【終】ユーキの日常(『断捨離』スピンオフまとめ置き場)

As-me.com

文字の大きさ
15 / 18

14話 ユーキの日常③の2

『なんて事しちゃってるんですかぁぁぁぁ!!』

    ヴィーが信じられない程の大きな叫び声を森に響かせる。ちょっと、耳がキーンってするから耳元で叫ばないで欲しいんだけど。

『あ、あのっ!私、なにかしちゃったんでしょうか?!』

    そのヴィーの荒ぶった姿に例のスライムが心配そうに体をくねくねとさせた。

    うーん。ちゃんとこちらの言葉はわかっているようだし、意思の疎通も出来てる。そしてなにより、さっきの発言も気になるなぁ。

「まぁまぁ、落ち着いてヴィー。このスライムもなにやら訳アリのよ『あんたに言っとるんじゃい!』わかった、わかったってば。ボクだってまさかスライムが金属まで溶かして吸収するなんて思わなかったんだよ。悪かったって」

    さすがに今回の事は予想外だった。ボクはあんまりモンスターの生態については詳しくないんだよ。……RPGよりシミュレーションゲームの方が好きなんだよね。冒険物ってひとつのアイテムの為にあっちこっち行ったり来たりしないといけないから時間かかるし、あの頃は悪役令嬢物のゲームや小説にハマってたからさ。

    ……ボクが恋愛ゲームにハマるなんて意外だと思われそうだけど、あの「ぎゃふん」されるのが好きなんだよ。大どんでん返しってわくわくするだろ?

『あ……あのユーキさんが、あぁあぁぁ謝るなんてぇ!?もう世界が滅亡すぶっ?!』

    人が素直に謝っているのに何を怯えてるんだい?勝手に舌を噛んだくせにボクを見るのはやめて欲しいんだけど。

「……とにかく、何がどうヤバいのか教えてよ。ヴィーならわかってるからそんなに慌てているんだろう?」

『うぅぅ……いひゃい。実は……』








***







    ……うん、やっぱりフリージアが淹れてくれたコーヒーは美味しい。

『あのっ!これとっても美味しいですねっ!』

    ボクがコーヒーを飲んでホッとひと息入れながら眺めているのは、これまでボクが作成したあれやこれやをモリモリ食べているあのスライムの姿だよ。いい食べっぷりだね。

    なんでも普通の食料などからは栄養は摂取出来ても味がしないらしいんだけど、なぜかボクが作った物からは美味しい味がするらしい。作りすぎた便利グッズが一掃出来て助かるよ。

『う~ん、こっちは甘くて、こっちはマイルドな酸味……最高過ぎる……っ!』

「あぁっ!それはわたしの愛用してる〈なんでも捕まえる君〉です!食べないで下さい~っ」

    あの小さな体のどこにそんなに入ってるのかは謎だが、山積みされた便利グッズをことごとく食べ尽くしたスライムはジュルリとヨダレを垂らして(どこが口かはわからないが)フリージアの私物まで狙っているようだ。

「こら、スライム。フリージアを困らせたらダメだよ」

『でも、まだ食べ足りない……じゃあ、これくださいっ!』

「「あっ」」

    ボクとフリージアが同時に声を上げた瞬間、スライムからびよんと触手のようなものが伸びてきてボクの顔から眼鏡を奪い取っていったのだ。

『お、美味し~いっ!極上ですぅぅぅ!!』

「ユーキさまのご尊顔があぁぁぁぁ!!」

    まさか眼鏡まで食べられるとは……。ええぃ、何も見えん。目の前にボヤけて見える人影がなにやらボクを拝んでるみたいだけど、フリージアは何をしているんだい?

「予備の眼鏡どこにやったっけ……」

    ガサゴソとポケットを探りもしものために作っておいた眼鏡を手に取る。ボクの眼鏡は基本的に超合金で作ってるから滅多に壊れたりしないんだけど、備えあれば憂いなしとはよく言ったものだね。

    ん?なんでスライムに色々食べさせてるのかって?実はこれには複雑怪奇な事情があるんだよ。つまり……


    このスライムはどうやらこの森に生息していたクイーンスライムってモンスターの跡継ぎらしいのさ。ヴィー曰く『この世界はモンスターって言ってもそんなに害はありません!どちらかと言うと自然の守護神的な役割を担ってて数もごく少数なんです。そして何百年という寿命を迎えると“核”を取り込んで次代の守護神を産み出すんです。本当ならこのスライムもゆっくりと森の中で育ち森と一体化するはずなのに、ユーキさんの力を取り込んだせいで変な方向に急成長しちゃってますよ!スライムではあり得ませんから!“味”を覚えちゃったなんて下手したら“味”を求めて人間の生活場所を襲うかも……!城とか食べちゃったら戦争ですよ!そんな事になったら────へ?そんなにモンスターっているのかって……言っときますけどユーキさんたちが普段食べてるシシイーノや、あの古代種の巨大魚もモンスター属性ですからね!』

    シシイーノを捕獲して食べるのはいいのに、巨大魚はダメ……不思議でならないよ。シシイーノはモンスターの子孫だけどほぼ動物だからいいのだとか。確かにあの巨大魚は子孫もいないからレアだし、このスライムに至っては食べられないんだけどさ。

    まぁつまり、こうなったらスライムが満足するまで食べさせてきちんと成長させようということさ。成長期のスライムの食欲は怖いらしいからね。そしてちゃんと教育するつもりだよ。さすがに森の守護神と人間が戦争するのはいただけないからね。

『ふぅ~、お腹いっぱいでふぅ』

    けふっ。と小さなゲップを出したスライムは幸せそうにテローンと伸びた。ポヨポヨしているだけのスライムなのにちゃんと表情が変化するのは面白い。そして、ボクが新しい眼鏡をかけるためにスライムから視線を反らした瞬間の事。


「あ……あぁっ?!大変です、ユーキ様!」

    フリージアが叫び……スライムはその形を変化させていた。

『よっしゃあ!成功です!』

    それまでスライムの食事風景を黙って(魂の無いハニワみたいな目で)見ていたヴィーの瞳に光が戻り、ヴィーがぱちん!と指を鳴らした。

「成功ねぇ……」

    スライム……いや、スライムだったものはボクに良く似た顔を向けてにっこりと微笑んだのだ。

『おかーさん!』と。

    スライムなんか産んだ覚えは無いんだけどね。



感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳