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プロローグ
しおりを挟む「あ……またやっちゃってる……」
千奈美は朝、嫌な感触で目が覚める。
暑くなってきた最近、膝丈くらいのパジャマの中でぶちゅりと千奈美には聞き慣れた嫌な水音が聞こえた。
腰のゴムに手を掛け、千奈美が自身のそこを確認するのは一応だ、既に結果は分かりきっていることなのだから。
薄毛のそこはしっとりと潤っており、紙おむつの吸水ポリマーは黄色に染まりこれでもかと膨らんで自己主張している。
紛れもなくちゃんとした“おねしょ”だった。
「う……やっぱり……ホントは今日までなのに……」
千奈美は自分の所業に呆れながらトイレへと向かい、サニタリーボックスを使った。
小さめのサニタリーボックスには何も入っていなかったが、それだけでパンパンになり、他の人が入れる余地はまるで無さそうだ。
「あーもう……」
2度目の呆れが千奈美の肩を落とす。
後始末の後始末。自分のした事とはいえ、千奈美は大きく溜息を吐いて、中の袋ごと取り出して口を縛り、新しいパンツを穿いて着の身着のまま燃えるゴミ袋の置いてある倉庫へ持って行くべくトイレの扉を開くと、
「おはよ~……ん……どうしたの?」
妹の小春とバッタリ出くわしてしまった。
「ど、どうもしないわよ……」
黒い袋だから中身はわからないものの、千奈美がそれを捨てに行くのが“そういう事”だという事は小春も知っている。
小春は性悪な無垢故に単に姉のバツの悪そうな顔が見たかっただけであった。
「ふ~ん」ニマニマといやらしい笑みを浮かべる小春を千奈美はよっぽど叱ろうかと思ったが、こんなものを持っていては威厳も何もないのは千奈美もよく分かっていた。
(くっ……!覚えてなさい小春……!)
バカにされて悔しいが、努めて平気な顔でバレていないフリをすることだけが千奈美に出来る唯一の事だった。
───
今日の朝ご飯はパンだ。朝食は2日に1回は洋食だった。
外で自転車のベルがチリンチリンと短く2回鳴る。
この鳴らし方は幼馴染みの吉野原(よしのはら)ロロミだ。
「ちわ~。チー~早よ食わんと遅刻すっぞ~」
「ロロ!ちょっと待って~早いよ~」
学校とは逆方向の筈なのにロロミはかなりの頻度でこの家に迎えに来る。
「お~、いつも通り待ってる~」
いつもありがとうロロ!心の中で千奈美は感謝する。
「よしのはらさんまってるよ。チー?」
流石にそれは千奈美も看過出来ず注意する。
「もう!あんたはチーって呼ばないの!」
「くふふ……は~い♡」
13歳年下の妹、小春(こはる)。
継母の連れ子であり、お調子者だがその可愛さで憎めない、悪戯好きな性格の小型犬みたいな印象を受ける。
しかし千奈美にとっては生意気なだけで好印象は全くない。
最近は動画を観るのに夢中で自分でも配信したいらしいが、千奈美はあまり興味がなく見たことはなかった。
朝のパンを食べ終える寸前、小春がした何気ない会話。
「おねえちゃん、きょうもした?」
「っ……」
咄嗟の問いに食べていたパンが詰まった千奈美は眼を泳がせる。千奈美は全然嘘とかが吐けない性格なため、沈黙は肯定と同じだった。
「したんだ?おかーさーん!」
「こは……!」
まだ食器を洗っているのに振り返ったのは現在出張中の父の再婚相手であり義母の栗野(くりの)孝子(たかこ)だ。
かなり若いが歳は秘密。モデルの仕事をしている。
「え?千奈美ちゃん、今日も?……期限、確か明日までよね……」
おっとりとした喋り方からもわかる通り穏やかで少々楽天家な性格だが一度決めた事は曲げない主義。
「……はい」
千奈美は俯いて自分の股に手を挟んだ。まるで自身を罰しているかのようで孝子はおねしょよりも寧ろそっちの方が心配だ。
「い、いいのよ!千奈美ちゃんのせいじゃないわ!お医者さんも原因はわからないって仰ってらしたし……」
「……」
千奈美の沈黙が居た堪れない雰囲気を出すも、結局は解のない問題。
しかもその期限は明日の千奈美の18歳の誕生日までだった。
「今日の夜までには……!」
本当は昨夜までに治ってなければいけないものだが、極論今日の夜に治れば届出も出さなくて良い。今夜が正念場だ。
一番焦っているのは他ならぬ千奈美だった。
───
「チーいつも時間かかるな~、ハナジョだもん当然か」
ご飯を食べ終えて出てくるとロロミは自転車に突っ伏しておっぱいの上にケータイを乗せて食べていたキャンディの柄でトツトツつついて文字を打っていた。
(花の女子高生って古いな……略すのは逆に新しい?)
千奈美が自分の鞄を背負ってヨッと自転車の荷台にお尻を載せると、ロロミは少しだけお尻を浮かせて超ミニスカで健康的に日焼けした脚を見せつけながら漕ぎ出す。
「ロロは時間掛かんないよね、いつ迎え行っても10分以内に出てくるし」
言ってから皮肉臭かったかなと思うも、
「もひ(もちろん)!ときかね(時は金なり)って言うっしょ?朝(あひゃ)帰りしゅっと寝てる時間ねーし!」
ロロミは全く気にせずにニヘヘと笑った。
「朝帰りなんかしてるから進級危なくなるんでしょー?そんでわたしのノートをアテにしてるしー」
「ニヘヘ……わりーと思ってるから迎えに来たんでしょ~が。そんで今日の宿題写さして~」
「はいはい……仕方ないわねー」
そうしてふうと息を吐くものの、悪友の様にする会話が千奈美は好きだった。
男と会って朝帰りして金髪で日焼けして派手めのアクセもバチバチのロロミの着飾らない人間性に惹かれる人間は多い。千奈美も漏れなくその一人だった。
どこか憎めないロロミに世話を焼いてあげるのが何故か嬉しいのだ。
ただロロミが笑顔になって「ありがとー」と言うだけなのに。
2人の高校は30分ほどそうやって自転車を漕いでいくと校門に着く。
「着いた~!ほれ!チー急げ~」
「ロロもね~!」
駐輪場で別れると千奈美は急いで教室へと向かった。
少し色褪せたスライドドアを越えると臭いが変わる。自分の世界に来たという感じがして千奈美はこの瞬間が好きだ。
「おはようございます、千奈美さん」
「はよ~」
「おはよう神影川さん!ミルち!」
生徒会書記の神影川(みかげがわ)時女神(のるん)は千奈美とロロミと同じクラスだ。
長い黒髪と穏やかな物腰、垂れ目で誠実そうと教師からも生徒からも人気で正義感が強い。
特に目につく背の高さはその長い脚のお陰だろう。それに比例したような巨乳と制服のスカート越しでもわかる上向きのお尻、真夏でも纏う黒のストッキングが清楚ながらも性的なフェロモンを醸し出していた。
その横で机の上で特大のおっぱいを休ませているのが佐渡野(さどの)ミルカ。
眠たげな瞳、桃色の厚い唇、茶髪の三つ編みに似合う大きなリボン。
身長とバストサイズはなんと135cmで同じだが、胸と身長以外は普通。普段からミルカの視界の下半分は地面ではなく自分のおっぱいなため、いつも歩きにくそうにしている。
自身の胸から下は爪先どころか胸の影も見えないのでたまにスカートが捲れていても気付かないし、小さすぎてよく人混みに揉みくちゃにされているが、近くののるんが見つけ出す。
「ロロミさんはどうしたんですか?」
「もう少し後で来るよ」
「ね、チー~、連絡しといたよね~……宿題見して~?」
言うが早いかミルカがロロミに見せる為に持っていた宿題用のノートをスッと抜き取る。
「ミルカさん!ダメですよそんなの!」
「ま、まあまあ……神影川さんも忘れ物した時貸してもらう事もあるでしょ?」
「だって殆ど毎日じゃないですか……!あんまり甘やかすのは……」
ガラ!と汗だくのロロミがクラスに入ってくる。
「ちょっち待ってミル!あーしが先!」
「え~困ったな~、ロロ~一緒に見ればいいっしょ~?」
「ミル天才すぎ!」「っしょ~?」
2人して体を寄せ合ってカリカリと宿題を写し始めた、お互いのおっぱいを邪魔そうにして。
「も~、2人して……先生本当にすぐ来ますよ?」
嘆息したのるんが腕を組むとおっぱいが大きく歪んでゆさりと揺れた。
それがいつもの4人の日常だ。
しかし今日は運が悪かったらしい。
タンッ!
いつの間にやら着いていた先生がバインダーで教卓を叩いて注目を集めた。
「一限目はわたしの授業だからホームルームの前に宿題回収するぞ~」
千奈美達はそういえば一限目は担任だった、と思い出す。
だから宿題もHRで既に集めようという事なのだろう。
まだ猶予があると思っていた生徒達は口々に不満を漏らした。
「はんや(速)!」「せんせ横暴じゃ~ん」「ひとでなしー!」「あと……!あと1分だけ稼いでくれ!」
「宿題は家でやってきなさ~い、後ろから回して回収~……とその前に自分の席に戻るように~」
彼女達は先生に怒られない程度の速度で極限まで引き延ばして着席する術に長けている。
ゾロゾロガタガタと大きな音を立てていても、やっている事はそれぞれが最も遠回りに牛歩で動いて各自の席に着いているだけだ。
そして自らの席に着いている者はその間に全力で宿題を写す。
全員が3分掛けて席に着き、やっと宿題が回され始めた。
前の席のロロミが後ろを向いたまま千奈美の宿題をホイとノールックで前の子に渡している。
「チー、助かったよ」
「間に合った?」
「他言語だし全然無理だった。でも見してくれてサンキュ」
「英語ね」
ロロミは千奈美のツッコミにクックッと声を殺して笑っていた。
「あんたたちもっと早く動くように~、じゃ、ホームルーム始めっか~」
先生がホームルームで連絡事項を伝え終えると、10分ほど休憩があり、みんなトイレや予習をし出す。
「ミルちの方はどうだったの?」
「ギリ間に合ってた」
ロロミによるとなんとミルカは間に合ったらしい。それを聞いた千奈美はミルカの尋常ならざる速さに爆笑していた。
「なんでそれで自分でやらないかなー」
しかしそう言う千奈美も臆面なく頼られるのが嫌いじゃなかった。
だがそれは友の役に立てるのが嬉しい訳ではない、千奈美の少し歪んだ優越感のためだ。
幼い時分より夜尿症の治らない千奈美は人より劣等感を感じる事が多い。そのせいで彼氏が出来たこともないし、セックスにすら及び腰だ。
だからいつでも人よりもちょっとくらいは上でいたいのだ、例え友達相手であっても。
競い合う学生同士なら誰でも持つ感情ではあるが、千奈美はそれに関して特に神経質だった。
仲良くするのは勿論だが、夜尿症を患う分、その他の事を頑張っている(勿論限界はあるが)と思う事が千奈美の心を安定させていた。
~昼休み~
今日も4人は一緒にお昼を食べる。はしたないが、食事中の話題は専ら千奈美の誕生日だ。
「チー明日誕生日っしょ?」
「お、覚えててくれたんだ」(どうしよう……わたしおねしょまだ治ってない……明日もしてたら……)
「もち!親友だしねー」
自分ではどうしようもない問題に不安になると、焦燥が下半身を焼き、千奈美はもじもじとスカートを抑える。
ロロミは千奈美が気恥ずかしいと感じていると思ったのか、ニシシと笑ってフォローを入れた。
「なんかくれるの?」(考えるな考えるな……)
千奈美は期待を込めずダメ元でロロミに減らず口を叩く。本当は今にも脂汗が吹き出しそうなくらい心が締め付けられているが、そういう何でもない会話が千奈美を安心させるのだった。
「うーん、今金欠~駅前でオッさん捕まえたら……」
「だ、ダメだよそんなの!そうだ!来月まで待ったげる!」
来月か~と顎に手を当てて思案するロロミを尻目に、のるんは鼻息を荒げて言った。
「わ、わたくしは用意していますよ?」「あちしも」
「神影川さん!ミルちも!ありがと~!」
のるんとミルカはお互い満更でもなさそうに相好を崩した。
「使わなくなった化粧品!……は使いかけだからやめてー……カラコン!……はちょっと衛生的になあー」
「あの、吉野原さん?もうちょっと軽いものでいいと思いますよ?」悩むロロミに進言するのるんにうんうんと同意するミルカ。
「シシ……親友だからさ!なるべくいいものあげたいじゃん」
「わ、わたくしたちもそうですよ!ね!」「モチ!」
「親友……」
その言葉を聞いた千奈美の表情に影が生まれる。
親友にさえ言えない秘密を抱えた千奈美は彼女を信じていないのと同じなのではないか、彼女は親友だと言ってくれたのに、それを裏切っているのではないか。
ロロミが馬鹿なことをしている間は感じなかった劣等感と背信的な気持ちが、心臓を掴んで締め付けてきて千奈美は俯いて口を噤んでしまう。
「なんでしんみりなんだよ~?しみじみしてくれよ~?」
うふふ……ニヘヘ……とほんのりと笑いが起きる。
彼女達は千奈美が夜尿症だとは露程も疑っていない。
だから『千奈美が「親友」という言葉を噛み締めて感極まっているのだ』と解釈するしかない。
千奈美は彼女達のそういうところが大好きだ。
でも、それでも千奈美は
「ありがとう皆!楽しみにしてる!」
言えなかった。
親友達を心から信じられなかった。
明日、7月2日、千奈美は18歳の誕生日を迎える。
そして同時に夜尿症が克服出来なければ、
法律により落第する。
───
誕生日、その日の朝も千奈美は濡れたおむつの嫌な感触で目を覚ました。
前日は水も殆ど飲まなかった。てるてる坊主も吊るした。神様にお祈りしながら眠った。
それでも千奈美の膀胱は寝ている時にはトンと機能しなかった。
どんよりとした気分だが、前日の策が通用しなかった今、兼ねてから考えていた計画があった。
このおむつさえ内緒で処分してしまえば証拠はない……!
下着は千奈美の部屋ではなく階下にある。しかしリビングではないので母親に見つかる事は少ない筈だ、と千奈美は考えた。
そして静かに降りてこのおむつを外に捨ててくる……!
千奈美は寝起きのままミッションを開始した。
「あー!チーまたおねしょしたんだ!ぷぷっ!おむつのおしっこサイン!」
だが早速妹に見つかった。
千奈美は慌てて股間のおむつを隠すが、同時に既に目撃されている事に気付く。
「こ、小春!お願い……!静かにして……今度お菓子でも……」
交渉するも小春は気にもせずぴゅーんと階段を駆け降りて逃げていく。
「おかーさーん!!!」
めいっぱい母親を呼びながら……
「や、やめ……!」
追いかけようと階段を降りようとした時、階下のリビングから孝子がお玉と顔を出して言った。
「千奈美ちゃん?起きたらおむつ確認するからね~?提出するからいつもみたくおむつは捨てちゃダメよ~?」
バッチリと顔を合わせてしまい、孝子の目は降りようとして大きく伸ばした千奈美の脚の付け根にある紙おむつのおしっこサインをしっかりと確認したのだった。
(さ、最悪だ……)
階段を降りると小春から話を聞いた孝子が今日はいつもより語気を強めて言った。
「じゃあ約束通り、今日から高校は暫くお休みね」
「え!そ、そんな……」
抗議しようとした千奈美に
「だってほーりつできまってるんでしょ?」
またひょっこり顔を出した小春が口を挟む。
千奈美はドキッとして体を強張らせ、冷や汗をかき始めた。
満18歳の折り、治っていない夜尿症は市役所へ申告する義務がある。
「お、お願い……!秘密にして!黙ってれば……!」
「そんな訳にはいかないわよ……本当なら昨日にはもうしておかなきゃいけなかったのに1日だけって言うから待ってあげたでしょう?これから一緒に手続きをしに行って、明日からは小春と一緒に【やあや】へ行ってきてちょうだい。ケータイも没収します」
普段は優しい孝子にきつく咎められた千奈美はガックリと肩を落とす。取りつく島もないが無理を言っていたのは千奈美の方だが、自分に非がないと思っていると理不尽に感じてしまうものだ。
「うぅ……」
「お返事は?」
「はい……」と千奈美が持っていたケータイを渡すと、孝子は早速電源を落とした。これも決まっている事なのだ。
「はあいママ、あーあ、あたしもしばらくようちえんいけないな~」
花も恥じらう17歳の女の子、しかしそれは昨日までの話だった。
今日は千奈美の18歳の誕生日、めでたい日なだけに千奈美の心は澱んだままだった。
───
千奈美は義母の赤いミニバンに連れられ、午前7時にはまだ開いていない市役所の入り口付近にある特別窓口へ来訪した。
市役所の入り口の隣には掘立小屋の様な簡易な小屋が建てられている、というよりかは置かれている、の方が正しい言い方か。
少し大きめの白い小屋の中には柔和で有能そうな「十河」という名札を首から下げた若い女性がカウンターの向こう側から上半身だけ覗かせている。
室内も殆ど真っ白だが、彼女とその横のパソコンモニターだけは違う。
十河は高級そうな紺の生地ので大きなリボンの付いた可愛くもかっこいい服を着ており、同じ生地の紺のベレー帽には金色のバッジが付いており「みうみ」と彫られている。
しかしどこか違和感がある、と千奈美は思った。
千奈美はどこかで一度目にした事があるような既視感を持ったが、それは彼女の凛とした声にすぐにかき消された。
「おはようございます、ここが何をするところかはご存知ですか?」
「は、はい」「……」
孝子だけが答えるのも想定内なのか、彼女はニッコリと笑う。
「……ここは『落第申請窓口』になります。ここでは新規落第申請のために必要な物の回収を行います。今回の申請のお手伝いをさせて頂きます、十河(とがわ)みうみと申します」
そう言って十河は座ったままではあるが深くお辞儀をした。
「先に申し伝えさせて頂きます。これからするのはただの事実確認です。今すぐどこかへ連行するなどと言う事は一切ありませんので、どうぞお気遣いなくお掛けください」
千奈美と孝子が椅子に座ると十河はまた深々と頭を下げた。
「今回はご足労頂き誠にありがとうございます。ご本人様自らお越し頂き大変ありがたく存じます」
「ああ……いえいえそんな……」
「いえいえ立派な事です。こちらが招集してから初めて知ったなんて方もいらっしゃいますから……」
「詳しい事は後に送付される通知書でお知らせします。なので今日はその確認だけさせて頂きたく思います……この落第申請書に落第されるご本人様のお名前、ご住所、ご連絡先をお書き下さい。それとこれは新しい生活へのパンフレットになります。保護者の方がこれを読まれているその間にご本人様はお荷物を持ってお隣のお部屋に来て頂きます。どうかご了承ください」
「はい、ほら千奈美ちゃん行ってきて?」「は、はい……」
千奈美がすぐ右隣にある扉に入るとそこは広めの和式便所だった。
そしてもう一つの扉から十河みうみも入ってくると、千奈美はやっと彼女に感じていた違和感の正体に気付いたのだった。
高級そうな生地のベレー帽、そして同じ生地の彼女の服は、園児の着るスモックと殆ど同じだったのだ。
所々に燕尾服の様な意匠を思わせる服装だが、彼女は下半身にスカートどころかショーツも何も身に付けておらず、無毛の秘所を丸出しにしているのにも関わらず一切羞恥を感じていない様に見える。
それどころか股間にはピアスの様な物が付けられており、糸を引いた液体がみうみの太ももに粘性の橋を架けているものの、堂々とした様子でそれらを隠す事もしない。
寧ろみうみはそんな自身の姿を誇りに思っている。
「んな、ななな……」
動揺する千奈美をおいてけぼりにする勢いでみうみは話を進めていった。
「千奈美様、申請にあたりご本人確認をさせて頂きます。これは国の法律を遵守したもの……抵抗すれば法律違反となります。ゆめゆめお忘れなき様ご協力お願い致します……」
「大丈夫です、回収するだけなのですぐに済みますよ」
「そ、そう……」
千奈美は(そうか……あんなものじゃあ大っぴらに出せないものね)と勝手に納得していた、次のみうみの台詞を聴くまでは。
「回収するものは2つです。まずは持ってきて頂いた今朝のおむつをもらいましょうね」
「これね……」
千奈美は嫌そうにチャックで閉じられた真空パックに入った今朝のおむつをバッグから取り出し、それを頰を染めてみうみに渡した。
乙女の恥とも言えるそれをみうみは笑顔で受け取り、カウンターの様な台へ一旦置くと次の回収物の説明を始める。それは千奈美の予想だにしない物だった。
「それと今採尿した千奈美様のおしっこです」
「え?」
千奈美は聞き間違いかと思った。
「わたしまだ何もしてないんですけど……」
「はい、ですから、今ここで採尿するのを全てわたくしの監視下で行ってください。その形式でなければ法律上認められません」
「な……」
そんなバカな事があるのだろうか、監視下でおしっこなんて出来るわけがないと千奈美は思った。
「そして採尿は全てつまびらかに。この空の紙コップがいっぱいになるまで、わたくしによく見えるようにおしっこして下さい、監視の妨げになるスカートとショーツは完全に脱いで衣紋掛けに置いて下さい」
あまりに衝撃だった。人前でよく見えるようにおしっこしろだなんて、千奈美がそんなこと幼稚園の頃にだって言われたことはない。
「な、なんでそんな……!」
「このおむつの持ち主を特定するのに必要です。本当にご本人様なのか、替玉じゃないか、他人のおむつじゃないか、どれか一つでも欠ければ道理も欠いてしまいます」
「う……」
真剣に捲し立てるみうみに千奈美は言葉を失ってしまう。
「ただの本人証明です。さ、お早く」
みうみは至って真剣な顔つき、その仕事への真摯な姿勢に圧され、千奈美も渋々ながら頷かざるを得ない。
「…………くっ!」
耳まで紅く染めた千奈美が覚悟を決めると指示通りスカートとショーツを脱いで近くの衣紋掛けの腕に掛ける。
千奈美は彼女と同じく下半身には靴と靴下だけとなった。
「背中はわたくしに寄りかかって頂いて構いません。脚さえ大きく開いてくださればよく見えますからね?」
「く……!う……」(は、恥ずかしい……!早く……終わらせたい……!)
千奈美はその言葉に甘えつつ和式便器に跨りみうみの胸に背を預けてタンクに向けてM字開脚した。
薄毛の秘所からジョッと初尿を出した後、紙コップを近付けていく。
千奈美の小便がトポトポと溜められていく所をみうみにジッと見られていた。
(ぜ、全然出ないぃっ……!家でしてきたし見られてたら緊張するし……!)
みうみは焦る千奈美の顔にキリッとした顔を並べて、その様子を瞬き一つせずに見守っている。
2分掛かって紙コップに半分程の尿を吐ききったものの、まるで幼児の様に排尿を見守られた千奈美はしばらく身動き出来ずに動悸が治まらなかった。
後ろのみうみに、出して間もない尿の入った紙コップをゆっくりと手から抜き取られると
「千奈美様、凄いです。おしっこたくさん出せましたね。残りを出し切ったらお尻を拭かせてください」
真後ろからそう囁かれ、
「じ、自分で拭けますから!」
千奈美は思い出した様に自らの性器を小便で汚れるのも厭わず両手で隠すのだった。
「そうですか、ご協力ありがとうございました。これで確かに千奈美様のおしっこだと証明出来ます」
「い、いえいえ……」(言わなくていいよおっ!早くお股拭かせて~!)
千奈美はぎこちない笑顔で対応するものの、初めての人前放尿という消したくても消せない記憶が刻まれた瞬間だった。
「今日は医師に確認を取り、明日にはきっと通知書がご自宅に郵送されている手筈になっております。長々とした申請にご協力頂き誠にありがとうございました。それでは良い一日を」
採尿後ちゃんとお尻を拭けた千奈美を褒めつつスカートとショーツを穿かせたみうみは、必要事項の説明の後、千奈美と孝子を見送った。
みうみはピシッとしていた姿勢を少し崩す。
「ふー……べろかみそうで、けいごはつかれる」
みうみは紙コップの横に預かった千奈美の使用済みおむつのチャックを開けて交互に臭いを確認する。
「すんすん……おんなじおしっこのにおい。まちがいない」
確認した後、紙コップの中身をくるくると回してからそれを口に含んだ。
「んー……しょじょのあじ。ひとまえおしっこもとくいじゃなかったし、わたしににてる。これからきっとたいへんだね。でも……」
みうみはポケットからハンカチを出して口元のおしっこを拭くとおもむろに立ち上がり、自らの尻穴から飛び出た輪っかを指で引っ張っていく。
拳大のアナルパールがみうみの菊門を限界まで広げながら何個も出てくるがそれが途切れる事はない。みうみの肛門は柔らかな括約筋で開いては閉じてを繰り返し、アナルパールをどんどん排泄していく。
「おお……んくうううん♡!」ジョパパパ……!
最後のアナルパールを肛門から出し切ったみうみは丸出しのおまんこから歓喜のおしっこをタイル地の床に飛び散らせていた。
「こっちのほうはたぶん……♡」
みうみは業務そっちのけで壁に備え付けられたアナルディルドーにローションを垂らして自らの尻をぶつけてアナニーし始めてしまうのだった。
勿論外からその様子は丸見えだが、しかし彼女を糾弾しようなどという者など居ない。
国が認めた証明バッジ、専用の紺のスモック、そして問うまでもない完璧な礼節。
一般人の千奈美は知らなかったが落第生に近しい者なら誰が見ても彼女は『名誉落第生』。
周りに『躾係』が居ないことがその証明を後押ししている。
名誉落第生ともなればその行動は落第生の模範中の模範。
日常的にアナニーすることは落第生にとっては当然の事なのだ、常にアナルパールを入れているのも別段特別な事ではない。
「んおっ♡!んおおおっ♡!!」ビクビクッ♡
みうみはディルドーで再び絶頂すると、また自分で手持ちのローションを塗ってからアナルパールを一つずつ入れていく。
「ん♡んぅ♡おほ……♡くう♡……」
彼女のおまんこはコブが1つ入っていく度におしっこか潮かもわからない液体を漏らし続けながらもさっきと同じ様に全てアナルに納めていく。
「くう……♡ふぅ……♡おうっ♡……んおっ♡……」
一通りそれが終わるとカウンターの自分の側の床を喘ぎ声を上げながら掃除して再び席に着く。
その立ち居振る舞いにさっきまでアナルでイキ狂っていた面影はない。
「『尿は間違いなく栗野千奈美、本人の物。至急医師に照会後、通知書の発行をお願い致します』と……」
PCに必要事項を打ち込み終えると、ちょうど次の申請者がやって来た。
顔色の悪い女の子と厳しそうなお父さんだ。
みうみは決して失礼のない様にと頭の中を幼児から公務員へと切り替える。
「おはようございます、ここが何をするところかはご存知ですか?」
みうみはいつも通りニッコリと笑って案内をしていく。
「……ここは新規落第申請窓口になります。ここでは……」
しかし相手から見えないカウンターの向こう側ではその大きなお尻を微かに揺すってこれまでの余韻を味わうのだった。
───
その日、夕刊と共に郵便受けに市役所から通知書が届いていた。
赤い[重要]の判が押された通知書には
『栗野千奈美 様 宛』と仰々しく丁寧に書かれている。
千奈美は中身だけ破かない様に気を遣いつつ、すぐに開けて確かめる。
殆ど内容はわかっていたが、もしかしたらと淡い希望を寄せて。
しかしまさしくそれは叶わぬ願い。
大筋の内容は千奈美の思った通りだった。
───
『落第通知書』
栗野千奈美 様
貴殿は夜尿症により落第致しました。
本日より3歳児(180ヶ月)として『アダルトベビー用品店』へ通い、7月中に『躾保育』課程のある園に『躾係』と共に訪れ入園して下さい。
合わせて『落第生特区』への入居を許可します。住居は同封の地図の場所をお使い下さい。
───
ひょっこり現れた小春が「くふふ……」と小生意気に千奈美を嗤う。
「う……」
散々覚悟していた事ではあるがやはりショックだった。
「……うん。しばらくは市役所の向こう側の『落第生特区』で暮らすことにしましょうか。落第生には無条件で向こう側で暮らせる家が提供されるし、これから入る小春と千奈美ちゃんの幼稚園も『向こう側』なわけだし……最短で3ヶ月だけど、これからの事を考えると【やあや】が近いのもいいわね。この家はわたしが偶に掃除しに戻るわね」
「え……」
そんなことをしたらケータイもない千奈美には同級生に連絡する術がなくなってしまう。
ロロミにも、ミルカにも、のるんにも……
「ま、待って……!せめて皆に……」
「千奈美ちゃん……本当に伝えたいの……?『これから落第するから会えない』って……」
(本当にって何なの!?そんなの当たり前……)
「チーはおともだちに『おせわ』されたいの?」
「!?」(そうだ、夜尿症で落第したなんて言えるわけない……伝えても寧ろ心配させるだけ……)
千奈美はそんなことも気付かないくらいに焦っていた。
「………」
「大丈夫、最短3ヶ月で戻れるからね」
ようやく自分のしようとしている事に気付いた千奈美が沈黙すると、孝子はフォローを入れたのだが、千奈美は俯いたまま「そ、そう……ですよね……」と返す以外なかった。
しかし直後の台詞はどうにも聞き捨てならないものだった。
「あ、それで『躾係』は小春がお願いね。お姉ちゃんが間違ったことしたら教えてあげてね」
「えっ!?お、お義母さんじゃないの!?」
「保護者だったらそれで良かったのだけれど……お仕事もあるし……『躾係』は小春にお願いするわ。千奈美ちゃん、聞き分けてね」
「うう……」
『躾係』
落第通知書にも書いてあった文言。
簡単に言えば落第生の世話をする保護者代わりの存在である。
落第してしまった弟妹、子供、孫などの面倒を見て、落第生の躾を一手に引き受け、国からの補助金もかなり出る。
落第生が躾係に逆らう事は許されない。そして同時に躾係も度の超えた『お仕置き』、『虐待』をしてはならない。
躾係は全ての落第生の為に、落第生が落第生らしく居られる様に、かつ進級を望むならそう出来るように活動しなければならない。
千奈美はこれからは落第生としての作法は全て小春によって教わることになる。逆らうなら厳しい『お仕置き』で躾られるのだ。
「それってこはるがおねえさん!?あたし4さい!チーは3さいなんだもんね!そうでしょ!?」
「そ、そうね。小春がお姉ちゃんよ。千奈美ちゃんをキチンと導いてあげてね……ね?千奈美ちゃん」
「………………はい……」
継母にも未だ完全に心を許していない千奈美には、腹違いの妹が『躾係』になるなんて心底不服だが……落第した千奈美に拒否権などあるわけがない。
落第生についての詳しいことは『躾係』を通して伝えられるようになるので、千奈美は殆ど何も知らされないまま、友達にお別れも言えないまま『落第生特区』へ移住することになった。
本来は18歳なのに、落第し3歳児に、4歳の妹の『妹』へと堕ちてしまった。
「くふふ……よろしくね、チー」
「…………」
何か企んでいる小春が不敵に笑う。
これから始まる落第生ライフに早くも暗雲が立ち込めている千奈美なのだった。
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