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新たな仲間

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「はぁはぁ」
息を切らした悠馬が民家にもたれかかった。
水の勇者、水原真怜との撃ち合いはお互いがお互いを吹き飛ばしあった。
「ふぅ、見つけたぞ」
左腕から出血をした真怜が悠馬壊れた家から登場する。
「そうえば名前を聞いてなかったな人間。お前の名は?」
「黒瀬悠馬。魔王やってます」
「魔王、だと?お前は人間だろ?」
真怜が首を傾げながら水で出来た剣を構える。
「まあね。でもこの剣は見たことあるんじゃない?」
悠馬も答えながら魔王剣を構えて見せた。
「それは本で見た魔王剣!なるほど、魔王剣を使うことが出来るのは魔王のみということか」
「そういうことっ!」
悠馬が魔王剣を真怜に振り下ろす。
だが真怜は見事に受け流し距離を取った。
「いくら人間でも魔王剣を使えるのなら殺すしかないな!」
真怜は剣を構えていない左手を悠馬に向けた。
「ウォーターバード!」
その名の通りの水で形成された鳥が襲いかかってくる。
「咆哮」
悠馬は地面に咆哮を打ち鳥をかわし、真怜の真横に飛んだ。
「おっと!当たらないさ」
悠馬が飛びながら魔王剣を振った魔王剣は真怜に触れなかった。
「いや、十分だ!」
悠馬は両手に紅蓮剣を作りだした。
「それは紅の能力!?何故理様が!!」
「おっらぁ!」
悠馬が真怜の足元と胸を目掛けて剣を投げた。
「ウォーターシールド」
足に投げられた剣はかわし胸に投げられた剣は水の盾で止めた。
だがこれこそ悠馬の狙いだった。
真怜が水で盾を作ったのなら少なからず真怜からは見ることの出来ない死角を作ることが出来る。そしてその死角から、
「フィストォォ!!」
「ぐっ!」
真怜の右頬を殴った。
ちなみにフィストとはただ適当に悠馬が叫んだだけである。
「ち!水刃波!」
真怜がまた短剣を作り出したのでまた上手くかわす。
「よし!今だ桜!やっちまええ!」
悠馬は民家に向かって叫んだ。
「何!?」
真怜が振り返るが特に何もない。
「はっけい!!」
真怜が振り返った瞬間を狙い胸に張り手を食らわせる。
「く!小賢しい真似を!」
「これが俺の戦い方だ」
すると大きな爆発が起こった。
「な!」
悠馬が衝撃に耐えるように地面に膝をついた。
「好機!水刃龍!!」
真怜は一気に魔力を溜め込み五体の龍を作り出した。
「ちょい、五体は多いって!」
「死ねえ!黒瀬悠馬!!」
五体の龍が全員悠馬に飛びかかる。
「[オールドドレイン]!!」
その背後から桜が真怜の力を奪った。
「ふ、甘く見るなよ!」
しかし奪いきれずに龍の二体が桜にかぶりついた。
「キャァァァ!」
「桜!!」
すると悠馬にも残り三体が襲いかかった。
「ぐはぁっ!」
悠馬は龍三体分の尻尾に腹を強打され、吹き飛ばされた。
「それがどうしたぁぁぁ!!」
悠馬は素早く移動すると桜にかぶりついている龍を蒸発させた。
「!悠馬さん!」
「何喜んでいるんだ。もう決着はついたぞ」
「なんですって!?」
桜が反論しようとしたが悠馬が力尽きたように倒れた。
「あ!悠馬さん!」
「戦闘なれもしてないのに無理してこんなに能力を使ったんだ。そりゃ限界になるさ」
限界とは能力を使いすぎた時、体が動かなくなる症状である。また、限界になったものは最低でも三時間は身動きが取れなくなる。
「ハハハハハ!正義は勝つんだよ!」
「くっそぉ」
「俺の勝ちだっ!」
真怜が指示をすると三体の龍が空中を飛び交った。
が、その龍は悠馬と桜に当たることはなかった。
「な、んでだ」
「何故裏切った!ナンバー四!!」
「命令だから、っす。自分のしたいことをしろという」
龍が当たらない理由は真怜が遥香に刺されていたからだった。
「き、様には、反抗防止用水が含まれていたはず」
真怜が口から血を吐き出す。
「今は痛覚なんてないっすから。あるのはただ主人の命令のみ」
「お前の主人は俺だろう!!!」
真怜は藁にもすがる思いで叫んだが遥香の答えは意外すぎる答えだった。
「我が主人は…ーーーーー様です」
遥香がトドメを刺すように真怜の心臓をくり抜いた。
「ば、か、な」
そして真怜の心臓は活動を停止した。
  ◇
「パパ!ママ!大丈夫!?」
「ああ、無事だよ」
「大丈夫よ」
真怜が死んでから数分後。メイが恭平を引きずりながらながら悠馬の元へ来た。
「遥香。これでよかったの?」
「………」
「おーい?」
遥香はただメイの方を見たまま質問に答えようとはしなかった。
「あ、そっか。もういいよ」
メイがそう呼びかけるよ遥香かまだんだん力が抜けていく様に倒れた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!痛いっすぅぅぅー!!!」
と同時に激しい叫びを上げた。
「もうなにがなんだが」
悠馬と桜、恭平は皆困惑した様に痛がる遥香を眺めた。
「パパ!その勇者から水の力を奪ってこの子の水抜いてあげて!!」
「へ!?お、おう」
悠馬は真怜の心臓に触り真怜の全ての能力を奪った。悠馬の能力は少し強くなりその相手の心臓を触れば一気に能力を全て奪えるようになっていた。
「でもさ、俺限界きててこれ以上動けないんだよね」
「え?」
「お前もか俺もだ」
メイがキョトンとした声を出し、恭平は「似た者同士だな!」と悠馬に言った。
  ◇
翌日
「じゃあ話聞かせてくれる?」
悠馬が魔導車のなかで出発の準備をしながら遥香に問いかけた。
「はいっす。自分は勇者にウンザリしてて、でも勇者には逆らえなくて、でもその呪縛は悠馬さんのお陰で解除されたっす」
遥香は強く息を吸って決意に満ちた声で叫んだ。
「自分は勇者が大っ嫌いっす!だから!だから!一緒に戦わせて欲しいっす!自分を仲間に入れてください!!!」
悠馬は皆に意見を求める様に目を見た。
「ああ!誘ったのは俺だ!俺が拒否するわけがねえだろうがよ!」
「女の子の友達は私も欲しかったんです!大歓迎ですよ!」
「メイも歓迎するよ!仲間が増えるのは嬉しいから!」
「み、みなさん」
遥香は涙目になりながら悠馬を見た。
「うん!これからよろしく、遥香!!」
悠馬も遥香に負けない様な大声で叫んだ。これが、これこそが悠馬なりの最大限の歓迎だった。
  ◇
「さて、次はどこに行こうね」
マリンの村で騒ぎになる前に村を出たのはいいがどこに出発するかが決まっていなかった。
「普通に考えたら土だな」
恭平がベットに寝転がりながら答える。
「しかし土ってここから結構遠いっすよ?ここからなら風が一番近いっす」
メイの牡馬さんになりながら遥香が言った。
「じゃあ風の勇者退治にしましょう!目標、風の勇者!!」
桜が魔導車に目標を入力するが、途中で手が止まる。
「風の勇者ってどこにいるんですか?」
「知らなかったんすね。風の勇者がいるのはチェザ村っす」
「よし!じゃあチェザ村に向かおう!」
「おー!!」
こうして魔王軍にくノ一の遥香が仲間に加わった!!
    
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