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第二章
ポリニエールとアラゴン
しおりを挟むエレノアはポリニエール領へとやって来た。隣接するアラゴン領の使者と会うためだ。
昔からポリニエールとアラゴンは、農産物と鉱物を取引きすることで、親密な関係を築いて共生してきた。
ポリニエール領は気候もよく広大な農地を抱えているため、多種多様な農産物がとれる。
一方で隣のアラゴン領は、険しい山が多く鉱物資源が豊富だが、平地が少なく穀物が不足しがちだった。
アラゴン領を治めるのは、マグライド辺境伯だ。
アラゴンに近いクボラの街は、ポリニエール領で一番栄えていたため、アラゴンの領主は二人の息子を連れてよくクポラの街にやって来た。
ポリニエール家の屋敷もクポラにあったため、エレノアと兄、マグライドの息子たちは、四人でよく遊んだ。
馬に乗れるようになると、互いの領地に気ままに行き来するようになり四人は兄妹同然に育ったのだった。
エレノアは応接室でアラゴンの使者が来るのを待っていた。すると入り口が騒がしくなり執事が息を切らせ飛び込んできた。
「エレノア様!カイル様が!カイル様が戻ってきました」
まさに青天の霹靂だった。
ゆっくりと姿をあらわしたその人は、間違いなくエレノアがずっと探し続けていた、カイル・マグライドその人だった。
カイルはマグライト家の次男だ。
三年前カイルが戦場に行くことになったと聞いて、エレノアはアラゴンを訪れた。
百合の咲く丘の上でカイルと将来を誓いあった。そっとくちびるを重ね、見つめ合ったカイルの瞳が忘れられない。必ずまた戻ってきてねとカイルを送り出した。
それからしばらくして、補給部隊と共に前線に向かった兄が命をおとした。さらに追い討ちをかけるようにカイルが行方不明になったという知らせが届いたのだった。
その後のことはぼんやりとしか思い出せない。
ただひたすらに兄の仕事を引きつぎ、食糧調達に奔走し補給路を開いた。カイルを探すために。カイルの情報を得るために。
それでもカイルを見つけるどころか何の情報も得ることができなかった。
そのカイルが目の前にいる。
「カイル!カイル!」
エレノアは駆け寄り抱きついた。
いや、抱きつこうとしたが‥カイルに両肩をつかまれ止められた。
カイル?どうして。
一体どれほどの思いでカイルの帰還を待っていたことか、溢れる思いをぶつけるはずが、肩透かしをくらい消化できない。
カイルは宥めるようにエレノアの肩をポンポンとしながら言った。
「エレノア、会いたかったよ」
ああ、カイルの声だ!また涙がこみあげてくる。
が、次の一言で涙が引っ込んだ。
「結婚したんだって?おめでとう」
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