魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん

文字の大きさ
18 / 310

深夜の告白

しおりを挟む
 夜。
 吸血鬼もまぶたをこする時刻。

 ロームルス城、ゼノン国王の執務室に、三つの人影があった。
 ゼノン国王とシャルロット王女、そしてウルリカ様である。

「──殺されると思いましたわ……でもナターシャは、必死にレッサードラゴンと戦ってくれましたの……」

 静かな執務室に、シャルロット王女の声だけが聞こえる。
 実地試験での出来事を、ゼノン王に報告しているのである。

「ですが、レッサードラゴンには敵わなくて……そのあと、ウルリカとオリヴィアに助けられましたわ」

 緊張した声で、報告を続けるシャルロット王女。
 ゼノン王は厳しい表情を浮かべている。

「ウルリカとオリヴィアが来てくれなければ、ワタクシもナターシャも死んでいましたわ……全てはワタクシの愚かな行いによるものです、ですから……その……」

 シャルロット王女は、まっすぐゼノン王を見つめる。
 覚悟の籠った、真剣な眼差しだ。

「ナターシャも、それからチームの皆も、ワタクシのワガママに付きあってくれただけですの。ですからどうか、厳罰に処すのはワタクシだけにしてほしく──」

「もういい、分かった……」

 威圧感のこもった低い声。ギラリと光る鋭い視線。
 ゼノン王の雰囲気は、普段とはまるで別人のようだ。
 シャルロット王女は、ビクリと肩をふるわせる。

「事情は分かった、お前の言い分も理解した、しかし──」

「──ふぎゃっ!?」

 話をさえぎる可愛らしい声。
 声の主はウルリカ様だ。ズルリと椅子から滑り落ちている。

「うむぅ……しまった……寝てしまったのじゃ」

「おいウルリカ、今は真剣な話をしているのだが……」

「しかし話がつまらぬのじゃ、それに眠いのじゃ。くあぁ~」

 ゼノン王の威圧的な雰囲気も、ウルリカ様にはまったく通用しない。
 大きな欠伸をするウルリカ様に、ゼノン王は呆れてしまう。

「シャルロットよ、なぜウルリカを連れてきたのだ?」

「その……お恥ずかしい話ですが……事情を報告するのに、ワタクシ一人では怖くて……ウルリカに付き添いをお願いしましたの……」

 「はぁ……」とため息を吐くゼノン王。

「シャルロット、お前の持つ王族の権限を、全てはく奪する。二度と城に入ることは許さん」

「……っ」

「と、本来ならば破門にするところだが。丁度よい、今回の件の厳罰は、ウルリカに任せるか」

「ウルリカに?」

「話を聞く限り、お前はウルリカに対して相当に酷い行いをしているな? ならば厳罰は、ウルリカに決めてもらうのが妥当ではないか?」

「……分かりました、どんな厳罰でも甘んじてお受けいたします」

 ゼノン王とシャルロット王女、二人そろってウルリカ様の方を見る。

「さてウルリカよ、シャルロットへの厳罰はどうする?」

「いらぬのじゃ」

 即答するウルリカ様。
 シャルロット王女は、「えっ」と驚きの声をあげる。

「厳罰などいらぬのじゃ」

「でも……ワタクシはウルリカに酷いことをしましたわ……」

「それはもう謝ってもらったのじゃ。リヴィにもしっかり謝っておったし、妾はそれで十分なのじゃ。そんなことよりシャルロットよ、ちゃんとゼノンに報告出来たのう、勇気を出せたのう」

「うぅ……ふぅぐ……っ」

 ポンポンと、シャルロット王女の頭をなでるウルリカ様。
 シャルロット王女の目から、ポロポロと涙が流れ落ちる。
 緊張の糸が切れて、感情が溢れだしたのだ。

「しかしウルリカよ、お前は命を狙われたのだぞ?」

「よくあることじゃ」

「「よくあること?」」

 ゼノン王とシャルロット王女は、コクリと首をかしげる。

「そういえば、昼間話した時も『よくあること』と言っていましたわね」

「うむ、魔界は実力主義じゃ。命を狙われるなど、よくあることなのじゃ」

「いや、しかしだな……」

「レッサードラゴンなど可愛いものではないか。魔界では、エンシェントドラゴンの大群をけしかけられたこともあるのじゃ」

「エンシェントドラゴン!? 討伐難易度Aの、伝説級の魔物ですわよ?」

「それで、その時ウルリカはどうしたのだ?」

「全部けっ飛ばしてやったのじゃ!」

「「けっ飛ばした!?」」

「うむ!」

 ウルリカ様に嘘を言っている様子はない。
 突拍子もなさすぎる話に、ゼノン王は腹を抱えて笑いだす。

「ハッハッハッ! まったくウルリカには敵わないな!!」

「お父様……」

「すっかり緊張が切れてしまった。はぁ……シャルロットに対する厳罰はなしだ、もちろんチームのみなも同じだ」

「お父様! 本当ですの?」

「ただし! お前の行いは人として最低の行いだ、それを決して忘れるな」

「はい……もちろんですわ」

「この恩は一生忘れるなよ。ウルリカに感謝し、もっと己を磨くことだ」

「ウルリカ、ありがとうございます」

 許しを得たシャルロット王女は、涙を流しながら頭を下げる。
 一方ウルリカ様はというと。

「すやぁ……すやぁ……」

「寝ていますわ」

「流石は魔王、図太いものだな」

「「はぁ……」」

 揃ってため息をつき、ゆったりとハーブティを飲む。
 執務室はすっかりと落ち着いた雰囲気だ

「それにしてもシャルロットよ、無事でよかったな」

「はい……レッサードラゴンとは、本当に恐ろしい生き物でした」

「それもそうだが、俺が言っているのはウルリカのことだ」

 「えっ?」と首をかしげるシャルロット王女。
 ゼノン王の顔色は、じゃっかん青ざめている。

「ウルリカは魔王なのだぞ、怒らせたら本気で国が滅んでいた……」

「そ……そうですわね……反省してますわ……」

 すやすやと寝息を立てるウルリカ様。
 顔を見合わせて、「ふぅ」と息を吐く父と娘なのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな
ファンタジー
全てを創世せし神によって造られた、様々な種族が生息する世界──その名はレディアダント。 世界は神の子孫代々によって守られ、幾多の脅威に挑みし者達は人々の間では英雄として語り継がれ、勇者とも呼ばれていた。 そして勇者の一人であり、大魔導師となる者によって建国されたレイニーラ王国。民は魔法を英雄の力として崇め、王国に住む少年グライン・エアフレイドは大魔導師に憧れていた。魔法学校を卒業したグラインは王国を守る魔法戦士兵団の入団を志願し、入団テストを受ける事になる。 一つの試練から始まる物語は、やがて大きな戦いへと発展するようになる──。 ※RPG感のある王道路線型の光と闇のファンタジーです。ストーリー内容、戦闘描写において流血表現、残酷表現が含まれる場合もあり。

処理中です...