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☆第二十六話 反省会☆
しおりを挟む「「「………」」」
いつもの夕食風景だけど、今日はみんな、空気が重かった。
(…やっぱり、原因はアレだよなぁ…)
昼間の、蜃鬼楼との戦いである。
両腕で自分の身体を完全防御し、更に防御の腕から三人の必殺技のエネルギーも吸収して、攻撃に転用。
こんな強力な鬼が出てくるなんて、四人とも驚かされた。
攻略法として、聖力目当てな章太郎を舌で捕らえる為にガードを開くのを利用して、舌で絡め取られた章太郎が脚でガードを開きっぱなしにして、三人の必殺技で退治。
少年としては、三人の少女は負傷しなかったし、勝利出来た事が一番嬉しい。
しかし三人の空気は、どこか遠慮がちで、重たかった。
「ほ、ほらみんなもっ、今日は九州限定のカップラーメンだぞっ♪ あぁ~、脂の薫りが少しキツくて、良い感じだなぁ~」
と、明るく振る舞っても。
「そうだな…ふふ」
と、無理に微笑んでいるのが解る。
三人が共通して大好きなカップラーメンも、あまり食が進んでいない。
(うぅ…)
どうしよう。
女子との会話なんて日常的では全く無い少年としては、この空気も重いけれど、それをどうやって回復をさせれば良いのか、全く思いつかない。
(みんなが気にしてるのって、やっぱり…俺が戦いに出張った事、だよなぁ…)
それが邪魔だった、とかではない。
御伽噺の少女たちがこの世界に存在している一番の理由は、章太郎の聖力を根こそぎ吸い取ろうとしている鬼たちから、章太郎を護る為である。
聖力を吸い尽くされると、命だって消失しかねない。
そして今回は、章太郎が自身を囮として、鬼に隙を作ったのだ。
その事が、少女たちにとっての「申し訳なさ」となってしまっているのだろう。
食事を始めて三十分。
すでにラーメンも、伸びてしまっている。
(…こ、こうなったら…)
男女の空気が重くなった場合、まずは男性が謝って、事態好転の切っ掛けを探るのも良し。
とか、ネットで読んだ事がある。
章太郎は、テーブルから凄い速さで床へと正座をして、拘束の土下座。
「あっあのっ…今日はそのっ、勝手な事してっ、ごめんっ!」
額を床に擦り付ける程の、見本のような土下座だ。
そんな少年に、三人は戸惑う。
「い、いや…ショータローが謝る事では…っ!」
「そうだよ~」
「章太郎様…どうか、お顔をお上げ下さい…」
心配をしてくれる三人だけど、やはり言葉が弱々しかった。
「いやあのっ…お俺が勝手にっ、ああいう行動に出たから、その…っ」
三人を落ちこませてしまった。
土下座の少年の前へと、三人は膝をつく。
「シヨータロー、どうか頭を上げてくれ…。ボクたちは、ショータローを責めているのではないのだ…」
恐る恐るに頭を上げると、三人は悲しげな視線のまま。
「今日の蜃鬼楼は…章太郎様のお考えの通り、厳しい相手でした…」
「章太郎くんの機転がなかったら~、あたしたち、みんな蜃鬼楼に倒されちゃってたもんね~」
章太郎の行動については、特に咎めるつもりはない様子。
「だだね~、あたしたちがもうちょっとこ~…強かったら~、とかね~」
「そうであったら…ショータローを危険に晒してしまうような事など、なかったのだ…」
「…はい…」
三人は、自信をなくしてしまっているようだ。
「………」
こういうときに、どんな言葉を掛けて良いのか、章太郎には解らない。
ただ、三人には自信を持って欲しいし、護ってくれる事に感謝をしている。
「あ、あのさ…」
自分でも、何を話そうとしているのか、よく解っていない。
「こういう話をしたら、その…怒られてしまうかもだけどさ…俺は、その…さっきの 戦い…? ちょっとその…誇らしかったんだ…」
「「「…?」」」
章太郎の言葉の意味が、よくわからないらしい三人。
「なんていうか、その…俺はほら、なんの特技もない、タダの高校生だろ? だから、ブーケたち三人に護って貰ってばかりでさ…。勿論、感謝してるんだけど、男子としてはその…ちょっと情けないって言うか…俺もその、三人に護られるばかりじゃあ、その…ヤだなって、思っててさ…」
「…ショータロー…」
出来るだけ女性を護りたい男性の本能としては、三人に護られるよりも護りたいし、それが出来なくても、せめて戦いの力にはなりたい。
「だからその…今日みたいな、強い敵がどうこうじゃなくて、俺はその…戦いで、三人に勝機を作れたのが、正直に…嬉しかったんだ…」
「章太郎様…」
「そ、それが三人には、心の負担になっちゃったなら、その…っ!」
と言って、もう一度の土下座。
「ただその…えっと…なんて言ったらいいのか…」
自分の想いがちゃんと言葉に出来なくて、自分にライラしたり。
「章太郎くん、わかったよ~」
その声は、優しかった。
「はい…私も、章太郎様の想いを…とても嬉しく感じます…?」
「ボクもだ…。そして、ボクたちがするべき事が、ショータローの言葉で、解った気がする…!」
ブーケの言葉に、ユキも美鶴も笑顔で頷く。
「…?」
章太郎にはなんの事が解らないけれど、三人は、元気と自信を取り戻した様子である。
四人ともテーブルへ戻って、ラーメンを一口食べた美鶴が、楽しそうに笑う。
「うわぁ~、ラーメンすっかり 冷めちゃってる~♪」
「ずず…うむ、本当だ。しかもメンが、柔らかくなってしまっているぞ」
ブーケは箸で麺を食べて、残った麺が千切れて落ちるのが、不思議そうだ。
「ふふ…ですが、これもまた経験ですわ」
「そうだな♪」
三人とも、一つ何かを悟ったような、決意をしたような、清々しい美顔である。
「…まあ、食べられない物ではないけど…」
なんだか解らないけれど、とにかく三人の元気が戻った事は、確かな様子。
「今度は、のびる前に食べないとな」
「そうだね~♪」
そんなラーメンは、なんだか美味しかった。
それから数日が過ぎた、土曜日。
祖父の章之助から言われていた、オカルト少女たちの素体検査の日だ。
昨日の電話によると、昼の十一時にはマンションの地下駐車場へと、研究所の車が迎えに来るとの事である。
朝食も昼食も抜いて来てくれとの事だったので、三人はご飯抜きな状態。
「章太郎様は、お召し上がりになられても 良かったと思いますが…」
年頃で食べ盛りな少年のお腹が、さっきからグーグーと食べ物を要求して五月蠅い。
「いや、まぁ…ご飯はみんなで食べた方が、美味しいから…」
空腹を押さえながら、忍耐笑顔の章太郎である。
「そろそろの筈だが…」
「あ、車~♪」
言われて出入り口を見ていたら、白いバンが侵入してきた。
ゆっくりと目の前で停車をした車には、企業の研究所名がプリントされている。
運転席の扉が開かれて降りてきたのは、スーツ姿の若い女性だ。
「初めまして、あなたが章太郎くんですね? 私は、御伽噺章之助博士の助手で、忠実真希(まめ まき)といいます」
「え、あ…はい…どうも…」
送り迎えの運転手なので、なんとなくサングラスの男性とかを想像していた。
章太郎は「迎えに来た時に運転手の顔をチェックすれば良いか」くらいで考えていたので、女性だと知って、ちょっと驚いている。
真希は、長い赤髪がフワフワカールされたヘアスタイルで、しかし良く見ると寝癖のようでもあった。
面立ちは丸顔で鋭い視線で、細い鼻筋にキュっと引き締まった脣が真っ赤で、なかなか情熱的な印象。
しかし、口紅以外は化粧っ気のない美顔と、目の下に割と目立つクマが出来ているあたり、研究者のイメージそのままだとも感じられた。
身長は平均的だけど、プロポーションは相当に恵まれている。
研究者よりもグラビアモデルを目指せば、世界で通用しそうだと、世の男性たちなら考えるだろう。
「あ~っ、真希ちゃんだ~♪」
美鶴がとても喜んで。
「お久しぶりです、真希さん…♪」
「研究所では、お世話になりました」
と、ユキもブーケも再会を喜んでいた。
「あぁ…三人とも、知り合いなんだ」
なら安心して、車に乗れる。
「えっと…いつも爺ちゃんが お世話になってます」
と、章太郎もあらためて、頭を下げて、そつの無い挨拶をした。
「いいえ。私たちこそ、章之助博士には、勉強をさせて戴いております」
と、敬意を感じさせる挨拶を返してくれた。
(天爺ちゃんの助手さん…で、いいのかな)
と、何となく考えていると。
「ところで章太郎くん。キミ、お酒は飲める方ですか?」
と、高校生に向かって、大真面目な美顔で尋ねて来た。
~第二十六話 終わり~
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