美鶴は、特にニコニコの明るい笑顔だ。
 同じく微笑みながら、少し寂しそうな感情も読めるユキ。
「………」
 気になった章太郎は、ヒソヒソ声で訊いてみた。
「ユキ、何か気になるの…?」
「え、いいえ、その…」
 ガマンして言いづらいというより、何か申し訳なさのような、複雑な表情を見せる。
「…私たちの物語では、その…山で小屋に避難した男性の中でも、お爺様の命を奪うというお話が、とても多い事は…章太郎様も ご存じだと思われますが…」
「ああ、たしかに」
 雪女の物語で雪山で遭難するのは、時代背景的にも、大抵が男性である。
 それも、若者とお年寄りがほとんど。
 そして、雪女を見た事を秘密とさせるため、若者の目の前でお年寄りを凍死させたりするのも、わりとデフォだ。
「…ユキも そうしてたって事?」
「い、いいえ…っ! あの民話は、人間側の視点と言いますか…っ! それも したかのない事では、あるのですが…」
 一節にもあるけれど、雪女は、死者を霊界へ送る役目も与えられているという。
 雪山で遭難した人間の中でも、特に酷い状況に置かれた男性たちの中で、遭難状況を生きられないのは、どうしたって体力のないお年寄りだ。
 寒さの中での凍傷などの重傷によって、山を下りた後も苦しみ続けるより、健康なうちに、苦しまずに命を終わらせる。
 それも、雪女に与えられている使命だと、ユキは話した。
「…ですが、それを人間に上手くお伝え出来たとしても、やはり 納得はして戴けないでしょう…」
 シュンと落ち込む雪女。
「まあ…西洋で言うヴァルキリーみたいに、神様の軍勢として天界で復活する~とかじゃあ ない感じだもんな…。雪女に送って貰ったら天国って事?」
 と、気になったので尋ねたら。
「天国…? という場所は、存じ上げませんが…御仏の弟子となって、霊界で新たな地位を得られます♪ もちろん、私たちが送る方は、みな善行にて生涯を過ごされた、徳の高い方々のみ、なのですが♪」
 雪女に与えられた使命に関しては、とても誇らしい様子。
 冷徹な雪女という言い伝えは、確かに辛いだろう。
「でもさ、天…霊界に行った人たちは、雪女たちの行為の意味が解ってるだろうし、きっと感謝してると思うよ」
 本当に、そう思った章太郎。
「…はい…♪」
 ユキの笑顔が、明るくなった。
「章太郎くん、ユキちゃん、はい~♪」
 美鶴が笑顔で差し出した掌には、包まれた飴玉が二つ。
「お婆ちゃんが、くれたよ~♪」
 席を譲ったお婆さんたちが、四人にくれたらしい。
「まぁ…ありがとうございます」
 と、美しい礼を返すユキに、お婆さんたちは。
「あらまぁ~。所作が美しいわねぇ」
「大和撫子よねぇ♪」
「ウチの娘にも見習って欲しいわよ。あはは」
 と、関心をしていた。
「そ、そんな…」
 お年寄りから褒められた雪女は、恥ずかしそうにモジモジしている。
「ユキ、褒めて戴いたな♪」
「ユキちゃん、礼儀正しいもんね~♪」
「み、みなさんまで…」
 白い肌の雪女が、耳まで真っ赤に上気。
「え、えっと…」
 お婆さんたちと三人の楽しい空気で、章太郎は、飴のお礼を言いそびれていた。

 地元駅へ到着して、電車を降りて改札を出る。
「し、しまった…っ!」
 ブーケが間違えて、ICカードをキップのように、改札の機械へ挿入してしまった。
「こ、高価なカードを…章太郎、すまない…っ!」
 焦る少女は、どうにかカードを取り戻せないかと、挿入口を覗き込む。
「大丈夫だよ。ほら」
 章太郎が指さした取り出し口には、すでにカードが排出されていた。
「おおっ、戻ってきてくれたか…っ! 良かった…」
 改札を駆け抜けながらカードを回収し、胸に抱いて心からホっとするポニテ少女。
 そんな様子に、ユキや美鶴も。
「この…かーどという小さな板は、このかいさつという箱に飲み込まれても、自分で出てくるのでしょうか?」
「すごい~、頑張り屋さんだね~♪」
「う~ん…」
 説明するのも、少女たちのプライドを傷付けそうで、躊躇う章太郎。
 美鶴とユキも楽しそうに、カードを飲み込ませて通過をしていた。
「この感じなら、カードを回収し忘れるって事は、無さそうだな」
 この世界で生きて行く以上、少しずつでも慣れれば良いのだ。
「駅前のデパートに寄ろう。地下が食料品売り場だから」
「デパートとは、あの大きな建物か♪」
「魂だった頃にも、外から拝見いたしましたが…♪」
「中に入ってみたかったんだよね~♪ どうなってるのかな~?」
 三人それぞれの時代設定で想像をして、ワクワクしている感じだ。
「そうだな…地下階に降りる前に、上の階も見てみようか」
 四人は、駅から続いているデパートの二階へと降りてみる。
 駅の通路から本館へ入ると、生活雑貨を扱うフロアだ。
「わあぁ…ここが、でぱあと というお屋敷の中なのですか…♪」
「広~い♪」
「まるで、お城の謁見の間だな…♪」
 御伽噺が出身の三人にとっては、地方のデパートでも、かなり豪勢に映ったらしい。
「このフロアは、生活雑貨…ええと…」
 生活雑貨を、少女たちにも解るように、言い換えようとして。
「解るぞ。つまり、生活に必要な色々が売っているのだろう?」
「ああ、そうそう」
 食器類や、キッチン廻りの小物入れ、バス用品や掃除用具など、各種の取り揃えは地域一番のデパートである。
 三人の興味のままにフロアを歩いて、章太郎は付き合う形だ。
「わぁ~タワシ~♪ ここにもあるんだ~♪」
「まあ…姿形も、私たちの頃の束子と、同じなのですね…っ!」
「ボクのいた世界のブラシとは、また違う素材や形なのだな…っ!」
 そんな発見も、楽しいようだ。
(そうだよなぁ…御伽噺の世界設定というか、時代設定というか…やっぱり「むかしむかし あるところに」っていう感じだもんなぁ…)
 と思って「また三人の話の通りで考えてる」とか想いながら、もうそれを否定する気は無くなっている、現実主義者。
「それにしても、このナゾの板は何なのだ? やけに艶々していて柔らかくて 触り心地が良いのだが♪」
 ブーケが手にして、掌をスリスリさせているのは、スーツの埃などを取る、通称エチケット・ブラシであった。
「ああ、それは 衣服のホコリとかを取るブラシだよ」
 ブーケたちが手にしているブラシは、店頭の見本品で、誰でも自由にお試しが出来る。
「俺たちの制服とかの、表面に付いた埃を 撫でて取るんだ」
 丁度、章太郎の学ランの左肩に白い糸くずが付いていたので、目の前で使って見せた。
 ブラシが撫でた直後に、濃紺色の学ランで目立っていた白い糸くずが、消える。
 一瞬の出来事に、三人は目を大きくして、驚いていた。
「「「ぇええ~っ!?」」」
「い、糸くずが、一瞬で…っ?」
「なんという魔法だっ?」
「糸くず、どこに消えたゃったの~っ?」
「ここに付いたんだ」
 糸くずが付いたブラシの表面を見せると、三人はジっと注視をする。
「こ、これは…っ!」
「この艶々~っ、糸を取っちゃったの~っ?」
 三人は驚いて、更にユキは。
「なんと素晴らしい…っ! お洗濯が とても楽になりそうですわ…?」
 と、家事好きらしい感動を覚えていた。
(…もっと色々と見せてあげたいな)
 章太郎も、楽しくなっている。
                        ~第十七話 終わり~
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...