風の想い 風の行方

木葉風子

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友達②

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2人が乗るバスが止まった
「乗るわよ」
バスが発車する
「ふぅちゃんは
運転しないの?」
「いいのよ!
運転手がいるからね」
笑顔の楓子
「それって、怜のこと?」
「だって、彼が
そう言ったのよ…」
照れて赤くなる楓子
バスが止まり扉が開く

「2人いた!」
「輝」
「どうしたの?」
「だって、ふぅちゃん
もう帰ったって言うから
きっとバスだと思ってさ」
息切れしながら話しだす
「とにかく座れよ…」
1番後ろに座る3人
輝が続けて話す

「どうせなら
ぼくん家くれば」
「輝の家?」
「うん、おとうさんが
そう言ったんだ
だから迎えに来たの」
「敬の家に泊まることに
なってんだけど」
輝に言う
「敬には連絡しとくから
家(うち)においでよ!」
笑顔の輝
「じゃあ、私
このまま帰るわ」
「どうして?
ふぅちゃんも一緒だよ」
「久しぶりの再開の
邪魔はしないわよ」
「怜も仕事帰りに家に
来るからいいでしょ!」

「ただいま」
「おかえり
いらっしゃい毅くん
ふぅちゃん」
春海が出迎える
「すいません、私まで…」
申し訳なさそうに言う
「当たり前でしょ
毅くんも自分の家だと
思っていいのよ」
笑顔で言う
「ねぇ、おとうさんは
何時頃帰ってくるの?」
「連絡あるから…もちろん
怜くんも一緒だからね」
「私、手伝います」
キッチンへ行く女性たち
「ぼくの部屋行こ」

輝の部屋
笑顔で彼を見つめる毅
「何…?」
「おまえが幸せでよかった」
ベッドに座り小さく
ため息をついた輝

「ぼくは、ぼくだけが
この家に来てさ、それで
良かったのかなって…」

輝の額を軽く叩く毅
「バ~カ!
気にするなって
言っただろ!
敬だって、
怜だって同じだよ」
輝の隣に座った

「でもさぁ
友達だなんて言って
悪いことをやらせる
奴もいるんだよな」

本屋での事を
思いだす毅
彼の言ったことがわからず
「何?それ…」
輝を見る毅
「オレたちは
いつも守ってもらってた…
あいつらにさ」
輝も毅の目を見る
「ほんと、そうだよね!」
「あいつらには
感謝しなきゃあな」

階下から春海の呼ぶ声
「輝、敬くんから電話よ」
「わかった~すぐ行くよ」
下へ行く輝
部屋に残った毅

❨なぁ輝
今はあいつらに
守ってもらわなくても
大丈夫だよな
今度はオレたちが
守ってやる立場かもな…
誰を守るのかは
まだわからないけどな❩

敬と電話で話す輝
「じゃあ
ちょうど良かった…
わかったよ
敬もあまり無理しないで」
受話器を置いて振り向く
「ふぅちゃん」
「珈琲入れたけど
敬くん、何?」
「まだ仕事中だから
毅を頼むって…」
「大変なんだ
作家さんも…」

「毅、開けて」
ガチャリ
ドアを開けた
「はい、珈琲」
珈琲を飲みながら話す
「ねぇ、どうして
ふぅちゃんはいつも
ぼくたちの側にいるのかな」
「そりゃ、おまえが原因だ」
シラッと言った

「えっ…僕?」
ポカーンとする輝
「よく言うよ
帰らないでって
泣きついたのは
誰だっけ?」
輝を見る毅
「そうだけど
だからって…」
正面を見据えて言う毅
「普通はね、でも
ほっとけなかった…」

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