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☆第八十話 童話に無い涙☆
しおりを挟む「それじゃあ、ピノッキオ。質問っていうか、ピノッキオの疑問に オレが解る範囲でだけど、答えるよ。何でも訊いてくれ」
ピノッキオへ振り向くと、木製の美顔が、憂鬱そうに曇っている。
話を振られたピノッキオだけど、何を質問すれば良いのか、解らない様子だ。
「えぇっとなぁ…。そもそも、お前たちが何なのかとか…よく解ってない気がするんだよな、オレは」
「え…あぁ、そっか」
突然「自分たちは異世界から来た」とか言われても、たとえマニアなラノベ愛好者であっても、信じないだろう。
「ピノッキオが納得出来るか、一旦は置いておくとして、まずは事実だけを話すよ。」
章太郎はまず、自分たちの世界や童話の世界について、丁寧に話す。
「――という感じかな」
訊かされたピノッキオは、しかし当然というか、半信半疑どころか、ほぼ信じていない感じだ。
「ふぅん…この世界が、誰かの作った物語の世界で…オレたちはみんな、その世界のキャラクターって話か…?」
緑の髪を掻きながら、ボロな服の破れ目から控えめなバストがチラチラと覗けて、木目調なのに章太郎は慌てたり。
章太郎の説明を補完すべく、雪が説明を追加した。
「ぴのっきおさん、私たちも、こちらのすいみーさんも、あなたに近い存在なのです。章太郎様から教わった、あなたのお話ですと…あなたは街で、人形劇をご覧になった経験があると思いますが」
「あぁ…チラっとだけど、観た事あるよ」
「あのお人形さんは、創作物語のキャラクターを お人形さんとして、作り上げた物でしょう。私たちも、そしてあなたも、この世界も…そのような存在なのです」
と、かなり解りやすく例えたけれど、まあ当然と言うか。
「? ? ?」
ピノッキオには、理解出来ない。
章太郎たちも、仮に「キミたちの世界は誰かの見ている夢なんだよ」とか真顔で言われても、同じ反応になるだろう。
それでも、章太郎はピノッキオへ説明を続けた。
「まぁそれでさ、この世界にちょっとした異変が入り込んで、キミのお父さんが影響を受けて、その影響が今、キミに移ってしまっている。だから、キミが俺たちの世界へ来れば異変も一緒に来るから、この世界が正常になる。っていう事なんだ」
「オレが異変ねぇ…ふぅん…」
難しそうな美顔で、ピノッキオは考える。
(無理も無いけど…)
強引に連れて行く事も、出来ないでは無いだろう。
しかしそれでは、向こうでの生活に不安しか残らないし、ピノッキオにも章太郎たちに対して、強い不信感を根付かせてしまう危険がある。
(同じ事かも知れないけど…出来れば、ピノッキオには 俺たちの世界で出来るだけ楽しく暮らして欲しいからな…)
だからこそ、時間の許す限り、章太郎はピノッキオが納得を出来る説明を、心掛けるのであった。
章太郎の話を聞いたピノッキオは、悩ましい美顔を、決意の美顔へと切り替える。
「…やっぱり、オレはバカだからなー。ショータローの言ってる意味が、ほとんどわかんねーや!」
「そ、そぅ…だよな」
それでも、ピノッキオが納得出来るまで説明をするんだ。
そう決意をする章太郎に、ピノッキオが、ハッキリとした声で尋ねてきた。
「ショータロー、オレの頭で理解できる事で、訊くぞ」
「あ、あぁ…」
どんな質問がくるのか、息を飲む章太郎たち。
覚悟が見える美顔を向けながら、家の中でグダグタしているツェッペットを指さして。
「オレが、ショータローたちの言う通りにすれば…あのダメ親父が、少しはシャンとするんだな?」
章太郎は、ジミーと頷き合って、ハッキリと答える。
「ああ。それは間違いない」
「…そっか」
何処か寂しそうな表情は、子供のように素直な感情を見せていて、自分のするベキ事を頑張って受け入れている様子だ。
章太郎は、ピノッキオに対して、勘違いをして欲しくない事を、強く告げる。
「でもな、ピノッキオ。この世界の不都合の原因がピノッキオって事じゃ、全然、無いんだっ! この状況は、その…おオレのっ、責任でもあるからっ! だからっ、自分が原因だなんてっ、絶対に勘違いをしちゃあ、ダメなんだっ!」
「主様…っ!」
祖父が原因であろう事はほぼ確実であり、それは身内の責任であり、つまりは自分も関係者だと、章太郎は考える。
なので、この場にいる自分が責任を負うベキだとも、考えた。
そんな主にメイド少女は、そして御伽噺の少女たちは、誇らしさと敬意と、哀しみを伴った優しさを感じている。
章太郎の言葉と、従者である有栖の様子に、ピノッキオは決意が固まったようだ。
「…ま、よくわかんねーや! だけど、ショータローの言う通りにするのが一番だって事は、なんとなく解ったぞ!」
真っ直ぐに見つめる綺麗な眼差しは、迷いが吹っ切れたような、正々堂々とした輝きで美しく感じられる。
「で、ショータロー、オレは結局、何をすれば良いんだ?」
「あ、あぁ。俺たちと一緒に、俺たちの世界へ来て欲しいんだ」
「ショータローちの世界ねぇ。やっぱ よくわかんねーや。あはは♪」
明るい笑い顔も綺麗だけど、複雑な感情を隠せていない。
自分がこの世界から消える。
そうすれば、みんなが平和になれる。
理由はわからなくても、それが理解出来てしまっているのだから、当然だろう。
章太郎は、どう言葉をかけて良いのか解らないけれど、それでも、何かを言わずにはいられなかった。
「…ピノッキオ、ぇえと――」
「さ、ショータロー。オレをどこだかへ、連れてってくれるんだろ? ちゃっちゃと行こうぜ!」
とか、背中をバンっと叩いて、章太郎の言葉を遮るピノッキオを、有栖が呼び止める。
「ピノッキオ様、あちらを…」
みんなが見ると、家の扉から、パノッキオが歩み寄って来ていた。
「ピノッキオぉ~」
「な、なんだよパノッキォ…」
長男はゆっくりと、そして両腕を拡げ、穏やかな笑顔で近づいて、立ち尽くすピノッキオを優しく抱き占める。
「………」
「………っ!」
大きくて固い木の掌で、頭を優しく撫でられたら、ピノッキオの感情が溢れ出した。
「パノっ――兄ちゃんっ!」
「うん~」
ノンビリしたパノッキオだけど、章太郎たちの会話を聞いていて、全てを理解していると、章太郎たちには感じられる。
大きな兄の優しい返答に、ピノッキオは溢れる涙を見せたくないように、広い胸へと美顔を埋めた。
「兄ちゃんっ…兄ちゃあんっ! ぁぁぁあああ~~~~~っ!」
綺麗で籠もった泣き声が、森や空で反響するように、章太郎たちの心にも木霊する。
家の扉からは、プノッキオたち三人も、ピノッキオの涙を寂しげに受け止めていた。
「……っ!」
パノッキオの抱擁に、父親であるツェッペットの事が不意に気になった章太郎が家を見ると、ベッドから起き上がって窓から二人を見ているようなツェッペットが、一瞬だけ見えた気がする。
ピノッキオの声が落ち着いてきて、涙の美顔で兄を見上げると、大きな指で涙を拭われていた。
「ぐす…兄ちゃん、ありがと…」
「うん~」
「ぉ親父の事…お、押しつけちまうけど…」
「うん~」
「…みんなも、元気でな…」
「うん~」
ずっと笑顔で、ピノッキオを優しく抱き占めて、全てを受け止める長男は、ピノッキオの髪を愛おしげに撫で続ける。
「…うん♪」
兄から、家族の愛情を沢山貰ったピノッキオは、決意と明るさの美顔をキリっと輝かせていた。
「それじゃあ、ショータローっ!」
「…ああ!」
蜃鬼楼からの異変要因が取り憑いてしまったピノッキオが去ったら、この世界は正常に戻り、ツェッペットも新しくピノッキオを製作したりして、時の流れに従い、みんなこのピノッキオの事は記憶から消滅をする。
言葉では理解出来ていなくても、感覚で、ピノッキオは理解をしているのだろう。
「ピノッキオ」
章太郎たちが手を繋いで、ピノッキオにも掌を差し出す。
「? 掌?」
白魚のようなシルエットの木製の指は、触れると小さくて、しかしなんだか、温かくも感じたり。
みんなで手を繋いで輪になって、章太郎と有栖が頷き会う。
「それじゃあ、有栖、みんな」
「申しつかりまして御座います、主様」
「うむ」
「はい」
「いいよ~♪」
章太郎へ答えるように、お供たちも輪の中へ。
「? みんなでお手々繋いで――うわっ、なんだっ!?」
みんなで光に包まれると、章太郎たちは、童話同人誌の世界から消失をした。
~第八十話 終わり~
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