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イザニュウコク
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なんてことだ。食料詰めてた袋に入れてたのを忘れていた…
「と、いうことは…」
魔獣の手の元ってことかぁ…どう取り返そうか?いや、その前に袋(食料)を奪った魔獣を探さなくてはいけない。
「匂いを辿れ__」
袋は昔から何年も使っていたものだ。俺の匂いが染み付いている。
杖の先に集まった魔力が、糸状になって袋の在処へ向かう。
「よしっ向かう先は…あっちか。」
通って来た道を引き返す。道から外れて、奥の林へ入って行く。かろうじて通れる獣道を進むと、見つけた。
この間実に四時間。あんまり遠くに行っていなくて良かった。
それにしても…沢山いる。その中の一匹が袋の中身を漁っている。多分リーダー格の魔獣だろう。
「さて…どうするか。」
魔獣除けの魔術が使えればいいのだが、村長からは聞いてない上、想像が出来ない。
「あの屈強な獣共を散らせる術ってなんだよ…」
おまけに魔術紛いの技も使うときた。俺には検討もつかない。
なら真っ向から魔術で勝負を掛けるか?
「無理だよな。」
一匹ならまだしも数匹いる。どうする…
「お困りかな?」
思いがけない声かけに肩を震わせる。
「え、誰?」
「あの魔獣の集団を討伐依頼を受けた人でーす。」
若い。いや、俺より少し年上の女性?いや男か?判別のつかない中性的な顔立ちをした…男だった。体を見たら一発だ。よし、どっちみち案が浮かばずに困っていたんだ。
「はい。色々大切な物が入ってる袋をアイツらに奪われたんです。」
「ということならついでに君の袋、奪い返してあげよう。中に入ってる食料以外なら可能だ。」
「ありがとうございます。でも、その…大丈夫なんですか?あの量の魔獣を一人で。
いや、すいません。俺は戦えないのに。」
「大丈夫だよ。あの位僕一人でね。」
…近づかれても全く気づけなかった。こんなに音が立ちやすいような状況なのに。
心配は無さそうだ。
「よろしくお願いします。」
「承った!」
ザッ、と勢いよく茂みの中から飛び出す。
魔獣共も、咄嗟に敵意を感知し、彼と真っ向から相対する形となった。
刹那__彼の身体が鮮やかな緑の閃光を発した。
「眩しっ、」
目眩まし?魔獣共も声を上げている。いや、
声が上がり続けている。
殺してまわっているのか。けど、この切りつけているような、叩いているような音、剣?明らかに魔術で戦っているような音ではない。
でもこの光どう考えても魔術なはず…そんなことを考えている内に目が慣れて来た。
「どうなって、あぁ…こりゃすごい。」
一番に飛んできた景色は小さな地獄だった。
鮮血の血溜まりと見るも無残な魔獣だった物の集団、その下には溢れ落ちたピンクの臓腑がハスのように赤い水を弾いていた。
彼の手に握られた剣は血を滴らせ、木漏れ日を赤るく反射している。
「ほれ、君の持ち物。」
死体と血の池の間から引っ張り出して投げ渡す。
「あ、ありがとうございます。」
血がべったりだ。後で洗おう。
「中身は無事?」
「はい。傷も染みもなく、全部揃ってます。」
袋がしっかりしてて良かった。本当に…
「そりゃよかった。さて、これから僕はヘルブに戻るけど、君はどうするの?」
「俺も入国しようと思っているので同じ方向です。本当に助かりました。」
「いいよいいよ、困ったときはお互い様さ。それじゃあ、ヘルブに向かおう。」
バッと剣の血を振り落とし、鞘に収め、
依頼の成功を証明する依頼分の魔獣の角をもぎ取る。
「あれ、肉や皮はいいんですか?使えそうなのありますけど。」
「あー魔獣の体はね、殺した瞬間から腐るんだよ。だから使い物にならない。唯一使えるのは、この角。魔獣なら必ず生えてる物なんだけどね、色んな用途があってとても需要が高いんだよ。」
「へえ、初めて知りました。」
あまり魔獣の事は知らなかったから、ちょっと驚いた。
「結構いいとこ育ち?」
「いえ、俺の住んでた村があんまり魔獣のいない地域だったようで、至って普通です。」
「ここら辺は魔獣が多いからなー、ヘルブに行きがてら住んでた村についてちょっと教えてよ。」
「はい、いいですよ。」
◇
四時間後_
「じゃあさっきの光は、その剣の…」
「そう。剣に仕込んだ枝で目眩しの魔術を使ったってこと。」
そんなことも出来るのか。俺は剣が使えないけど、他にも応用出来そうだ。
「お、もう着くよ。」
門の前で今回こそ証明書を提出出来た。
「はい。確認で来ました。通っていいですよ。」
「はぁい」
「どうもありがとうございます。」
「ところで君、見たことないけど、旅人かい?」
「はい、世界中を旅しようと今回初めて国に入るんです。」
「へえ、そりゃ光栄だ。ハルブの観光楽しんでってね、耳の長い旅人さん。」
「耳が長いってよく言われます。はい、楽しみます。」
そんなに目立つだろうか?
まあなに、これでようやくハルブ内に入れるのだ。
門が開く。こうして初の入国を果たした。
「と、いうことは…」
魔獣の手の元ってことかぁ…どう取り返そうか?いや、その前に袋(食料)を奪った魔獣を探さなくてはいけない。
「匂いを辿れ__」
袋は昔から何年も使っていたものだ。俺の匂いが染み付いている。
杖の先に集まった魔力が、糸状になって袋の在処へ向かう。
「よしっ向かう先は…あっちか。」
通って来た道を引き返す。道から外れて、奥の林へ入って行く。かろうじて通れる獣道を進むと、見つけた。
この間実に四時間。あんまり遠くに行っていなくて良かった。
それにしても…沢山いる。その中の一匹が袋の中身を漁っている。多分リーダー格の魔獣だろう。
「さて…どうするか。」
魔獣除けの魔術が使えればいいのだが、村長からは聞いてない上、想像が出来ない。
「あの屈強な獣共を散らせる術ってなんだよ…」
おまけに魔術紛いの技も使うときた。俺には検討もつかない。
なら真っ向から魔術で勝負を掛けるか?
「無理だよな。」
一匹ならまだしも数匹いる。どうする…
「お困りかな?」
思いがけない声かけに肩を震わせる。
「え、誰?」
「あの魔獣の集団を討伐依頼を受けた人でーす。」
若い。いや、俺より少し年上の女性?いや男か?判別のつかない中性的な顔立ちをした…男だった。体を見たら一発だ。よし、どっちみち案が浮かばずに困っていたんだ。
「はい。色々大切な物が入ってる袋をアイツらに奪われたんです。」
「ということならついでに君の袋、奪い返してあげよう。中に入ってる食料以外なら可能だ。」
「ありがとうございます。でも、その…大丈夫なんですか?あの量の魔獣を一人で。
いや、すいません。俺は戦えないのに。」
「大丈夫だよ。あの位僕一人でね。」
…近づかれても全く気づけなかった。こんなに音が立ちやすいような状況なのに。
心配は無さそうだ。
「よろしくお願いします。」
「承った!」
ザッ、と勢いよく茂みの中から飛び出す。
魔獣共も、咄嗟に敵意を感知し、彼と真っ向から相対する形となった。
刹那__彼の身体が鮮やかな緑の閃光を発した。
「眩しっ、」
目眩まし?魔獣共も声を上げている。いや、
声が上がり続けている。
殺してまわっているのか。けど、この切りつけているような、叩いているような音、剣?明らかに魔術で戦っているような音ではない。
でもこの光どう考えても魔術なはず…そんなことを考えている内に目が慣れて来た。
「どうなって、あぁ…こりゃすごい。」
一番に飛んできた景色は小さな地獄だった。
鮮血の血溜まりと見るも無残な魔獣だった物の集団、その下には溢れ落ちたピンクの臓腑がハスのように赤い水を弾いていた。
彼の手に握られた剣は血を滴らせ、木漏れ日を赤るく反射している。
「ほれ、君の持ち物。」
死体と血の池の間から引っ張り出して投げ渡す。
「あ、ありがとうございます。」
血がべったりだ。後で洗おう。
「中身は無事?」
「はい。傷も染みもなく、全部揃ってます。」
袋がしっかりしてて良かった。本当に…
「そりゃよかった。さて、これから僕はヘルブに戻るけど、君はどうするの?」
「俺も入国しようと思っているので同じ方向です。本当に助かりました。」
「いいよいいよ、困ったときはお互い様さ。それじゃあ、ヘルブに向かおう。」
バッと剣の血を振り落とし、鞘に収め、
依頼の成功を証明する依頼分の魔獣の角をもぎ取る。
「あれ、肉や皮はいいんですか?使えそうなのありますけど。」
「あー魔獣の体はね、殺した瞬間から腐るんだよ。だから使い物にならない。唯一使えるのは、この角。魔獣なら必ず生えてる物なんだけどね、色んな用途があってとても需要が高いんだよ。」
「へえ、初めて知りました。」
あまり魔獣の事は知らなかったから、ちょっと驚いた。
「結構いいとこ育ち?」
「いえ、俺の住んでた村があんまり魔獣のいない地域だったようで、至って普通です。」
「ここら辺は魔獣が多いからなー、ヘルブに行きがてら住んでた村についてちょっと教えてよ。」
「はい、いいですよ。」
◇
四時間後_
「じゃあさっきの光は、その剣の…」
「そう。剣に仕込んだ枝で目眩しの魔術を使ったってこと。」
そんなことも出来るのか。俺は剣が使えないけど、他にも応用出来そうだ。
「お、もう着くよ。」
門の前で今回こそ証明書を提出出来た。
「はい。確認で来ました。通っていいですよ。」
「はぁい」
「どうもありがとうございます。」
「ところで君、見たことないけど、旅人かい?」
「はい、世界中を旅しようと今回初めて国に入るんです。」
「へえ、そりゃ光栄だ。ハルブの観光楽しんでってね、耳の長い旅人さん。」
「耳が長いってよく言われます。はい、楽しみます。」
そんなに目立つだろうか?
まあなに、これでようやくハルブ内に入れるのだ。
門が開く。こうして初の入国を果たした。
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