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☆第百十五話 オリジナルさんたち☆
しおりを挟む「月夜も翠深衣も、変身出来るようになってたんだなー」
「へへー♪」
「如何でしたか? お兄さま~♪」
変身を解いて元の部屋着へ戻った二人は、誇らしそうなドヤ愛顔だ。
「驚いたよ。この間の夜に見せて貰った時よりも、新しい能力も 強くなってるみたいだし。それに二人とも、変身衣装、すごく似合ってたな」
「そ、そうだろー?」
「うふふ~♡」
能力も衣装も褒められて、月夜は照れくさそうで、翠深衣は素直に嬉しそう。
章太郎は、少女たちの意見も聞きたくて、みんなを見た。
「うむ。二人とも、訓練の成果がよく出ていたと思うぞ。連携も問題点は無さそうだし、立派な新しい戦力だな」
「私も、同意見です…♪」
「ね~♪ みんな違う事が出来て、頼もしい感じ~?」
「はい♪ 仰る通りに御座います♪」
二人の活躍に喜んでいるお供たちが、不意に、一方向へと視線を向ける。
「うむ? みんな、どうした?」
戦闘隊長のブーケが気付いて、みんなもお供たちと同じ方向を見ると。
――がさがさがさ…。
森の端の草むらが、風もないのに、小さく揺れていた。
「…何かいる?」
章太郎が警戒をするも、お供たちは威嚇するような事をせず、御伽噺の少女たちも、敵意などは感じていないらしい。
ブーケが一歩前へ出て、声を掛ける。
「…そこにいる者、出てくると良い!」
言葉がわかったらしい隠蔽者たちが、草を分けてその姿を現すと、特にお供たちが反応をした。
――がさがさ…。
――っわんわんっ、うきき~っ!
茂みから出て来たのは、犬と猿と雉と、熊。
「っぉおおっ――く、熊っ!」
その巨体と存在感に驚いた章太郎が、思わず焦って、少女たちの前へ出て盾となる。
そんな様子に、熊も慌てたようにキョロキョロあわあわとして、立ち上がって近くの大樹へと、前脚を交互に打ち付け始めた。
「…? あれ…もしかして、相撲の てっぽう…?」
熊である事と、章太郎の言葉を理解しているような反応と、お相撲さんのてっぽうみたいな行動と、更にこの世界が桃太郎の世界というか、童話世界だという事実。
それらから、章太郎が考えられる可能性は、金太郎の熊だった。
桃太郎の童話世界に、金太郎の世界の熊がいる理由はともかく、今は確かめて見る。
「き、キミは もしかして…金太郎の 仲間の…?」
と問うと、熊はパっと嬉しそうな笑顔になって、ウンウンと大きく頭を頷かせた。
襲われる心配はないと安心をすると、疑問が湧いてくる。
「な、なんだ そうか…。っていうか、なんで桃太郎の童話世界に、金太郎の熊が…?」
章太郎の焦りや疑問を余所に、お供ヌイグルミな猿と犬と雉は、自分のオリジナルとも言える童話生物との初対面に、少し戸惑いながらもお互いをニオイで確認しあっていた。
桃太郎の刀出身でもある、ヌイグルミ刀のエターナル肥後は、章太郎の肩へ。
章太郎の納得に、少女たちが尋ねてくる。
「金太郎様…?」
「キンタロー ってのが いるのか?」
「そのお方は、熊さんなのですか~?」
「う~ん、違うと思うけど~」
みんな、金太郎に対しての知識はほぼ無い中で、ブーケが思い当たった
「ああ、思い出したぞ。たしか ショータローが、スマフォで話していた事が あったな」
「え…ああ、そうそう。ほら、俺が変身出来るスーツの、パワータイプ…怪力の方の、変身用データをくれた人が、金太郎だよ」
少女たちへ話しながら、その金太郎と共に山で育ち、金太郎の相撲の稽古相手を務めた筆頭が、この熊だ。
「へー♪ って事は、そのキンタローとかって、スモウ・ファイターなのか?」
「え、ああ いや。将来的には、都へ上がって仕官して、名前も坂田金時(さかたのきんとき)って、武士になるんだ」
「日本では、桃太郎様や浦島太郎様と並び、ご存じ無い方がいらっしゃらない程の、ご高名な方でございます♪」
「「「「「なるほど」…」~♪」なー♪」です~♪」
という金太郎の生涯はともかく、今の疑問は、金太郎の童話世界の熊が、桃太郎の童話世界にいる理由と、この世界背景の異様さだ。
章太郎は、異世界の自分と何かを確かめ合っているお供たちではなく、熊との会話を試みる。
「えぇと…、俺たちは、なんて言うか…別の世界から来たんだけど、決して怪しい者ではなくて…」
この自己紹介は、いつも考えさせられる章太郎。
簡潔に「異世界から来ました」と言ったトコロで、そもそも異世界という概念がなければ、通じない話だ。
御伽噺の世界が不思議なのは、あくまで章太郎たち人類の世界から見た限りであって、童話世界の住人たちにとっては、むしろ章太郎たちの世界なんて存在すら知らないのが当たり前。
はたして通じるか。
と思ったら、熊は、章太郎の予想とは違っていた。
「おぉ、これはご丁寧に。初めまして。私は、金太郎のお仲間を務めさせて戴いております、ツキノワグマのツキノ、と申します。先ほどは つい取り乱してしまい、無言での対応…失礼を致しました」
と、とても美しい直立姿勢で、丁寧な挨拶をくれる、知性溢れるツキノワグマ。
「え、ああ、どうも…」
声も落ち着いた大人のボイスで、思わず章太郎も、かしこまったり。
「ぉ俺たちは、蜃鬼楼に関して、色々と調べてて…ああ、その前に、失礼。俺は、御伽噺章太郎。で――」
章太郎たちそれぞれの紹介と同時に、お供たちも、お互いの存在を理解し合っていた、
ツキノワグマのツキノに案内をされて、章太郎たちは、桃太郎の家へと向かう。
「ええと…桃太郎のせか――この世界に、金太郎も来てるって事…ですか?」
歩く際は四足歩行らしいツキノへ尋ねると、ツキノは「このままの姿勢で 失礼を致します」と丁寧なことわりをくれてから、応えた。
「はい。私と金太郎だけでなく、山の中で共に切磋琢磨をしている仲間たちも、コチラへオジャマを致しております」
「へぇ…」
日本人形や広告イラストなどでは、金太郎とマサカリと熊がよくピックアップをされている。
けれど童話では、熊との相撲がクライマックスであり、その前にも狐や猿などとも相撲をとっていたりする。
「ようは、金太郎一家の勢揃い…ってワケか」
その金太郎一家が、わざわざ次元を超えて桃太郎の童話世界へやって来た理由は、と言えば。
「はい。そちらに関しましては…ぜひ 金太郎とお話し下さい」
とか、どこか楽しそうに告げられ、真相は教えて貰えなかった。
「ぅ…金太郎たちがどうやって次元の壁を越えたのか…ゼヒ知りたいけどなぁ…」
「うむ。ボクもだ。とても興味があるぞ」
章太郎たちには有栖という、どう考えてもメカ生体化した影響で名前から来ている特殊能力を得たとしか思えない、次元を超えられる存在がいる。
「金太郎の物語で、そんなキャラクターは いないんだよな…」
「そ~なんだ~♪」
「では一体…あ」
何かに気付いたっぽい雪。
「? どうした?」
「いえ、その…し、素人考え なのですが…」
思いついた事を尋ねられた雪は、頬を染め恥ずかしがりつつ、章太郎の問いに答える。
「章太郎様と通話が出来る、すまふぉを…桃太郎様と金太郎様は 章之助様から手渡されて、所有されておりますので…」
と言われて、思い当る章太郎。
「…ああ、なるほど。その辺りから、次元を移動出来る方法があった…って事か」
章太郎たち人間の世界と童話世界での通話だけでなく、桃太郎と金太郎だけでも通話をしていると、かつて金太郎から聞いた事を、章太郎も思い出した。
「なるほど…。あれ、という事は…」
思い当たって雪へ向くと、雪は気まずそうに、コクんと頷いたり。
「あああ~、そうだよな~! 俺ってバカだ~っ!」
「? お兄さま?」
翠深衣が「?」な愛顔で、心配をする。
「あぁ、つまりさ…」
桃太郎や金太郎と通話が出来る章太郎のスマフォても、同じ現象が出来る筈なのだ。
「なのに俺、そういう事とか全っったく考えずに、体験した有栖との次元移動ばかりで考えてて…っ!」
自分としては、極めて迂闊だ。
「なんかショータって、いつも難しい事で悩んでるよなー♪ 頭 良いからか?」
とか、余り考えない事を自認している月夜は、脳天気ながら美しい笑顔で、章太郎の自己嫌悪を慰める。
「…次からは考えるっ!」
と決意をしながら、有栖を見た。
「~そうなので御座いますか♪」
「はい♪」
忠実メイド少女は、主である章太郎との距離を保ちつつ、ツキノの隣を歩きながら、色々と会話を交わしている。
(…メイドの有栖と、執事っぽいツキノか…。話が合うのかな)
とか思うと、ちょっと嬉しい。
有栖は、学校へ通わず家事炊事で章太郎たちを支える事を、自ら選んでいる。
商店街でも評判が良いし、お婆ちゃんたちとのコミュニケーションもあるけれど「友達として話せる相手がいたほうが良いのでは」と、章太郎は気にしていた。
(…うん♪)
桃太郎の家へ着くまで、有栖の自由にさせてあげようと、章太郎は思った。
~第百十五話 終わり~
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