5 / 64
4.いや誰???? 誰の話?????
しおりを挟む
え、ちょっと、待って。
何で????
何で私を??
赤の他人である私を生き返らせるために、禁術に手を出すなんて。そんな奇行に走る理由が分からない。
よほどの魔法狂であれば、純粋な好奇心でもって、ちょうどいいからやってみようとやらかすことはあったかもしれないけれど。そんな人間はそうそういないだろう。
そこで、気づいてしまった。
私がアイシャ・スペンサーとして、再び生を受けた理由に。
いや、理由というより、原因だろうか。
彼の言う通り術式は完璧だったのだろう。今目の前にいる彼の魔力量は私の全盛期をも凌駕していると感じる。大魔導士と言うからには少なくとも魔法大学を首席で卒業しているはずだし、理論も知識も十分のはず。
この国にはあらゆるところで、禁術の使用を防ぐための術式が張り巡らされている。
禁術を検知すると即座に魔法管理局から調査員が転移してきて、使用者を捕縛するのだ。
……何故そんなことを知っているかといえば、私も禁術をやってみたくなっていろいろと調べたからだ。
検知用の魔法陣を解除すればいいわけで、まぁ仕掛けた側もそんなものは百も承知で、妨害用の術式が何重にもかけられているのだけれど……あれはパズルみたいで実に楽しかった。
彼はそこまではしなかったのだろう。
禁術の発動と同時に転移してきた魔法管理局の精鋭たちに取り押さえられ……その結果が、謹慎である。
彼も管理局も、失敗したと思ったのだ。蘇生術は成功しなかった。そう、思い込んだ。
実際は私が……いや、私の魂というべきか……が、別の人間として生を受けたことなど、知る由もなく。
……どうしよう。
私自身が禁術の被験者となったことはたいへん興味深い。
たとえば身体を伴う蘇生にならなかった理由とか。
私の死に様が魔法の暴発によって木っ端微塵どころか消し炭になるという有様だったことが関係しているのか、それとも私に加護が存在しなかったことに起因しているのか。
興味深いが、それはさておき。
私が、というか私の前世がグレイスだと、伝えた方がいいのか、どうか。
仮に彼が私のことを生き返らせたいと思うくらい慕ってくれていたとして、「私実はグレイスの生まれ変わりなんですよ~」と言ったところで「そうなんだ! わぁい! 先生が生き返ってくれて嬉しい~!」となるかと言われると、何となく、そうはならないんじゃないかという、悪い予感がひしひしとしていた。
「あのー……6歳児質問で恐縮ですが」
「……何?」
恐る恐る問いかけた私に、彼が低い声で無愛想に応じる。
昔の彼はもっと可愛らしい声だったと思うのだけれど、声変わりするとこうも変わるものだろうか。
「も、もしかして、その先生って人が、不完全な形で蘇生してる、なんてことは」
「は?」
ぎろりと、彼がこちらを睨んだ。
ドスの効いた声に思わず縮み上がる。
本当に、私の知るノアと同一人物だろうか。
それとも、私が彼の家庭教師だったから、猫をかぶっていて……こちらが彼の本質なのだろうか。
「僕の理論も術式も魔法陣も完璧だった。そして何より……生き返らせたかったのはあの、完璧な先生だよ。不完全だなんて有り得ない」
「か、かんぺき」
私の言葉に、彼は当たり前だろうと言わんばかりに頷いた。
そしてこれまでの無愛想な印象が嘘のように、立板に水がごとくつらつらと語り始めた。
「君は知らないかもしれないけど。先生は素晴らしく特別でいて、すべてが完璧な存在だったんだ。飛び級で魔法大学を卒業して、史上最年少で魔法局に入って、史上最年少で大魔導師の称号を得て。魔法だけじゃない、美しくて気高くて、やさしくて朗らかでおおらかで、それでいて茶目っ気があって笑顔がかわいくて。誰からも愛されて尊敬される、そんな人だった」
いや誰????
誰の話?????
私は目を瞬くことしかできない。
今一瞬、ほんの一瞬だけ、昔のノアの面影を見た気がした。
のだけれど。
「完全な存在じゃない先生なんて、先生じゃない。不完全だなんて、あってはならない、許されないことだ」
目が怖い。
どういう、どういうこと??
魔法学園に入った頃の彼はこんな澱んだ目をしていなかったはずだ。もっときらきらした、希望に満ちた目をしていたのに。
私のことだって、慕ってくれているとは感じていたけれど、こんなにも盲信的じゃあなかったはず。
死んだら人は美化される、と言うけれど。しばらく会っていない間に、綺麗な思い出として、子どもの頃の憧れのお姉さんとして美化されていたとして……でもそれにしたって限度というものがあると思う。
これは、やばい。やばすぎる。
今万が一カミングアウトしようものなら、良くて虚言癖のある幼女として扱われるか、最悪の場合「は? お前みたいなちんちくりんが先生? 先生を愚弄する気か?」とか言われて消し炭にされる。
何で????
何で私を??
赤の他人である私を生き返らせるために、禁術に手を出すなんて。そんな奇行に走る理由が分からない。
よほどの魔法狂であれば、純粋な好奇心でもって、ちょうどいいからやってみようとやらかすことはあったかもしれないけれど。そんな人間はそうそういないだろう。
そこで、気づいてしまった。
私がアイシャ・スペンサーとして、再び生を受けた理由に。
いや、理由というより、原因だろうか。
彼の言う通り術式は完璧だったのだろう。今目の前にいる彼の魔力量は私の全盛期をも凌駕していると感じる。大魔導士と言うからには少なくとも魔法大学を首席で卒業しているはずだし、理論も知識も十分のはず。
この国にはあらゆるところで、禁術の使用を防ぐための術式が張り巡らされている。
禁術を検知すると即座に魔法管理局から調査員が転移してきて、使用者を捕縛するのだ。
……何故そんなことを知っているかといえば、私も禁術をやってみたくなっていろいろと調べたからだ。
検知用の魔法陣を解除すればいいわけで、まぁ仕掛けた側もそんなものは百も承知で、妨害用の術式が何重にもかけられているのだけれど……あれはパズルみたいで実に楽しかった。
彼はそこまではしなかったのだろう。
禁術の発動と同時に転移してきた魔法管理局の精鋭たちに取り押さえられ……その結果が、謹慎である。
彼も管理局も、失敗したと思ったのだ。蘇生術は成功しなかった。そう、思い込んだ。
実際は私が……いや、私の魂というべきか……が、別の人間として生を受けたことなど、知る由もなく。
……どうしよう。
私自身が禁術の被験者となったことはたいへん興味深い。
たとえば身体を伴う蘇生にならなかった理由とか。
私の死に様が魔法の暴発によって木っ端微塵どころか消し炭になるという有様だったことが関係しているのか、それとも私に加護が存在しなかったことに起因しているのか。
興味深いが、それはさておき。
私が、というか私の前世がグレイスだと、伝えた方がいいのか、どうか。
仮に彼が私のことを生き返らせたいと思うくらい慕ってくれていたとして、「私実はグレイスの生まれ変わりなんですよ~」と言ったところで「そうなんだ! わぁい! 先生が生き返ってくれて嬉しい~!」となるかと言われると、何となく、そうはならないんじゃないかという、悪い予感がひしひしとしていた。
「あのー……6歳児質問で恐縮ですが」
「……何?」
恐る恐る問いかけた私に、彼が低い声で無愛想に応じる。
昔の彼はもっと可愛らしい声だったと思うのだけれど、声変わりするとこうも変わるものだろうか。
「も、もしかして、その先生って人が、不完全な形で蘇生してる、なんてことは」
「は?」
ぎろりと、彼がこちらを睨んだ。
ドスの効いた声に思わず縮み上がる。
本当に、私の知るノアと同一人物だろうか。
それとも、私が彼の家庭教師だったから、猫をかぶっていて……こちらが彼の本質なのだろうか。
「僕の理論も術式も魔法陣も完璧だった。そして何より……生き返らせたかったのはあの、完璧な先生だよ。不完全だなんて有り得ない」
「か、かんぺき」
私の言葉に、彼は当たり前だろうと言わんばかりに頷いた。
そしてこれまでの無愛想な印象が嘘のように、立板に水がごとくつらつらと語り始めた。
「君は知らないかもしれないけど。先生は素晴らしく特別でいて、すべてが完璧な存在だったんだ。飛び級で魔法大学を卒業して、史上最年少で魔法局に入って、史上最年少で大魔導師の称号を得て。魔法だけじゃない、美しくて気高くて、やさしくて朗らかでおおらかで、それでいて茶目っ気があって笑顔がかわいくて。誰からも愛されて尊敬される、そんな人だった」
いや誰????
誰の話?????
私は目を瞬くことしかできない。
今一瞬、ほんの一瞬だけ、昔のノアの面影を見た気がした。
のだけれど。
「完全な存在じゃない先生なんて、先生じゃない。不完全だなんて、あってはならない、許されないことだ」
目が怖い。
どういう、どういうこと??
魔法学園に入った頃の彼はこんな澱んだ目をしていなかったはずだ。もっときらきらした、希望に満ちた目をしていたのに。
私のことだって、慕ってくれているとは感じていたけれど、こんなにも盲信的じゃあなかったはず。
死んだら人は美化される、と言うけれど。しばらく会っていない間に、綺麗な思い出として、子どもの頃の憧れのお姉さんとして美化されていたとして……でもそれにしたって限度というものがあると思う。
これは、やばい。やばすぎる。
今万が一カミングアウトしようものなら、良くて虚言癖のある幼女として扱われるか、最悪の場合「は? お前みたいなちんちくりんが先生? 先生を愚弄する気か?」とか言われて消し炭にされる。
11
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
枯れ専モブ令嬢のはずが…どうしてこうなった!
宵森みなと
恋愛
気づけば異世界。しかもモブ美少女な伯爵令嬢に転生していたわたくし。
静かに余生——いえ、学園生活を送る予定でしたのに、魔法暴発事件で隠していた全属性持ちがバレてしまい、なぜか王子に目をつけられ、魔法師団から訓練指導、さらには騎士団長にも出会ってしまうという急展開。
……団長様方、どうしてそんなに推せるお顔をしていらっしゃるのですか?
枯れ専なわたくしの理性がもちません——と思いつつ、学園生活を謳歌しつつ魔法の訓練や騎士団での治療の手助けと
忙しい日々。残念ながらお子様には興味がありませんとヒロイン(自称)の取り巻きへの塩対応に、怒らせると意外に強烈パンチの言葉を話すモブ令嬢(自称)
これは、恋と使命のはざまで悩む“ちんまり美少女令嬢”が、騎士団と王都を巻き込みながら心を育てていく、
――枯れ専ヒロインのほんわか異世界成長ラブファンタジーです。
『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』
星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】
経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。
なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。
「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」
階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。
全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに!
「頬が赤い。必要だ」
「君を、大事にしたい」
真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。
さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!?
これは健康管理?それとも恋愛?
――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。
崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる