DEKOBOKO

ゆん

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告白

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 船岡から俺の話を聞く俺……っていう変な構図。まさか船岡も本人に話してるとは思うまい。その緊張に少しずつ慣れてきて好奇心と冒険心がむずむず刺激された俺は、カバンからスマホを取り出してメモ画面をタップし、筆談代わりに 『どうして学校じゃ喋らないの?』 と打ち込んで船岡の方へ向けた。
 船岡はそれを覗き込み、「人付き合いは苦手。って……宝田さんにはこんな風に話かけてるし、信じられないかもだけど」 と、自嘲気味に笑った。

「クラスの奴らも嫌いじゃねえけど、基本どうでもいい話をベラベラすんのが好きじゃないし……自分で言うとアレなんだけど、なんか女子に寄って来られやすくて。中学の時に色々あったから女子は特に苦手……って、ごめん。宝田さんも女子だった……」

 微妙に焦った様子の船岡が面白くて、デカいのに可愛く感じた。なんだよ。こんなフツーのやつだったなんて。ちょー親近感わくじゃん!なんて……完全に油断してたところへ、船岡が。

「あのさ。もう初対面とか無視してぶっちゃけるけど」

 そう言われて、何か腹を決めたみたいな目をされて。人間って、たぶんテレパシーが使えるんだと思う。船岡が言葉にする前に何故かピンと来て、ちょっと待った!言わないでくれ って思ったけど──

「宝田さんに一目惚れしたんだ。付き合ってくれませんか」

──間に合わず。うぉい!どうすんだよ!船岡に告白されちゃったよ!いや、どうするもこうするも……断るしかねえじゃん!
 男に告白されたことなんかないし(女子からもないけど)、でも今の俺は女のカッコをしてるからか女子の気持ちになったりしてどきどきするし、船岡には悪いなと思うし、でも面白いし。すげえ面白いし。顔が笑わないようにするのに必死。
 俺が頭を横に振ると、船岡はそれが分かってたみたいに 「急だよな。ごめん」 と謝って……でもすぐに 「分かってるけど諦めきれない。こんな気持ちになったのは初めてで……」 って、断られたことでかえって火がつきました!的な目で俺を見つめてきて──

「信じないかもしれないけど、こんな風に外で初対面の相手に声をかけたことなんかない。でもこうでもしなきゃ宝田さんの視野に俺が入ることなんか絶対ないって思ったから……だから、出来たんだ。友達からでいいから、お願いします」

 コイツの本気、やばい。ちょいぐっときた。いや、かなりきた。どきどきした。ものすごい熱視線を向けてくる船岡にノーを突きつけられる女っていんのかな……結果、俺は……なんか頷いてしまって──

「マジで!?やった、すげぇ嬉しい……」

 船岡は一瞬大きな声を出した自分を恥ずかしがって声を潜め、ちょっと顔を赤くしてて……なんつーかこのデカい男が可愛くて……えっこれ母性本能? 女装するうちに目覚めちまったのか……?
 いやいやいや。船岡が意外過ぎるせいだ。だって学校にいるときのコイツと違い過ぎるし、絶対優位のはずの男が俺に惚れて頭を下げてるっていうこの優越感……
 大丈夫。友達でいいって言ってんだし、ようは最終OKしなきゃいいんだから。貴重な同年代ソルジャームーンファンと語らう機会なんてそうそうないしさ。
 こうして……俺は改めて船岡と ”お友達 ” になった。一瞬よぎったヤバイ、やめとけって声を無視して。







『みんな大好き!あのソルジャームーンに会える!美少女戦隊ソルジャームーンショー 午後の部が始まるよー!みんな、あっつまれー!』

 スピーカーから放送される主人公たちの声に無意識に反応して仮設ステージの方へ目をやる。席にはまだ誰もいないけど、小さい音でノリの良い主題歌が流れ始めてて地味に上がる。

「後でもう少し近くに行く?」

 船岡がさっきの興奮の余韻を頬に微かに残した表情をしてる。いや……なんだろ……すげー気持ちいい……俺を気遣う船岡。ふふふ……そうかそうか……そんなに俺が可愛いか……
 ウンと首肯した俺の仕草は明らかに可愛さを意識してる。そして分かりやすいそれを ”可愛いなぁ ” と思ってるのが分かる目をしてる船岡に、満足感でいっぱいになる。
 罪悪感がなくはない。けど……ちょっとくらい楽しんだっていいはずだ。”チビ ” っていうコンプレックスを抱える俺に神が与えたもうた、憂さ晴らしの機会を。
 一目惚れって結局は外見が気に入ったってことなんだろうし、見慣れればそのうち飽きて離れてくだろう。その時まで、このハラハラとドキドキと優越を楽しませてもらえばいい。
 俺はティーカップを ”可愛らしく ” 持って、もう冷めてしまった温い液体をコクコクコクと飲み干した。
 


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