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コーヒー
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あれから先生の家に週に2,3度行くようになった。絵を描いてる最中だと「今日はだめ。帰れ」って追い返されたりもしたけど、そうじゃなければ上げてくれた。
お土産で何度か失敗した。一番ひどかったのはビールは無理だからってケーキとコーヒーの粉を持ってった時のこと。
「先生、コーヒーメーカーどこですか?」
「んなもん、あるわけねえだろ」
「え、じゃあコーヒーはどうやって飲むんですか」
「インスタントだよ」
インスタントコーヒーを見たことがなかった俺は、先生に瓶の中身を見せられた時、同じ粉なら溶けんじゃねえかなって思って、持ってきた粉に湯をかけてぐるぐるかきまぜた。
だってすごく美味しい豆を挽いてもらったから先生に飲んでもらいたくて……でも、挽いた粉が湯に溶けないって、やっちまってから気づいた。
そりゃそうだ。コーヒーメーカーで淹れた時、ちゃんとカスが出てるじゃん……
どうしようどうしよう、と思ってカップから必死ですくい取ってたら、様子を見に来た先生が大笑いしてさ……
「いや~有り得ねぇ~!」
そう言って俺の手からカップを持ってった。
「先生……粉がいっぱいですけど」
「もったいねえじゃん。まぁ、飲めんだろ」
でも結局、唇に付くしジャリジャリするし飲めたもんじゃなくて、俺は無理やり先生の手からカップを奪った。
「すみません。インスタント入れます」
流しに失敗作を捨てて、インスタントコーヒーの瓶に書いてある作り方をじろじろ睨む。
「ティースプーン山盛り2杯から2杯半……2杯なのか2杯半なのかはっきりしろよ……山盛りってどんだけだよ。どのくらいの山?」
悩んでも分かんなくて、結局すくい取れるぎりぎりの山にしてカップに入れた。
「150ミリリットルのお湯を注ぐ……150ってどのくらい……わっかんねぇ……」
そんな俺の目に流しの隅に置かれた空のペットボトルが映った。
「お、これ500ミリリットルだよな。ってことは……先生!物差しとマジックください」
奥の部屋の先生が、はぁ?って呟いて、何やってんのってこっちに来て……
「150ミリリットルを量りたいんです。ここにちょうどペットボトルがあるので……」
そうやって説明してる途中で、また先生は爆笑して……もう、すっげぇ不本意で……
「まぁ、しょうがないよね……?ほら、急にはさ」
久し振りに瑞希と出掛けた日曜日。
瑞希がステキだよ、という人気のカフェでクロックフレンチを一緒に食って……セットについてたコーヒーがなかなかうまくて、それで先生との一件を思い出して話したわけなんだけど……
「なんかさぁ……先生といると、俺、なんもできねぇやつみたいですっげぇヤダ」
「まぁまぁ。いいじゃん!そうやって一個ずつ覚えていけばいいわけだし!」
「まあな~……そうだけど……先生は呆れてるだろうなってさ……」
「いやいや、案外カワイイって思ってるんだって!」
瑞希はフォークを軽く振りながら茶目っ気たっぷりに笑う。
「カワイイなんて、やだよ。俺、先生に……なんつーか、もっとちゃんと相手して貰いたいっていうか……なんかいっつも軽くあしらわれてるからさぁ……」
そのせいだ。コーヒーをブラックで飲むようになったのは。飲めない訳じゃないけど、ほんとはラテが好きなのに。ラテって……つまりはコーヒー牛乳じゃん。なんか、子どもっぽいだろ……
「でもさ。それは仕方ないよ。だって10コ違うんだもん。俺らで言ったら小1の子ってことでしょ?」
「うっ……そうやって例えたらすげぇな……」
「そりゃ寂しいときもあるよね、ガキ扱いしてって。でも………年の差だけは、どーしようもない。一生追い付けないんだもん」
瑞希は小さくふ、とため息をついて、テーブルに飾られたミニひまわりの一輪挿しに目をやった。
なんかさ。そこに妙なリアリティーを感じたんだ。俺に共感してる、その深さっつーか……
「あ、もしかしてお前も年上の……憧れてる人がいんの?」
ほぼ、返事は「うん、実はそうなんだー」ってのを想定してた。そしたら…瑞希のやつ、えっ…いやっ……えっと……って、なんかいきなりしどろもどろになってさ。
「え、え、なにその反応……ええっ!も、もしかして!!年上の彼女!?」
「いや……はは…あの……まぁ……そう、かな」
「なんだよーー!いつから!?ひでえよ、教えろよーー!!」
瑞希のやつ、しまったなぁって顔しててさ……地味に傷つく。教えてくれてもいいじゃんって。
何でもかんでも話して欲しい訳じゃないけど……でも瑞希の初めての彼女のはず。中学の時はいなかったって言ってたから。結構言いたいもんなんじゃねえの?それとも他のやつには言ってんのかな……
お土産で何度か失敗した。一番ひどかったのはビールは無理だからってケーキとコーヒーの粉を持ってった時のこと。
「先生、コーヒーメーカーどこですか?」
「んなもん、あるわけねえだろ」
「え、じゃあコーヒーはどうやって飲むんですか」
「インスタントだよ」
インスタントコーヒーを見たことがなかった俺は、先生に瓶の中身を見せられた時、同じ粉なら溶けんじゃねえかなって思って、持ってきた粉に湯をかけてぐるぐるかきまぜた。
だってすごく美味しい豆を挽いてもらったから先生に飲んでもらいたくて……でも、挽いた粉が湯に溶けないって、やっちまってから気づいた。
そりゃそうだ。コーヒーメーカーで淹れた時、ちゃんとカスが出てるじゃん……
どうしようどうしよう、と思ってカップから必死ですくい取ってたら、様子を見に来た先生が大笑いしてさ……
「いや~有り得ねぇ~!」
そう言って俺の手からカップを持ってった。
「先生……粉がいっぱいですけど」
「もったいねえじゃん。まぁ、飲めんだろ」
でも結局、唇に付くしジャリジャリするし飲めたもんじゃなくて、俺は無理やり先生の手からカップを奪った。
「すみません。インスタント入れます」
流しに失敗作を捨てて、インスタントコーヒーの瓶に書いてある作り方をじろじろ睨む。
「ティースプーン山盛り2杯から2杯半……2杯なのか2杯半なのかはっきりしろよ……山盛りってどんだけだよ。どのくらいの山?」
悩んでも分かんなくて、結局すくい取れるぎりぎりの山にしてカップに入れた。
「150ミリリットルのお湯を注ぐ……150ってどのくらい……わっかんねぇ……」
そんな俺の目に流しの隅に置かれた空のペットボトルが映った。
「お、これ500ミリリットルだよな。ってことは……先生!物差しとマジックください」
奥の部屋の先生が、はぁ?って呟いて、何やってんのってこっちに来て……
「150ミリリットルを量りたいんです。ここにちょうどペットボトルがあるので……」
そうやって説明してる途中で、また先生は爆笑して……もう、すっげぇ不本意で……
「まぁ、しょうがないよね……?ほら、急にはさ」
久し振りに瑞希と出掛けた日曜日。
瑞希がステキだよ、という人気のカフェでクロックフレンチを一緒に食って……セットについてたコーヒーがなかなかうまくて、それで先生との一件を思い出して話したわけなんだけど……
「なんかさぁ……先生といると、俺、なんもできねぇやつみたいですっげぇヤダ」
「まぁまぁ。いいじゃん!そうやって一個ずつ覚えていけばいいわけだし!」
「まあな~……そうだけど……先生は呆れてるだろうなってさ……」
「いやいや、案外カワイイって思ってるんだって!」
瑞希はフォークを軽く振りながら茶目っ気たっぷりに笑う。
「カワイイなんて、やだよ。俺、先生に……なんつーか、もっとちゃんと相手して貰いたいっていうか……なんかいっつも軽くあしらわれてるからさぁ……」
そのせいだ。コーヒーをブラックで飲むようになったのは。飲めない訳じゃないけど、ほんとはラテが好きなのに。ラテって……つまりはコーヒー牛乳じゃん。なんか、子どもっぽいだろ……
「でもさ。それは仕方ないよ。だって10コ違うんだもん。俺らで言ったら小1の子ってことでしょ?」
「うっ……そうやって例えたらすげぇな……」
「そりゃ寂しいときもあるよね、ガキ扱いしてって。でも………年の差だけは、どーしようもない。一生追い付けないんだもん」
瑞希は小さくふ、とため息をついて、テーブルに飾られたミニひまわりの一輪挿しに目をやった。
なんかさ。そこに妙なリアリティーを感じたんだ。俺に共感してる、その深さっつーか……
「あ、もしかしてお前も年上の……憧れてる人がいんの?」
ほぼ、返事は「うん、実はそうなんだー」ってのを想定してた。そしたら…瑞希のやつ、えっ…いやっ……えっと……って、なんかいきなりしどろもどろになってさ。
「え、え、なにその反応……ええっ!も、もしかして!!年上の彼女!?」
「いや……はは…あの……まぁ……そう、かな」
「なんだよーー!いつから!?ひでえよ、教えろよーー!!」
瑞希のやつ、しまったなぁって顔しててさ……地味に傷つく。教えてくれてもいいじゃんって。
何でもかんでも話して欲しい訳じゃないけど……でも瑞希の初めての彼女のはず。中学の時はいなかったって言ってたから。結構言いたいもんなんじゃねえの?それとも他のやつには言ってんのかな……
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