【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

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51 それは、あまりに悲しい歴史

「最初の占星術師は、ラスドレード国の民ではなく流れ者の血を引く者だったのです……」


    レベッカ様の語る占星術師に受け継がれる歴史。それはとても悲しいものでした。








***




    昔々、異国と呼ばれるラスドレード国に流れ者の集団がやって来ました。

    流れ者たちは人とは少し違った特技や踊りを披露し、各国の人たちからお金をもらって生活していました。そしてその流れ者の中に占いを得意とする者がいたのです。

    その流れ者はカードや水晶玉を使い人々の未来を占いました。その占いはとても良く当たり……ある日その評判を聞きつけたラスドレード国の王子がやって来たのです。流れ者は普段通りに占いをしました。王子だからと特別視などせず、みんなと同じように扱いました。それは占いをする上での決まり事であったからです。




    それが、全ての始まりでした。




    その占い師は普段から顔を隠していました。しかし、王子は占いの結果が悪かったことに憤慨して占い師の顔をすっぽりかくしていたベールを剥ぎ取ってしまいました。

    その占い師は灰色の瞳をしていた美しい少女だったのですが、灰色の瞳はとても珍しく時折無法者に拐われそうになることがあったので身の安全のために隠していたのです。しかしその瞳を見て王子は占い師を酷く罵りました。


「なんだ、その醜い灰眼は?!最初からそんな不吉そうな灰眼だと知っていれば占いなんか頼まなかった!わざと隠して俺を騙していたんだな?!」

    そしてその占い師の少女を王族を謀った罪だとして牢屋にいれてしまったのです。

    流れ者の青年が王族に抗議しました。その青年は少女の恋人だったのですが……王子は少女の目の前でその恋人を殺してしまいました。

    流れ者の青年は生まれつき顔の半分が醜く爛れていました。けれど実の親に捨てられても強く生きていたとても心優しい青年だったのに、王子は「こんなに醜いくせに生きてる価値はない」と吐き捨てたのです。

    少女は王子を恨みました。そして呪いを込めた言葉を口にしました。

    王子は諸国の王女との縁談についての占いを頼み、少女は破談すると告げていましたが……最後に少女が「王子はその王女に刺されて死ぬ」と言ったのです。

    その後王子は本当に死んでしまいました。浮気癖のあった王子は王女と婚約した後も女遊びをし続け、嫉妬に狂った王女に刺されたのです。そしてその王女も後を追って死にました。

    少女の言葉はただの占いではなく予言だと恐れられ始めた頃……牢屋の中で少女は今は亡き恋人の青年との間に出来た子供を出産しました。

    少女は「この子は将来、異国に予言を残す」と告げて死んでしまいました。王族はその子供が残すと言う予言が気になり、赤ん坊を秘密裏に育てることにしたそうです。


    これが占星術師の始まりなのです。



    年頃まで育った赤ん坊は、母親と同じ瞳をした美しい少女に育ちました。王族はその少女を隔離し、特別な占星術師として扱います。そうしなければあの死んだ少女に呪い殺されるような気がしたからです。

    元よりラスドレード国は迷信や占いを信仰する方向性があったので、あの王子が占い師を蔑んだ事にも恐怖を感じていました。

    そしてその少女はある時こう言ったのです。




  「ラスドレード国はこのままでは必ず滅びるだろう」と。





    ラスドレード国の王族は震え上がりました。その頃ラスドレード国は色々な不運が重なり経済的にも危なくなっていたので、占星術師の言葉が恐ろしくなりラスドレード国が滅ばないで済む為の占いをしてくれるようにその娘に頼みました。

    そして娘は“ラスドレード国の王族にとって占星術師の言葉は絶対”と言う立場を作り上げ、ラスドレード国が繁栄する為の占いを次々と口にしたのです。

    それから“占星術師”はラスドレード国にとってなくてはならない存在となりました。娘の口にした言葉の通りにすれば全部上手くいったからです。それは王族にとって魔法の言葉となりました。

    しかしいつからか灰眼は不吉で恐ろしい存在。と広まりました。たぶん、占星術師の存在に反発する王族が流した噂でしょうけれど、見慣れないものに恐怖を感じる者はいつの時代もいるものですから。

    いつしかラスドレード国では“占星術師”は女性であること以外は秘密となり、何十年、何百年と正体のわからない人間の言葉ひとつで右往左往する国になっていったのです。さすがに人間が何百年も生き延びることはないとわかっていても、いつ世代交代したのかもわからないまま“占星術師”は続いていました。


「実際は自身の最後の占いで跡継ぎに相応しい人間の存在を占っていたようですわ。そのほとんどがたまたまラスドレード国へやって来ていた流れ者だったそうですが、元より流れ者には特殊な能力を備えた者が多かったようです。
    先代の言葉を借りるなら“血”ではなく“才能”だそうでして、それまでの皆様は生涯独身を貫いたと聞いています。……皆様それなりに訳ありの女性だったらしい、とも。先代も流れ者で……人並みの家庭など望める立場ではなかったそうですから」

    ため息をひとつつき、「流れ者を蔑んだ王子のせいで、ラスドレード国はその流れ者の言葉に左右される国になったのです。何百年と続く壮大な復讐劇ですわね」と、レベッカ様は呟きました。

    先代の占星術師は同じ流れ者のルーナ様と偶然出会い、仲間意識からかとても親身に思われたそうです。灰眼がどんな目に合ってるかはよくわかっていて、だからこそルーナ様が身籠ったとわかった時に宿命を感じたと。


「そして悪い予感は当たり……産まれたのは灰眼の王子でした。
    先代はそれまでどんなに理不尽な内容でも占星術師として占った言葉だけを口にされていましたが自分の死期を悟った後、ある願いを込めた言葉を発表しました……」

    それが、“呪われた王子”の全てです。と。


「先代はあなたを救うため、王族に不信に思われない最低限の言葉を選んだそうです。……その後はわたくしが引き継ぎました。桃色の髪の少女については本当の事ですが、その娘がどこの国にいるかを指定したのはわたくしです。……だって、桃色と言われ真っ先にロティーナ様の事を思い出したんですもの」

    レベッカ様は「わたくしは直感型なんです」と肩をすくめました。

「そして、ジーンルディ王子。先代はギリギリまであなたの命を長らえるための言葉を残しました。わたくしも先代の意思を尊重します。……ただ、わたくしの大切な友人を蔑ろにするようなら全勢力を持って潰す所存ですがーーーー」

    レベッカ様はジルさんをまっすぐに見据え、にっこりと笑ったのです。

「あなた、ラスドレード国を乗っ取る気はありまして?」と。

   それはどんな意味を持つのか一瞬わからず、 レベッカ様に腹黒さ新たな魅力を感じながらも美しい微笑みになんだかドキドキしてしまいました。


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