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41.本望だったし、後悔もしてなかった
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フェイがじとりと私を睨み、何故か少し不満げに言う。
「何でお前が謝るわけ」
「え?」
聞かれて、首を捻る。
何故、というか。
それこそ、聞かなくても推察できることだと思うのだけれど。
「ノアが禁術に手を出したの、私のせいみたいだから」
「私のせい、ね」
フェイが私の言葉を繰り返す。そして、ふんと小さく鼻を鳴らして、「人間変わるもんだな」と独りごちた。
「てっきりお前は、後悔してないと思ってたよ」
彼が窓の外に視線を投げる。
それを追いかけて、私も庭に目を向けた。
木々が風に揺れて、地面に落ちる影の形を変えていた。
緑が豊かで、静かなところだ。前世で暮らしていた王都の中心部とは、時間の流れすら違うような気がする。
「魔法と結婚してるみたいな女だったから。魔法と心中しても本望、とか、そんな感じじゃねぇかって」
「本望だったし、後悔もしてなかったけど」
そこまで言って、言葉を切る。
私の手の中で眠そうに目を瞑っているフェリの羽毛に指を埋めながら、ぽつりと零す。
「ノアのこと見てたら、ちょっとだけ反省した。私が死んで、あんなに悲しむ人がいたのかって」
「死ななきゃそんなことも分かんねぇのかよ、天下の大魔導士様が」
「知り合いが死んだら、誰だって悲しいだろうけど。そんなの当たり前じゃない」
前世の私について熱く語るノアを思い出す。
お酒を飲んで泣きながらくだを巻いていたノアを思い出す。
私があげた本を大切に保存していてくれたノアを思い出す。
ランタンを見上げて静かに泣いていたノアの姿を思い出す。
私を――生き返らせようとまでしたノア。
「そういう『当たり前』の範疇を超えて受け止める相手が、私にもいたのかって」
たとえば、離れ離れになった母親が死んだなら。
目の前にいる友人のフェイが死んだなら。
手の中にいるふわふわのフェリが死んだなら。
きっと私だって悲しんだと思う。
けれど結局それは想像でしかなくて――いざそうなったときに、私がノアほど強く、その死を悼むことが出来たのか。
それは私にはよく、分からなかった。
彼が前世の私の死によって受けた影響を、感情の変化を。
やっぱり正確に理解はできない。けれど、それでも。
心が、動いたのだ。
私には悲しむ資格はないのかもしれないけれど――ノアの様子を見ていたら、私まで悲しくなった。
ノアをそんな気持ちにさせてしまったことが、申し訳ないと思った。
もし、あの時――ノアの気持ちを知っていたら。
理解はできずとも、知覚していたなら。
彼がこんなに悲しむなんて、それで私まで悲しくなるなんて、知っていたなら。
「もしあの時、それを知ってたら……私は同じことしたのかなって。ちょっと、そう思っただけ」
「お前なぁ」
ほとんど独り言のように言った私に、フェイがやれやれと言わんばかりにため息をつく。
呆れたような声音で、私をじっと睨みながら言う。
「そんなの、あいつだけじゃねぇよ」
「え?」
「俺だって、」
咄嗟に彼の顔を見た。彼の言葉が意外だったからだ。
私と目が合うと、彼は一瞬言葉に詰まったように口を噤む。
そしてもごもごと口ごもったあとで、ふいと目を逸らしながら言った。
「……フェリだって、そうだろうが」
「あは」
手の中のフクロウに視線を落とす。
心地よさそうに目を閉じるその小さな生き物のぬくもりを、両手でじんわりと感じていた。
ついつい釣られて、私まで目を細めてしまう。
「そうかも」
「何でお前が謝るわけ」
「え?」
聞かれて、首を捻る。
何故、というか。
それこそ、聞かなくても推察できることだと思うのだけれど。
「ノアが禁術に手を出したの、私のせいみたいだから」
「私のせい、ね」
フェイが私の言葉を繰り返す。そして、ふんと小さく鼻を鳴らして、「人間変わるもんだな」と独りごちた。
「てっきりお前は、後悔してないと思ってたよ」
彼が窓の外に視線を投げる。
それを追いかけて、私も庭に目を向けた。
木々が風に揺れて、地面に落ちる影の形を変えていた。
緑が豊かで、静かなところだ。前世で暮らしていた王都の中心部とは、時間の流れすら違うような気がする。
「魔法と結婚してるみたいな女だったから。魔法と心中しても本望、とか、そんな感じじゃねぇかって」
「本望だったし、後悔もしてなかったけど」
そこまで言って、言葉を切る。
私の手の中で眠そうに目を瞑っているフェリの羽毛に指を埋めながら、ぽつりと零す。
「ノアのこと見てたら、ちょっとだけ反省した。私が死んで、あんなに悲しむ人がいたのかって」
「死ななきゃそんなことも分かんねぇのかよ、天下の大魔導士様が」
「知り合いが死んだら、誰だって悲しいだろうけど。そんなの当たり前じゃない」
前世の私について熱く語るノアを思い出す。
お酒を飲んで泣きながらくだを巻いていたノアを思い出す。
私があげた本を大切に保存していてくれたノアを思い出す。
ランタンを見上げて静かに泣いていたノアの姿を思い出す。
私を――生き返らせようとまでしたノア。
「そういう『当たり前』の範疇を超えて受け止める相手が、私にもいたのかって」
たとえば、離れ離れになった母親が死んだなら。
目の前にいる友人のフェイが死んだなら。
手の中にいるふわふわのフェリが死んだなら。
きっと私だって悲しんだと思う。
けれど結局それは想像でしかなくて――いざそうなったときに、私がノアほど強く、その死を悼むことが出来たのか。
それは私にはよく、分からなかった。
彼が前世の私の死によって受けた影響を、感情の変化を。
やっぱり正確に理解はできない。けれど、それでも。
心が、動いたのだ。
私には悲しむ資格はないのかもしれないけれど――ノアの様子を見ていたら、私まで悲しくなった。
ノアをそんな気持ちにさせてしまったことが、申し訳ないと思った。
もし、あの時――ノアの気持ちを知っていたら。
理解はできずとも、知覚していたなら。
彼がこんなに悲しむなんて、それで私まで悲しくなるなんて、知っていたなら。
「もしあの時、それを知ってたら……私は同じことしたのかなって。ちょっと、そう思っただけ」
「お前なぁ」
ほとんど独り言のように言った私に、フェイがやれやれと言わんばかりにため息をつく。
呆れたような声音で、私をじっと睨みながら言う。
「そんなの、あいつだけじゃねぇよ」
「え?」
「俺だって、」
咄嗟に彼の顔を見た。彼の言葉が意外だったからだ。
私と目が合うと、彼は一瞬言葉に詰まったように口を噤む。
そしてもごもごと口ごもったあとで、ふいと目を逸らしながら言った。
「……フェリだって、そうだろうが」
「あは」
手の中のフクロウに視線を落とす。
心地よさそうに目を閉じるその小さな生き物のぬくもりを、両手でじんわりと感じていた。
ついつい釣られて、私まで目を細めてしまう。
「そうかも」
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