風の想い 風の行方

木葉風子

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友達④

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翌朝、青山家
「でもさ、敬が
徹夜だったらも少し
寝かせてやったほうが…」
「確かに、そうだよね」
話してると怜の車が来た
「おはよう」
車の中から声をかける
「あれぇ、ふぅちゃんは?」
「彼女は仕事だよ」
動きだす車

「買い出し?」
輝が怜に訊ねた
「そう!あいつちゃんと
食ってないからね」
眉をしかめる怜
「あのさ、敬だって
自分の食べる分ぐらい
作るだろうがぁ」
呆れた様子で怜を見る毅
「普段はね!でも
仕事モードに入ると無理!
机にへばりついてるから」
「じゃあ何?いつも
敬の食事作ってたの?」
「時間あればね…」
順調に車を走らせる
「なんだかんだいっても
仲いいんだよな」

大型スーパーに到着
駐車場に女性が待っていた
「江莉香さん」
「おはよう」
みんなに挨拶する
「どうしたの?」
毅が聞く
「怜くんに料理教えて
もらおうと思ってね」

店の入り口に来た
「じゃあ、俺たちは
買い出ししてくるから」
食料品売り場へ向かった
その場に残った毅と輝
店の中を理由もなく
歩いていく
人気のない廊下
その奥から声がする

「あれは…」
毅がそちらを見る
何人かの少年がいた
❨あいつら、昨日の…❩
本屋にいた中学生たち
❨なにやってんだこんな所で❩
「嫌だって!」
「おれたちの言うこと
聞けないのかよ」
❨あの子は…❩

「毅、どうしたの?」
急に走りだす毅
慌てて彼を追いかける輝
「彼を離せよ!
嫌がってるだろが!!」
少年の輪の中に飛び込む毅

「あなたは!」
毅を見た少年
「おまえ、誰だよ?
関係ないだろ」
他の少年たちも毅を見る
「関係あるよ!
彼の友達だからね!」
「友達…?」
怪訝そうな彼ら
遅れて輝も来る

「何?この子たち…」
毅の周りにいる
少年たちを見つめた
「また来たぞ」
1人の少年が大声だす
「だから
なんなんだよ、こいつら?」
戸惑いながら仲間に聞く

「聞こえなかったな?
友達だって言っただろ!」
いつの間にか怜が来ていた
「怜!」
毅と輝が叫ぶ

1人の少年の手を掴む
「俺、医者だからね」
「だから何だって
言うんだよ!」
手を掴まれた少年が言った
「けが人はほっとけない
だから彼の手を
離してくれないかな?」
もう1人の少年に
優しく言う怜
「どうしてさ
あんたには関係ないだろ」
怜に名指しされた
少年が言い返す

「なんなら君たちの
手当てもしてやるよ!」
今度は強い口調になる
「おれたち、けがなんか…」
別の少年が言う
怜が毅の方を見る
「こいつ喧嘩、強いんだよね
ついでにいえば、俺様もね」
不敵な笑みを浮かべ
少年たちを見た

「なんだよ…
おれたち、こいつに
何もしてないよ!」
そう言って彼の手を離した
「素直でよろしい」
相変わらず不敵な笑みの怜
足早にその場を去る彼ら…

1人残された少年の
元に行く毅
「あの…
ありがとうございます」
毅たちを見て頭を下げた
「あいつら友達だって
いってたけど、ほんとに?」
毅が訊ねた
「うん、同じクラス」
「友達?どこがだよ!」
険しい顔の怜
怜を見つめ改めて
毅を見た少年
「あの、昨日言ってた
友達って…」
「そうだよ」
毅が答える

「怜くん」
江莉香がやって来る
「買い物、済んだわよ」
そう言うと彼に財布を渡した
財布を受け取りポケットに
しまう怜
「でも、私が持ったまま
いなくなったらどうするの?」
意地悪く聞く
「エリさんは 
そんなことしないよ!」
みんなにウインクする
「へぇー、ずいぶん
信用あるのね」
「友達だもんね
さぁ、帰ろうか」
怜がみんなを促した

「でも、さっきの子たち
まだいるかも」
心配そうに少年を見た輝
「だってさ
毅、どうする?」
怜が毅に聞く
少年を見た毅
「じゃあ、俺たちと
一緒に来いよ」
「えっ?でも…」
驚く少年
「かまわないだろ…怜」
「おまえの友達だろ?」
「うん!!」

「その前に輝
ハンカチ濡らしてきて」
彼に自分のハンカチを渡す
少年をベンチに座らせる
彼の腕と首元を見た
「おとなしく
やられてたわけか…」
輝が戻って来た
濡れたハンカチで
傷口を拭う
「イタッ!」
「我慢しろ!」
「あっ、うん」

「おまえ、名前は?」
「真人…三村真人」
 









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