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5話 ユーキ様の顔面は神様の力よりも尊いのです(フリージア視点)
わたしはとある王国の3番目の王女として生まれました。
わたしの上にはすでに兄がひとりと姉がふたりいたので、生まれたばかりのわたしを見た国王である父は「また女か」と呟かれたそうです。
喜ばれはしなかったものの、生まれてからしばらくは“末っ子王女”だと可愛がられたこともありました。でも、それもたった数年で終わりを告げます。
若い側室が男の子を産んだからです。
王太子は兄ですがやはり王子は多いに越したことはないらしく、その子はとてもとても可愛がられました。
それから側室はさらに2年後、男の子と女の子の双子を出産しました。この国では双子は吉兆とかで縁起がいいらしく、父は心から喜んだようです。
末っ子でもなくなり、男ですらもなく、学園での成績もさほどよくないわたしは優秀なふたりの姉が目立つほどに父に忘れられていく気がしました。
ですが、10歳の誕生日の時にこう言われたのです。
「お前は美しくなってきたな。もっと美しくなりなさい」と。
わたしの見た目が美しいと褒められました。父に褒められたのは初めてだった気がします。
それから、わたしは美しいものが大好きになりました。人でも物でも美しいものを鑑賞していると心が安らぐ気がします。
わたしが美しくなればなるほど父はわたしを褒めてくれます。欲しい物もなんでも与えてくれて優しい言葉もかけてくれました。
「美しいお前は愛されるべき高貴な存在だ。お前ほど美しければ、例え他国の王子でも必ずお前の虜になることだろう」
生まれた時こそ落胆されましたが、今はこんなに父に愛されているのだと思うと幸せでした。
わたしはとても美しくて、みんなに愛されるべき高貴な存在なのだと。美しいわたしには美しい相手がふさわしいのだと。そう言われ続け成長したわたしは、いつの間にか心が醜く歪んでいったのでしょう。
だからワガママを振りかざし、あんなことをしでかしたのです。
確かにわたしは姉妹の中では1番美しかったと思います。でも今から思えば、父に褒められれば褒められるほど兄も姉も腹違いの弟たちや妹も、誰もわたしに近寄らなかったのです。
ただひたすらに美しいものを追いかけ、自分が美しくあることだけにこだわる姿はなんとも滑稽だったことでしょう。
そんなわたしがセレーネ様に盾突いた事がわかると、父はすぐにわたしを見捨てました。あの時兵士に見せられた手紙に『お前のような役立たずはもういらぬ』と書かれていたのを見て目の前が真っ暗になったのを今でもよく覚えています。
もうわたしには利用価値がないどころか、邪魔な存在になってしまったようです。あんなに追いかけていたオスカー様はわたしの名前すら覚えてなかったし(今となってはなんであんな馬鹿を追いかけていたのか意味不明ですが)もう絶望するしかありませんでした。
でも……そんなわたしを助けてくださったのは、まさかのセレーネ様でした。
怨みごとを言われるか、蔑まれるだろうと覚悟していたわたしにセレーネ様は笑顔を向けてくださりました。そして……ユーキ様に出逢わせてくださったのです。
最初こそユーキ様の美しい顔に心を奪われましたが、ユーキ様と過ごすうちにその内面にも触れてわたしは変わることが出来た気がします。
わたしはユーキ様が大好きです。
たまに意地悪で、そっけなくて、でもわたしを助手として大切にしてくださるユーキ様の側にいるのが幸せなんです。
わたしの知らない世界を教えてくださるユーキ様といると毎日がとても楽しいんです。
ユーキ様といると、わたしが元王女だとか父王に見捨てられて母国を追放された事などとても些細な事に感じられて今では父や母国に未練などありません。ええ、本当にちっとも。ミジンコほども!
なにより、ユーキ様の顔面はどんなに見慣れてもやっぱりご飯三杯……いえ、五杯は軽くいけるんですから────っ!
「────ユーキ様の素顔を拝む権利は誰にも渡しませんからねぇっ!!……はっ?!」
「……意識が戻ったようだね、フリージア」
自分の中に誰かが入ってくる感覚に襲われ、そのまま深く眠りそうになったのですが、ユーキ様の顔面を思い出しながらなんとかそれを振り切り舞い戻ってきました。そしてわたしが目を開けると、なんと眼鏡を外したユーキ様の顔が鼻先に当たりそうなくらい間近にあったのです。
「気絶したかと思ったら息をしていないから人工呼吸しようとしてたところだったんだけど、元気そ」「あ、やっぱり呼吸が止まりそうです!」「うん、それだけ元気なら大丈夫だ」
素早く離れて眼鏡をかけるユーキ様。こんなことならもう少しだけ気絶してればよかった……!
「……それにしても、まさか(自称)神様に体を乗っ取られたのに自力で戻ってくるなんて……(自称)神様もたいしたことないね」
「えっ、わたし神様に乗っ取られてたんですか?」
ユーキ様がやれやれと言うように手鏡を渡してくれたのでそれを覗き込むと……なんと鏡の中のわたしは髪色が白銀に輝き、瞳も赤くなっていたのです。
「なんなんですか、これぇ?!」
確かにさっき体が光ってたような気がするけど、まさかこんなことになるなんて……。
神様に乗っ取られて変貌してしまったわたしの姿。……これからわたし、どうなるんでしょうか?
わたしの上にはすでに兄がひとりと姉がふたりいたので、生まれたばかりのわたしを見た国王である父は「また女か」と呟かれたそうです。
喜ばれはしなかったものの、生まれてからしばらくは“末っ子王女”だと可愛がられたこともありました。でも、それもたった数年で終わりを告げます。
若い側室が男の子を産んだからです。
王太子は兄ですがやはり王子は多いに越したことはないらしく、その子はとてもとても可愛がられました。
それから側室はさらに2年後、男の子と女の子の双子を出産しました。この国では双子は吉兆とかで縁起がいいらしく、父は心から喜んだようです。
末っ子でもなくなり、男ですらもなく、学園での成績もさほどよくないわたしは優秀なふたりの姉が目立つほどに父に忘れられていく気がしました。
ですが、10歳の誕生日の時にこう言われたのです。
「お前は美しくなってきたな。もっと美しくなりなさい」と。
わたしの見た目が美しいと褒められました。父に褒められたのは初めてだった気がします。
それから、わたしは美しいものが大好きになりました。人でも物でも美しいものを鑑賞していると心が安らぐ気がします。
わたしが美しくなればなるほど父はわたしを褒めてくれます。欲しい物もなんでも与えてくれて優しい言葉もかけてくれました。
「美しいお前は愛されるべき高貴な存在だ。お前ほど美しければ、例え他国の王子でも必ずお前の虜になることだろう」
生まれた時こそ落胆されましたが、今はこんなに父に愛されているのだと思うと幸せでした。
わたしはとても美しくて、みんなに愛されるべき高貴な存在なのだと。美しいわたしには美しい相手がふさわしいのだと。そう言われ続け成長したわたしは、いつの間にか心が醜く歪んでいったのでしょう。
だからワガママを振りかざし、あんなことをしでかしたのです。
確かにわたしは姉妹の中では1番美しかったと思います。でも今から思えば、父に褒められれば褒められるほど兄も姉も腹違いの弟たちや妹も、誰もわたしに近寄らなかったのです。
ただひたすらに美しいものを追いかけ、自分が美しくあることだけにこだわる姿はなんとも滑稽だったことでしょう。
そんなわたしがセレーネ様に盾突いた事がわかると、父はすぐにわたしを見捨てました。あの時兵士に見せられた手紙に『お前のような役立たずはもういらぬ』と書かれていたのを見て目の前が真っ暗になったのを今でもよく覚えています。
もうわたしには利用価値がないどころか、邪魔な存在になってしまったようです。あんなに追いかけていたオスカー様はわたしの名前すら覚えてなかったし(今となってはなんであんな馬鹿を追いかけていたのか意味不明ですが)もう絶望するしかありませんでした。
でも……そんなわたしを助けてくださったのは、まさかのセレーネ様でした。
怨みごとを言われるか、蔑まれるだろうと覚悟していたわたしにセレーネ様は笑顔を向けてくださりました。そして……ユーキ様に出逢わせてくださったのです。
最初こそユーキ様の美しい顔に心を奪われましたが、ユーキ様と過ごすうちにその内面にも触れてわたしは変わることが出来た気がします。
わたしはユーキ様が大好きです。
たまに意地悪で、そっけなくて、でもわたしを助手として大切にしてくださるユーキ様の側にいるのが幸せなんです。
わたしの知らない世界を教えてくださるユーキ様といると毎日がとても楽しいんです。
ユーキ様といると、わたしが元王女だとか父王に見捨てられて母国を追放された事などとても些細な事に感じられて今では父や母国に未練などありません。ええ、本当にちっとも。ミジンコほども!
なにより、ユーキ様の顔面はどんなに見慣れてもやっぱりご飯三杯……いえ、五杯は軽くいけるんですから────っ!
「────ユーキ様の素顔を拝む権利は誰にも渡しませんからねぇっ!!……はっ?!」
「……意識が戻ったようだね、フリージア」
自分の中に誰かが入ってくる感覚に襲われ、そのまま深く眠りそうになったのですが、ユーキ様の顔面を思い出しながらなんとかそれを振り切り舞い戻ってきました。そしてわたしが目を開けると、なんと眼鏡を外したユーキ様の顔が鼻先に当たりそうなくらい間近にあったのです。
「気絶したかと思ったら息をしていないから人工呼吸しようとしてたところだったんだけど、元気そ」「あ、やっぱり呼吸が止まりそうです!」「うん、それだけ元気なら大丈夫だ」
素早く離れて眼鏡をかけるユーキ様。こんなことならもう少しだけ気絶してればよかった……!
「……それにしても、まさか(自称)神様に体を乗っ取られたのに自力で戻ってくるなんて……(自称)神様もたいしたことないね」
「えっ、わたし神様に乗っ取られてたんですか?」
ユーキ様がやれやれと言うように手鏡を渡してくれたのでそれを覗き込むと……なんと鏡の中のわたしは髪色が白銀に輝き、瞳も赤くなっていたのです。
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確かにさっき体が光ってたような気がするけど、まさかこんなことになるなんて……。
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