風の想い 風の行方

木葉風子

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おもいかけない出来事②

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ビルの中から敬が出てきた
担当者の彼女も一緒だ
「あっ、れい先生の
友達のおにいちゃんだ」
舞桜が敬を見て言った
「君は舞桜ちゃん…」
「ねぇ、れい先生いるの?」
無邪気に聞く舞桜
楓子が兄妹の側に行く
「あのね、怜先生
真人くんと病院に行ったの」
「えっ?病院って?」
舞桜の隣にいた男の子が聞く
楓子がその男の子を見た
「ぼく、弟の和人です」
じっと楓子を見る

「真人くん、けがして
病院に運ばれたの…」
「けがって…」
「とにかく病院に行きましょ
私も行くから…」
「それは大変だわ
私が車だすから
病院に行きましょう」
敬の担当者の彼女が
慌てて駐車場に行った

「どういうこと
なんですか?」
和人が楓子に詰問した
「よくわからないけど
そこにいる中学生と
喧嘩してたみたいなの」
「えっ…?」
周囲を見回す和人
警官に取り押さえられた
中学生たちがいた
彼らを見る
「知ってる連中か?」
和人に聞く敬

「うん、兄貴の同級生…」
その話しを聞いて警官の
元へ行った敬
1人の警官が和人の
元にやって来た
「ねぇ、どうしたの?」
敬に訊ねる舞桜
真っ青な顔の和人を見て
不安になった舞桜

「この子たちを病院に
連れていきたいんですが…」
警官が彼を見た
「君は?」
「この子たちの友人です
知り合いが車を出すので
早く病院に…」
真剣な顔の敬
「わかった、早く病院へ」
楓子と和人、舞桜を乗せ
病院へと車を走らせた

救急車の中
意識朦朧の真人
怜が手を握り呼びかける
その手を握り返してくる
「もう少しで
病院だからな!」

やがて病院に到着した
英司たちが待っていた
すぐに処置室に運ばれる
英司が彼の容態を診る

廊下で待つ怜と尚登
「でも、怜
何があったんだ?」
無言のままの怜
尚登も黙って怜を見た
暫く沈黙が続いた
不意に怜が言う

「尚さん、彼女はいったい」
「彼女?」
尚登が聞き返す
「新しく来たドクター…」
暫く考えて言う
「俺もよく知らないけど
昔は救命救急センターに
勤務していたらしいよ」
「なるほどね」
納得する怜

「でも、そんな人が
どうして…?」
「暫く現場を離れていたって
本人がいってたな」
怜を見ながら話す尚登
「それにしては現場のこと
詳しいみたいなんだけど
英司さんのことも知ってた
みたいだから…」
暫く考える尚登

2人が話しをしている
所に人影が来る
楓子たちだ
「怜…」
「怜先生、兄貴は…?」
真人の弟、和人そして舞桜
心配そうに聞いた
「真人は今、検査中だ
多分手術するとおもうよ」
「手術…?」
真っ青な顔で怜を見た

その頃、敬は輝を乗せて
病院に車を走らせていた
「敬、真人は大丈夫かな?」
「けがのことは病院に
任せるしかないよ」
「毅に言わなきゃ…」
「あいつが心配してた 
通りになったな…」
「ぼく、毅と約束したのに
あの子を守るって
それなのにこんな事…」
「輝…」
辛そうな輝
それを見守る敬
そんな2人を乗せ走る車
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