97 / 310
奇跡
しおりを挟む
まだまだ続く、クリスティーナの特別授業。
クリスティーナの立てた目標を達成するべく、生徒達は広い校庭のあちらこちらに散らばって、一生懸命に魔法の練習をしていた。
「風よ! 風よ! はぁ……はぁ……ダメだわ……」
「私もダメ……やっぱり簡単に階梯をあげるなんてムリよ……」
苦戦している生徒達の間を歩きながら、クリスティーナは一人一人に助言をして回る。
「あなたは不自然な魔力の流れをしている……体の中を流れる魔力を意識して……水のように流れる魔力を想像して……」
「やってみます……あっ、出来ました!」
「あなたは杖の使い方を間違えている……杖の先まで体の一部だと思って……魔力の筋を杖の先端まで伸ばすの……」
「杖の先端まで……わぁっ、成功しました!」
クリスティーナから助言をもらった生徒は、次々に目標としていた魔法を成功させていく。一流の魔法使いなだけあって、クリスティーナの教え方は非常に分かりやすい。しかしそれでも、半数以上の生徒達はコツを掴めないでいる。
そんな中クリスティーナは、一部の男子生徒の態度にイライラを募らせていた。
「クリスティーナ様―! 魔法をうまく使えませんー!」
「俺もですー! 個別指導してほしいですー!」
明らかにわざと魔法を失敗しては、クリスティーナを呼びつける男子生徒。どうやら美人のクリスティーナとお近づきになりたい欲望で、そういう態度に出ているようだ。
呆れた態度にクリスティーナは、思わず「はぁ……」とため息を吐く。クリスティーナの特別授業は、徐々に不穏な空気に包まれていく。
一方そのころ下級クラスは、全員で校庭の端に集まっていた。なにやらコソコソとしている下級クラスのところへ、暇を持て余したノイマン学長がやって来る。
「おや? 下級クラスはこんなところで、一体なにをしているのですかな?」
ノイマン学長に気づいたシャルロットは、校庭の中心を指差しながら状況を説明する。
「お姉様はあんな調子で、上級クラスと一般クラスに手いっぱいですわ。ですからワタクシ達は、ヘンリーから魔法を教えてもらっていますのよ」
「ほう? ヘンリーに魔法を?」
首を傾げるノイマン学長。
その時──。
「うおぉぉーっ!」
集まっていた下級クラスの中心から、シャルルの大きな叫び声があがる。
片手に杖を持ったシャルルは、声をあげて全身を震わせている。よく見ると杖の先端からは、小さな火種が吹きあがっている。
「俺の魔法だ……生まれてはじめての魔法だ!」
「これでシャルルは目標達成ですね」
「ありがとうヘンリー! 本当にありがとう!!」
どうやら人生初の魔法を成功させたシャルルは、涙を流しながらヘンリーに頭を下げている。あまりにも勢いよく頭を下げすぎて、せっかくの魔法をかき消してしまいそうだ。
「自分は魔法の才能に恵まれず、今まで一度も魔法を使えたことはなかったのだ……下級クラスに入った理由も、魔法の試験で最低点を取ってしまったからなんだ……」
「シャルルさんの気持ちは分かります……私も魔法は苦手ですから……」
「自分は一生魔法を使えないと思っていた……これは奇跡だ……!」
涙を流すシャルルの背中を、ナターシャは優しくさすってあげる。そんな優しいナターシャへと、ヘンリーは一本の杖を差し出す。
「次はナターシャさんの番です、この杖を使ってくださいね」
「わっ、私の番ですか!?」
「これからナターシャさんの魔法の階梯をあげます、準備はいいですか?」
「あの……分かりました! お願いします、ヘンリーさん!!」
ナターシャはやる気十分でギュッと杖を握りしめる。次はナターシャの番……と思われたその時、ノイマン学長から待ったをかけられる。
「少し待ってほしいのですな。魔法を使えなかった者に魔法を使わせた、その方法をワシにも教えてほしいのですな」
「ノイマン学長から教えを請われるだなんて、恐れ多いですね……」
そう言いながらヘンリーは、小脇に抱えていた一冊の本をノイマン学長に手渡す。
「この本のおかげですね」
「この本は……“魔法学大全”と書いてありますな。著者は……」
表紙を指でなぞっていたノイマン学長は、著者名を見て目を丸くする。
「これは! ウルリカ様の書かれた本ですかな!?」
そこには紛れもなく、ウルリカ様の名前が刻まれていたのだった。
クリスティーナの立てた目標を達成するべく、生徒達は広い校庭のあちらこちらに散らばって、一生懸命に魔法の練習をしていた。
「風よ! 風よ! はぁ……はぁ……ダメだわ……」
「私もダメ……やっぱり簡単に階梯をあげるなんてムリよ……」
苦戦している生徒達の間を歩きながら、クリスティーナは一人一人に助言をして回る。
「あなたは不自然な魔力の流れをしている……体の中を流れる魔力を意識して……水のように流れる魔力を想像して……」
「やってみます……あっ、出来ました!」
「あなたは杖の使い方を間違えている……杖の先まで体の一部だと思って……魔力の筋を杖の先端まで伸ばすの……」
「杖の先端まで……わぁっ、成功しました!」
クリスティーナから助言をもらった生徒は、次々に目標としていた魔法を成功させていく。一流の魔法使いなだけあって、クリスティーナの教え方は非常に分かりやすい。しかしそれでも、半数以上の生徒達はコツを掴めないでいる。
そんな中クリスティーナは、一部の男子生徒の態度にイライラを募らせていた。
「クリスティーナ様―! 魔法をうまく使えませんー!」
「俺もですー! 個別指導してほしいですー!」
明らかにわざと魔法を失敗しては、クリスティーナを呼びつける男子生徒。どうやら美人のクリスティーナとお近づきになりたい欲望で、そういう態度に出ているようだ。
呆れた態度にクリスティーナは、思わず「はぁ……」とため息を吐く。クリスティーナの特別授業は、徐々に不穏な空気に包まれていく。
一方そのころ下級クラスは、全員で校庭の端に集まっていた。なにやらコソコソとしている下級クラスのところへ、暇を持て余したノイマン学長がやって来る。
「おや? 下級クラスはこんなところで、一体なにをしているのですかな?」
ノイマン学長に気づいたシャルロットは、校庭の中心を指差しながら状況を説明する。
「お姉様はあんな調子で、上級クラスと一般クラスに手いっぱいですわ。ですからワタクシ達は、ヘンリーから魔法を教えてもらっていますのよ」
「ほう? ヘンリーに魔法を?」
首を傾げるノイマン学長。
その時──。
「うおぉぉーっ!」
集まっていた下級クラスの中心から、シャルルの大きな叫び声があがる。
片手に杖を持ったシャルルは、声をあげて全身を震わせている。よく見ると杖の先端からは、小さな火種が吹きあがっている。
「俺の魔法だ……生まれてはじめての魔法だ!」
「これでシャルルは目標達成ですね」
「ありがとうヘンリー! 本当にありがとう!!」
どうやら人生初の魔法を成功させたシャルルは、涙を流しながらヘンリーに頭を下げている。あまりにも勢いよく頭を下げすぎて、せっかくの魔法をかき消してしまいそうだ。
「自分は魔法の才能に恵まれず、今まで一度も魔法を使えたことはなかったのだ……下級クラスに入った理由も、魔法の試験で最低点を取ってしまったからなんだ……」
「シャルルさんの気持ちは分かります……私も魔法は苦手ですから……」
「自分は一生魔法を使えないと思っていた……これは奇跡だ……!」
涙を流すシャルルの背中を、ナターシャは優しくさすってあげる。そんな優しいナターシャへと、ヘンリーは一本の杖を差し出す。
「次はナターシャさんの番です、この杖を使ってくださいね」
「わっ、私の番ですか!?」
「これからナターシャさんの魔法の階梯をあげます、準備はいいですか?」
「あの……分かりました! お願いします、ヘンリーさん!!」
ナターシャはやる気十分でギュッと杖を握りしめる。次はナターシャの番……と思われたその時、ノイマン学長から待ったをかけられる。
「少し待ってほしいのですな。魔法を使えなかった者に魔法を使わせた、その方法をワシにも教えてほしいのですな」
「ノイマン学長から教えを請われるだなんて、恐れ多いですね……」
そう言いながらヘンリーは、小脇に抱えていた一冊の本をノイマン学長に手渡す。
「この本のおかげですね」
「この本は……“魔法学大全”と書いてありますな。著者は……」
表紙を指でなぞっていたノイマン学長は、著者名を見て目を丸くする。
「これは! ウルリカ様の書かれた本ですかな!?」
そこには紛れもなく、ウルリカ様の名前が刻まれていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)
長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。
彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。
他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。
超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。
そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。
◆
「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」
「あらすじってそういうもんだろ?」
「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」
「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」
「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」
「ストレートすぎだろ、それ……」
「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」
◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
Radiantmagic-煌炎の勇者-
橘/たちばな
ファンタジー
全てを創世せし神によって造られた、様々な種族が生息する世界──その名はレディアダント。
世界は神の子孫代々によって守られ、幾多の脅威に挑みし者達は人々の間では英雄として語り継がれ、勇者とも呼ばれていた。
そして勇者の一人であり、大魔導師となる者によって建国されたレイニーラ王国。民は魔法を英雄の力として崇め、王国に住む少年グライン・エアフレイドは大魔導師に憧れていた。魔法学校を卒業したグラインは王国を守る魔法戦士兵団の入団を志願し、入団テストを受ける事になる。
一つの試練から始まる物語は、やがて大きな戦いへと発展するようになる──。
※RPG感のある王道路線型の光と闇のファンタジーです。ストーリー内容、戦闘描写において流血表現、残酷表現が含まれる場合もあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる