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☆第六十一話 それぞれの意見☆
しおりを挟む章太郎に対する竜巻蜃鬼楼の攻撃に対し、球形蜃鬼楼が、盾となって護ってくれた。
目の前の事態に、少年は驚愕をする。
「ま、また…っ!」
有栖が盾になってくれた事。
雪が護ってくれた事。
そして今。
「ど、どうして俺は…っ!」
護られるだけの存在から、オカルトカードという戦う力も得たのに、また誰がが傷つく形で、護られてしまった。
「…くっ、くっそぉおおっ!」
男子として、自分がとても不甲斐なく感じてしまう。
「竜巻の蜃鬼楼っ! お前はぁっ!」
「章太郎様…っ!」
桃太郎が、オカルトカードで変身しようとして、雪女の声で止められた。
「っ! え…っ?」
竜巻蜃鬼楼の回転刃を全身で受け止めた球形蜃鬼楼は、ダメージを負いながらも、自分より小さな竜巻を、全身で包み込んでゆく。
――っガオオォォンっ!
――ッグルルルルウゥッ!
飲み込まれまいと抵抗している竜巻の刃で、球形蜃鬼楼の身体がズタズタに切り裂かれてゆく。
「おっ、お前…っ!」
丸い蜃鬼楼のダメージが限界のようで、震えながら、章太郎へと振り返る。
――っグオォ…ワ、ワレ…イサカウイシ…ナキモノ…タチ、アリ…。
今度はハッキリと、蜃気楼の意志が伝わってきた。
「そ、そうなの…か…っ!」
――があぁ…。
自らの意志が章太郎へ伝わったと理解をした様子の球形蜃鬼楼が、なんだか安心したような空気を醸して、今度は少女戦士たちへと、意志を伝える。
――っガアアァァアっ!
「「「――っ!」」」
赤ずきんたちが感じた意志は。
「ショータローっ! このボール蜃気楼と共に…ハリケーン蜃気楼を、討伐するぞっ!」
「えっ!?」
戦闘隊長の辛そうな決定に、章太郎は戸惑ったものの、雪女も魔法少女も、やはり苦悩の決定だと、解った。
「…っ! 解った! でも、それはオレがやるっ!」
章太郎は一歩前へ出ると、桃太郎のカードで変身をする。
「桃太郎さんっ、どうぞっ!」
組み合う蜃鬼楼たちの目の前で、眩い光と共に、少年が戦士へと変身をすると、竜巻蜃鬼楼からは恐怖と焦りの意識が感じられ、球形蜃鬼楼からは喜びと安堵のような感情が伝わってきた。
校庭を注視している生徒たちからは、初めて見た章太郎の変身に対する、感嘆の声が聞こえてくる。
「「「「「」ぉおお~っ!」」」」
校庭で変身をすると、マンションにいた専用刀であるエターナル肥後が、転送をして腰へと装着。
刀身だけでも二メートルを越える長刀となったヌイグルミ刀を、章太郎は静かにスラり…と抜刀をする。
「………」
心を聖浄に落ち着かせると、丸い蜃気楼へと、敬意を送った。
「お前の意志、ちゃんと俺たちが、理解するからなっ!」
――がおぉ…。
会話のように、蜃鬼楼が応えた。
章太郎の意志を受けて、刀は更に、光の刀身を十メートル以上に伸ばす。
「っぉおおおりやああああああああああっ!」
――っずばあああああっ!
組み合った二体の蜃鬼楼を等しく真っ二つに、章太郎は真上から足下までを、完全両断した。
そして、今更気付く。
「――っ! し、しまったっ――桃太郎だと…っ!」
破壊力が過大すぎて、その爆発力で校庭どころか、学校にまで被害が。
「あわわ…っ!」
と焦った少年の、必殺の一撃の前に、少女戦士たち三人は蜃鬼楼を取り囲む形で、陣形を組んでいた。
少年が蜃鬼楼を切った瞬間、大爆発が起こる直前に、三人は新必殺技を発動させる。
「「「オカルト・ガードっ!」」」
――っどおおおおおおおおおおおおんんっ!
爆心を包囲する三人が、緑色の光輪で繋がって、高い筒状の壁を形成。
爆発は光の筒によって上空へと放出されて、学校の真上の雲へ、綺麗な丸い穴を開けていた。
――がおおお…。
「………っ!」
清浄なる爆発の中で、竜巻蜃鬼楼が消失し、球形蜃鬼楼も別れをくれた。
気がする。
「…あいつ…」
「ショータローっ!」
「章太郎様」
「章太郎くん~」
戦闘が終了し、変身を解きつつ三人が駆け寄ってくると、みな複雑に心配そうだけど、少年が無傷である事に安心しているのがわかった。
「み、みんな…ありがとう」
今は、それしか言えなかった。
章太郎たちが、先生たちやクラスメイトたちの歓声を受けて、いつもの日常へと戻り、お昼休み。
四人は、有栖の手作り弁当を手に、屋上へと上がっていた。
ヌイグルミ刀のエターナル肥後は、章太郎の学生服のポケットへ籠もり、なんだかヌクヌクと幸せそうだ。
「みんな、朝は騒がれて大変だったな」
変身を解いて校舎へ入る四人は、主に生徒たちから色々と質問攻めにされていたり。
「蜃鬼楼を直接に成敗したのは、ショータローだったのに」
「なんか~、友達みんな、あたしたちを賞賛してくれたね~」
「私も、戸惑ってしまいました…」
特に控えめな性格の雪は、友達に囲まれてワイワイされたのは転入以来だし、戦いを見た友達は転入当時よりも更に盛り上がっていた。
章太郎には、変身やら必殺技やらで、男子ばかりがワイワイしていた気がする。
「まあ、みんなが理解してくれたのは、良かったよな。それじゃあ」
「「「「戴きます」~す♪」」」
四人でお弁当を食べながら、さっきの蜃鬼楼について、相談をする。
「あの球体の蜃鬼楼さ…みんなは、どう感じた?」
悪意がないだけでなく、竜巻の悪鬼から身を挺して章太郎を護り、しかも通じ合える意志を示した、初めての個体である。
「うむ…。ボクは…正直、まだ複雑だな…」
戦闘隊長であるブーケとしては、そう簡単に信じて良いものなのか、迷っている感じ。
「美鶴は、どう想う?」
「あたし~? う~ん…」
少し悩んで、ブーケを見ながら話す。
「章太郎くんを護った命がけの行動は~、本物だと想うけどね~。でも~、あんな蜃鬼楼は初めてだし~、あたしも~、どっちかっていうと~、ブーケちゃん寄りかな~」
美鶴の意見を、ブーケが補足。
「うむ。疑っている…というのとは違うのだ。信じたいが、警戒も怠れない…という感じだろうか」
ブーケの言葉に、美鶴も頷いた。
「なるほど…雪は?」
「私は…」
球体蜃鬼楼の爪を受けて、今は完治しているけれど、ダメージを受けた雪である。
「…あの球体の蜃鬼楼は、私を傷付けた事に、戸惑いを感じていたと…私には感じられました。少なくとも、あの蜃鬼楼の意志は…私は信じたいと、感じております」
「ふむむ…基本的には、みんな認識に大きな違いは無いって感じ?」
「ショータローは、どう考えているのだ?」
「俺は…う~ん…」
少女たちの守護対称であり、球体蜃鬼楼の為に竜巻蜃鬼楼を討ったのだから、少女たちも少年の意見を知りたいだろう。
「俺は、あの丸い蜃鬼楼が命を掛けて伝えたかった意志があったってところは、嘘が無いと感じてるんだ。今まで俺たち…っていうか、蜃鬼楼は聖力が目当てな連中ばっかりだったし…」
有栖や雪など、目の前で少女たちが傷付けられれば、少年の本能としては、それだけで十分な敵認定だ。
「だけど…もしかしたら、蜃鬼楼たちにも色々な考えっていうか、派閥とか認識の違いでのグループ分け…みたいな感じも、あるのかなって」
章太郎の考えを、雪が纏めてくれる。
「蜃鬼楼という存在の意志…という簡単な認識ではなく、蜃鬼楼たちそれぞれ…という認識。と、お考えでしょうか…?」
「そんな感じかな。怪我をさせられた雪や有栖の前で、こういう言い方をしてしまうのは、ちょっと申し訳ないとも思うんだけど…」
「いいえ♪」
少年の気遣いに、雪は温かく微笑んだ。
そして、もう一つの本題へ。
「ボクたちの認識もだけれど…ショータローは、蜃鬼楼の声を録音したのだったな…?」
「あぁ…これだよな」
スマフォを取りだして、再生してみた。
『ガオオォ…が…ワ…』
「このあたりだと~、まだ咆吼だよね~」
~第六十一話 終わり~
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