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1 水色の果実
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田園風景の広がる小さな村ポラリス。石造りの家があり、透き通ったきれいな小川が流れている。診療所からアレンが出てくる。アレンは医学生で、村唯一の診療所の一人息子である。
「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
アレンは中に向かって声をかけ、手に持ったリュックサックを肩にかけ、小走りで駆けだす。笑みを浮かべ、軽やかな足どりで並木道を駆け抜ける。
しばらくすると白い外壁の小さな家が見える。家の横には樫の木があり、ブランコが吊るされている。アレンは家のドアを軽く叩く。
「アイリスー! いるー?」
家の中から声がする。
「入ってー」
アレンはドアを開け、家の中へ入る。アイリスが部屋の真ん中で、背を向けて椅子に座り、キャンバスに向かっている。アイリスは売れない画家である。母親はアイリスが生まれてすぐに亡くなり、父親も数年前に他界し、今は一人暮らしをしている。アレンがアイリスに近づきながら問いかける。
「今日は何描いてるの?」
アイリスがキャンバスを持って突然立ち上がり振り向く。
「じゃーん! 世にも珍しい水色の果実よ!」
アイリスはキャンバスを突き出して、アレンに見せる。アレンはキャンバスを持ち、絵をじっと見つめる。
「今日は空想の絵なんだね」
「それがね、本当にあるのよね」
アイリスが笑顔で水色の果実を見せる。アレンは驚いてまじまじと見つめる。
「この果実を見てたらまるで海を見てる気分にならない? よーく見てみて。一色じゃなくて、いろんな色が混ざり合ってるのわかる?」
「あ、ほんとだ。きれい」
「でしょ!? この前森で会ったおじいさんにもらったの。アレンに見せたくて」
アイリスが微笑みながらアレンを見つめている。
「初めて見るよ。何て果実?」
「知らない。それより中身気にならない? 食べてみよ!」
「え……そうだね」
アレンは戸惑いながらも話を合わせる。アイリスは水色の果実を持ってキッチンに行く。アレンは待っている間に部屋を見回していた。そのときキッチンから大きな物音がする。アレンは慌ててキッチンに行く。
アイリスが床に倒れている。まな板の上には切りかけの果実とナイフがあり、アイリスの手元にはかじられた一片の果実が転がっている。アレンはアイリスに駆け寄り、抱きかかえる。
「アイリス! アイリス!」
体を揺するが反応はない。
「おーい! 生きてっかー!? メシ持ってきてやったぞー」
家の外から声がする。
クレイグが袋を下げて家の中に入る。クレイグは猟師の息子で、後継者として日々鍛錬している。
「クレイグ!」
キッチンの方からアレンが呼んでいる。クレイグは慌ててキッチンに向かう。
「何だ、何があった!」
クレイグがキッチンに駆けつける。アイリスを抱えるアレンの姿を見て、クレイグは驚き持っていた袋を床に落とす。アレンは涙を浮かべてクレイグを見上げる。
「父さんを! 早く父さんを呼んできて!」
「わ、わかった!」
クレイグは慌てて家を飛び出す。アレンは震える手でアイリスを抱きしめる。
診察室の前の長椅子にアレンとクレイグが座っている。うつむきながらアレンが口を開く。
「どうしよう……アイリスにもしもの――」
「やめろ。悪く考えるな。大丈夫だ」
クレイグはアレンの言葉を遮るように言った。
「やっぱり、あの果実のせいかな……」
「だろうな」
「止めればよかった。変な色だし、森で会ったおじいさんって――」
クレイグがアレンの胸ぐらをつかむ。
「そうだよ! 何で止めねえんだよ! こうなったのはおまえのせいだぞ! 食おうとすんじゃねえよ!」
アレンを突き放し、壁にもたれる。アレンは黙ったままうつむいている。そこにティムが来る。ティムは農家の息子で父親の手伝いをしている。動物や植物に詳しい。
「まだ診察中?」
「ああ」
クレイグが不機嫌そうに答える。
「あの果実見てきたよ。あれはシーダイヤだと思う。別名、夢幻の実っていって、昔は睡眠薬として使われていた果実なんだ」
「じゃあ、アイリスは眠ってるだけ?」
アレンは笑みを浮かべてティムを見上げる。
「うん。でも――」
診察室のドアが開き、アレンの父が出てくる。アレンとクレイグが立ち上がる。
「アレン、ティムからあの果実の話は聞いたのか?」
「うん。それでアイリスは?」
「わからん。数日で目覚めるかもしれないし、一生このまま眠り続けるかもしれない」
「え? どういうこと?」
アレンは驚いてティムを見る。
「食べた量が多過ぎたんだ。たくさん食べるとその分眠り続ける。あの果実で自殺する人もいるみたい」
アレンは崩れ落ちるように椅子に腰かける。
「何とかなんねえのかよ! 叩き起こせよ!」
クレイグが診察室に入ろうとしたのをティムが慌てて引き止める。
「だめだって! あれを食べたら何しても起きない。たとえ空腹でも」
クレイグがティムの胸ぐらをつかむ。
「寝たまま餓死ってことかよ!」
アレンの父がクレイグの肩に手を添える。
「いや、そうはさせない。栄養補給などはできる。ただ病院でできることはそこまでだ。あとは目覚めるのを願うしかない」
クレイグは肩を落とし、アレンはうつむいて涙を流す。クレイグは壁を殴る。
「くそっ! どこのじじいだよ! 見つけたらぶっ殺してやる」
ティムは心配そうにアレンの前に腰を下ろし、膝に手を添える。
「大丈夫だよ。きっと目覚める。僕も何か方法ないか探ってみるからさ」
アレンは涙をぬぐい、ティムを見る。
「どうやって? 心当たりでもあるの?」
「えっと……何か知ってるかもって人はいる。その人に聞いてみようかなって」
「行く! 俺も一緒に行く!」
「誰だよ、それ」
クレイグが疑いのまなざしでティムを見る。
「村はずれの山奥に一人で住んでる人。自称錬金術師なんだ」
「うさんくせえな。そんな奴にアイリスの命預けられるか!」
クレイグは呆れた顔で言う。
「悪い人じゃないって。ちょっと変わり者なだけ」
「いつか目覚めるどころか、とどめ刺されたらどうすんだよ」
「そんなことしないよ!」
ティムはクレイグをにらみつける。アレンが二人の間に割って入る。
「二人とも落ち着いてよ。話だけでも聞きに行こ。どうするかはそれから考えればいいんだから」
「そうだよ!」
ティムが自慢げな顔でクレイグを見る。クレイグは不満そうに目を逸らした。
「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
アレンは中に向かって声をかけ、手に持ったリュックサックを肩にかけ、小走りで駆けだす。笑みを浮かべ、軽やかな足どりで並木道を駆け抜ける。
しばらくすると白い外壁の小さな家が見える。家の横には樫の木があり、ブランコが吊るされている。アレンは家のドアを軽く叩く。
「アイリスー! いるー?」
家の中から声がする。
「入ってー」
アレンはドアを開け、家の中へ入る。アイリスが部屋の真ん中で、背を向けて椅子に座り、キャンバスに向かっている。アイリスは売れない画家である。母親はアイリスが生まれてすぐに亡くなり、父親も数年前に他界し、今は一人暮らしをしている。アレンがアイリスに近づきながら問いかける。
「今日は何描いてるの?」
アイリスがキャンバスを持って突然立ち上がり振り向く。
「じゃーん! 世にも珍しい水色の果実よ!」
アイリスはキャンバスを突き出して、アレンに見せる。アレンはキャンバスを持ち、絵をじっと見つめる。
「今日は空想の絵なんだね」
「それがね、本当にあるのよね」
アイリスが笑顔で水色の果実を見せる。アレンは驚いてまじまじと見つめる。
「この果実を見てたらまるで海を見てる気分にならない? よーく見てみて。一色じゃなくて、いろんな色が混ざり合ってるのわかる?」
「あ、ほんとだ。きれい」
「でしょ!? この前森で会ったおじいさんにもらったの。アレンに見せたくて」
アイリスが微笑みながらアレンを見つめている。
「初めて見るよ。何て果実?」
「知らない。それより中身気にならない? 食べてみよ!」
「え……そうだね」
アレンは戸惑いながらも話を合わせる。アイリスは水色の果実を持ってキッチンに行く。アレンは待っている間に部屋を見回していた。そのときキッチンから大きな物音がする。アレンは慌ててキッチンに行く。
アイリスが床に倒れている。まな板の上には切りかけの果実とナイフがあり、アイリスの手元にはかじられた一片の果実が転がっている。アレンはアイリスに駆け寄り、抱きかかえる。
「アイリス! アイリス!」
体を揺するが反応はない。
「おーい! 生きてっかー!? メシ持ってきてやったぞー」
家の外から声がする。
クレイグが袋を下げて家の中に入る。クレイグは猟師の息子で、後継者として日々鍛錬している。
「クレイグ!」
キッチンの方からアレンが呼んでいる。クレイグは慌ててキッチンに向かう。
「何だ、何があった!」
クレイグがキッチンに駆けつける。アイリスを抱えるアレンの姿を見て、クレイグは驚き持っていた袋を床に落とす。アレンは涙を浮かべてクレイグを見上げる。
「父さんを! 早く父さんを呼んできて!」
「わ、わかった!」
クレイグは慌てて家を飛び出す。アレンは震える手でアイリスを抱きしめる。
診察室の前の長椅子にアレンとクレイグが座っている。うつむきながらアレンが口を開く。
「どうしよう……アイリスにもしもの――」
「やめろ。悪く考えるな。大丈夫だ」
クレイグはアレンの言葉を遮るように言った。
「やっぱり、あの果実のせいかな……」
「だろうな」
「止めればよかった。変な色だし、森で会ったおじいさんって――」
クレイグがアレンの胸ぐらをつかむ。
「そうだよ! 何で止めねえんだよ! こうなったのはおまえのせいだぞ! 食おうとすんじゃねえよ!」
アレンを突き放し、壁にもたれる。アレンは黙ったままうつむいている。そこにティムが来る。ティムは農家の息子で父親の手伝いをしている。動物や植物に詳しい。
「まだ診察中?」
「ああ」
クレイグが不機嫌そうに答える。
「あの果実見てきたよ。あれはシーダイヤだと思う。別名、夢幻の実っていって、昔は睡眠薬として使われていた果実なんだ」
「じゃあ、アイリスは眠ってるだけ?」
アレンは笑みを浮かべてティムを見上げる。
「うん。でも――」
診察室のドアが開き、アレンの父が出てくる。アレンとクレイグが立ち上がる。
「アレン、ティムからあの果実の話は聞いたのか?」
「うん。それでアイリスは?」
「わからん。数日で目覚めるかもしれないし、一生このまま眠り続けるかもしれない」
「え? どういうこと?」
アレンは驚いてティムを見る。
「食べた量が多過ぎたんだ。たくさん食べるとその分眠り続ける。あの果実で自殺する人もいるみたい」
アレンは崩れ落ちるように椅子に腰かける。
「何とかなんねえのかよ! 叩き起こせよ!」
クレイグが診察室に入ろうとしたのをティムが慌てて引き止める。
「だめだって! あれを食べたら何しても起きない。たとえ空腹でも」
クレイグがティムの胸ぐらをつかむ。
「寝たまま餓死ってことかよ!」
アレンの父がクレイグの肩に手を添える。
「いや、そうはさせない。栄養補給などはできる。ただ病院でできることはそこまでだ。あとは目覚めるのを願うしかない」
クレイグは肩を落とし、アレンはうつむいて涙を流す。クレイグは壁を殴る。
「くそっ! どこのじじいだよ! 見つけたらぶっ殺してやる」
ティムは心配そうにアレンの前に腰を下ろし、膝に手を添える。
「大丈夫だよ。きっと目覚める。僕も何か方法ないか探ってみるからさ」
アレンは涙をぬぐい、ティムを見る。
「どうやって? 心当たりでもあるの?」
「えっと……何か知ってるかもって人はいる。その人に聞いてみようかなって」
「行く! 俺も一緒に行く!」
「誰だよ、それ」
クレイグが疑いのまなざしでティムを見る。
「村はずれの山奥に一人で住んでる人。自称錬金術師なんだ」
「うさんくせえな。そんな奴にアイリスの命預けられるか!」
クレイグは呆れた顔で言う。
「悪い人じゃないって。ちょっと変わり者なだけ」
「いつか目覚めるどころか、とどめ刺されたらどうすんだよ」
「そんなことしないよ!」
ティムはクレイグをにらみつける。アレンが二人の間に割って入る。
「二人とも落ち着いてよ。話だけでも聞きに行こ。どうするかはそれから考えればいいんだから」
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