御伽噺GIRLS!! ~赤ずきんちゃんが銃を撃ったり雪女が冷気で斬撃をしたり恩返しの鶴が魔法少女に変身をしたり~

八乃前陣(やのまえ じん)

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☆第三十四話 剣身の献身☆

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「こ、これは…っ!」
 章太郎の身体に、メカ生体のアーマーが纏われていた。
 鎧甲冑のようなガチャガチャした感じではなく、むしろ変身ヒーローとかに近いスッキリ感がある。
 絵本などで見る桃太郎のデザインを、服装だけでなく頭髪などまで外装として落とし込んだような、まさに桃太郎を装着している感じだ。
 少年の変身に、開発者である章之助博士も、楽しそうだ。
「おお、なかなか上手く行くもんじゃのう♪」
「そっか…またこれが 初動実験なんだっけ…」
 鎧っぽい重装感というか、動きにくさを感じさせない姿に、真希も思う。
「それにしても、桃太郎ではありますが、断然ヒーローっぽい感じなのですね」
「あ、それは俺も思いました。爺ちゃんコレって、爺ちゃんがデザインしたの?」
「んにゃ。むしろ章太郎の頭の中が、姿形の源泉じゃな」
 と言いながら、お供のメカ生体犬猿雉を見ながら答えた。
「俺の…? ああ、そういえば…っ!」
「ショータロー、何か 思い当たる節があるのか?」
 赤ずきんは、相変わらず犬科を恐れる感じもなく、メカ巨犬のお腹をナデナデしながら聞いてくる。
「ああ、うん。小さい頃、こういうオモチャでよく遊んでたし、変身ヒーロー特撮も見てたから」
「へ~、章太郎くんも~、意外と普通の男の子だったんだね~♪」
 美鶴というか、鶴の感想。
「どういう意味?」
 子どもの頃は、変身ヒーロー特撮や戦闘系メカホビーで遊んでいた、という意味では、普通の男子児童だった章太郎。
「ですが、現在の章太郎様は、とても物理的な思考でいらっしゃいますよ」
 メカ巨猿の肩に腰掛ける雪女は、まさにキングコングの和風アレンジそのものだ。
「え、ああ…まぁやっぱり、名前でからかわれていた反動だろうな…」
 御伽噺という直球な名字で色々と弄くられていたから、逆に現実主義者になったけど。
「つまり、俺の根っこが 三体のお供とかこのアーマーで形になった…って事だよね?」
「そうじゃな。まあ、現実に軸足を置く事は大切じゃが、ロマンの無い人生は無味無臭じゃからのう」
 と、孫の現状と人生訓を嬉しそうに語る、章之助博士。
 天才科学者という、物理とロマンの塊みたいな人物が語ると、説得力も理解する章太郎であった。
「で…これが、武器?」
 腰の左に、刀が下げられている。
 赤い鞘に収められている日本刀は、刃渡りだけでも一メートル半ほどという、標準よりも長いサイズ。
 湾曲も、現在の基準となっている日本刀に比べてややキツめで、時代的には古い日本刀を思わせた。
 全体的にはやはり、メカっぼいディテールと生物っぽい有機パーツが融合していて、握りの先には目玉まであって、なんだか章太郎の方をジロジロと見ている感じ。
「えっと…これ、抜いて平気 なの…?」
 なんというか、番犬にでも睨まれているような、刀の警戒感を感じたり。
「抜いてみれば解るぞい」
 無責任だけど唯一の答えを、サラっと告げる章之助博士だ。
「ま、まぁそうだけど…むむっ!」
 取り敢えず柄を握ったら、先端の目玉が血走った感じに見つめてくる。
「なんか、怒ってる…?」
 手を放したら怒っている空気感がなくなったものの、また握ったら、白目部分を赤く血走らせて、強く見上げてきた。
「…あのー、爺ちゃん。本当に、抜いて平気…?」
 なんだか、このまま抜いたら怒りが罰で、章太郎の首とかがはねられてしまいそうな感じもする。
「桃太郎くんの力じゃろ? まあ、死ぬような事には なるまいて」
 気軽な老博士に言いたい事を含みながら、章太郎は刀を抜いてみる事を決意。
(まあどのみち、抜いてみないとわからんってのは、その通りだしな)
 赤いメ生体な柄を強く握って、息を吐く。
 刀の目は、更に強く充血をして、章太郎を見上げている。
「刀よ、どうか…乱暴だけは勘弁なっ! はぁあっ!」
 ――っスラ…っ!
 刀身は抵抗なく鞘を滑って、神聖な反射を見せながら空気へ触れる。
 抜かれた剣身は、全く不純物のない水晶のように、透明で清んで神々しい威圧感があった。
「こ、これは…っ!」
「ほほぉ、なかなか綺麗な剣じゃのぉ」
「はい。惚れ惚れしますわ!」
 開発者の二人は納得している。
「とても美しい…水晶の剣か…?」
「私には…神聖な氷の刀に思えます…?」
「風の剣~、とかっぽい感じもするよね~♪」
 御伽噺の三人娘も、清んで煌めく刀剣に感動し、お供の三体もそれぞれの傍らで嬉しそうに見つめていた。
「な、なんか…凄い攻撃力とか ありそう…っ!」
 刀身を見ているだけで、男子の本能がワクワクしてくる。
 無意識に正眼で構えると、柄の眼球がまだ血眼で、章太郎を見上げていた。
「う…っ!」
 少年らしい、挑戦的なワクワク感が、アっという間に低姿勢となる。
「えっと…それじゃあ、振ってみるけど…いい?」
 お伺いを立てる少年に、無言の目玉は、ヤレヤレな空気を感じさせていた。
「な、なんか 刀から許可が貰えたんで…すうぅ…」
 深く息を吸って、目の前の地下空間を見つめ、空気へ向かって上段に振り被って。
「っィヤアっ――はぁあぁ…っ!」
 全力で振り下ろし始めた瞬間に、体中の力が抜けてしまった。
 日本刀を振り下ろしながら、弱々しく膝をついた武装少年。
「しょ、章太郎様っ!」
「あわわっ、章太郎くん~っ!」
「ショータローっ、どうしたのだっ!?」
 御伽噺の三人とお供のメカ生物三体も、四つん這いな少年を心配して寄り添ってきた。
「あ、ああ…なんか、急に…」
「もしかして、腹が減ったんかの?」
 章之助博士が覗き込んで、言い当てる。
「う、うん…。なんか、凄く、凄っっっごく…三日くらい、食べてないような気分で、お腹空いてる…」
 章太郎の説明よりも、空腹の音のほうが大きいくらいだ。
「博士、もしかしてこれは…」
 章太郎の瞼を開いて覗き込んだ真希にも、思い当たる節があるようだ。
 実は少年にも、想像が出来る。
「えっと…もしかして、聖力の使いすぎ…みたいな…?」
「その通りじゃろうな」
 召還システムは、章太郎の聖力を消費して、お供や武装を実体化している。
 お供の巨大メカ生命体三体を召還しただけでなく、更に戦闘力の高そうな武具一式を実体化させたのだ。
「鎧を召還した時点で、お前さんの聖力が ほぼカラになっとったんじゃろう。その上で刀を振るおうとしたから、急激な空腹となって反動が現れた…。といったところかな?」
 開発者は、召還者ではなく、召還された刀の目玉へと、ナチュラルに尋ねている。
 問われた目玉も、血眼ではない普通な感じの目で、ウンウンと頷いていた。
「意思疎通が出来てる…」
 初対面なのに祖父凄い。
 刀の目玉は章太郎へ、聖力に関しての警告を発していたのだろう。
 と感心をしている間にも、空腹は更にキツくなってきている。
 現状では、鎧を装着しているだけでも、聖力消耗からの肉体的な栄養分の消耗、という状態っぽかった。
「と、とりあえず…鎧とか、お供とかの召還、解除するよ…?」
 刀の目玉へ告げたら、目玉はウンと頷く。
「…ふう…」
 全ての召還を解いたら、空腹の進行だけは修まったけれど。
「…なんで、お前たちは残ってるの?」
 章太郎たちの目の前には、ヌイグルミのような三体のお供と刀が居残っている。
「うむ…どうやら この連中も、こちらの世界に興味津々、といったところなんじゃろうなぁ」
 博士の理解に、四体の召還ぬいぐるみたちも、ニコニコと納得だ。
「そうなのか。よしよし♪」
「うふふ?」
「仲間が出来たね~♪」
 三人の御伽噺少女たちも喜んでいるし、刀は章太郎の肩へ乗って、懐いている。
「…それより、俺 腹減ったよ~」
「それでは、研究所の食堂へ行きましょうか」
「「「♪」」」
 少女たちにとっては懐かしい食堂であり、そして章太郎と生活を始めてから知った、色々な食べ物の味。
「あたし~、ここのラーメン、食べてみたかったんだ~♪」
「ボクは、サンドイッチを食べたいな♪」
「私は、おむらいす? という食べ物を…♪」
 三人の要望を聞いてしまうと、空腹少年の頭が、それらの食べ物で占められてしまう。
「うわぁ、全部美味しそう過ぎるっ!」
 もう涎が止まらない章太郎だ。
「ほっほっほ、それじゃあみんなで、食事にしようかのぉ」
 六人と四体は、地下空間から地上階の食堂へと向かった。
(…そういえば、爺ちゃんと食事なんて…どのくらいぶりだろう…)
 御伽噺の三人や召還機など、マッドサイエンティストではあるけれど孫想いなお爺ちゃんに、章太郎はあらためて温かい想いが湧いていた。

                        ~第三十四話 終わり~
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