わたし、メリーさん。いま、脇の匂いを嗅がれながら貫かれているの。

和泉うさぎこ

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わたし、メリーさん。いま、脇の匂いを嗅がれながら貫かれているの。

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「ひ、っぁ!ゃぁ……んっ、やだぁ……」

「ああ、また濃くなった。気持ちいいね?」



 わたし、メリーさん。
 いま、脇の匂いを嗅がれながら貫かれているの。

 ほらまた。すぅぅ~っと息を吸い込む音が聞こえて、カッと顔が熱くなる。
 どうしてこんな状況に、って、完全に自業自得っていうか、ここまでだとは思っていなかったっていうか。
 話はしばらく前に遡る。





「やだわ、汗臭い」

「全くよね。お国のために大切なのはわかっているけれど……本当に臭いわ」


 同僚のエミリーが苛立ったようにバタンバタンと音を立てながら全ての窓を開け放ってゆく。
 廊下を覗いて誰もいないことを確認したのだろうジャスミンは、ポケットから取り出した布で鼻と口を完璧に塞いだ。
 思わず苦笑いをこぼしてしまったわたしにジャスミンがポケットからもう一枚布を取り出して渡してくれたけれど、大丈夫と言って断った。だって、わたしには臭いと思えないのだから。


「メリー、本当に大丈夫?遠慮しなくていいのよ?」

「大丈夫よ。ありがとうジャスミン。お仕事しましょう?」

「ここの掃除がしたくて王宮メイドになったわけではないのだけれど、仕方がないわね。はやく終わらせてしまいましょう」


 わたし達は王宮でメイドとして働いている。
 王宮メイドは下級貴族子女の中では人気の職業だ。王宮に勤めている間に誰かに見初めて貰えれば、玉の輿だって夢じゃない。
 そんな夢をもって入ってきて、現実に打ちのめされるまでがワンセットなのだけれど。
 まず、高位貴族が立ち入るような中枢で働くことのできるメイドは大抵親の爵位も高い。メイド長は伯爵夫人だし。
 わたしたちは三人とも揃って男爵令嬢だから、王宮の中枢なんて遠目にすら見えやしない。
 そして、いい男にはだいたい婚約者がいる。当たり前よね。知ってた。
 現実を受け入れて早々に辞めていく人が多いから、下が育たずわたし達はずうっと下っ端も下っ端だ。
 
 下っ端の仕事といえば、基本は掃除。
 なんていったって王宮は広いのだから、掃除しなければならない範囲もとても広い。
 その中でも圧倒的にメイド達が嫌がる掃除場所がこの、騎士団詰所だ。お手洗いの掃除より嫌がられている。
 それは何故かって、騎士団の方々が訓練後に着替える場所だから当然なのだけれど、それはもう、とてもとても男臭いのだ。
 確かに嗅ぎ慣れない匂いはする。わたしは特に臭いとも思わないのだけれど、皆が言うなら臭いのだろう。
 正直に告げるほど馬鹿ではないので、わたしは黙って床を掃く。


「このあいだエイミーが、ここで春画をみつけたそうよ」

「えっ!どうしたのそれ。処分するわけにもいかないわよね?」

「収納棚の上に置いておいたらしいわよ。本当、騎士様達はここの掃除をメイドがしているとわかっていないのかしら」

「まだあったりして」


 ジャスミンが椅子を引き摺ってきて、楽しそうに収納棚の上を覗きこむ。
 数秒停止した後、そばにいたわたしに向かって手招きした。


「メリー、見て」

「なぁに?……あら?」

「投げたのかしら」

「そうかもしれないわね……どうしましょう。畳んで置いておく?」

「うっ……触るのぉ……?」

「いいわよ、わたしがするから」


 収納棚の上にあったのは、くしゃくしゃに丸まっているシャツだった。
 収納棚の背が高いから、騎士様の目線でも見つからなかったのかもしれない。春画はなかったようだから、全く見れない高さってわけでもなさそうだけれど。
 若干湿っているから、今日使われたものかもしれない。きっと数日経てば異臭を放っていただろうから、ジャスミンの奇行もお手柄だ。

 畳む為にそのシャツを広げたところで、わたしの体に衝撃がはしった。
 な、な、な、なんだこの匂いは……!
 ムスクのように野性味溢れ、かつベルガモットのような華やかさ……若い果実のような甘酸っぱさも感じられ、朝の森林のような爽やかさもある。しかしほんのりとどこか落ち着くような匂いもして……
 下腹部がきゅんと切なくなって、シャツに顔を埋めて嗅ぎたい欲を気力で押し留めた。一人なら絶対スーハーしていた。それくらい、ドストライクな匂いだったのだ。

 手放すのが惜しい。持ち帰りたい。
 しかしそれは泥棒になる。悔しい。
 わたしは涙を呑んで、四角く畳んだシャツを机に置いたのだった。





 それからは騎士団詰所の掃除がとても楽しみになった。手が足りないと言われれば積極的に手を挙げたし、毎回収納棚の上まで水拭きした。
 一体どんな人があのシャツを着ていたのだろうと気になってしまって、空き時間ですら訓練中の騎士様達が見える場所の掃除をしたりもした。
 完全に下心なんだけど、外から見れば真面目に掃除をしているだけだからメイドとしての評価も上がってゆく。

 しかし、あれ以来あの素晴らしい匂いに出会える事はなかった。
 どうしてももう一度あの匂いを嗅ぎたい。
 悶々と日々を過ごしていたわたしに、メイドの先輩が声をかけてきたのは偶然だった。


「メリー最近がんばってるね?」

「ありがとうございます。綺麗になると気持ち良くって」

「評価上がれば担当箇所も変わるし、出会いも増えるもんね。
まぁ、うちら下級貴族じゃ変な合コンくらいしか見初めてもらう機会ないんだけどねー」

「変な合コン、ですか?」

「そうそう、たまにあるんだよね。参加者は主に騎士なんだけど、婚約者が決まらない高位貴族が混ざったりするの。顔を見ずに合コンするのよ」

「え、それって合コンって言えます?顔も見ずにどうやって?」

「三日着て洗ってない夜着を持参して、一番惹かれた匂いを選ぶの。
なんだったかな、血縁が遠いほど惹かれる匂いに感じるから結ばれたら強い子が産まれやすいとか言ってた気がする。
同じ夜着を三日もなんて苦痛だし、洗ってない騎士の夜着なんか嗅ぐのも拷問だし、必ず高位貴族が参加しているわけでもないから……博打よね」

「参加したいです!」


 しまった!思わず!挙手までしてしまった!
 しかし焦ったところで発言は取り消せない。先輩にヤバイ奴認定されてしまったらどうしようと恐る恐る伺いみると、先輩は耐えられないとばかりに笑い出した。え、なんで?


「わかるわかる!怖いもの見たさってあるよねー!高位貴族いればラッキーだし!
わたしも昔それで参加して痛い目にあったけど、メリーが参加してみたいなら次回から招待状を届けるように言っておくよ」


 なんと、先輩は参加したことがあるらしい。なんとなく選んだらカップル成立しちゃって、そこそこ顔のいい騎士様だったからお付き合いを始めたはいいが夜が強すぎて破局したと。「騎士はヤバイ。体力ヤバイ。会うなら休みの前日にしとかなきゃダメだよ」とありがたいアドバイスまでいただいた。

 高位貴族狙いだと思われているようだけれど、わたしはあの匂いの主ならばどんな人でも構わない。ハゲのデブでも愛せるような気がする。
 次回からはわたしも参加できるようなので、あとはあの素敵な香りの騎士様が参加していることを願うばかりだ。





 招待状が届いて、同封されていた新品の夜着で三日寝た。男性側も女性側も同じ夜着で統一されているらしい。
 ドキドキしながら指定された場所へ向かうと、なんと宿屋が貸し切りになっていた。
 受付にいた顔を半分隠した人にお金を払って、なぜ宿屋なのかを聞いたら人前で匂いを嗅ぐのは恥ずかしいって人が多いから個室が沢山必要なんだって教えてくれた。
 ちなみにカップル成立したら部屋の利用時間延長もできるらしい。延長してなにをするんだ。

 番号の貼られた夜着が扉の前に置かれるから、匂いを嗅いだらまた扉の前に戻す。それを人数分繰り返していくらしい。
 最後に一番良いと思った番号を伝えてマッチング。お互い選び合っていたら男性が女性の部屋に来てくれる。
 今回男性側は十三人参加。結構いるなぁって思った。女性は五人って聞いたから、やっぱり同じ夜着三日は女性にはキツイんだろうな。

 部屋は普通の宿屋の部屋だった。可もなく不可もなく。シンプルで狭いよくある部屋。
 暫く待っていると、コンコンと扉が叩かれた。開けてみると、いつのまにか部屋の前にスツールが置かれていてその上に袋があった。書かれている番号は四番。
 ドキドキしながら手に取って部屋に戻る。袋を開けてみると、ふわり漂う匂い。臭くはないし嫌いではないけれど、あの匂いじゃない。
 それを、何度も何度も繰り返す。たまにウッ!てなるくらい苦手な匂いもあったりして、これが臭いってことか!と衝撃を受けたりした。なんか、洗ってない換気扇を青汁で煮詰めたみたいな匂いだった。

 最後にスツールに置かれたのは、三番の袋。一周してしまった。
 騎士様が多いって聞いたからもしかしてと思って参加してみたけど、そんなに上手くいくわけないかと諦め半分で袋をあける。

 ……薄い。騎士団詰所で嗅いだ匂いと違って野性味がない。代わりにあの時はほのかに感じた落ち着く匂いが強く出ている気がする。なにより、下腹部がきゅんきゅんする。
 わたしは夢中で袋の中を嗅いだ。夢にまで見たスーハー!これ!この匂い!これを求めていたの!!
 夢中になりすぎて、扉を叩かれるまで意識が飛んでいた気がする。もちろん一番惹かれたのは三番だと伝えておいた。
 三番の人がわたしを選んでくれますように、とベッドに腰掛けて指を組んだ。もはや神頼みだ。



 コンコン、と扉を叩く音がする。さっきまで聞いていたものと違って控えめなそれに、嫌でも期待してしまう。
 ひとつ深呼吸をして、ゆっくり扉を開いた。


「えっと、はじめまして。四番さんですか?」

「はじめまして。あの、自分の番号は知らされてなくて……と、とりあえず中へどうぞ」

「あ、すみません。ありがとう」


 な、なんかイケメンが立ってた。
 廊下で話をするわけにもいかないので、とりあえず部屋へと招く。ソファを勧めたのに、自分はこっちでと部屋の端にあったスツールを持ってきてくれて、向かい合って座った。

 騎士様にしては長めの黒い髪。光を反射していて、見るからにサラサラだとわかる。
 暗い緑色の瞳は涼やかで、切長な目元がクールな印象。
 王子様だと言われても納得してしまいそうな美形なのに、がっしりと全身についた筋肉が騎士様だと証明している。

 なんだか恥ずかしい。わたしはこの人の匂いを嗅いだのだ。そして当然だけれど、この人もわたしの匂いを嗅いだ。顔も知らないのに匂いは知っている、なんだか不思議な関係。


「申し遅れました、クリストファー・ルイスです。齢は二十四。騎士団にて第二部隊長を務めております」

「わ、部隊長さんなんですね。わたしはメリー・フローレンスと申します。二十一歳で王宮メイドです」

「先程はすみません、何度か参加しているのですが成立したのは初めてでして。
確かに、自分の番号は知らされませんよね」

「あ、でもよく考えたら、最初に渡された袋が四番だったので……多分わたしは四番なのだと思います」

「女性の参加者は少ないですから、多分そうでしょうね。俺は何番でした?」

「ルイスさんは三番でした」

「はは、最後に選んでくれたんですね?妥協してません?」

「そんなまさか、してませんよ」

 
 妥協なんて、しているはずがない。
 だって、そもそもわたしはルイスさんの匂いを探しに来ていたのだから。


「よかった。
しかし、この距離だと匂いがしないのでお互いの番号が合っているのかわかりませんね。嗅いでも?」


 ……なんていった?嗅いでも?
 言葉の意味を理解した瞬間顔に熱が集まる。思わず両手で顔を隠して、それでも小さく頷いた。
 だって、嗅がれるのは恥ずかしいけれど、わたしだって嗅ぎたい。

 ルイスさんが立ち上がって、ソファに移動してくる。沈んだ座面にドキドキして、ふわりと漂ってきた匂いに確信した。この人だ。もっと、もっと、嗅ぎたい。

 ルイスさんがわたしの首元に顔を寄せる。スゥッと息を吸う音が聞こえて、一拍置いて吐き出された呼気が熱くて思わず身を震わせてしまう。
 クスリと笑った気配を感じて、顔を隠していた手を外され握られた。


「フローレンスさんも、確認してください」

「は、はい……」


 恐る恐る、ルイスさんの首に顔を寄せる。間違いない、この匂い。わたしが、ずっと、求めていた匂い。
 吸い込んで、吐く息が震える。ルイスさんもわたしの首元の匂いを嗅いでいるから、触れ合ってもいないのにまるで抱き合っているかのようで。
 下腹部が疼く。きゅん、きゅんって。息をするたびに、喜んでいる。


「はぁ、たまらない……」

「わたしも、すごく、すごく好きな匂いです……」


 もっと、もっと。
 お互い無意識に詰めてしまっていた距離に、下ろした手がルイスさんの膝に触れる。
 ビクリと跳ねたルイスさんが仰反るように距離をとったのをみて、やってしまった、と思った。


「あ、ごめんなさい……」

「っ違うんです、その、こちらこそすみません……ちょっと……その、嫌ではないんですが、マズいというか、なんというか……」

「マズい、ですか?」

「あまりにも良い匂いで、少々、その……身体の一部が暴走気味でして……」


 頭を抱えるように俯いたルイスさんの耳が真っ赤で、なんだか可愛く見えてしまう。
 暴走とはもしかしてと視線を下げてみると、そこは立派にズボンを押し上げていた。
 ああ、同じなのだと、安心した。わたしだって多分、既に下着の中は大洪水だ。
 

「大丈夫です、ルイスさん」

「すみません、初対面なのに、こんな……」

「あの、はしたないことですが、その……わたしも、同じなので……」


 ルイスさんが驚きを浮かべた顔でこちらを見るけれど、耳も首も真っ赤になっていてまるで林檎のようだ。多分、わたしも同じように真っ赤になっているのだろうと思う。
 恥ずかしいけれど、これで終わるなんて嫌だった。やっと出会えたのに。もっと、もっと。嗅ぎたい。近くで。触れたい。触れて欲しい。足りない──

 限界だった。ルイスさんの手を取って、スカートの中へ招く。僅かに触れた指先がショーツに当たり、クチュリと音を鳴らした。
 「ね?」と微笑んでみせると、ルイスさんは反対側の手で頭をガシガシと掻きむしり唸る。はしたなすぎたかな。


「ごめん、触れたい」

「はい、わたしも、触れさせてください」

「でも、俺、は、性癖が歪んでて……」

「えっと……それは、どのように……?」

「……匂いを嗅がないと、できない」

「あの、わたしもルイスさんの匂い、嗅ぎたいです。もっと、近くで……」

「俺の本性に引くかもしれない。それでも……触れて、いいかな」


 返事の代わりに、ルイスさんの胸に飛び込んで思いっきり息を吸い込んだ。
 肺を満たす芳香にうっとりする。
 ゆっくりと抱きしめてくれたルイスさんと目が合って、どちらからともなく唇を寄せた。擦り寄るようにくっついて、唾液を交換して、導かれるように、縺れ合いながら二人でベッドに倒れ込む。

 お互い脱がし合う時間も惜しくて、口付けたまま自分で衣類を取り払っていく。素肌から香る匂いに野性味が強く出始めて、また下腹部がキュンと疼いた。
 ルイスさんの大きな掌が、わたしの胸をやわやわと揉み始める。下乳に汗をかいてる自覚があるから恥ずかしい。
 多分ルイスさんもそれに気付いて、下乳のラインに添うように指を動かした。
 ゆっくりと押し倒されて、ルイスさんの顔が下がる。重力に負けて気持ちぺたんと広がった乳房の下を、ルイスさんの舌が這う。くすぐったいような、気持ちがいいような、変な感覚。


「ふ、ルイスさん、それ、なんか変」

「ああ、どうかクリスと呼んで、メリー。
ここは、蜂蜜を煮詰めたような甘い香りがするんだね。なのに塩味が強くて、癖になる」

「ゃ、味の感想は、いらないですっ」


 いらないと言いながらも、またわたしの奥がキュンとした。甘いね、とか嘘っぽいことを言われるよりも、だいぶ嬉しい。
 クリスの舌が這うたびに、腹筋がひくつく。ショーツまで自分で脱いでしまうのは流石に恥ずかしくてそのままにしてしまっていたけれど、失敗だったかもしれない。だって、溢れた蜜がお尻の間を伝っているのがわかるくらいには濡れてしまっている。

 クリスの舌がだんだん下がっていって、おへそをくるりと舐めたと思ったらガバリと足を広げられた。
 思わず閉じようとしてしまったけれど、びくともしない。ふとももの内側に浮き出た筋をクリスの舌が辿って、付け根まで行き着いて思い切り息を吸い込んだ。


「ちょ、そこはさすがに恥ずかしい、ですっ」

「ごめん……ああ、なんだろう。ミルクのような柔らかい匂いがする……脱がせていいかな?」


 返事を待たずに、浮かした足から器用にショーツを取り払われて。
 守るものがなにもなくなったそこを、クリスが吸い込みながらべろりと舐め上げた。


「わ、ぁっ!んんっ」

「……はぁ、たまらない……匂いがどんどん濃くなるね……」


 口全体を使って、わたしのそこが全て被われる。あったかい、こんなの知らない。
蜜口から秘豆までを舌全体でゆっくりと往復されれば、もう口をついて出るのは嬌声ばかりで。
 だって、仕方ないとおもう。わたしの匂いばっかり濃くなるみたいに言ってるけど、クリスの匂いだって、ひどい。
 どんどん濃くなるし、ムスクのような香りが強くなってきて、頭がくらくらする。
 もっと、もっと。すき。


「ん、あぁっ、あっ!ゃ……っ!」


 クリスの腕が伸びてきて、胸の突起を摘む。両方ともくりくりこねこね弄られながら秘豆の根本を舐られて、蜜口に舌を差し入れられて、かと思ったら周りの襞まで啜られる。
 匂いはどんどん濃くなって、わたしで興奮してくれている事実に嬉しくて、こんなの、堪えようがない。促されるままに、押し上げられていく。


「っぁ!ィ……っ!ぁああっ……」


 秘豆の皮の中に舌先が入り込んだのを合図に、一番上まで押し上げられた。
 達してピクピクするそこを、優しくゆっくり舐めて落ち着かせられる。達してすぐに舐められると苦しかったりするけれど、決して辛くない絶妙な舌使い。


「はぁ、凄いな本当に……。
舐めても舐めても匂いがおさまらないどころか、香り立ってくる。ずっと舐めていたいくらいだ……」

「ん、つぎは、わたし」


 力が入り辛い体を起こして、クリスの足の間に座ってぺたりと上体を潰した。
 まだ下着に包まれているそこは、苦しそうに生地を持ち上げては湿っている。顔を寄せて、思いっきり息を吸い込んだ。すき。だいすき。体の匂いとはちょっとちがう。もっと濃くて、いやらしいにおい。

「っはぁ……おっきぃ……」

 下着を引っ張るとクリスが腰を浮かせてくれたから、そのまま引き抜いてまた顔を寄せた。すき。おなかの奥がキュンってなる。わたしの頭の中はハートマークでいっぱいだ。
 口の中に唾液を溜めて、根元からゆっくり舐め上げる。ぱくりと口に含んで、全体に唾液を纏わせた。鼻から抜けるクリスの匂い。すき。やっぱりムスクみたいだけど、なんかココは森っぽい匂いも強い。すき。
 おおきくて苦しいけれど、ググっと飲み込めるだけ飲み込んで、下生えに鼻をくっつけて、吸い込む。
 ああ、溶ける。鼻から入るのも、抜けるのも、鈴口から滲む雫の味だって、たまらない。
 つるりとした先端が喉の奥に当たるのも、きもちいい。わたし、これ、もしかしたら、喉でイけるようになっちゃうんじゃないかな。そんな予感がする。

 何をどうしたのか、記憶にない。夢中で舐めたり吸ったり咥えたりしていたら、頭を持たれてちゅぽんって外された。


「うわ、とろっとろな顔してる」

「ん、もっと、したい」

「んー、メリーの匂いが濃すぎて、もう限界。ごめんね」


 抱きしめられて、そのままベッドに背中をつけた。近くで香る匂いに引き寄せられるまま、クリスの首筋を舐める。
 その間にクリスの指がわたしの中に入ってきて、ぐるりと回されたあと「蕩けすぎ」って笑いながらでていった。


「メリー、おいで」


 ぎゅぅって抱きしめられて、クリスの匂いに包まれたまま、わたしの中に熱いものが入ってくる。ぐぐぐって、ちょっと苦しいけど、はやく欲しくてわたしも腰を揺らしてお手伝いした。
 ごつんって一番奥まできて、そこからグッて押し上げられる。奥の奥までクリスでいっぱいで、中のきもちいいところ、ぜんぶ当たる。なに、これ。こんなの、しらない。


「は、メリー、感じすぎ……とろとろキツキツでヤバ……動くよ」

「ぁっ!あっ、あ……あぁっ」

「ああ、凄い……どんどん強くなる……」


 クリスがわたしの頭に、首元に、脇に、顔を寄せては息を吸い込む。
 脇って、なに。僅かに残った理性が顔に熱を集めるけれど、それもすぐに吐き出された熱い息に焦がされて。


「ゃ、だめぇ……っクリス、クリスぅ、あ、っおかしく、なるっ」

「俺なんかずっとおかしい。大丈夫、一緒におかしくなろう」

「ひ、っぁ!ゃぁ……んっ、やだぁ……」

「ああ、また濃くなった。気持ちいいね?」

「ん、っあ、きも、ちぃ……あぁ、っ、ぎゅ、ぎゅってして、っん、クリスぅ……!」

「いくらでも。ずっと繋がっていたい……好きだよ、メリー」

「ゃ、それぇ……だめ、ぁあっイ、っちゃうぅぅっ」


 クリスが抽送を止めて奥だけを小刻みに叩くものだから、そんなピンポイントの攻撃に頭が溶けているわたしが敵うはずもなくて。
 大きな波に飲み込まれて腰を浮かすと、繋がっている場所がプシッと弾けた感覚がした。


「っあ、ま、まって、ぁあっ!いってる、いってるからぁぁっ」

「イくとき、凄くいい匂いがする……ずっとイってるね、もっと嗅ぎたい」

「やぁ……っむり、とまっ、ぁ、イってる、ぁああっ!やら、いってぅ、いってうの、くりすぅっ」


 無理矢理快感を叩き込まれて、息すらうまく吸えないのにクリスは止まってくれなくて。
 それでも手を伸ばしたら繋いでくれちゃうんだから、すき。あたまおかしくなってる。きもちいい、と、すき、しかない。


「んっ、くりす、すきっぁああ、っすきぃ……!」

「メリーかわいい。好きだよ。俺も、もう出る……」

「きもちぃ、ぁあっくりす、すき……きもち、っん、すきぃ」

「最後に、一緒に、イこ?」

「っ!!!ぁぁあああっぁあああああ!!!」


 中でずうっとイってるのに、クリスの指は容赦なく秘豆を抉ってきて。
 中と外で同時にイかされる感覚。こんなの、しらない。こんなの覚えたら、もう、クリスじゃなきゃむりになっちゃう。

 おなかのおくが、こぽって膨らむのをかんじて、目を閉じたらもうあけられなかった。おやすみなさい、くりす。





「とんでもなかった……」

「ごめん……理性飛んでた……」


 目覚めたときには体は拭き清められていて、起き上がろうとしたら腰が崩れた。
 抜けるみたいに、すこんって。座れやしない。
 気付いたクリスが水飲むかだの服着るかだの甲斐甲斐しくお世話してくれる。
 いや、まぁ、当然なんですけど。抱き潰したんだからお世話してください。死ぬかと思った。冗談じゃなく。
 先輩が言ってた騎士はヤバいって、こういうことかな。
 まぁでも、明日はお休みだし。クリスが言うには延長超えて明日の昼まで宿の部屋をとってくれたらしいし。ゆっくりしよう。理性が飛んでいたのはわたしもだから、お互い様だ。


「メリー、好きだよ」

「ふふ、わたしも。クリス、すきだよ」

「匂い嗅ぎすぎてごめん。引いた?」

「わたしの方が嗅いでたかも。クリスは引いた?」


 ふふっ、て二人で笑い合って。
 クリスに手を繋がれて、顔が近付いてきたからキスされるのかなって目を閉じたのに、
コツンと当たったのはおでこだった。
 ぼやけるくらい近くに、クリスがいる。いい匂い。なんとなくだけど、笑っているのがわかる。なんかこれ、幸せだなぁ。


「俺と結婚を前提にお付き合いしてください」

「喜んで。でも、夜はちょっと手加減してくれると嬉しいな」

「それは、ちょっと難しいかな。既に抱きたい」


 クリスの言葉に頭を抱えた。
 


 とんでもないな、騎士!
 
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