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☆第百二十三話 蜃気楼たち(ハト派)によると☆
しおりを挟むリス形蜃鬼楼というか、ケモぐるみな小美人を見て、章太郎はすぐに、思い当たる。
「き、金ちゃん…っ!」
章太郎に促された金太郎も、言いたい事は、既に理解をしていた。
「うん…。ま、前に…会った事が、ある…よね…?」
二人が屈んで話しかけると、リス形小美人はツキノに促されて、ツキノワグマの頭の上へ。
「はい。私は…皆様の呼ぶ、蜃鬼楼ですわ。以前に、そちらの金太郎様と お話をさせて戴きましたわ」
「やっぱり そうなんだ。それで、今の戦いを 見てたんでしょ?」
相手がなんか大人っぽいうえ、リスサイズに小さいからか、章太郎もなんだか、いつもより丁寧に話したり。
「はい。拝見をさせて戴きましたですわ。私だけでなく、仲間たちも一緒に、ですわ♪」
「仲間…?」
『お~い、ショータロー!』
戦いを終えたブーケたちが、お供たちと一緒に駆け寄ってくると、翠深衣の腕の中にはウサギの着ぐるみっぽい姿の、ウサギサイズな小美人が。
「章太郎様、こちらは…」
「初っじめまして~ん♪ アタシは蜃鬼楼っだよ~ん♪ やほ~っ♪」
雪が紹介をしようとしたら、やたらハイテンションで、自己紹介をしてきた。
「可愛いです~♪」
「なー♪」
「まるでヌイグルミだよね~♪」
翠深衣も月夜も美鶴も、ウサギぐるみな小美人を、着せ替え人形を愛でるような視線。
「…って事は、桃ちゃんのところにも…」
「い、行ってみようか…っ!」
リスぐるみの小美人も月夜たち少女の腕に抱かれながら、章太郎たち一行は、桃太郎たちの方角へ向かった。
すぐに、桃太郎の声が聞こえる。
「あ、金ちゃん章ちゃんツキノさんブーケさん雪さん美鶴さん翠深衣ちゃん月夜さん無事~♪ まあそうだろうって安心してたけど、良かったよ~♪」
なんというか、天然でリーダー気質な感じの桃太郎だ。
桃太郎たちも、鬼たちと一緒に蜃鬼楼と会ったらしい。
犬猿雉と一緒に、タヌキの着ぐるみな小美人が歩いて来る。
「あ~、ど~も~。蜃鬼楼で~す♪」
タヌキぐるみな小美人は、なんだかノンビリとした雰囲気だった。
「みんなそれぞれ、蜃鬼楼たちが戦いを観察してたってた事か…」
「その通りですわ」
三体のケモぐるみ小美人蜃鬼楼たちは、案の定というか、仲間同士らしい。
章太郎は、知りたかった事を訊けるチャンスに、気が急いた。
「あ、あのさ…っ! 俺っ、色々と聞きたい事がっ、あるんだけど…っ!」
「うんっ、良いよ~んっ! でもでもさっ!」
「みなさん~、お腹 空いてません~?」
と言われて、あらめて、みんなのお腹が鳴った。
「ふむ。言われてみれば…まだ 朝食を食べていなかったな」
「あー、オレも腹ぺこだー」
とか、空腹を訴える月夜に、金太郎はなんだか、ときめいているようにも見える。
「それじゃあさ~♪ まずはみんな、某の家で ご飯にしよ~♪」
という感じで、章太郎たちは、いわゆるハト派の蜃鬼楼たちを連れて、別宅へ戻った。
「お帰りなさいませ。主様、皆様♪」
いつも通り、丁寧な礼で章太郎たちを迎え、そして小さな客人たちへの挨拶と歓迎も示した有栖。
「有栖、とにかく、食べたいな」
「はい。支度を調えて御座います、主様」
章太郎も、有栖なので落ち度など無く朝食の準備を終えていると解っていて、すぐに食べると伝え、メイド少女も全て承知をしている。
こういったヤリトリも主と召使いには必要だと、章太郎は、祖父の助手である真希から教わっていた。
「さ~、蜃鬼楼さんたちも、上がってくれたまへ~♪」
別宅へ上がると、桃太郎の両親であるお爺さんとお婆さんも、小さなお客さんたちを歓迎する。
食卓というか囲炉裏を囲むと、食事を開始。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「戴きます」」」」」」」」」」」」」」」」まっす~♪」~す♪」ですわ♪」
二十人以上で囲む一つの食事なんて、章太郎だけでなく、みんな初めてだ。
ワイワイと楽しく始まった朝食の席で、章太郎は一緒に食事を摂る蜃鬼楼たちを、不思議な気持ちで眺めたり。
(…蜃鬼楼と食事かー。っていうか、サイズ感が…)
着せ替えの女児玩具みたいなケモぐるみの美人たちが、それぞれのサイズにあった食器で、食事をしているけれど。
(リスとウサギとタヌキって…こんなに大きさ、違うんだな…)
リスは掌サイズだし、ウサギは片手では抱けないサイズだし、タヌキに至っては普通に犬と同じくらいの大きさだ。
翠深衣たち女子は、そんな小美人たちを、嬉しそうに愛でている。
美人なだけに、サイズの違うケモぐるみ女性たちが並んでいる様は。
(蜃鬼楼だし、特におかしいってコトではないんだけど…なんか、バグる)
というのが、章太郎の素直な感想だった。
「? 章うっ太郎どの~っ♪ そぅいえばっ、何か聞きたいよ~んっ、とかって~っ、言ってましたよねん~っ♪」
視線に気付いたウサギ形蜃鬼楼が、章太郎へ問うてきた。
「え、ああ、うん…。えっと…もし、失礼な質問だったら、ゴメン。キミたち蜃鬼楼ってその…どういう 生命体なの?」
章太郎としては、あまり失礼にならないよう、気を付けて言葉を選んだ。
「んん~っ! それっ聞いちゃいますか~んっ! って、そりゃあそうですよねったらね~っ! 章太郎どのっ、流石~んっ!」
「ど、とぅも…」
ウサギ形蜃鬼楼は、あまり会話が進まないタイプっぽい。
「もぅ…。失礼いたしました。私が お答えいたしますわ」
ウサギ形蜃鬼楼が答弁に向いていない事は、リス形蜃鬼楼たちも、同じ考えらしい。
「私たち…皆様の言う蜃鬼楼とは、これら童話世界を創造された…そしてそれらの世界を知った、様々な人たちの意識の集合体…と言えますですわ」
「…人間の意識の集合体…?」
リス形蜃鬼楼の説明に、ウサギ形やタヌキ形の蜃鬼楼たちも、ウンウンと頷く。
「…ぶつぶつぶつ…っていう事は…」
端的な説明だけど、章太郎はすぐに、正解へと辿り着く。
「世界中の、様々な童話…作家たちによって纏められた童話集だけじゃなく…元となった民話とか、それらを知ったり伝えたり聞いたり読んだりした、全ての人たちの意志とか意識が集まって…蜃鬼楼が誕生した…っていう事…?」
「おお~、章太郎どの~っ、正解ですね~っ♪」
「ふむ。そうなのか…」
「なるほど…」
章太郎とブーケと雪は理解出来たけれど、それ以外のメンバー、特に桃太郎チームや金太郎チームという現役童話勢には、よく解らないらしい。
なので、章太郎が説明をした。
「あぁ、ええと…。桃ちゃんや金ちゃんも、自分たちがいる世界とは別の世界があるって、もう理解してるだろ? そういう色んな異世界の人たちが、別の世界を知って、その馳せた想いが、蜃鬼楼たちになった…っていう感じだよ」
「な~る~♪ つまり、某たちが、柿の木を見て『柿が実ったら美味しいだろな~♪』とか思ったら 柿がなった~。みたいな感じか~♪ 金ちゃんたち、解る~?」
「う、うん…っ!」
凄い理解の仕方だけど、まあ間違ってはいない。
「蜃鬼楼ってつまり…俺たちの世界の、人間たちの想い だったのか…」
「うんっ! そぅっすね~ん♪」
章太郎たちの世界創造に関して「人間原理」という考え方がある。
「人間原理~?」
蜃鬼楼たちも、桃太郎たち同様に、興味があるらしい。
「簡単に言えば、自分たちの知らない場所や人物たちは、存在しているかどうかも解らないだろ? それらが発見されて存在をしているのは、人間が『そこにそれがある』って考えたからで。そこへ、無意識にでも意識を向けたから、それが存在出来ている。みたいな考え方?」
章太郎も、その知識には、あまり自信が無かったり。
「はい。とても端的ではありますが…そうお考えになって、差し支えはありません」
と、リス形蜃鬼楼が答えてくれた。
「そっか♪ あ、それで 次に気になってる事なんだけど…蜃鬼楼の 女王がいるって…」
金太郎から聞いた話では、童話世界や章太郎たちの世界へ蜃鬼楼が出現する現象に関して、蜃気楼世界の女王が関係しているとか。
「はい。私たちの女王が…暴走をしてしまいまして」
「暴走…?」
思わず、みんなで顔を見合わせる。
引き続き、リス形蜃鬼楼が話してくれた。
「先ほども、説明をさせて戴いた通り…私たちは、人間の意志から産まれました。数百年前に、最初に産まれた一体の女王が、私たちを生み続けておられますわ」
引き続き、タヌキ形蜃鬼楼が話す。
「んで~、あたしたちが生きる為に~、童話世界の色んなキャラクターたちから~、ほんのちょっとずつ聖力を貰って~、女王に捧げて~、みんなで生きてるのね~♪」
先ほどの蜃鬼楼たちは本来、そういった穏やかな性質の個体たちらしい。
「…例えれば、働き蜂みたいな感じ?」
そして、ウサギ形蜃鬼楼が引き継ぐ。
「大っ当たり~んっ! んでも時々ぃっ、女王様にぃ、戴いた聖力を通じて~っ、人の意志が集まりすぎてぇ~っ! そっから色々な感情が混じったりして~っ、暴走しちゃったりするんですよぉ~っ! こりゃあ参った~っ!」
「しかしこれまでは…それでも私たちが、その暴走を食い止めてきました…。ですが、ここ最近におきましては…」
リスぐるみな小美人が、可愛らしい格好のまま、シリアスに話す。
~第百二十三話 終わり~
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