76 / 84
同棲編
・
しおりを挟む
まだ朝日と呼べる白い太陽の下、もう充満してる熱気を軽自動車のドアをばふばふして追い出し、運転席と助手席へそれぞれ乗り込んだ。
走り出してもなかなかクーラーが効いて来なくて少し背中が汗ばんでるけど、もう、なんか気分は旅行!海!!ってどんどん上がってく。
目の色素が薄い透くんは夏の日差しが苦手らしく、今日は薄い色のサングラスをかけてる。これがまためちゃくちゃ似合ってて、改めて、この人が僕の恋人かぁ~……って、いつものことながらため息が出てしまう。
恋人とお泊まりの旅行って言ったら絶対そうなる夜があるわけで、この間の、初めて透くんのベッドで朝まで過ごした日までの僕はそれをすごく心配してた。ちゃんと出来るかなって。
実際の所、あの日以降透くんが忙しくって全然一緒にいられないから、お出掛け前のキスとかで僕たちの関係は止まってて……でも今はあんまり心配してない。もし今回出来なくても透くんとならいつか、僕のバラバラになったかけらを集めて過去に出来るっていう彼に対する信頼が、僕のお腹の中にあるから。
楽しみなのは透くんと過ごす時間の全部。こんなに長い時間ずっと透くんといられるのは初めてだから、今こうして運転する透くんの隣にいるだけでもうウキウキしてる。
それから、海!海は中学校以来……もう、あの塩辛さも忘れちゃった。ただ言語としてしょっぱかったって覚えてるだけで。
泳ぐのは上手じゃないんだけど、持久力があるせいか長く泳いでるのは得意で「よくそんなので」って言われるバタ足と平泳ぎが合体したような泳ぎ方で、唇が青くなるまで長々と海の中にいたもんだった。
プライベートビーチなんて初めて。どんな感じだろう?僕と透くん以外いない砂浜……どこまでも広がる青い海……照り付ける太陽の下、それぞれ浮き輪に入った僕と透くんの頭が、あちこちについた海の雫で光ってる……いいなぁ……
「おい、着いたぞ」
「ふぇ……っ?」
お約束みたいにいつの間にか寝ちゃってた僕。気づけば車はまるでワープしたみたいに、昭和感たっぷりな一軒家の前に停まってた。
別荘……っていう雰囲気じゃない。築4、50年は経ってそうな、相当年季を感じる外観だった。うっそうとした樹々に囲まれたここの近くに他の家は見えない。伸び放題に伸びた草や木が、家を覆い隠しそうな勢い。でも、波の音はすごく近い!見えないけど!
「ね!磯の匂いもするし、海、絶対近いね!」
「ん……」
透くんはまさに点点点っていう難しい顔をして屋根を見上げると、荷物を入れるために古い引き戸の鍵穴に鍵を差し込んだ。
ガラガラとコマがレールを滑るすごい音がする引き戸を開けると、むうっとした空気が僕と透くんを押してくる。でも……驚いたことに中はかなり綺麗だった。古いけどちゃんと掃除がされていることが分かる。てっきりかび臭いとか、埃っぽいとか、そんなのをイメージしてたけど、全然!
サンダルを脱いで上がり、リビングらしき部屋に入ってみると、雨戸が全部閉められているせいでまっくら。パチンと電気をつけると、この家には不似合いな真新しい最新型エアコンが8畳ほどの洋室にも、隣の6畳の和室にもキッチンにも付いてて、泊まるのには全然問題がなさそうだった。
「良かった……どうなることかと思った」
透くんの、かなり本気っぽい台詞に思わず苦笑い。確かに……ここに泊まるの?って、外側だけ見た時はちょっと心配しちゃったもんね。
走り出してもなかなかクーラーが効いて来なくて少し背中が汗ばんでるけど、もう、なんか気分は旅行!海!!ってどんどん上がってく。
目の色素が薄い透くんは夏の日差しが苦手らしく、今日は薄い色のサングラスをかけてる。これがまためちゃくちゃ似合ってて、改めて、この人が僕の恋人かぁ~……って、いつものことながらため息が出てしまう。
恋人とお泊まりの旅行って言ったら絶対そうなる夜があるわけで、この間の、初めて透くんのベッドで朝まで過ごした日までの僕はそれをすごく心配してた。ちゃんと出来るかなって。
実際の所、あの日以降透くんが忙しくって全然一緒にいられないから、お出掛け前のキスとかで僕たちの関係は止まってて……でも今はあんまり心配してない。もし今回出来なくても透くんとならいつか、僕のバラバラになったかけらを集めて過去に出来るっていう彼に対する信頼が、僕のお腹の中にあるから。
楽しみなのは透くんと過ごす時間の全部。こんなに長い時間ずっと透くんといられるのは初めてだから、今こうして運転する透くんの隣にいるだけでもうウキウキしてる。
それから、海!海は中学校以来……もう、あの塩辛さも忘れちゃった。ただ言語としてしょっぱかったって覚えてるだけで。
泳ぐのは上手じゃないんだけど、持久力があるせいか長く泳いでるのは得意で「よくそんなので」って言われるバタ足と平泳ぎが合体したような泳ぎ方で、唇が青くなるまで長々と海の中にいたもんだった。
プライベートビーチなんて初めて。どんな感じだろう?僕と透くん以外いない砂浜……どこまでも広がる青い海……照り付ける太陽の下、それぞれ浮き輪に入った僕と透くんの頭が、あちこちについた海の雫で光ってる……いいなぁ……
「おい、着いたぞ」
「ふぇ……っ?」
お約束みたいにいつの間にか寝ちゃってた僕。気づけば車はまるでワープしたみたいに、昭和感たっぷりな一軒家の前に停まってた。
別荘……っていう雰囲気じゃない。築4、50年は経ってそうな、相当年季を感じる外観だった。うっそうとした樹々に囲まれたここの近くに他の家は見えない。伸び放題に伸びた草や木が、家を覆い隠しそうな勢い。でも、波の音はすごく近い!見えないけど!
「ね!磯の匂いもするし、海、絶対近いね!」
「ん……」
透くんはまさに点点点っていう難しい顔をして屋根を見上げると、荷物を入れるために古い引き戸の鍵穴に鍵を差し込んだ。
ガラガラとコマがレールを滑るすごい音がする引き戸を開けると、むうっとした空気が僕と透くんを押してくる。でも……驚いたことに中はかなり綺麗だった。古いけどちゃんと掃除がされていることが分かる。てっきりかび臭いとか、埃っぽいとか、そんなのをイメージしてたけど、全然!
サンダルを脱いで上がり、リビングらしき部屋に入ってみると、雨戸が全部閉められているせいでまっくら。パチンと電気をつけると、この家には不似合いな真新しい最新型エアコンが8畳ほどの洋室にも、隣の6畳の和室にもキッチンにも付いてて、泊まるのには全然問題がなさそうだった。
「良かった……どうなることかと思った」
透くんの、かなり本気っぽい台詞に思わず苦笑い。確かに……ここに泊まるの?って、外側だけ見た時はちょっと心配しちゃったもんね。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~
つきよの
BL
●ハッピーエンド●
「勇利先輩……?」
俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。
だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。
(どうして……)
声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。
「東谷……」
俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。
背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。
落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。
誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。
そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。
番になればラット化を抑えられる
そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ
しかし、アルファだと偽って生きていくには
関係を続けることが必要で……
そんな中、心から愛する人と出会うも
自分には噛み痕が……
愛したいのに愛することは許されない
社会人オメガバース
あの日から三年ぶりに会うアイツは…
敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ
箱入りオメガの受難
おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。
元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。
ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰?
不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。
現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
あなたの家族にしてください
秋月真鳥
BL
ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。
情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。
闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。
そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。
サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。
対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。
それなのに、なぜ。
番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。
一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。
ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。
すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。
※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。
※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。
的中率100%の占い師ですが、運命の相手を追い返そうとしたら不器用な軍人がやってきました
水凪しおん
BL
煌都の裏路地でひっそりと恋愛相談専門の占い所を営む青年・紫苑。
彼は的中率百パーセントの腕を持つが、実はオメガであり、運命や本能に縛られる人生を深く憎んでいた。
ある日、自らの運命の相手が訪れるという予言を見た紫苑は店を閉めようとするが、間一髪で軍の青年将校・李翔が訪れてしまう。
李翔は幼い頃に出会った「忘れられない人」を探していた。
運命から逃れるために冷たく突き放す紫苑。
だが、李翔の誠実さと不器用な優しさに触れるうち、紫苑の頑なだった心は少しずつ溶かされていく。
過去の記憶が交差する中、紫苑は李翔の命の危機を救うため、自ら忌み嫌っていた運命に立ち向かう決意をする。
東洋の情緒漂う架空の巨大都市を舞台に、運命に抗いながらも惹かれ合う二人を描く中華風オメガバース・ファンタジー。
孤独の王と後宮の青葉
秋月真鳥
BL
塔に閉じ込められた居場所のない妾腹の王子は、15歳になってもバース性が判明していなかった。美少女のような彼を、父親はオメガと決め付けて遠い異国の後宮に入れる。
異国の王は孤独だった。誰もが彼をアルファと信じているのに、本当はオメガでそのことを明かすことができない。
筋骨隆々としたアルファらしい孤独なオメガの王と、美少女のようなオメガらしいアルファの王子は、互いの孤独を埋め合い、愛し合う。
※ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。
※完結まで予約投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる