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豊満巫女は悪くない
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テレビもインターネットもない抑圧された環境。
必要な情報は、全て本から得るしかない。
そして、健全な男子たる僕らに最も必要な情報は、受験情報……ではなく、エロだった。
ある日、僕は同じ階の宮崎くんがエロ本を持って廊下を歩いているのを発見した。
物欲しそうな目でブツを眺めていると、宮崎くんが「貸したろか?」と笑顔で申し出てくれた。
なんという僥倖……。
僕は土下座をする勢いで丁寧にお礼を言い、遠慮なくそのエロ本を借り受けることにした。
「貸したるけど、伊澤も今度なんか貸せよ。ここはギブ&テイクやから。テイクばっかはあかんで」ニタニタと宮崎くんは笑った。
宮崎くんの話では、この寮ではエロ本を媒介とした、エコシステムが出来上がっているらしい。
自分がテイクすることが誰かの幸せとなり、回りまわってギブとして帰ってくるというのだ。
完成された素晴らしいシステムである。
あまりの素晴らしさに驚愕するとともに、自分もそのシステムの一員になれることに、身が震えた。
そういえば、寮生活四年目の「長老」と呼ばれ、誰もが一目を置く四方さんが陰毛が蠢く風呂に浸かりながら、こんなことを言っていた。
「寮生活は社会の縮図だからね」
お金で経済が回っているように、この寮ではエロ本で皆の生|(性)活が回っている。
さもありなん、僕は四方さんの慧眼に感服した。
ところで、どうやってエロ本をゲットしようか、僕は途方に暮れた。
本屋でエロ本を買うのはハードルが高すぎる。
中学生の頃、思い切ってエロ漫画を本屋で買った際に、店員のオヤジにニヤニヤと笑われたことがトラウマとなっていた。
道端に落ちている野生のエロ本を持ち帰ることも考えたが、この大都会のどこに落ちているというのだ。
地元では、エロ本が落ちているマル秘スポットをいくつか知っていたが、そのような場所がまさか大阪にあるとは思えない。
それに見つけたところで雨に濡れぐちゃぐちゃに違いない。
迷っても仕方ないので、もう一度、宮崎くんに相談してみることにした。
「その……みんなエロ本をどこで買ってるん?」と、恐る恐る聞いてみる。
「え、そんなん『あさひや書店』があるやん。今度連れてったるわ」と宮崎くんはガハハと笑った。
次の日、予備校帰りに僕と宮崎君は『あさひや書店』にいた。
いわゆるエロ本専門店で、客は男ばかりである。
地元の小さい個人店で買うより遥かにハードルが低い。
僕は気持ちを大きくした。
「ほな、俺はあっちの方見てくるわ」と宮崎くんは、店奥に足早に消えていった。
僕も胸をときめかせながら、好みの本を探した。
エロ本をゲットできる嬉しさもさることながら、僕が選んだ本で皆が喜んでくれることを想像すると、嬉しさはより増した。
喜びの円環|(ニルヴァーナ)に奉仕できる幸せ!ムフフ!
僕はたっぷりと時間をかけ、極上モノを選び抜いた。
そしてある日、お世話になった宮崎君に本を返しにいくことにした。
「宮崎君、こないだのこれ、ありがとう」
「おう、ええよ」
「それから、これはこないだ買った本やけど、良かったら見てよ」と、照れながら『あさひや書店』で厳選した本を差し出した。
「さぁ、僕も遂に、メンバーの一員としてシステムに貢献することにできるのだ」と、喜びで目の奥が熱くなってくる。
待たせたな、みんな。
しかし、宮崎くんの様子がおかしい。
「なんやこれは……」と、宮崎くんはピクピクと震えている。
「この『豊満巫女修道院』って本、デブとブスばっかやないか! お前、どんな趣味しとんねん!」と笑い転げている。
僕の嗜好はシステムのメンバーに即座に知れ渡り、それ以降『B専伊澤』の異名を拝命し、恐れられるようになった。
必要な情報は、全て本から得るしかない。
そして、健全な男子たる僕らに最も必要な情報は、受験情報……ではなく、エロだった。
ある日、僕は同じ階の宮崎くんがエロ本を持って廊下を歩いているのを発見した。
物欲しそうな目でブツを眺めていると、宮崎くんが「貸したろか?」と笑顔で申し出てくれた。
なんという僥倖……。
僕は土下座をする勢いで丁寧にお礼を言い、遠慮なくそのエロ本を借り受けることにした。
「貸したるけど、伊澤も今度なんか貸せよ。ここはギブ&テイクやから。テイクばっかはあかんで」ニタニタと宮崎くんは笑った。
宮崎くんの話では、この寮ではエロ本を媒介とした、エコシステムが出来上がっているらしい。
自分がテイクすることが誰かの幸せとなり、回りまわってギブとして帰ってくるというのだ。
完成された素晴らしいシステムである。
あまりの素晴らしさに驚愕するとともに、自分もそのシステムの一員になれることに、身が震えた。
そういえば、寮生活四年目の「長老」と呼ばれ、誰もが一目を置く四方さんが陰毛が蠢く風呂に浸かりながら、こんなことを言っていた。
「寮生活は社会の縮図だからね」
お金で経済が回っているように、この寮ではエロ本で皆の生|(性)活が回っている。
さもありなん、僕は四方さんの慧眼に感服した。
ところで、どうやってエロ本をゲットしようか、僕は途方に暮れた。
本屋でエロ本を買うのはハードルが高すぎる。
中学生の頃、思い切ってエロ漫画を本屋で買った際に、店員のオヤジにニヤニヤと笑われたことがトラウマとなっていた。
道端に落ちている野生のエロ本を持ち帰ることも考えたが、この大都会のどこに落ちているというのだ。
地元では、エロ本が落ちているマル秘スポットをいくつか知っていたが、そのような場所がまさか大阪にあるとは思えない。
それに見つけたところで雨に濡れぐちゃぐちゃに違いない。
迷っても仕方ないので、もう一度、宮崎くんに相談してみることにした。
「その……みんなエロ本をどこで買ってるん?」と、恐る恐る聞いてみる。
「え、そんなん『あさひや書店』があるやん。今度連れてったるわ」と宮崎くんはガハハと笑った。
次の日、予備校帰りに僕と宮崎君は『あさひや書店』にいた。
いわゆるエロ本専門店で、客は男ばかりである。
地元の小さい個人店で買うより遥かにハードルが低い。
僕は気持ちを大きくした。
「ほな、俺はあっちの方見てくるわ」と宮崎くんは、店奥に足早に消えていった。
僕も胸をときめかせながら、好みの本を探した。
エロ本をゲットできる嬉しさもさることながら、僕が選んだ本で皆が喜んでくれることを想像すると、嬉しさはより増した。
喜びの円環|(ニルヴァーナ)に奉仕できる幸せ!ムフフ!
僕はたっぷりと時間をかけ、極上モノを選び抜いた。
そしてある日、お世話になった宮崎君に本を返しにいくことにした。
「宮崎君、こないだのこれ、ありがとう」
「おう、ええよ」
「それから、これはこないだ買った本やけど、良かったら見てよ」と、照れながら『あさひや書店』で厳選した本を差し出した。
「さぁ、僕も遂に、メンバーの一員としてシステムに貢献することにできるのだ」と、喜びで目の奥が熱くなってくる。
待たせたな、みんな。
しかし、宮崎くんの様子がおかしい。
「なんやこれは……」と、宮崎くんはピクピクと震えている。
「この『豊満巫女修道院』って本、デブとブスばっかやないか! お前、どんな趣味しとんねん!」と笑い転げている。
僕の嗜好はシステムのメンバーに即座に知れ渡り、それ以降『B専伊澤』の異名を拝命し、恐れられるようになった。
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