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14話 ユーキの日常③の2
『なんて事しちゃってるんですかぁぁぁぁ!!』
ヴィーが信じられない程の大きな叫び声を森に響かせる。ちょっと、耳がキーンってするから耳元で叫ばないで欲しいんだけど。
『あ、あのっ!私、なにかしちゃったんでしょうか?!』
そのヴィーの荒ぶった姿に例のスライムが心配そうに体をくねくねとさせた。
うーん。ちゃんとこちらの言葉はわかっているようだし、意思の疎通も出来てる。そしてなにより、さっきの発言も気になるなぁ。
「まぁまぁ、落ち着いてヴィー。このスライムもなにやら訳アリのよ『あんたに言っとるんじゃい!』わかった、わかったってば。ボクだってまさかスライムが金属まで溶かして吸収するなんて思わなかったんだよ。悪かったって」
さすがに今回の事は予想外だった。ボクはあんまりモンスターの生態については詳しくないんだよ。……RPGよりシミュレーションゲームの方が好きなんだよね。冒険物ってひとつのアイテムの為にあっちこっち行ったり来たりしないといけないから時間かかるし、あの頃は悪役令嬢物のゲームや小説にハマってたからさ。
……ボクが恋愛ゲームにハマるなんて意外だと思われそうだけど、あの「ぎゃふん」されるのが好きなんだよ。大どんでん返しってわくわくするだろ?
『あ……あのユーキさんが、あぁあぁぁ謝るなんてぇ!?もう世界が滅亡すぶっ?!』
人が素直に謝っているのに何を怯えてるんだい?勝手に舌を噛んだくせにボクを見るのはやめて欲しいんだけど。
「……とにかく、何がどうヤバいのか教えてよ。ヴィーならわかってるからそんなに慌てているんだろう?」
『うぅぅ……いひゃい。実は……』
***
……うん、やっぱりフリージアが淹れてくれたコーヒーは美味しい。
『あのっ!これとっても美味しいですねっ!』
ボクがコーヒーを飲んでホッとひと息入れながら眺めているのは、これまでボクが作成したあれやこれやをモリモリ食べているあのスライムの姿だよ。いい食べっぷりだね。
なんでも普通の食料などからは栄養は摂取出来ても味がしないらしいんだけど、なぜかボクが作った物からは美味しい味がするらしい。作りすぎた便利グッズが一掃出来て助かるよ。
『う~ん、こっちは甘くて、こっちはマイルドな酸味……最高過ぎる……っ!』
「あぁっ!それはわたしの愛用してる〈なんでも捕まえる君〉です!食べないで下さい~っ」
あの小さな体のどこにそんなに入ってるのかは謎だが、山積みされた便利グッズをことごとく食べ尽くしたスライムはジュルリとヨダレを垂らして(どこが口かはわからないが)フリージアの私物まで狙っているようだ。
「こら、スライム。フリージアを困らせたらダメだよ」
『でも、まだ食べ足りない……じゃあ、これくださいっ!』
「「あっ」」
ボクとフリージアが同時に声を上げた瞬間、スライムからびよんと触手のようなものが伸びてきてボクの顔から眼鏡を奪い取っていったのだ。
『お、美味し~いっ!極上ですぅぅぅ!!』
「ユーキさまのご尊顔があぁぁぁぁ!!」
まさか眼鏡まで食べられるとは……。ええぃ、何も見えん。目の前にボヤけて見える人影がなにやらボクを拝んでるみたいだけど、フリージアは何をしているんだい?
「予備の眼鏡どこにやったっけ……」
ガサゴソとポケットを探りもしものために作っておいた眼鏡を手に取る。ボクの眼鏡は基本的に超合金で作ってるから滅多に壊れたりしないんだけど、備えあれば憂いなしとはよく言ったものだね。
ん?なんでスライムに色々食べさせてるのかって?実はこれには複雑怪奇な事情があるんだよ。つまり……
このスライムはどうやらこの森に生息していたクイーンスライムってモンスターの跡継ぎらしいのさ。ヴィー曰く『この世界はモンスターって言ってもそんなに害はありません!どちらかと言うと自然の守護神的な役割を担ってて数もごく少数なんです。そして何百年という寿命を迎えると“核”を取り込んで次代の守護神を産み出すんです。本当ならこのスライムもゆっくりと森の中で育ち森と一体化するはずなのに、ユーキさんの力を取り込んだせいで変な方向に急成長しちゃってますよ!スライムではあり得ませんから!“味”を覚えちゃったなんて下手したら“味”を求めて人間の生活場所を襲うかも……!城とか食べちゃったら戦争ですよ!そんな事になったら────へ?そんなにモンスターっているのかって……言っときますけどユーキさんたちが普段食べてるシシイーノや、あの古代種の巨大魚もモンスター属性ですからね!』
シシイーノを捕獲して食べるのはいいのに、巨大魚はダメ……不思議でならないよ。シシイーノはモンスターの子孫だけどほぼ動物だからいいのだとか。確かにあの巨大魚は子孫もいないからレアだし、このスライムに至っては食べられないんだけどさ。
まぁつまり、こうなったらスライムが満足するまで食べさせてきちんと成長させようということさ。成長期のスライムの食欲は怖いらしいからね。そしてちゃんと教育するつもりだよ。さすがに森の守護神と人間が戦争するのはいただけないからね。
『ふぅ~、お腹いっぱいでふぅ』
けふっ。と小さなゲップを出したスライムは幸せそうにテローンと伸びた。ポヨポヨしているだけのスライムなのにちゃんと表情が変化するのは面白い。そして、ボクが新しい眼鏡をかけるためにスライムから視線を反らした瞬間の事。
「あ……あぁっ?!大変です、ユーキ様!」
フリージアが叫び……スライムはその形を変化させていた。
『よっしゃあ!成功です!』
それまでスライムの食事風景を黙って(魂の無いハニワみたいな目で)見ていたヴィーの瞳に光が戻り、ヴィーがぱちん!と指を鳴らした。
「成功ねぇ……」
スライム……いや、スライムだったものはボクに良く似た顔を向けてにっこりと微笑んだのだ。
『おかーさん!』と。
スライムなんか産んだ覚えは無いんだけどね。
ヴィーが信じられない程の大きな叫び声を森に響かせる。ちょっと、耳がキーンってするから耳元で叫ばないで欲しいんだけど。
『あ、あのっ!私、なにかしちゃったんでしょうか?!』
そのヴィーの荒ぶった姿に例のスライムが心配そうに体をくねくねとさせた。
うーん。ちゃんとこちらの言葉はわかっているようだし、意思の疎通も出来てる。そしてなにより、さっきの発言も気になるなぁ。
「まぁまぁ、落ち着いてヴィー。このスライムもなにやら訳アリのよ『あんたに言っとるんじゃい!』わかった、わかったってば。ボクだってまさかスライムが金属まで溶かして吸収するなんて思わなかったんだよ。悪かったって」
さすがに今回の事は予想外だった。ボクはあんまりモンスターの生態については詳しくないんだよ。……RPGよりシミュレーションゲームの方が好きなんだよね。冒険物ってひとつのアイテムの為にあっちこっち行ったり来たりしないといけないから時間かかるし、あの頃は悪役令嬢物のゲームや小説にハマってたからさ。
……ボクが恋愛ゲームにハマるなんて意外だと思われそうだけど、あの「ぎゃふん」されるのが好きなんだよ。大どんでん返しってわくわくするだろ?
『あ……あのユーキさんが、あぁあぁぁ謝るなんてぇ!?もう世界が滅亡すぶっ?!』
人が素直に謝っているのに何を怯えてるんだい?勝手に舌を噛んだくせにボクを見るのはやめて欲しいんだけど。
「……とにかく、何がどうヤバいのか教えてよ。ヴィーならわかってるからそんなに慌てているんだろう?」
『うぅぅ……いひゃい。実は……』
***
……うん、やっぱりフリージアが淹れてくれたコーヒーは美味しい。
『あのっ!これとっても美味しいですねっ!』
ボクがコーヒーを飲んでホッとひと息入れながら眺めているのは、これまでボクが作成したあれやこれやをモリモリ食べているあのスライムの姿だよ。いい食べっぷりだね。
なんでも普通の食料などからは栄養は摂取出来ても味がしないらしいんだけど、なぜかボクが作った物からは美味しい味がするらしい。作りすぎた便利グッズが一掃出来て助かるよ。
『う~ん、こっちは甘くて、こっちはマイルドな酸味……最高過ぎる……っ!』
「あぁっ!それはわたしの愛用してる〈なんでも捕まえる君〉です!食べないで下さい~っ」
あの小さな体のどこにそんなに入ってるのかは謎だが、山積みされた便利グッズをことごとく食べ尽くしたスライムはジュルリとヨダレを垂らして(どこが口かはわからないが)フリージアの私物まで狙っているようだ。
「こら、スライム。フリージアを困らせたらダメだよ」
『でも、まだ食べ足りない……じゃあ、これくださいっ!』
「「あっ」」
ボクとフリージアが同時に声を上げた瞬間、スライムからびよんと触手のようなものが伸びてきてボクの顔から眼鏡を奪い取っていったのだ。
『お、美味し~いっ!極上ですぅぅぅ!!』
「ユーキさまのご尊顔があぁぁぁぁ!!」
まさか眼鏡まで食べられるとは……。ええぃ、何も見えん。目の前にボヤけて見える人影がなにやらボクを拝んでるみたいだけど、フリージアは何をしているんだい?
「予備の眼鏡どこにやったっけ……」
ガサゴソとポケットを探りもしものために作っておいた眼鏡を手に取る。ボクの眼鏡は基本的に超合金で作ってるから滅多に壊れたりしないんだけど、備えあれば憂いなしとはよく言ったものだね。
ん?なんでスライムに色々食べさせてるのかって?実はこれには複雑怪奇な事情があるんだよ。つまり……
このスライムはどうやらこの森に生息していたクイーンスライムってモンスターの跡継ぎらしいのさ。ヴィー曰く『この世界はモンスターって言ってもそんなに害はありません!どちらかと言うと自然の守護神的な役割を担ってて数もごく少数なんです。そして何百年という寿命を迎えると“核”を取り込んで次代の守護神を産み出すんです。本当ならこのスライムもゆっくりと森の中で育ち森と一体化するはずなのに、ユーキさんの力を取り込んだせいで変な方向に急成長しちゃってますよ!スライムではあり得ませんから!“味”を覚えちゃったなんて下手したら“味”を求めて人間の生活場所を襲うかも……!城とか食べちゃったら戦争ですよ!そんな事になったら────へ?そんなにモンスターっているのかって……言っときますけどユーキさんたちが普段食べてるシシイーノや、あの古代種の巨大魚もモンスター属性ですからね!』
シシイーノを捕獲して食べるのはいいのに、巨大魚はダメ……不思議でならないよ。シシイーノはモンスターの子孫だけどほぼ動物だからいいのだとか。確かにあの巨大魚は子孫もいないからレアだし、このスライムに至っては食べられないんだけどさ。
まぁつまり、こうなったらスライムが満足するまで食べさせてきちんと成長させようということさ。成長期のスライムの食欲は怖いらしいからね。そしてちゃんと教育するつもりだよ。さすがに森の守護神と人間が戦争するのはいただけないからね。
『ふぅ~、お腹いっぱいでふぅ』
けふっ。と小さなゲップを出したスライムは幸せそうにテローンと伸びた。ポヨポヨしているだけのスライムなのにちゃんと表情が変化するのは面白い。そして、ボクが新しい眼鏡をかけるためにスライムから視線を反らした瞬間の事。
「あ……あぁっ?!大変です、ユーキ様!」
フリージアが叫び……スライムはその形を変化させていた。
『よっしゃあ!成功です!』
それまでスライムの食事風景を黙って(魂の無いハニワみたいな目で)見ていたヴィーの瞳に光が戻り、ヴィーがぱちん!と指を鳴らした。
「成功ねぇ……」
スライム……いや、スライムだったものはボクに良く似た顔を向けてにっこりと微笑んだのだ。
『おかーさん!』と。
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