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☆第百三十二話 有栖と翠深衣とジミニー☆
しおりを挟む「それじゃ~っ、作戦開始~っ!」
「「「「「「「「「「「おおーっ!」」」」」」」」」」~♪」
あまり緊迫感のない総大将である桃太郎の号令で、遂に「これで最後にしたい作戦」が開始。
桃太郎と金太郎と犬猿雉と鬼たちと、緑の戦士ピノッキアードが、浮遊大陸の大地へと降りて、御伽噺ガールズたちとメカ生体のお供たちが、上空へと飛んだ。
白い半透明な柱が四方八方へと伸ばす触手に狙われている小美人系蜃鬼楼たちは、大地側と上空側の二手に分かれて、桃太郎が指示をした安全な距離で、触手たちを引き付ける囮の役を務める。
上下それぞれで襲い来る触手たちを、二チームが相手をして、意識を向けさせた。
「ほぃほ~い、こっちこっち~♪」
「…必殺大断ちっ! あ、月夜さんっ、後ろっ!」
「おぉっ、任せろっ!」
「動物の娘っ子たちには、指一本触らせねぇぜっ!」
大陸の緑為す地面では、ケモぐるみたちを護りながら桃太郎たちが奮闘をし、柱の上空では少女たちの戦い。
「散弾撃ちっっ!」
「氷の刃っ!」
「羽根手裏剣だ~っ!」
――ゥオオオオっ、ゴアアアアっ、ケーーーーーーーンっ!
それぞれのパートナーと共闘し、襲い来る触手群を次々と消滅させていた。
章太郎は、柱から距離を取って大地へ降り手に持ったドリンクを飲み干して、桃太郎アーマーからジャックと豆の木アーマーへと、チェンジをする。
「ジャック・アーマーっ!」
眩い光に包まれた戦鎧の少年が、全身タイツみたいな超軽量スタイルに変わった。
手持ちの刀は、一旦腰へと収められて、出番まで待機。
「そのようなお姿にも、なれるのですね」
「最近ね」
少年と行動を共にする、コオロギ着ぐるみのジミニーは、あらためて章太郎の肩へと小さな腰を下ろした。
「よし! ノワール・ダイバーっ!」
「はいっ、お兄さまっ!」
背後で支援をしてくれている翠深衣たちへ声を掛けると、スク水戦士から、大量の魚型ミサイル郡が発射。
「ぇえ~いっ! お兄さまっ、どうぞ~っ!」
スピード・タイプのアーマー姿となった章太郎が、ミサイルの通過する上空へジャンプをすると、背後から迫るミサイルの群れを捕らえる。
小魚ミサイルに護られるように、中央に一体だけ、マグロ・サイズのミサイルがいた。
「…っあれだっ!」
小魚ミサイルたちをかいくぐった少年は、マグロ形なミサイルへとしがみついて、小さなミサイルたちに包まれながら向かう先は、柱の真ん中辺り。
桃太郎たちやブーケたちの囮で、更に細長く伸びた半透明な柱の中心部分には、赤く光る存在「蜃鬼楼の女王」がうっすらと見えていて、それが章太郎の乗ったミサイルの目標ポイントであった。
「ううぅ…っ!」
ミサイルの速度はまるで飛行機のようで、章太郎も初めての体感だ。
なんであれ、鎧を纏った変身状態でなければ、息も出来なかっただろう。
凄い速さで飛翔するミサイル郡は、キツい風圧を受けながら、半透明な巨大柱にグングンと迫ってゆく。
「ちっ、近づいてくる…行くぞっ!」
自分が近づいているのだけれど、なんかそのように言って、章太郎は再び鎧チェンジ。
眩い光に包まれると、鈍重だけど脅威の防御力と怪力を誇る金太郎アーマーへと、姿を変えていた。
「これでっ、突撃だあぁっ!」
短時間での二回変身で、聖力はかなり消耗してしまっている。
(それでもっ、翠深衣の小魚ミサイルが、周りを護ってくれる!)
これから蜃鬼楼の本体とも呼べる、半透明な塊の内部へと、突撃を敢行する章太郎。
敵意の蜃鬼楼に包まれて触れられるのだから、この重装甲でも聖力を吸われてしまうであろう事は、容易に想像が出来ていた。
なので、小さな翠深衣が自分の聖力をギリギリまで消耗してでも、防御も兼ねる小魚ミサイルを大量に用意してくれたのは、言葉に出来ない程の感謝しかない。
「大丈夫だっ! 俺は勝つっ!」
「はいっ、ぶつかりますっ!」
――っドドドドドドドオオオオオオオっ!
みんなの信頼を無にしない決意で、ガードをするミサイル郡と共に、遂に少年とジミニーが柱へと突入をした。
白い半透明な柱の内部は、粘液みたいな抵抗感があって、外からの光が薄く射し込んでいて、やや明るい。
目を開けていられるのは、きっと鎧のお陰な気がする。
ミサイルの速度で突き進む章太郎は、しかし体感的に、暴風というか水圧のような、強い抵抗感覚も受けていた。
「むぐ…っ! 凄い、敵意の圧…っ!」
「章太郎様、ミサイルが…っ!」
外から透けて見えていた柱の中心までは、まだまだ距離がある。
それでも、少年を護る小魚ミサイルたちが蜃鬼楼そのものな柱の物質と触れて、聖力を吸われてしまい、次々と消失をしてゆく。
「まっ、まずい…っ!」
まだ中心の女王までは掛かりそうそうなのに、既にミサイル郡は章太郎の周囲、一皮分しか残っていない。
「俺の考えではっ、行きでミサイルを消耗して、女王を捕まえて、そのまま鎧で飛び出す感じだったけど…っ!」
とか考えている内に、ついに小魚ミサイルが消耗しきり、抱き付くマグロ型ミサイルも吸収されて、無重力で素っ飛んできた章太郎とジミニーだけとなってしまった。
「ジミニーは鎧の中へっ! っ来たっ!」
鎧の胸部を開いて小美人を護ったと同時に、章太郎へ触れる蜃鬼楼によって、章太郎自身から聖力が吸われ始める。
「ぅぐく…っこれは…っ!」
以前にも、単体の蜃鬼楼に捕らえられて、直接に聖力を吸われた経験があるけれど、今回は周囲全てが蜃鬼楼だ。
吸われる速度と量と吸われる気持ち悪い感覚は、あの経験の比ではない。
「うえぇっ、吐きそう…っ!」
気持ちも悪いけれど、それよりも危険なのは、このままでは女王の許へ辿り着いても脱出が叶うかどうか。
「くそぅ――あっ、アレはっ!」
懸念はともかく、遂に章太郎の視界へ直視で、女王本体が入った。
「なっ、なんとか…っ!」
女王を攫って外へ出る。
そう新たに決意をするものの、聖力の減少は、すでに限界点が感じられるレベルだ。
このまま消耗し切ったら、変身が解けて、ジミニーも犠牲になってしまう。
(これじゃあ…っ!)
自分の考えが失敗だったと、頭に後悔と懺悔が過ぎった時、鎧内部の胸から頭部へと、声とストローが届く。
『章太郎様っ、これをっ!』
「…えっ!」
それは、アリスが精製したドリンクのストローだった。
小魚ミサイルの中に、最後に精製できたドリンクのボトルが、所持されていたらしい。
飛来するミサイルに捕まったりと、極度に集中をしている章太郎は気付かなかったので、代わりにジミニーが捕まえておいてくれたのだ。
「たっ、助かったよ、ジミニーっ!」
章太郎はストローを口に含むと、すでに飲み慣れた味のアリス特性ドリンクを、一気に飲み干す。
「っぅぉおおおおおおっ!」
最後のドリンクでエネルギーを補充した章太郎は、それ以上に、みんなの想いに感謝と感激を抱いて、凄まじく聖力が増幅をした。
「行くぞおぉっ! 俺は絶対っ、女王を助け出してっ、外へ出るんだあああっ!」
意志の力で加速した章太郎は、ついに女王の目の前まで接近。
半透明な物質があっても、すぐ近くだと、女王の姿が見えた。
蜃鬼楼の女王は、成人女性サイズのシルエットで、赤く優しく光っていて、全体的に女性のような形をしている。
長い髪を思わせる部分もユラユラと揺れていて、艶々なゼリーみたいな全身には、なんとなく女性だなーくらいの起伏が見えた。
蜃鬼楼の女王は、敵意の物質に包まれて、苦しそうに藻掻いて見える。
「女王様っ!」
章太郎の声に気付いた女王が、声のする方を見た感じだけど、手を伸ばす様子はない。
章太郎が鎧のままで手を伸ばしたものの、逆に怯えて、距離を開け始めてしまった。
「あわわ…っ! お、俺はっ、敵じゃありませんっ!」
と話しても、見知らぬ存在を恐れている感じ。
「こ、このままじゃあ…っ!」
章太郎も聖力を吸い尽くされてしまうし、御伽噺ガールズたちや桃太郎たちだって、消耗する一方だ。
「女王様っ、俺はっ――ジミニーっ!?」
焦る章太郎の鎧から、コオロギぐるみ蜃鬼楼のジミニーが飛び出して、女王の許へと泳いでゆく。
「女王様…っ!」
女王を助けたいと願うジミニーは、しかし敵意ある蜃鬼楼の中を、泳いでいるのだ。
救助対称へ近づきながら、その小さな身体の聖力が吸われ、消耗されてゆく。
「女王様…ママ…」
「ジっ、ジミニーっ!」
女王の胸ヘと辿り着いたジミニーは、母である女王へ触れたと同時に、消失をした。
「くっ、くそおぉ…っ!」
また目の前で、小さな少女を犠牲にしてしまった――。
「俺はっ…どうして…っ!」
自分の無力さを痛感する章太郎へ、優しい掌が触れた。
「え…」
『………………』
赤く光る掌から章太郎へ、言葉ではなく、意志が流れ込んで来る。
~第百三十二話 終わり~
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